2024年02月03日

『つくる』ことで『とどけたい』地域の思いを自校給食で

松川中央小学校栄養士 木下めぐ美

鮫田晋 今度はセンター方式ではなく自校給食の事例。農家の方が有機野菜を届けると。そして、全く、残食がないというので、私も勉強しに行った。

遊休農地を減らしたい町、産業観光課からの要望を受け5品目を提案

2024020106s.jpg 現場でやっている実践をお話をさせてもらいたい。地道にやっているのだが、この地道を続けていければ、どこの給食センターでも調理場でもできるのではないか。

 松川町の地産地消と給食室が変わっていくと。実践から得たものを話したい。松川町は南信の飯田下伊那の北方にある。天竜川を挟んで段丘にある町で、果物で有名な町である。そこから有機食材を入れた給食がされている。松川町に中学校1校と小学校2校があり、その一つが私のいる中央小である。職員が52名で学校としてはかなり大きい。自校方式での給食をやっている。松川町は野菜の栽培がほとんどない。米は100%地元のものであったが、地場は20%であった。果樹の町なので地産地消は不可能に近い。保育園でもやっていただいたが、地元のものが手に入らない。なんとか使えないかとずっと考えていた。長野県の県産農産物の利用目標値は2022年で69.5%、2027年が75%だが、2019年6月の県産利用率は23.3%、町内産は21.9%、11月が33.8%と8.8%であった。納品してくれるところがないため、私たちだけでは無理である。

 そこで、街に相談をしたのだが、この取り組みのきっかけが環境にやさしい農業である。2019年9月に町の産業観光課から「有機で野菜やコメ作りをしてその食材を学校や保育園の給食に導入したい」との話があった。農家は栽培時期や保管の関係もあって全量は無理だと言われたが、私たちは地産地消率をあげたかったことから、全量でなくても1日の使用量が確保できれば給食で使用できるとして、栄養士として、使用頻度が多い、にんじん、玉ねぎ、じゃがいも、長ネギ、米を使いたいと提案をした。ここから、主要5品目を給食に入れたら利用率が上がってきたと。今すぐに上がらなくても、そうすることで作る生産者も増えていくんではないかということで、地道に現在も取り組んでいる。

 意見交換会をして、4品目、3校分が出たので、町と農家と栄養士とで話をして圃場栽培を始めた。こういう芋は使えるかと、どれだけ土が付いていたらダメなのかとかの話をさせてもらった。

コロナでの一斉休校の中でメニューづくりが始まる

 こうして野菜作りが始まったが、2020年3月6日のコロナによって始まった一斉休校で、突然、職を失うことになる。調理員たちは給料をもらっているが、仕事はない。そこで、意見を出し合ったところ、「ゆうき給食とどけ隊」のことを知らなかったので、それを調べよう。そして、レシピも考案しようというという話がでる。つまり、休校によって大人たちが主体的に学ぶことが始まったのだった。こうして、「とどけ隊」のメンバーにインタビューをしたり、農家が町のどこにいるのか、店があるのかのマップを作ったり、農家の野菜を生かすメニューを考えるようになった。農家の圃場や農家の気持ちをマップに入れる作業を通じて、これまでは「自分たちだけで給食を作っている」という思いがあったのだが、[現場を知ることによって]実は多くの人たちから支えられて、給食が作られていることがわかってきた。

 給食室は学校の中でも隅っこの方にあって、昼に子どもたちが取りに来て、それが去っていくと静かになるのだが、「そうではないぞ。私たちが頑張らなければならない」という想いも盛りあがってきた。そこで、オリジナル・レシピを作ろうと多くのアイデアがでてきた。こうして出来上がったのが、「勇気100%忍者がポタージュ[ゆうき100%でのにんじん、じゃがいもポタージュの意味]」で、そう命名して「ゆうき給食とどけ隊」の想いを届けるメニューを開発した。

 農家の想いがこもった私たちの大切なメニューである。そして、コロナ禍も終わり、通常の学校生活も始まったのだが、作ることへ思いは止まらない。作ることへのこだわりと作ることの意味を知ったことで、私たちには「食を伝える重要な役割がある」という気持ちが給食職員の中で生まれてきた。 それぞれの野菜の生い立ちを知ることが大切。野菜にも個性がある。ニンジンの香りがいいね。こうした意見がでてきた。

トップダウンからボトムアップへ技と知の共有

 私自身が、松川町[産業観光課農業振興係]の熱意を感じた。そして、それを子どもたちに伝えたい。そのうえで、調理員との関係でもコミュニケーションが大事だということが出てきた。どうしても、これまでは栄養士から「これをやって」とトップダウンで言うと、調理員が従う雰囲気があったのだが、そうではなく、調理現場が一緒に料理を作りあげていくことで、それが食育につながることがわかってきた。木下めぐ美さんは、前から、そうしたことをやりたいと思っていたのだが、松川町で、それがでてきていることをこんなに感じたことはない。子どもたちと触れ合う機会がいっぱいある。

 食育を効果的に実践するには、ちゃんとしたものを作って届けなければいけない。そして、美味しいものを作れば残食はなくなる。そこで、毎日、研究している。調理のコツを全員で学びながら互いに反省している。煮物とか汁とか、あえとか、一人一人得意分野があるので、それをわかちあう。すると美味しかったねという感想が出てくる。次に生かせるデーターを残して調理員同士での共有を図っていく。

ゆうき給食つくり隊の立ち上げと四つの「つくる」

2024020108s.jpg 私は、食べものを作っている人がいることを、子どもに伝えることが大事だと思っている。調理のプロ意識としての自覚を持ち、子どもたちにその自覚を味として伝えたい。どうしても、栄養士が前面に出てしまうのだが、うちは調理員がそれを子どもたちに伝えるようにしている。

 そして、今、いい方向に向かって動いている。もともと遊休農地を解消したいとしてスタートしたのだが、給食室が変わり、動きだし、町長も変わり、町政として子育ての充実で自校給食と有機食材が言葉に入ったことから、2023年4月には中央小学校に勤務する調理員と栄養士で「つくる隊」が結成された。大切に食材を調理する心、地域の美味しさを伝える場所。「とどけ隊」がすでにあるので「隊」という言葉は使いたかったのだが、「作るんだから『つくり隊』でいいんじゃない」との調理員の言葉でこう命名された。

 いま、町の職員としてできることで、「つくる」が三つあるという。ひとつは素材を生かしたメニューを作り、調理のコツを伝えあう「作る」だ。ほんとうの美味しさを追求して、本当の美味しさを知り、たくさんの人の思いで、町内の皆がつながる食、「造る」だ。二つ目は、体も心も育つ味で、人と町を元気づけていく「創る」だ。この三つをひとつにまとめあげるのが「つくる」なのである。

 「つくり隊」はいま学びの真っただ中である。2023年7月にはフランスのシェフと交流し、フランスの給食の作り方を学び、2024年1月には「出汁」の取り方を学んだ。

 有機を学ぶことで得たものは、人とのつながり、町の皆さんの温かい愛情だった。課題も多くあるが、日本一のおいしい給食を目指して頑張っていきたい。

パネルトーク+質疑応答

2024020120s.jpg菅野奈穂 「ゆうき給食とどけ隊」も「ゆうき給食つくり隊」も素晴らしい取り組みだが、有機で作られる農産物は曲がっていたりして、どうしても市場で流通する農産物とは違う。どうやって、それを乗り越えているのだろうか。

木下めぐ美 松川町は[松本市にある自然農法国際研究開発センターから] 不揃いにならないやり方で生産指導を受けながら野菜を作っているので、年々レベルがあがっている。とはいえ、どうしても望んでいるカタチではないものも入る。その時には、それを笑いに変える。楽しく言いあいながら野菜を切る。それをすることで嫌な雰囲気が給食室では出ない。また、生産者が土を作るところから収穫するところまで見て、話を聞いて[現場を]知っているから、ネギが曲がっていても面白いくらいだと。

菅野奈穂 木下さん、CPPの研修を受けて実際にどうだったのか。

木下めぐ美 ちょっとしたポイントとか。例えば、野菜の水分だけでカレーを作ると美味しいといわれたので、実際にやってみると本当に美味しい。このように取り入れられるところは取り入れたが、いろんなところから学べることがすごい。

菅野奈穂 農家さんのことまでわかっていると。どうやってそうした仕組みを作られてきたのか。

木下めぐ美 毎日の有機畑のチャンネルがあって収穫とかの様子も伝えているが、総合学習の中で農家に来てもらったり、体験の授業で収穫に行ったり、また、取材したときの子どもの言葉をICがあるので、録音して親に伝えることをやっている。

菅野奈穂 最後の質問だが、今日は演題を「理想の給食を目指して」としているのだが、理想の給食とは何か。それを各パネラーからいただきたい。

木下めぐ美 食べることでつながって、地域が好きになって地域に戻ってきて同じことを繰り返せる。

会場からの質疑応答

古山成江 元学校栄養職員で食べ物通信をしている。杉木さんと木下さんのお話を聞くと、ただ有機食材を使うだけではなくて、栄養士が調理員といい関係を作り出すことが大切だと。ところが、現実の栄養職員は3校に1名しかいない。私は全校に必要だと思うので、栄養士の果たす役割について教えていただきたい。

木下めぐ美 私は他の栄養士と違っていて、子どもがお腹にいる時に栄養士の資格を取ったのだが、自分の子育ての時に一度止めている。そして、鈴木先生は県の栄養士だが、県の職員だと転勤がある。やりたいと思っていても継続してできない。そこで、私は県ではなくて地域に根ざしてやりたいということで、松川町に採用してもらった。今、松川町にきて5年が過ぎていてやりたいことを出来ている。もちろん、その反面、都道府県にも必要であるが。

編集後記

 本稿は、2024年2月1日(土)に東京都武蔵野市スイングホールのレインボーサロンで行われた全国オーガニック給食協議会研修会での木下めぐ美さんの貴重講演である。

長野県で地産地消食育コーディネーターを務める杉木悦子さんの貴重講演から始まり、東京都武蔵野市の給食・食育振興財団の北原浩平理事長の実践、静岡県袋井市のおいしい給食課おいしい給食推進係の石塚浩司・鈴木萌夏さんの実践、そして、NPO法人こどもと農がつながる給食だんだんの本田恵久代表理事のイギリスやフランスの事例とどれひとつとっても、半日ではもったいなさすぎるほどの報告があり、さらに後半ではNPO法人めだかのがっこうの菅野奈穂さんのコーディネーターによるパネルトークも行われた。

 これは、このうち、木下めぐ美さんの報告である。講演会を聴きながらメモしたもので、録音はしていないので、正確さは欠くが、多くの他の方々が指摘された有機学校給食を実現するためのキーワードとして、指摘された「誇りと矜持」、すなわち、自らの労働に対する尊厳が、木下めぐ美さんの報告に濃縮されていた。そして、まったく農業現場と重なって聞こえた。

 批判をうけることを承知のうえで、あえて、編集子なりに図式化するとこうなる。

 農林水産省→県庁お役人→農業指導員→「我々の指導どおり百姓は作ればよい」→作業員

 文部科学省→県庁教育委員会→栄養士→「我々の指導どおり調理員は作ればよい」→作業員

 これをまさに、木下めぐ美さんたち松川町はブレークスルーさせた。ヒエラルキー的な関係を水平的な連帯へと変えたのである。

「一人一人の調理員が得意な技を囲い込みせずわかちあう」→技がグループとしてストックされる→グループとして楽しい。

「一人一人の有機農家が見出した技を囲い込まずわかいちあう」→が農家グループとして知財としてストックされる→グループとして楽しい

 といったことで農業とも重なる。もちろん、これは編集子の手前勝手な整理だが、そう感じた。

 なお、これは会場で講演会を聴きながらメモしたもので、録音はしていないので、正確さは欠く。協議会会員と事前に申し込まれた方限定の講演会ではあったが「記事にしたり発信することはかまわない」との事務局の好意から、話を聴講させていただいた参加者の特権として公開させていただく。貴重な話題が盛り込まれているので参考にさせていただければ幸いである。
posted by 情報屋 at 20:44| Comment(0) | 有機学校給食 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年09月18日

「いただきます2~オーガニック給食編」を観る

千葉県いすみ市の有機農業

 映画が始まってから30分目で千葉県のいすみ市が登場する。

Shin-SamedaS.jpg鮫田晋「学生時代からサーフィンをしてきたので海の近くで生活するのに憧れていた。[このいすみ市では]ウミガメやスナメリというイルカに遭遇することも日常茶飯事である。海だけでなく里山と包み込むところで住みたいなと」。

いすみ市太田洋市長「コウノトリが天を舞うイメージが涌いて、これがいいなと」。

いすみ市の峰谷村で有機稲作に挑戦される農家、矢澤喜久雄さんは「技術もなかったが、地域を活性化する意味でとりあえずやってみようと思った」と語る。

 ところが、これが失敗する。

太田市長「雑草は出るは米は獲れない。惨々たる結果で止めようかと」。

矢澤喜久雄「雑草だらけで稲がみえない」

Hiroshi-Ota.jpg太田市長「ということで、当時の課長と3人で稲葉[光圀]さんのところに乗り込んだ。

鮫田晋 「[いすみ市で講演会を開き]100人で稲葉さんの話を聞くことが出来たのだが、環境を良くする日本農業の本来の姿に戻る重要な局面を迎えていると。そして、社会をより良きものにしていくと。いすみ市の取り組み方ひとつで世の中を変えていくことが可能だとの強いメッセージをくれた」。

 ここで、2018年当時の故稲葉光圀氏の指導の映像が登場する。

「どうやって雑草を取るかとほとんどの農家が考えていたが、どうやって発芽を抑えるかの技術に集中してきた。」

矢澤喜久雄「稲葉先生の生き方、農業を通じて社会や生態系を良くしたいとの信念、一緒に有機農業を作っていこうというスタンス、姿勢。本当に素晴らしい人だなと。稲葉先生と巡り会えたことがありがたいことだったと」

稲葉光圀「1回目で除草し、2回目に代掻きをすることがポイント。そこで、泥水をかきあげる」

矢澤喜久雄「おっしゃるとおりにやってみたら稲の成長の邪魔になる草がない。稲刈りまでぜんぜん田んぼに入らない。草がでない。もうびっくりしました。これが稲葉先生にお教えいただいた最大の驚きでしたね」

 代掻き、深水湛水等の有機農業技術によって水田から雑草が消えたのであった。そして、鮫田晋氏が、サンショウウオ等が戻ってくきている映像が入る。

太田市長「これを子どもたちに使おうと農家は提案してくれた。これは嬉しかった。全国初だということで出発させてもらった」

 慣行米との価格差500万円は市が負担しているのだが、これについて「これもしっかり説明して議会も理解してくれた」と市長は語る。「難しいのかもしれませんが、説明すればつかないことはないと思う」と微笑む。

 いすみ市はゼロから出発したが、2015年の4tが2018年で42tとなり、全校に有機米が提供された。以前は16%も残食率があったのだが太田市長は「残飯だらけだったのが間食に近くなった」と言う。

Mitsukuni-Inaba.jpg稲葉光圀「雑草が許せないと農家は思う。しかし、それが子どもたちの健康に問題があるとなれば、孫の健康を願わないおじいさん、おばあさんはいないと思いますよ」

鮫田晋「稲葉先生がコウノトリを飛んでくるとのエピソードを言ってくれて、『コウノトリも来てくれますよ』と言ったら、本当にその2、3カ月後に、それも取り組んだばかりの2反の水田にコウノトリが飛んできてくれた」

 ここで、コウノトリが飛翔する素晴らしい映像が入る。

鮫田晋「奇跡的。作り話にしてもできすぎているのですが、わざわざ始めてきたところにピンポイントで飛んで来るのは信じられない」

矢澤喜久雄「信じられない。励ましてくれたのかなと」

鮫田晋「稲葉先生は『私が呼んでしまったのかな』と語られる。そして、[有機]給食が気に入って[いすみ市に]移住した人もいる」

 実際、住みたい田舎ランキングが5年連続1位になっている。

「暮らしの豊かさを求めている人が多い」と鮫田氏はいう 。

 次に、ブラウンズ・フィールドの中島デコ氏が登場する。そして、野菜農家の近藤立子さんが登場する。

鮫田晋「近藤立子さんから農林課に電話があって、熱意があればできると思ったので、学校給食センターと生産者のみなさんとひとつずつ開拓してきた。何万食の給食センターだと1日に使う量は半端ではないが、その一部からやっていけばいい。ニンジンが100kgいるとしてもそのうちの20kgでいい」

 そして、畑で近藤立子さんが始めた理由を説明する。

近藤立子「自分の子どもの体調が悪く学校に通えなかったのだが、[有吉佐和子さんの]複合汚染を読んで、実際に作ってみたところ、野菜の味が違うことに気づく。アレルギーのことはわからなかったが、昔、食べていたのと同じものを手に入れようと思ったのがきっかけで、近所の農家に幼稚園のグループで何でもいいけれども頼んだが笑い飛ばされて、それで自分たちで菜園を借りて自分たちで作り始めた。最初にできたのが小松菜だったが、覚えている昔のナッパの味だなと。そして、子どもたちもよく食べてくれたので1反を借りて、8つに区切ってここには石灰を撒くとか実験的にやってみた」

「無農薬野菜が順調に育ち近所に配れるようになってから農家に広めていけばどれだけ幸せになるだろうと。皆に知らせたいと天に向かって叫んだ。それから、一週間、10日も経たないうちに、まだ無農薬という言葉が知られず、ましてや有機農業なんて言葉もないときに出版社から『話を聞きたい』との連絡があった。そして、「婦人の友」に掲載されたところ全国からすごい反響だった。

 近藤さんは有機給食が夢であった。「給食に使っていただければいいなと。お米が成功したので話がくるかなと思ったら来なかったのでニンジンを強引に持っていったら『2カ月先に入れてみませんか』とその場で決まった。そして、採用が決まって子どもたちが実際に食べてくれたときに嬉しいという実感が湧いたと。挨拶をしてくださいと言われたが涙をこぼさないのが精一杯で何も言えなかった。胸が一杯で子どもたちのキラキラした目をみていて、夢を持ち続けていれば叶うということを言った気がする」と語る。

 次に給食センターにシーンが変わる。

いすみ市学校給食センター長の鶴岡勝夫氏が、8品目、ダイコン、ニンジン、ジャガイモ、コマツナ、ニラ、タマネギ、長ネギ、キャベツ、この品目では20%が有機であると述べる。センター長によれば、大きさを揃えて出荷することを生産者にお願いしたのだが、状況によってはできないこともあると。

鮫田晋「前向きな答えが出せないのが自治体の定めなので、必ずしも前向きな回答が得られないので『うちの自治体は駄目だ』ということではなく、共感する人と一緒になって広めていけばいい。木更津市も3年目だし、他の自治体でもセット増えていくのではないか」

千葉県木更津市の有機給食

Youki-Nomura.jpg 次に木更津市が「人と自然が調和する条例」を作ったことについて、市の野村洋貴氏が説明する。

「1万500人なので、30校にお米を出す。2019年が1.8haで3t。2020年が2年目で生産者が8名で5.5ha、13t、2021年が42t。差額は市が財政負担をする。2019年の2月に稲葉光圀さんをお招きし、そこに生産者が20、30人来た。生産に必要な機材は稲葉先生からお借りした」。

 稲作農家、杉山孝氏は雑草が出ずに1年目から成功したと言う。

 野村氏はいすみ市という前例があるので、JAとの付き合い方とかのノウハウもあるのでそれを聞けることがありがたいと述べる。

新潟県佐渡市の有機農業

 映画が始まり1時間目で新潟県の佐渡市が登場する。

Ryugo-Watanabe.jpg渡辺竜五(1965年~)市長「朱鷺が絶滅したのは農薬よりも用水路等の環境の変化が大きい。佐渡全体でも最低でも農薬は5割減、そして、お米だけはネオニコを使わないところまでは来ている。ヨーロッパでも国によって禁止されているので」

稲作農家、斎藤真一郎「アカトンボがいなくなったということで研修会があった。トキが食べるものがなくなってしまうので、農薬を使っていたらトキが増えないので農薬を使わないと。農協が決心すれば農家は買えないからできる」

渡辺竜五市長「佐渡農協が農協として判断をした。これは偉い。そして、きちんとうまくいっている。これは素晴らしい。一回絶滅した鳥が5、10羽を放しただけで、それがいま500羽になっている。

斎藤真一郎「25年前に農業をやっていたときにはいなかった。環境さえ変えてやれば生き物は増えるしね。ふと空を見るとトキが飛んでいたと。これまではカラスや鳶しかいなかったけれども、いまはトキが飛んでいると。10年前には双眼鏡で追っかていたのだがいまは朝起きれば飛んでくると」

 そして、朱鷺の素晴らしい飛翔シーンが映像で流れる。このお米が売れない時期に佐渡の米は足りないと。そして、農家やJAも希望が出る。

渡辺竜五市長「お客さんがいることが生産者にとって命ですね。これまでは安いものを出すことが、高くてもいいものを、になってきている。そして、お客さんが支えてくれるお米を作るべきだろう。さらにはお客さんのニーズを変えるお米を作りたい。この背景に環境を守っていることをトキが教えてくれた」

斎藤真一郎「実証モデル事業、不耕起で有機を始めて、最後は自然栽培で5、6年。空気中にある窒素が田んぼにいる窒素固定菌が増えてくると何もしなくても獲れる。草と共生できる世界になってしまったんだよね。精神的にも収量も変わらないし、すごく楽になった。昔はコナギを取っていたが、それが共に生きていける世界の生き物になりましたよ」

 もちろん、2.5ha。1カ月4回は除草機械で歩かなければならない。

Shinichiro-Saito.jpg斎藤真一郎「田んぼは人間のためのものではない。地球を含めて必要なものだと思うので消費者もいいことをしている農家、産地を応援する。ただ安いだけでなく社会貢献できる消費をしてもらいたい」

渡辺竜五市長「子どもたちが食べるものをまず優先する。そこで、この6月は30校で1カ月は有機米を食べてもらった。すると、あるお母さんから市長ありがとうと。発達障害があるのだが少し落ち着いていると。これは素晴らしいことだなと。来年に向けて、作る人を増やすために研修会をやっている。やるときにはどんとやればいい」

 そして、佐渡が転換した理由について斎藤真一郎は「やはり動いたきっかけは市長でしょう」と語る。「農協も一緒になってやってきたから。行政よりも農協が動けば変わりやすい。トキの野生復帰のアピールとか佐渡のお米のアピールとか、もりあげようとしている。

京都府亀岡市の有機農業

 映画が始まってから75分目あたりで亀岡市にシーンが変わる。

Takahiro-Katuragawa.jpg桂川孝裕市長「亀岡市は環境の世界都市を目指しているので、農業でいえば有機とか無農薬である。天然記念物アユモドキを護るために、スタジアムの開発場所を別に移して生物多様性を守っている。そして、令和4年から保津川小学校での給食で有機米を使っていくと。昨年の生産は8畝なので、地元のオーガニックアクションとの協力でこれを10倍にする。将来的には全校で使っていく。アレルギーの子どもが多いが、食の中で何かの変調が身体で起こしているのではないかと。そこで、田植え、刈り取り、脱穀の過程を子どもたちに体験してもらうことが必要である。自らを体験して故郷を語れるようにないといけない」

長野県松川町の有機農業

 映画が始まってから80分目あたりで長野県松川町へとシーンが変わる。

Tomohiro-Miyashita.jpg宮下智博町長「子どもの頃に体調を壊して20歳まで生きられないと言われたが、食べ物を変えたら元気になって、いまも町長をやっている。その体験から子どもたちのために何かをやってもらおうと。最初はお米でしたが、そして、野菜を入れました」

 松川町での吉田俊道氏の講演の風景が登場する。そして、町の富士森公園での実習風景。乾燥させた雑草を畑の土に大量にすき込むシーンが出てくる。一切肥料をいれていないのだが、ピーマン等ができている。

kimika-MiyazimaS .jpg宮島公香係長「主要5品目、お米、ジャガイモ、タマネギ、ニンジン、長ネギ。今年の目標50%で、11月1月分は新米のお米が100%提供できる。できることから少しずつ産んでいきたいと思っている」

 無肥料でできたピーマンを手にした松川町の子どものシーンが映る。

木更津市野村洋貴氏「新型コロナで自分たちのところで獲れたものを子どもたちに向けて消費することは、農業振興にも環境負荷にも市のブランド化にもなっていいことづくめ」

佐渡市渡辺市長 「佐渡に来てください。[朱鷺を見ることは]一生忘れられないですよ」

斎藤真一郎「子どもにいいものを食べさせるのが大人の責任だ」

Toshimichi-YoshidaS .jpg吉田俊道「土を作ってしまえば美味しくなって楽になるんですから」

鮫田晋「国が支えてくれるとか企業が支えてくれること以上に、正しいことを正しいと言う人がいることで世の中は支えられている」

 稲葉氏が2020年76歳で永眠したことが映り、「稲葉さん子どもたちを守ってください」とのメッセージで映画は終わる。

編集後記

 いただきますの映画を見た。3回以上も見ているのだが、千葉県のいすみ市ができたり、長野県の松川町が登場したり毎回バージョンアップされている。ということで、映画を見ながら、メモした内容を活字にしてみた。もちろん、文字だけでは、本当の映画の素晴らしいシーンの数パーセントしか伝えられないのだが、本番の映画をみるための参考にしていただきたい。なお、画像も撮影できないので、登場人物の画像をネットから検索し、出してみた。

【画像】
鮫田晋氏の画像はこのサイトより
いすみ市太田洋市長の画像はこのサイトより
稲葉光圀氏の画像はこのサイトより
野村洋貴氏の画像はこのサイトより
渡辺竜五市長の画像はこのサイトより
斎藤真一郎氏の画像はこのサイトより
桂川孝裕市長の画像はこのサイトより
宮下智博町長の画像はこのサイトより
宮島公香係長の画像はこのサイトより
吉田俊道氏の画像はこのサイトより
posted by 情報屋 at 10:30| Comment(0) | 有機学校給食 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年08月11日

農福連携で有機100%給食は可能~オーガニックパパ・八尋健次氏

オーガニック100%の有機給食を実現させた有機農家

 八尋健次氏率いるオーガニックパパ(株)は、常勤8人、非常勤7人の有機農業・障がい者福祉サービス業である。同時に、一般社団法人オーガニックパパユニティは常勤13人、非常勤17人で、食品流通、飲食業、地域若者サポートステーション事業を実施している。オーガニックパパに関心を抱いたのは当然のことながら、有機農業、有機食品の流通業、オーガニックレストラン事業、そして、オーガニック給食事業を展開していることにある。

 有機農業で言えば、遊休地を中心とした貸借地12.8haでダイコン、ニンジン、ホウレンソウ、ナス、キューリ、梅、コメ等年間40種類の多品目栽培を行っている。

 こうした自社野菜をふんだんに使った直営レストランも行っている。もちろん、満席だ。そして、100%オーガニック給食を目指す学校、高齢者福祉施設、障碍者福祉施設、市役所等のパートナーとして、手作りの健康給食を様々な施設・企業への配達している。とかく、オーガニック給食というと食材の調達すら困難だとの声があるが、自社農園の規格外の野菜を活用することで、オーガニックであってもコストは変わらず、障がい者の社会参加も実現している。

 廃棄物として処理に困るエリンギの廃菌床や山林の未利用材等を活用し、畑をまるごと発酵させることで、フカフカの土を作り出す。それによって、有機農業の専門知識がない人でも、地域内での多品目多収量を実現させる。

 菌ちゃん先生こと吉田俊道氏とも重なるカーボン農業。加えて、2021年6月25日(金)のジャーナリスト/猪瀬聖氏の記事、「米も野菜も無農薬 日本一の学校給食を目指す福岡の私立学校」によれば、リンデンホールスクールは、全国初で100%のオーガニック給食を実現させたという。

 また、2021年6月25日付の都築学園グループの「100%有機野菜・米給食スタート~子どもたちの健康と未来のため、自然と共生した循環型社会の実現へ」という記事ではこう述べている。

「リンデンホールスクール小学部(所在地:福岡県太宰府市、都築仁子校長)、中高学部(所在地:筑紫野市、都築明寿香校長)は、全国で初めてほぼ100%オーガニックの野菜・米を通年提供する給食を4月に始めた。子どもが健康に成長する上で重要な「食」への関心が高まっていることから、近年給食の一部にオーガニックな米や野菜を取り入れる動きが全国の自治体でも広がり始めている中、「身体は食べたもので作られる」という考えから、リンデンホールスクール小学部・中高学部では、子どもたちの健やかな成長を最優先に考え、2019年9月から学校給食の一部にオーガニック野菜の使用を開始。2021年1月からは給食のほぼすべての野菜・米をオーガニックでの通年提供を開始し、4月からは野菜が100%オーガニックに切り替わった。では、そこにオーガニック野菜を提供するのは農家の側からしてなぜ可能なのかということで、取材してみた。

みどりの食料システム・オーガニックは民間の協働組合で

2022081110s.jpg八尋健次 ここでは、カーボン農業をやっています。15年前にここにやってきました。有機野菜を大量に出荷している。味もいいのでリピーターが多い。そして、有機野菜への需要は増え続けているし、生産量も増え続けている。我々は、基本的にいま吉田[太郎]さんが本で書かれて[拙著の表紙のデザインと目次を見ながら]、いま言われたようなことを実践している。

 いま、国がみどりの食料システム戦略を打ち出して、全国で51ヵ所が「オーガニック・ビレッジ」で手をあげている。僕は50歳だし、2050年先に向けての長期的な法律ができたことから、オーガニックが広がる活動をしていいきたい。そして、いったい誰が有機農業を実践するかで、その成功は農福連携にあると思っている。

 みどりの食料システム戦略に見合うような有機農業をやれるのは、ベテランが1、2割。素人が8割。そして、国の補助金を受けているところは、やはり駄目で、素人はやり続けられない助成がある3年間はがんばっても、3年間補助金があるのでやってもそれが断ち切れると止めていくと。あるいは、補助金を出す市政も市長が変わったら立ち消えになると。こうしたやり方ではなく、もっと持続できるカタチでの政策をやってもらいたいと思っている。

 もちろん、有機農業を進めるためにはそのための技術はもとより販売のための政策もあるだろうが、僕自身はオーガニックの農協を作るべきだと考えている。せっかくみどりの食料システム戦略が始まったのだから、農産物の地域ブランド化によって「ふるさと納税」にする。そのために、農業をやる慣行農家を集める。すると、結果として、[マインドセットが変わっていないから、化学肥料や農薬使用への有機の基準の緩和に向けての声が高まり]、農薬をふることになる。だから、そういうことではなく、まったく新しい人。もっとやれる人、社会福祉法人を説得すると。

 そして、お役所ではなく、民間こそが地域を動かす活性力だと思っている。そこで、行政側の計画にアプローチしていきたい。

 いま、町おこしから、有機学校給食も進んでいるが、経験している人が少ない。ただ、自分にはこの15年の中での実践がある。ただのおせっかいなのだが、成功に導いて欲しいと。それで、勝手に連合体を組みたいと。実際に行政よりも地域の連携の方が動いていくんじゃない。[オーガニックの普及のように]こんな大事なことは行政にまかせられてはいられない。そこで、オーガニック給食で社員食堂もやろうと。行政まかせではない。他人が動いてもらうのをまっていられないと。

カーボン農業で廃棄物を循環させたい

 [糸島の方からこちらに]移られてからの今の経営を教えて下さい。

八尋健次 オーガニックパパといって15年前から廃菌床を活用している。毎日800kgとかを6回トラックで取りに行って入れている。経営面積は約13ha。この筑紫野エリアは良質な炭素源がたやすく手に入る。44km離れた宗像地区では、河川敷の草を入れている。そして、60種類の野菜を作っている。それは、給食の献立で飽きさせないために必要。この九州北部の給食エリアは水田なので畑地は30分の1。そこで、転作田で野菜を栽培したりしているのだが、硬盤層があったりする。9割方がアブラナ科の作物なのでもっと畑が欲しい。

2022081113s.jpg そして、ゴミを使うことにこだわっている。産業廃棄物として使われている炭素資材を活用したい。蒔いている量は大量で、願わくば20〜30センチの層を地上に作れればと。少なくても菌床は10センチ。日々が入れているのはエリンギの廃菌床だがそれでもC/Nが14くらいあるので、窒素率もあがっている。よく、できができないのではないかと不安になって窒素肥料を入れるとだいたい失敗する。緑肥すら大きさにならないので、そこでは、緑肥を作って畑にすき込んでいる。

 それを知的障害者が撒き散らしているのだが、ほぼ障害者がやっている農園でも美味しいモノができている。そして、多動症の子どもは喜ぶし、体質も良くなる。

自然食をすると障害者も改善するし病人も食べられる

具体的には?

八尋健次 なにか障害を持った子どもは、すぐに風邪を引くし、鼻がアレルギー。肌も荒れている。お通じも悪い。ダウン症の子どもそうで、寿命も短く、20歳くらいから老化が始まって、40歳くらいで死んでしまう。そうした子どもも食を変えると元気になるのです。

映画「いただきます」で吉田俊道さんの野菜で味噌汁を作った子どもが元気になるのをやっていましたね。あれも福岡市にある高取保育園でしたし、内山葉子医師も北九州市で葉子クリニックをされている。

八尋健次 実は、吉田俊道さんとは15年前に一緒にカーボン農業、炭循(炭素循環)農法を学んでいました。指導者がブラジル在住の林幸美さん。基本的に哲学者なので宇宙エネルギーとかがでてくる。結果ができればいいと私は思うのですが、吉田俊道さんはかなり理論的にツッコミを入れていて、個人的に「吉田さんがいう方が正しい」と思っていました。それから、吉田俊道さんも農法をかなり進化させていると思います。

吉田さんの農法も去ることながら、愛媛県の知多半島でやはり自然農法で農産物を作られている熊崎巌さん彼の農産物も腐らない。ミイラのように干からびるわけです。おそらく、有機といってもグチャグチャに腐るものは自然ではないのではないでしょうか。

2022081111s.jpg八尋健次 これを見てください。右のがうちの農産物、そして、左のが普通の農産物を瓶に入れたもの。まさに、右側のはまだカタチを保っています。13年前にある病気の人と会ったのですが、なんの食べ物も口に入らなくなる。食べられないものが絞り汁ですら食べられない。ゲホゲホと吐いてしまう。ところが、自然農法で作ったこっちの方のものは最後まで咽を通る。何人もの方が食べてきたと。もちろん、化学物質過敏症かもしれないし、なぜなのかはわからない。ただ、人工的なほどこしをしていないモノであると質が変わる。おそらく、微生物と分解されたものとのつながりの中でできているものだからかもしれない。日持ちもいいし、自然だし。市場でいえば確実にある。ということで、これからは医療でも無農薬だと。そこで、農福連携で、レストランで癒やしとかもやっている。

福祉事業とセットでやれば有機農業も採算が合う

 実は、福祉関係の会社は2,000社くらいある。それが、農業に参入してくることが可能だと。有機農業で食べていけない人を食べられるようにすると。有機農業で採算をあわせることにあきらめている。障害者の月給が1万円で続けられる。そして、彼らの体調はよくなる。これを使わない手はない。新規就農は一人も使わなくてもいいのです。

 おそらく、国家規模で社会保障があれば、ニンジンやダイコンは有機でも作れる。そして、そこで、雇用も生まれる。引きこもりや知的障害も農業では働ける。いま、働ける人も会社に来ない方がいいと言われているわけですが、その考え方方でこの15年やっているわけです。

校長、栄養士、調理人が膝をあわせマインドをリセット~畑の旬で考えれば100%の有機給食は可能だ

100%有機が成功した鍵はなんなのでしょうか。

八尋健次 都筑学園の成功の鍵は、栄養士と調理士が柔軟な対応ができることです。冷蔵庫をあけて今日の献立を何にしようかと考えるように畑で考える。そして、「大雨だったのでダイコンが取れない。水菜はある」とうちが言えば、水菜に変えてくれる。水菜でオーガニック食卓にしてもいいのです。簡単すぎて笑えます。

 福岡市の季節に応じた旬の野菜で献立を立てればいいし、JASでの乾物と豆腐だけで作れば、いとも簡単なんです。けれども、いまは献立と旬の野菜とがまったくリンクしていない。

 無農薬を食べれば元気になるとか。どこまでいっても有機農業の定義は曖昧だし、「現場に負担がかかるからやれない」等とやらない理由の方もあいまい。一方、有機給食をやることを前提でやればできる。実は、市場を介さないことの方が農薬よりも問題は深刻で、例えば、うちはダイコンはミニダイコンを10月に出す。それが、成長していって12月、さらに、1月にはダイコンとして大きくなって、2月には皮が固くなって、3月にはとう立ちして、やっとダイコンが終わると。10月の小さいダイコンを皮を向いて出すことから始めて、とう立ちまで付き合うことが前提でないとできない。

 けれども、「庭先ダイコンに付きあえ」と上から言われている。トップダウンで「やらないと首だよ」という圧力があって、それで、献立を組み立てている。だから、やれる。給食の費用が余計にかかったとしても、話題性や親からの負担で結果として、プラスアルファーをもらっている。

オーガニックパパからはどれだけ出しているんですか。

八尋健次 米も有機米はうちから入れていますが[除草は人海戦略で手作業で行っているという]、うちで作っていないもの、ニンニクやモヤシは買っていますから、6割くらい。もちろん、都筑学園への出荷は、うちが最優先ですが、ビオ・マーケットのものも扱っているし、全国からのモノが揃っている。都筑学園系列で37校もあるのでとても、まかないきれないので3〜4校で我慢してもらっている。出荷先の販路がしっかりあると安心して生産できる。

 ただし、都筑学園としての給食費は下がっていると思いますよ。それは、全部が手作りになるからです。畑にある野菜によって献立を作っていくので。例えば、いつも多くの人にしゃべっているけれども、ポテトサラダの上に缶詰のミカンが乗っている。いま、缶詰の値段は高いので、それが値段を高くしているので、そんな変なことをやめればいい。

実際に有機給食を実現して生徒に変化はあったのでしょうか。

八尋健次 それはあります。まず、便通がよくなった。夜にもご飯をしっかり食べ、家庭でも食欲がよくなった。いま、女の子では、中学生の半分が便秘です。そして、残食がない。鈴木学園は基本的に、おぼちゃま、お嬢様学校なのですが、それが、「漬物をください」ですよ。 さらに、障害者施設ではより明瞭にわかる。症状が改善します。

私立学校とはいえなぜ有機100%が始まったのでしょうか。やはり校長に強い想い入れがあったからでしょうか。

八尋健次 校長に想い入れがあったのですが、実は、パーティ会場での酔っ払っての学長と出逢いがきっかけです。リンデンホール[リンデンホールスクール・小学部・中高学部]は、学校法人都築(つづき)育英学園が運営していて、太宰府にある日本経済大学もその系列です。そして、その理事者、都筑仁子(きみこ,1946年〜)とパーティ会場で会ったので、新たに有機農業を始めるための農業大学を作るかと持ちかけた。大学は100億あればできるので。都筑理事長は、食の関係の本を出したり、健全な若者を育てたいという想いはある。そして、未来のお手本になるような若者のためにイングリッシュの教育もしている。大学院修了後は、JALの国際線にてキャビンアテンダントとして働いていた経験もある。で、この校長先生、理事長、学長のイニシアティブで始まったわけです。

 転換は3年かかりましたね。1年目は、夏に焼きそばをやるというのでキャベツが欲しい。夏にもちゃんぽんがある。そこで、精神疾患のある子どもに頑張ってもらって徹底して青虫をとりましたね。そして、欠品するとかB級品でも納品するとか、文句が言われましたが、農家さながらやっていることに慣れてくると文句一つ言われない。「なぜ、この献立にしたのですか」と聞くと「昔からのデータでこうなっているからです」と。そこで、1年目は九州の旬を教えて、献立の切り換えをしなければならなかった。ですが、2年目からは楽勝です。つまり、信頼関係ができたことが鍵です。

農水省や佐伯市は本気か?

 いまも1日に2組は視察に見えられる。ちなみにいまの農林水産省の政務官、下野六太(1964年~)さんもこの太宰府の出身で、公明党で福岡選挙区ですが、このレストランで有機野菜を食べている。そして、農水省もオーガニック給食とかで、九州農政局関係の人にも食べてもらっている。美味しいねと。そして、先日は、農林水産省から環境農業対策課の佐藤夏人課長も来た。だから、僕は、オーガニックはトップダウンだと。市長がオーガニックをやる、オーガニック、バンザイと言ってくれればいいと。

 山口タカさんというジャーナリストがいるでしょう。保育園で100%有機をやっているころがある」と聞いたら「ないよ」と。ですが、福岡市の名島幼稚園はすでにやっているはず。意外に知られていないんです。そして、地産地消といってもその献立が畑と一致していない。佐伯市もわかっていない。市長は旗振り役で頑張っているし、農政課は無農薬でやる農家に呼びかけをしているわけですが、コンサルタントが上から目線でアドバイスするようになるとムカ付きますね。そこで、いま、佐伯市から頼まれているわけです。

 有機を地域ブランド化して高く売るとかは試みたことがないし、世界を変えようと思ったこともない。自分たちで作ったものを皆で食べる。そういうあたりまえのことを考えているわけです。

 僕らは本当に頭が悪いし、えらい人が考えていることは難しすぎてよくわからない。ただ、社会の中でただ一人では生きてはいけないと。そして、いま、働く人口の半分で社会は食べられるようになっている。働かなくてもいい。だったら、国内で有機ぐらいは作れよと。農福連携は福祉会社が始めることができるわけです。

編集後記

2022081108s.jpg 「お待たせしました」

 西日本鉄道の朝倉街道駅で急行を降りると駅前に迎えにきてくれていたのは、オーガニックパパの料理長さんだった。オーガニックの定食を味わった後、どのようにして有機100%給食が実現したのかを教えてもらい、畑も見させてもらえればありがたい。そのあとは忙しい中をあまり長居しても迷惑。大宰府天満宮でもお参りし、と近くに二日市温泉に宿を取っていたのだが、夕食までご馳走になり21時まで話し込んでしまった。

 後半は情報屋の専門外の農業福祉や引きこもりの話題となった。化学物質が原因だと断定はできない。とはいえ、結論から言うと、やはり脳神経がやられてまったく別の人間が生まれてきてしまっている。それも普通の数ではなくてかなり、というのが八尋健次さんの結論である。

 例えば、ちょっとした仕事のミスを注意しただけで、止めていってしまう若者が少なからずいる。それも、「これだけ怒られたのは20年前に親から怒られたのと同じで」と常識では考えられない回答が返ってくる。

 こうした人は普通の会社、都市で働くことはできないと八尋さんは言う。けれども、畑は違う。引きこもりも贅沢病であることは確かだが、引きこもらざるを得ない人もいる。こうした知的障害や引きこもりに働く場があることはいいではないか。というのが八尋さんの主張である。

 実際、夕食を共にした青年、女性、そして、レストランのシェフは、いずれもスタッフなのだが、都会にはなじめない人たちだった。

 対話の中で登場した菌ちゃん先生も、自分で生産されたエンツァイのパウダーの納品作業は、作業所に依頼している。仕事が作られることによって本当に感謝されていると吉田俊道さんも言う。オーガニックと福祉はさらに連携してもいいのかもしれない、と思ったりもした。ちなみに、オーガニックと農福連携をメインの柱にといった農林水産省の事務次官は、それが一線を越えたのか、なぜかいきなり過去の女性秘書へのパワハラをマスコミが書き立てた結果、辞任に追い込まれている。いま、一教会の闇の政治支配が話題となっているが、もしこうした形で中央の政策が政策的にゆがめられているとしたら、やはり地方から目に見える形での健全化を一歩一歩進めていくしかない。大分県佐伯市の健闘を期待したいと思ったりもした。

posted by 情報屋 at 12:40| Comment(0) | 有機学校給食 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月28日

いただきますの上映会中止に変えて

コロナで「いただきます」の上映会が延期

 長野県小布施町では「まちづくり委員会環境を考える部会」が 2020年3月1日(日)にオオタ・ヴィン監督の映画「いただきます」の上映会と栗ガ丘小学校5年生による演劇を開催することとしていた。まちづくり委員会環境を考える部会では、生ごみの減量に端を発したさまざまな活動を重ね、生ごみ堆肥による元気な土づくり・野菜づくり・健康づくりに取り組んでいる。その活動を元に食をテーマにした「いただきます」を上演し、栗ガ丘小学校5年生による演劇や環境を考える部会の活動報告も行うこととしていた。「いただきます」とは福岡県福岡市にある高取保育園にカメラを向けたドキュメンターリである。

 とはいえ、2月25日12時に、松本市で初めて感染者が発生したことから、開催予定の映画「いただきます。」の上映会とお話の会は、新型コロナウイルス感染防止のため延期となった。

2020022206.JPG 一方、2020年2月22日(金)、23日(土)、徳島県小松島市のアグリカルチャーセンターにおいて、「コープ自然派しこく」の主催により「オーガニック・エコフェスタ2020」が開催された。研修室ではオオタ・ヴィン監督の映画「いただきます」の上映会とその後のトークショーがなされた。ちなみに徳島県でも2月25日の夜、藍住町の女性がクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船していたことから陽性反応がでてしまった。四国で初めての検出である。まさにタッチの差であったといえるだろう。これから、今後もしばらくは各地で自粛が続くに違いない。ということで、長野県小布施に変わって映画後になされた同監督のトークショーの内容をここで紹介してみたい。

2020022217.jpg なお、会場となったJA東とくしまは、JAの中でも有機無農薬に力を入れる珍しい農協だ。それには、同農協の西田聖氏の活躍が大きい。2018年5月14日にジャーナリストの猪瀬聖氏が「脱農薬目指す異色の農協」と題して素晴らしいリポートを書いている。是非、ご覧いただきたい。

身体を壊し食で癒したことから高取保育園に関心を持つ

2020022214.jpg オオタ・ヴィンという名前ですが、バリバリの日本人です。愛知県出身です。ご覧いただいた「いただきます」は、4年前にできた映画です。その後に子どもたちがどうなったのかと良く聞かれます。そこで、ご紹介したい。まず、桃組のあさえちゃん。主演女優賞でおかっぱ頭が印象的で当時は2歳だったのですが、いま6歳です。こんな感じのお姉さんになっています。

 次がたんぽぽ組の主演男優賞のエイちゃんですね。当時0歳でした。アトピーがひどかったのですがいま2歳です。最後に味噌汁を飲むところが印象的でしたがいまでも味噌汁が大好きです。ぺろりと食べます。

20200228nishi.jpg さて、私が映画を撮り始めるときには西福江園長先生(昭和4年〜)は「100歳までやる」と言われていた。途中でお止めになるとは思っていなかった。けれども、結果として、園長の最後の貴重な1年が撮れてよかったと思っています。

 では、その後の西園長は、どうなされているのか。この写真わかりますか。ああ、わかる方は年齢がわかりますね。そう山口百恵さんの引退式の写真です。山口百恵さんと同じで、「自分がでれば後任者がやりずらい」ということでまったく保育園すら顔を出していません。自ら身を引くことで生涯一保育者としての姿勢を実践されている。素晴らしいと思います。次に、これが撮影シーンの写真。そう、これぐらいの距離で撮影して映画を作っているのです。

 さて、入口で配られたかと思いますが、保育園の献立表を、リアルな5月の献立表を参考に見て下さい。肉や乳製品がありませんね。ハンバーグもない。それでも栄養価は十分で、子どもたちは健康に育つ。是非、ご家庭の食事の参考にしていただければと思います。

 この「いただきます」は、劇場で上映をさせていただき、それを見た方が「私の地区でもやりたい」と手をあげてくださり、少しずつ広がっていった映画です。上映会のやり方も資料に書いてあるので、是非、申し込んで欲しいと思います。チラシの裏面が「いただきますパート2」です。こちらは、別の保育園ですが、オーガニックのファーマーもでてくる第2弾で、いま劇場公開中です。

 さて、では、どうして私はこの映画を作ったのか。映画の中では「食養生」がでてきますが僕自身が体調を崩して、どうしても西洋医学では治らない。そして、食べ物を変えることが一番良く、かえって健康になったと。そして、僕が普段に食べている内容の食事と同じ食事を出している保育園があるというので「これは是非映画にしたいな」と思い、映画の撮影が始まったわけです。4年前から上映が始まって、全国700カ所で上映中です。

食養生の伝統が途絶えたことで子どもたちがアトピーに

2020022207.jpg さて、これからお話するプレゼンは是非、スマホとかで撮っていただいて、関心があるテーマがあれば、ご自宅のパソコンとかで検索してみてください。まず、「食養生」とはなにか。「医食同源」とは何かです。

 人間の細胞は約100日間で変わると言われています。だいたい毎日、大人も子どもも1%ずつ身体の細胞が変わっている。つまり、アトピーになっていても治るということです。これは大人も同じです。

 この映画では本間真一郎さんが登場しますが(注1)、ステロイドを2歳までに使わなければ治ると。アトピーは日頃の積み重ねが大事であると。ひたすら薬を出す医師がいる一方で、本間医師は基本的には身体の中身から改善していかなければいけないと考えるわけです。子どもは非常によく結果がでます。そして、日本人には伝統食が一番だと思います。日本の家庭でずっと継承されてきたのが途絶えてしまったわけです。

 2020022209.jpg次にこれを見て下さい。1958年の日本の前立腺がん死亡者は18人でした。先進国の中でも劇的に少なかった。同じ年のアメリカでは死亡者が14000人です。ですが、日本でもその後に1960年から激増していく。この線グラフからわかるように大腸がん、乳がんが増えていく。では何かが変わったのか。私が気づいたのがそこです。仮に、1960年代に食べていた食事に戻したらどうなるのかと。

2020022211.jpg 昔、食べていたのはミネラルが豊富な食品でした。海藻や小魚等の海産物。オーガニックな農産物でした。いまは、普通にスーパーにはありませんが、昔の野菜はみなオーガニックでしたし、味噌や醤油も手作りでした。それを再現しようとしたのが高取保育園の給食なわけです。

米国では食養生によってがんが減少

2020022210.jpg 皆さん。がんは増えていくと思われていませんか。実はがんが増えているのは日本だけで、イギリスやアメリカでは減っているのです。では、なぜ、減ったのかというと、皮肉なことに、「食養生」を考慮して現代栄養学を変えなければならないと考えた結果なのです。なぜ、米国でがんが減ったのか、食と健康との関係性を特定することはできませんが、ひとつの大きな要因として考えられるのが、1977年のマグバガンレポートです。当時、フォード大統領が研究をして、「生活習慣病は食改善を通じてしか治らない」と結論づけました。

 そして、キーマンが、コリン・キャンベル(注2)です。彼は「大切なのはプラント(植物)ベースとホールフード」と述べている。つまり、丸ごと食べなさいと。米国の栄養学が科学的な研究をした結果、導き出された結論。これはよくよく考えてみれば和食ではないですか。つまり、実は、高取保育園の食事は古いから良いのではなく、世界の最先端で最も病気になりずらい食事であることがだんだんわかってきたわけです。

20200228over.jpg DVD「 (いのちを救う食卓革命)」はアマゾンで買えます。コリン・キャンベルに学ぶ「超医食革命」も米国のトレンドで、植物性食品による学会もあるのですが、それに参加していないのが日本の研究者です。

2020022212.jpg 発達障害の子どもも、出汁、味噌汁を飲ますと改善されたという報告があり、そのお母さんともインタビューをさせてもらいました。ミネラルやビタミンの重要性はノーベル賞を受賞したライナス・ポーリング(注)も指摘している。では、なぜ、有機農業が大事かというと、化学肥料と使わなければ根がこれだけ長く伸びて、ミネラルを多く吸収するからです。

2020022213.jpg これは映画「いただきます2」に登場する保育園でのデータですが、園児たちの病欠日数が5日以上もあったのが、給食を改善すると1日以下と、これぐらい劇的に変わっていく。

 では時間になりましたので、これでトークショーを終わりにしたいと思います。どうも、ありがとうございました。

(注1)札幌市生まれ。札幌医科大学を卒業。アメリカの国立衛生研究所でワクチンの研究をしたが、帰国後は、栃木県那須烏山市に移住。現在は七合診療所の所長として地域医療に従事しながら、2児の父として自然農で米や季節の野菜を育て自給自足でまかなう暮らしをしている。
(注2)コリン・キャンベル(Colin Campbell)はコーネル大学の栄養学の教授。栄養と癌の関連についての専門家で、1983年から1990年にかけて中国で行われた疫学研究「中国プロジェクト」を指揮した。この研究の結果、キャンベルは動物性食品をまったく食べないことが一番安全であると結論した。大学でベジタリアンの栄養学を教えている。
(注3)ライナス・ポーリング(Linus Carl Pauling)は、アメリカの量子化学者、生化学者。20世紀における最も重要な化学者の一人。量子力学を化学に応用し化学結合の本性を記述した業績により1954年にノーベル化学賞を受賞。 1962年、地上核実験に対する反対運動の業績によりノーベル平和賞を受賞。化学賞と平和賞という全く異なる分野に及ぶ唯一の受賞者で後年、大量のビタミンCや他の栄養素を摂取する健康法を提唱した。

【写真】
西福江延長の画像はこのサイトより
コリン・キャンベル教授のフォーク・オーバー・ナイブズの画像はこのサイトより
posted by 情報屋 at 06:00| Comment(0) | 有機学校給食 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月01日

オーガニック映画「いただきます2」

2020年1月31日吉祥寺

オーガニック給食を実現したい

itadakimasu2.jpgオオタ この映画では土日にトークイベントをやっているですが、実は今日が一番嬉しい。と言うのは、いすみ市役所の鮫田晋さんに来てもらえたから。僕は「オーガニック給食」を東京でも実現したい。と言うのは、僕自身が体調を崩したけれども、食べ物を変えたことで、健康になった経験があるので。それが、映画「いただきます」の今回の2作目につながったと。と言うことで、鮫田さん。背広姿ではないのは初めて見ますね。

鮫田晋 はい。仲間の小畑さんが作ったお米のシャツなので着させてもらいました。

オオタ さて、日本でも山形県の高畠町とか有機農業が盛んなところはあったのですが、いすみ市は、ゼロから出発されたのが凄かったと。そして、もともとはサーファーだったそうですね。良い波乗りができるので千葉県に就職されたと。

鮫田晋 学生の頃からサーヴィンには入り浸っていました。そして、東京でサラリーマンをやっていたのですが、転職をしたわけです。

オオタ どこで有機農業とは出会われたのですか。

Shin-Sameta.jpg鮫田晋 兵庫県豊岡市をモデルとした「コウノトリ・プロジェクト」、環境と農業を配慮した事業が庁内であることは知っていたのですが、僕がいた市役所とは別のセクションだったので詳しくはなかった。それが、突然の辞令で「君がやりなさい」と。

オオタ そして、全くのゼロからわずか4年で、今、市内の11校が全部オーガニックになったと。なぜそれが可能だったのでしょうか。

鮫田晋 なにもなかったことが良かったのではないかと。そして、できた有機米は子どもたちに食べさせるのがいいと地元でもなって。ゼロからやったので、かえって本質的なことができたと思っています。

あえてネガティブな情報は外し、ポジティブを打ち出して作られた映画

オオタ さて、僕の映画ではあえて「ネガティブな状況が入らないように作ったのですが、日本は世界でも農薬の使用量がワースト3。その割りを食っているのが子どもたちです。そして、具体的な解決方法はあるわけですが、農家が有機農業へと変わるのはまだまだリスキーであると。そして、学校給食のように安定して納品できる先があれば、オーガーニックをやりたいという人もいる。そして、行政の中にも鮫田さんのようなスーパー公務員がいればいいのだけれども、一方で、僕ら消費者も「いい給食を食べたい」と口に出すことがいいのではないかと。

鮫田晋 有機米プロジェクトをやったわけですけれども、これも地元では知られていなかった。それが、学校給食をやったら「どこで作っているのですか」とどんどん追い風になって全量有機を目指すことになったと。

オオタ そういう行政の方に対して、援護射撃があることが大事だということですね。

鮫田晋 どうしても行政は反対するわけです。

オオタ けれども、有機給食については反対する理由がどこにもないと。

鮫田晋 そう、どうすればできるかのやり方を議論すればいいわけです。

ミネラルが減っている時代だからこそオーガニック

kunimitu-mika.jpgオオタ 今日、この会場には栄養の専門家である国光美佳さんが来られています。実は、栄養があると思っているのだけども、食べ物からミネラルがどんどん減っているということを警鐘されています。本日、映画を見終わった感想をいただければ。

国光 感動してしまいました。こういう食があたり前になって食べて欲しいなと。菌ちゃんに守られていたのだと。菌ちゃんがいっぱいいれば、食害の問題も解決されるのではないかと思います。微生物の力、野菜の力が大事なのですが、ミネラルが減っている。そこで、特にオーガニックにしていく活動をしているのですが、是非ともこの映画を広げてもらいたい。なぜオーガニックなのかが非常にわかりやすく、心に響く映像をありがとうございます。

韓国もフランスも有機になっていく中、日本だけがガラパゴス

2020013101s.jpgオオタ 国光美佳さんのお名前でネットで検索していただければヒットしてさらに情報が得られると思いますので是非。さて、韓国はいまネガティブな要素ばかりが叩かれていますが、実はソウルも1400ある学校が有機でかつ無料になると。フランスもそうであって、良いものだからこそ子どもたちに食べさせたいという動きが世界中で起きているのに日本だけがガラバゴスのようになっている。

鮫田晋 転換することは難しいと皆思っていますが、できるんです。

オオタ 今日は、世田谷区や三鷹市からも会場に来ておられますが、この会場には行政の方もいらっしゃるのだろうと。

鮫田晋 実はいすみの有機はゼロから考えてことではなくて、全国では過去にやっている自治体があるのです。私が書いた本ではないですが今治市の安井孝さんという、ものすごく頑張った方がおられて、この方の本は擦り切れるくらい読み込みました。すでにやっている事例があることがいいのです。

オオタ あそこではできているのに、なぜうちではやってくれないのかと。やればできるではないかと。ソウルだと他国で前例がないとされてしまいますが、日本の国内でも今治市のように事例があるわけですよね。なぜ、広まらないのですかね。

鮫田晋 お金がない。暇がない。そして、私も行政マンなので身内の悪口は言いたくはないのですがどうしてもできない理由ばかりを言ってしまうと。そうならない関係を市民たちと作っていきたい。

いすみ市が転換して良かったことは

オオタ 鮫田さんが言われていたように、いいことについての目線で。で、いすみ市では、こんなにいいことがあったと短く言っていただけますか。

鮫田晋 まず農家が喜びますね。今の農家はプライドを持ってできないのです。そこで、なかなか次世代に経営が移譲できない。ですが、有機によってスポットが当たる。となれば、主役じゃないですか。そこで底力が出てくると。

オオタ 農家でも農薬や化学肥料が悪いことは十分にご存知ですが、有機では効率的にできないと思われている。

鮫田晋 そして、自然が蘇ってきている。環境的にも持続的です。それがわかっている。また、地域社会にも地元の子どもたちにも認められ、希望の源になっている。そういう社会づくりをやっている。食べる人の未来、つまり、農業を支えているのが食べる人なのです。

農協を攻撃するのは短絡的

オオタ オーガニックと言うとJAは化学肥料と農薬を売っているわけで、オーガニックVS農協という図式になるわけですがそれでは縁が生まれない。そこでエンドロールで、最後にはわざと参加してもらった農協の名前も出しているわけです。JAだから農薬を売らなければいけないではなくて、農協でも有機をやっているところもある。そして、どうしたら日本の農産物を海外にもアピールできるのか。イメージだけの安全・安心だけでなく、具体的な選択肢があった方がいいと。

鮫田晋 うちも学校給食の食材は農協さんでしっかり売っていますからね。農協の組織全体で有機農業を推進することは難しいですが、やることは大変ではない。

有機米はブランド化にもつながった

オオタ 逆にブランド化にもつながっているわけですよね。是非、いすみっ子のお話を。

鮫田晋 今、いろんな人に知ってもらうことになったのも学校給食のおかげなんです。ブランド化作りに携わってくれた方もいるのだけれども、「いすみっこ」でこれを売っていこうよと。つまり、有機給食で評価されて、お米も知っていただけることになっていると。

オオタ JAいすみっこだと。

鮫田 JAは地域を支える大事な存在でありますから。

オオタ 農協もオーガニックをやることでアピールしていけばいいのですがね。鮫田 つながれるところでつながっていけばいいのです。それがないと、慣行VS有機に分けて戦っていくことになってしまう。

女性の感情的な生の声を聞けば男性も動く

オオタ 本日はあと5分ぐらいしかないのですが、メダカの学校の中村陽子さんも来られています。武蔵野でNPOをされている。

中村陽子 武蔵野市は有機給食をやっています。杉並区とか目黒区とか足立区とか三鷹市とか。できないことはないと。熱心な人がうちにはいます。議員さんでも会ったりして話すと。そして、全員が母親の味方ですと。この世の中には母親の敵はいないので、それを声を出すことがいいので。ということで、私はサポート婆に徹しようと。そして議員さんのところに一緒に行こうと。お母さんたちの切実な言葉とかを聞いていると涙が出てくる。が男性はどうしてもご飯を作ったり子育てをしていないのでわからない。けれども、そうして、初めて女性の声を聞いて、不安で自分を責めているお母さんがいることがわかる。ですから、どうぞ、みなさん自信を持たれてうちにお越しくださいと。会場の方でもいらっしゃって。そして、ご自分の住まれているところで、皆さんなさればいいと。

鮫田晋 本当に自信を持っていいです。議員とかも反対もない。逆に、子どもの命を守りたくないとは言えない。反対しづらい。子どもの未来に反対していますなんて言えれば、その議員の人格が疑われてしまうと。

映像の力〜フランスも議員が映画を見て政策が転換

オオタ パンフレットには本の情報も入っていますし、理解を深めたい人は買っていただければサイン会もしていますので。さて、時間もないのですが、今日は会場に印鑰智也さんがおみえになられているので、NPOとして、映画の翻訳とかもされているので、カメラ目線で映画の感想を一言だけアドバイスを。

印鑰智也 アドイバイスどころでなく、一人でも多くの人に見てもらうことが大事な映画だと思いました。僕は真反対でいかに危ないかばかりをやっているので。ですが、大事なアプローチとしてこうしたポジティブなイメージだと先へいけますし、僕はネガティブなことばかりなので。それを背景に前に行こうと前にもいかしてもらえるので、是非、学校とか教育委員会とか議会とかでも見てもらいたい映画です。実は、中国も共産党のトップがこうした映画を見ている。フランス議会も議員が見ている。この映画ではないですが、同じ内容のをです。映像の力というのは本当に強い。是非、皆さんに広げてもらいたい映画です。

【画像】
映画「いただきます」の画像はこのサイトより
鮫田晋主査の画像はこのサイトより
国光美佳さんの画像はこのサイトより

編集後記

2020013102s.jpg「作物と健康は直結しています。キーワードは発酵」「健康なお腹と畑は、微生物でつながっていました」

 こんな刺激的なキーフレーズから始まるオオタヴィン監督の「いただきます2」が、1月24日からUPLINK吉祥寺で公開上映されている。公開記念として、映画上映後には、木村秋則、辻信一氏等、著名人とオオタヴィン監督とのトークショーもセットになっている。

 とりわけ、気になったのは、日本で最初にオーガニック給食を実現した千葉県いすみ市のキーマン、鮫田晋氏も登場していることだ。そこで、映画を鑑賞すると同時にトークショーをきいた。もちろん、会場での撮影は録音はオミットだ。したがって、以下は、現場で書き置きしたメモから編集子が再現してみたものだ。したがって、現実の対話とは微妙に違う。とはいえ、本質的な部分はかなり再現できたのではないかと思っている。オーガニックの推進、有機学校給食の実現の何かの参考になれば幸いである。
(2020年2月1日投稿)
posted by 情報屋 at 22:39| Comment(0) | 有機学校給食 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月20日

有機農業でまちおこし④~スコットランドの地消地産

地元フードに着目せよ

2019092003S.jpg いま、産業がグローバル化することで、エキゾチックな食品が輸出入され、ごく限られた大企業が、画一的な農産物を通年供給するようになってきている。以前には足げよく地元の食品店に歩いてでかけていたのとは違って、いま、多くの消費者は、スーパーに週にまとめ買いに自動車でいく。結果として、地元の自営の食品店が減少し、地元のフード経済が弱体化している。

 出荷段階での長期的な農産物価格の下落は、多くの農業の生存力を脅かすのだが、これとあいまって、雇用機会、スキル、社会的なきずなも失われている。

 この食料生産の工業化と商品化は、スコットランドの食文化にもかなりのインパクトを与えている。スコットランドの多くの人たちは、食べ物とのつながりを失い、自分たちが口にする食べものやその成分がどこでどのように生産されているのかを知らない。加工食品が増えたことは、栄養の低下や食と関連した有病率の増加とも関係している。

Olivier-de-Schutter.jpg 2014年の栄養会議において、元国連の食料への権利の特別報告者、オリビエ・ドゥ・シュテールは、持続可能な食経済を構築するために講じられる3つの重点事項を示唆している。

 グローバルな北側の人々のライフスタイルとグローバルな南側で必要とされる改革とが相互依存関係にあることに対処する必要がある。現在の北側の食料の輸出入のあり方によって、南側の改革が非常に難しくなっている。例えば、肉の過剰消費は、家畜飼料の大量輸入に依存している。金持ちの贅沢な食事は、貧しい人々の基本的なニーズと競合する。

 地元のフードシステムを再構築し、地元の消費者と生産者とをつなげ、農村を都市とをつなぐ必要がある。グローバルなサプライチェーンを改善するために60年以上も多くのことがなされてきたが、それは地元の供給チェーンではなされなかった。消費者がより健康的で、より新鮮で、より加工されない食品を手に入れることができることとあわせ、小規模農家を励まし、地元市場へのアクセスを改善する必要がある。

 フードシステムを民主化する必要もある。食と農業に関する意思決定に対する大企業の支配を止めさせるには、アカウンタビリティや透明性が必要である。この一例が、北米の多くの自治体、そして、最近ではヨーロッパやグラスゴーとエジンバラを含めて英国の多くの都市における「食の未来会議」の設立である。

大手スーパーが誘致されるほど地元雇用が失われる

 地元フードは地元コミュニティにとってどれだけのメリットがあるのだろうか。その広範囲な研究を実施しているのが、イングランド農村保護運動(CPRE)だ。例えば、CPREは、英国の19カ所で地元フードのネットワークをマップ化し、そのメリットや課題、人々の暮らしへの影響を調査したのだが、そこから見出されたことは、どこであれ、地元フードが地元経済を維持するうえで欠かせないということだった。

 いくつかの例をあげてみよう。例えば、小さな自営業の地元の食品店の取引毎に創出される仕事の費用対効果はスーパーの3倍ある。これは、地元の食品店が全国スーパーチェーンの3倍もの仕事を創出できることを意味する。

 逆に93もの町で大手スーパーが開店後に雇用に対してどのような影響があったかの研究からは、4年間で、スーパー毎に10マイル圏内で276もの仕事が失われたことがわかった。これは、全国では2万5000人分もの雇用喪失に匹敵する。

 地域の農場当たりの平均雇用者は2.3人だが、地元フード経済と関係する生産者では平均3.4人も常勤で雇用している。

地元商店は大手スーパーの10倍も地域経済に貢献している

 大手チェーンは、スケールメリットを満たすため、全国の供給先と契約することが多い。このため、地元には賃金程度しか落ちない。これに対して、地元企業に落とされたマネーは、賃金や地元の供給先だけでなく、会計士、印刷業、保険、流通、掃除等のサービスにも再びマネーが費やされる傾向がある。つまり、マネーが循環する。

 ニュー・エコノミックス財団も、地元出費の地域経済に対する効果を広範に研究している。財団の研究によれば、地元食材に落とした10ポンドは地元で数回使われ、地元経済に25ポンドの価値を生み出している。これをエコノミストは「乗数効果(multiplier effect)」と呼ぶ。一方、スーパーマーケットに費やされる10ポンドは地元地域に2.40ポンドしかつながらない。これは、地元で生産された食材が地元小売店で買われるとき、遠方の生産者が生産した食材をスーパーで購入した場合に比べて、同じ食材でも地元経済にほぼ10倍の価値があることを意味する。

 財団が提案する80/20のルールは広く受け入れられている。これは、全国チェーン店で費やすマネーの80%は直ちに地元経済から去っていくが、地元ビジネスではたった20%しか去らず、80%が地元経済内を循環するというものだ。

 財団の研究『マネーの旅』は、地元食材に支出することが乗数効果で測定される地元経済をどれほど活性化させるのかの多くの事例をあげている。

・有機ボックススキーム(提携)の収入は、スーパーよりも2倍多くを地元経済に生み出している
・現地スタッフを雇う地元の農場Cusgarne Organicsは、1ポンド毎に2ポンドを地元経済に産み出している)
・プリマス(Plymouth)では、学校給食予算の半額、38万4000ポンドが『旬の地場農産物』の購入で地元で費やされたが120万ポンドを生み出した。つまり1ポンド当たり3.04の乗数である。
・ノッティンガム(Nottingham)では、地元食材用の学校給食予算年165万ポンドは500万ポンド以上の価値を生み出している。1ポンド当たりの社会的経済的環境的価値は3.11ポンドである。
・スコットランドのイースト・エアシャー(East Ayrshire)では、食材の公共調達がほぼ6倍の社会的費用対効果を示した。土壌協会を通じたフード・フォー・ライフ・プログラムを介した最近の研究からもかなりの公益が示されている。

輸出から地元へ~スコットランド政府の意志転換

UKmap.jpg スコットランドは長年、ニッチや輸出品の生産で成功してきた。けれども、まさに自給に目を向ける時代がきた。スコットランドの組織や政治家も、最近、ますます地元食材に多くのメリットがあることを認めてきている。その時間的変化を抑えておこう。まず、2004年のリポート『Feeding the Interest』ではスコットランド消費委員会は、「このセクターがもたらす幅広い長期的なメリットから、それを発展させる機会は明らかだ」とし、こう述べた。

「食べ物での経済的・社会的・健康と環境政策を統合することで地元のフードセクターを支援できる。農業、企業、コミュニティ、環境、輸送と関連した機関は、ベストな効果のために協力する必要がある。現在の農業政策の主流は食料輸出を支援するものだが、地元のマーケティングをさらに支援することもできる。インセンティブと補助金は、とりわけ、農場レベルでは、主に慣行での食料生産に向けられているが、地元フード経済をさらに重視できる」

 2006年には食品サプライチェーンの調査がなされ、スコットランド議会の環境農村開発委員会は「地元のフード経済が発展すれば巨大な可能性がもたらされる。可能な限り支援されなければならない」と結論づけた。

 2009年、スコットランド政府は、最初の「全国飲食政策」、『成功のためのレシピ(Recipe for Success)』を発表する。これは、正しい方向に向けた第一歩であったが、まだ、輸出市場を伸ばし、大規模な商品生産の効率性を高め、プレミアム製品を高付加価値化することが柱となっていた。

 2014年6月、スコットランド政府は、将来的な食料政策として、新たな提案『良い食べ物の国になろう』を立ち上げる。これは、農村発展のみならず、食と健康、教育、環境、観光との関連性を認めた。そして、以前の輸出食料生産重視とのバランスを図り、地元向けに食料を生産することが大きく強調されている。

 スコットランド政府は、地元食材を促進することが「暮らしを豊かにし、地元経済の成長を進め、私たちと食べ物とを再びつなげる助けとなる」ことを認め、地元食材の経済を強化し、サプライチェーンを短くすることを、継続する経済成長を担保するために講じられる必要があるステップのひとつとしてあげている。

地元食材の多彩なメリット

2019092002S.jpg 地元フードのネットワークのメリットはさらにある。2014年11月に、Nourishが組織化したセミナーでは、地元のフードシステムのメリットを確認した。

 多くのマネーが循環し雇用が増えれば、新たなスキルを習得する機会も増える。新たな価値が生まれることで新たな市場が開かれる可能性もある。
有機農業等、環境にやさしい農業に転換することで農場での環境パフォーマンスが改善される
地元フードに供給する小規模農民は農村景観を気づかうことが多い
『フード・マイル』が減り、二酸化炭素の排出量が削減される
仲介者が除外されることで地元のフードビジネスの高いマージンが保持される短いサプライチェーンを介して廃棄物が削減される
強力なフードシステムを構築することを介して食料保障が高まる
より未加工の食べ物を介して、心身の健康が増進される
消費者より新鮮で質が高く汚染が少ない食材を手に入れられる
特徴的な町や村の地元の特性、食文化や地元のアイデンティティが保持される
ファーマーズマーケットや教育計画を介してコミュニティを農村とつなぐ。結果として、消費者は『畑から食卓まで』の食べ物の旅についての理解が深まる

理念と現実とのズレを克服するために

2019092001S.jpg つまり、フードシステムを地元化することは、コミュニティを再生させる。のみならず、より持続可能な生産を促進することで、自然環境を保護し、観光も強化し、脆弱な僻地でも生き残れる地元経済を維持し、食文化やスキルも再生させる。地元のフードセクターには、スコットランドをより公正でより豊かで、よりスマートで、より健全で、より緑な国にする上で巨大な役割がある。フードセクターが、環境を保護し、我々の身内を貧困から救い出すことにつながることを再考する必要がある。

 そして、地元食材を重視する政策は増えている。メディアも地元食材を高く評価している。にもかかわらず、レトリックと現実の市場との間にはまだまだギャップがある。

 例えば、地元のフードセクターの規模はスコットランドでの食品売上高の1~2%と評価されているが、これは業界の専門家による最高の推測値であって、まだ地元のフードセクターについて利用できるデータはほとんどない。また、地元の食材が持つ社会的・経済的・エコロジー的な価値への一般の認識不足がかなりある。このため、地元食材が一般に幅広く支持されているにもかかわらず、それが実際の購入決定につながっていない。

 スコットランド農業組織協会も、マーケティング、流通、生産増のための革新的で実際的な解決策が必要だと述べている。地元のフード経済をダイナミックに立て直すためには、さらに多くの協調したアクションが必要である。

 2014年11月、Nourishは、マーガレット女王大学でセミナーを開催し、地元のフード経済によって生み出される公益とあわせて、地元のフード経済を拡大するうえでの課題を議論した。

 第一は、短いフードチェーンを強化するための運営グループ(Operational Group)の設立である。実際、多くの参加者が短いサプライチェーンの創出を求めた。短いフードチェーンの強化は『よい食べ物の国になろう』という目標を達成するうえで鍵となる。

 第二に、対面やオンラインで、観光旅行会社のバイヤーや企業、公共調達の相手に対して、地元の食材の旬等の特性の認識を高めなければならない。グループは、地元食材の市場を広げ深めることに力を注がなければならない。同時に、地元食材の経済的社会的・環境的なメリットを共有しなければならない。したがって、マーケティング・販売キャンペーンは、とりわけ、観光客や公共調達機関に対して、地元食材のより幅広いメリットをPRする必要がある。

 第三に、消費者へのより良い教育やかかわりという新たなモデルを介して、生産者と消費者との間で、金銭的なリスクを共有し、相互に有益な関係を強化する必要がある。

 第四に、政府との協力関係が地元食の持続可能な成長や発展には欠かせない。公共調達は地元購入によって乗数効果を生み出す。また、スキルやリーダーシップの開発に投資し、適切な規模での生産、加工、地元食材の販売を可能とするうえで必要なインフラを整備することも必要であろう。

 フードセクターにおける公的資金の支出は、まさに市民のために利益を供給する人たちに向けられる必要があるのである。

編集後記

 地元フードは距離だけではない。それは、生産者と消費者との社会的な緊密さや信頼も意味している。地元フードは単なる商品ではなく、「関係性」であり、地元で食べ物が売買されるやり方では、食べ物の意味や物語が保存される。

 スコットランドのリポートにあった一文である。これはまことに意義深い。すべてが八方塞がりの日本の状況においては、まず、学校給食への公共調達から地元経済を取り戻すことが第一歩だと思っている。そして、そこには、地元経済の乗数効果がある。確実に雇用が創出されるのだ。とはいえ、それを見える化するためには具体的な数値が必要であろう。とはいえ、日本にはまだそうしたデータがない。イギリスの数値を使わなければならないのはまことに悲しい。ニュー・エコノミックス財団に匹敵する研究をどこかがすべきだと思ったりもしている。

【用語】
栄養会議(Nourish conference)
食の未来会議(local food policy councils)
ニュー・エコノミックス財団(NEF= The New Economics Foundation)
スコットランド消費委員会(Scottish Consumer Council)
イングランド農村保護運動(CPRE=The Campaign to Protect Rural England)
全国飲食政策(National Food and Drink policy)
良い食べ物の国になろう(Becoming a Good Food Nation)
ボックススキーム(organic box schemes)
スコットランド農業組織協会(SAOS=The Scottish Agricultural Organisation Society)
マーガレット女王大学(Queen Margaret University)
公共調達(public procurement bodies)

【人名・画像】
スコットランドの画像はこのサイトより
オリビエ・ドゥ・シュテール(Olivier de Schutter)博士の画像はこのサイトより
他の画像は文献より

【出典】
1) Nourish Scotland, Growing the Local Food Economy in Scotland,2015.
posted by 情報屋 at 07:00| Comment(0) | 有機学校給食 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする