「農のあり方を考える」【素人農業成功二事例】~6次産業化と農福連携
中村小太郎氏(自然農園なかむら園主)は、自然農での稲作に成功するも、全く売れないという挫折に遭ったが、ネット販売等で活路を切り開いて事業を大きく発展させた。
伊藤文弥氏(NPO法人つくばアグリチャレンジ代表理事)は、地域の耕地放棄地を使っての有機栽培やレストラン等を営み、100人以上の障害者が従事し、地域との連携を深めて、障がいのある人もそうでない人も“ごきげん”になれる社会を目指して活動している。
日時:2020年1月15日(水)18:00~20:30
会場:港区神明いきいきプラザ 4階集会室A
【第1部 講演】
講師:中村小太郎氏 自然農園なかむら 園主
伊藤文弥氏 NPO法人つくばアグリチャレンジ 代表理事
【第2部 質疑応答・議論】
● 主催:NPO法人農都会議 食・農・環境グループ
● NPO法人 農都会議
農業3.0、売り込まないで売る物語ブランディング
クモ膜下出血で生き方を考え直す
自己紹介をすると18歳で父親がすい臓がんで他界し、金がないために学生起業家になった。付属高校に入っていたため大学に行ったが、学費も弟の入学金も学生バイトで稼いだ。学生起業家の後、リクルートに入り、毎日忘年会のような生活だった。リクルートのOBはワーカーホリックである。それが、クモ膜下出血で倒れる。右眼の奥で表面から手術ができない。鼠蹊部からカテーテルを入れ手術時間が5時間。そこで、ベットで考えたのはもうこんな生き方はやめよう。自分の食を考えないと死んでしまうということだった。
アルバイト雑誌フロムAを担当したりしたが、ビジネスマン時代に学んだひとつが、小さく成功し続ける。思いついたら圃場の一部でやってみることだ。最初のかぶき者は織田信長ではないかと思う。
マーケィングの名言に「顧客の顧客に聞け」という言葉がある。お母さんの顧客は子どもなので、子どもに聞けとわけだ。
マーケティングの観点からいうと、品質のこだわりだけでは突破できないので、ブランディングをやる。例えば、道の駅ではおばあちゃんが底値で売ってしまう。値下げ競争は自分の価値も引き下げることになってしまう。
アマゾンで売る
さて、アマゾンでの米の最高値は2000円。相場は500~600円である。そこで960円で売ってみた。オーガニックなライフスタイルを提案する日本最大級のマクロビオティックをベースとしたWEBマガジン「IN YOU」というオーガニックサイトで4回記事を書いたのもコメを売るためだ。
そして、マーケティグで顧客に聞いたのだが、EUはオーガニックサイトでマクロビだが、玄米である。そして、籾に残留農薬がある。そこで無農薬だと安心だと。また、炊飯器に発芽玄米機能がついているのだが、それでギャバが20倍になる。けれども、天日干しをしないと発芽しない。籾は5年経っても出芽率が7割だ。
頭で買うのか、心で買うのか物語性
木村秋則(1949年〜)さんのリンゴは、自殺するための森から帰って来たからこそ、物語性がある。感情が動いている。これがブランディングの力である。
例えば、嫁の夢であるパンの店「BORDER」パンを離乳にしたいということで最小5坪で年間1,200万円の売り上げとなった。子どもは金がかかる日大芸術学部に進学したのだが、このパン屋があったからこそ進学させることができた。
また、アマゾンプライムを得ると、検索の1万位の順位が5位とかになる。甘みが違う。冷めてもおいしい。口コミで3カ月かからず売れてしまった。
ポケマルはさらにすごい。なお「食べる通信」はすごい本である。生柿のウンチクが入ってくる。送料も農家負担だが安い。
ふれあい給食
どうせ売れないのならば寄付しようと思った。教育委員会に持って行ったら地産地消ネタを探していた。そこで、驚かされたのは、塩尻市はエプソンの事業所があってアパートの空室率もない。リッチなのかと思っていたのだが、夏休みが終わるとガリガリに痩せてくる子どもがいる。カロリーを摂取するための貴重なのが、給食なのである。7人に1人が隠れ貧困だという。
そこで、常設の子供食堂をやろうと思っている。もう一つは、ご飯給食革命である。韓国ではほとんど9割型が有機野菜になっている。市が差額を補填している。他の国もどんどん変わっている。スイスも以前は4割であったのが自然農が97%になっている。
塩尻市のまちづくりチャンレンジも採択された。長野県の有機農業推進でも講演をした。長野県は真剣にマッチングサイトを作り始めている。よくできている。さらに、阿部守一(1960年〜)知事がゼロカーボン宣言をしてしまった。SDGs未来都市長野でゼロカーボンを推進しているという。
論文を書いた人が友人なのだが、彼の知恵を借りてオフグリッドのソーラーシェアリング。田んぼで発電もしたい。10月の頭に刈り取るが、4カ月は田んぼは使われていない。この間に売電してもいいのではないか。最後は、ゲーテの言葉で終わりたい。
「大胆な行いは、天才の力と魔力をもそなえ持つ。さあ、はじめよう」
GOKIGEN FARMの取り組み事例 伊藤文弥氏
学生時代に農福に出会う
これは、自分の成人式の時の写真だ。インターンの時で髪を短く切っている。実は、五十嵐さんからまず怒られた。ポケットに手を突っ込んでいたから「手を出せ」と。そして、ネックレスもつけるな、眉毛も剃るなと。この五十嵐氏が怖かった。これで成長ができたかもしれない。
さて、この五十嵐氏が筑波大学を卒業するときに「文弥、やらないか」と誘ってくれた。五十嵐と一緒にやったのは三人で一人が千葉大。もう一人は中国の院生だった。彼がパソコンの使い方も教えてくれたし、インターンの半年目でリサーチも頼まれた。最初に振られたのが発達障害の子どもが学校でいじめられているケースを調べることだった。
実は、この写真は僕の妹だ(ガングロ)。これが僕の家族の日常の風景だった。中学3年の時が一番酷く、親も胃に穴があくほどだった。算数の99もできない学習障害だ。トム・クルーズも台本が読めないという。社会も国語もできない。で、学校に行かなければ、非行になるか、引きこもるかだ。つまり、五十嵐さんから「調べろ」と言われたことが自分の家で起きていた。
で、僕からすると、政治家はかっこいい。そこで、五十嵐さんに「なぜ政治家になりたかったのか」と聞いたところ、五十嵐さんが「ふざけるなと。そんな奴にはなってはいけないと」。つまり、他人事であった。同時に五十嵐氏は農業にも関心を持っていた。担い手がいないと。片方で障害の人もいる。その二つをつなげるとどういうフキームでできるのかと。それを五十嵐氏が思いついた。それが大学三年の夏のことだ。そして、知れば知るほど障害者が多くいる。僕は理系で大学院に進む人が多かったのだが、そういう事業ができればいいと準備を進めた。介護のアルバイトをしたり、NPO法人で福祉サービスを始めた。始めた時には何もわかっていなかったし、本で読んだり、ちょっと人の話を聞いてこんなスキームでできると思ったのだが、今はどうなっているのか。例えば、福祉団体の数がすごく増えている。したがって、そういうことで言えば現在は、仕事は過剰である。地域差もあるが、現在、8農家に人を派遣して手伝いをさせてもらっているが、そこの農家はかなりうまくいっている。農地を規模拡大し、従業員が50人いるとかで、実際の現場は、本で読んだり統計で調べたデータとはだいぶ違っている。また、一つ大切にしなければならないことは、私は福祉に力を入れているのだが、障害者をひとくくりにしてはいけないということだ。同じ症状であってもそれは別人である。例えば、1級、2級、3級の障害者がいるが、どの障害の人にどんな場所を提供できればいいのかは人によって違う。
とはいえ、日本には障害者が770万人いるが、それでも雇用されているのは47万人である。そして、福祉サービスに求められるのは、「軽度」ではなく「中度」から「重度」の障害者であろう。そういう人たちが必要としているのは何か。障害者が地域で「ご機嫌」に暮らす上で必要なことは何であろうか。
ということで、私は2011年から事業を始めている。レストランもやっている。農場も野菜と養鶏がある。
地元の人に届くためご機嫌ファームでいい野菜をつくっている。平飼いと養鶏だが、いいものが食べられる。そういう事業ができることが障害ができることにつながっていく。
農福連携が面白いのは、地域とのつながりができることである。保育園児も高齢者もやってくる。3歳から100歳までが一緒に楽しめるものが農業以外にあるだろうか。誰もが必要としている。ということで、野菜を定期購入して配達し、400世帯に出している。
また、福祉事業といって直接的に、かつ、定期的に届けられる商品は意外にない。福祉事業ではコースターやクッキーが多いが、それらは定期的に必要とされてはいない。また、障害者と一緒に時間を過ごすことがとても大事であることからイベントもやっている。言わないだけで、知的障害者はともかく、障害者がいると怖いという偏見がある。実は障害者は身近にいるのである。そこで、彼らと一緒に生きていくために同じ時間を農業を介してすごしている。
我々の行動指針は6つある。
第一が地域で一番愛される農場になろう。実は今350世帯に減っている。就労支援をしているために毎日仕事がないといけない。年間で作業量をならしたい。毎日何かが収穫ができる状態にもっていきたい。
また、大事にしているのは指導してくれる先生である。福祉サービスといってもプロ以上のものを作らないといけない。そこで、久松達央(1970
年〜)さんを師匠にしている。最初に教えてもらったのは事業を始めて2年目の終わりである。
毎回方針を変えた。最初にホウレンソウをやって駄目で、次に少量多品目を西洋野菜でやったが駄目で、どうしたら売れるかを考え、契約栽培もしてみた。こうした中で何が起きたかというと、障害を置き去りにして社員が納品で追われた。そして、夏が終わったときに疲れ果てて半分が止めた。僕自身は鬱病になって通院することになった。
そこで、どんな野菜を作って誰に作りたいのかを久松さんに指導を受けてからやっと売れるようになった。
また、どうしても冬期には野菜が少なくなる。夏は果菜類が毎日できる。また、草も出てくる。そして、秋冬の野菜も8月から準備が始まる。人参のための太陽熱マルチも7月に作業をする。一方、冬は仕事がないのでニンジンジュースを作ったり、ハウスで作物を作っている。
8農家でパッキングの作業をしている。時給400円でやっている。また、週末の菜園事業もやっている。イベントをやれば300人、400人が来る。会員は400世帯弱だが、家族の構成が多いのでその家族が参加する。とにかく、一緒に時間を過ごすことが大事でそれによって障害者に対する偏見が消えていく。
最初は友達に売ろうと思ったが、買ってくれるのは1回までである。男は料理をしないからだ。そして、それを必要としている人に出さないと買ってくれない。配達にも段取りがある。さて、この写真は、藤枝市で無農薬米を作っている人である。赤裸々にこう書かれている。「米は状況が違うと管理の仕方が違う」と。例えば、ここにはジャンボタニシがいるが、つくばのここは違う。環境によってみな違う。米はいま3年目だが駄目で、僕らは5俵しかとれていない。
また放置された竹林がある。これも竹細工で活用している。また、竹を炭にして養鶏場に入れている。炭をくん炭にしているが、アルカリ性になるので病原菌が広がらない。
普通の卵は18円だが、平飼い卵は50円で売らないと採算があわない。一日300個だがなんとかはけるようになってきた。
そして、農業の師匠だが、何も隠さないでかなり先生は教えてくれる。指導料として金を払っているが、それがありがたい。
2018年1月からレストランを始めたし、ファーマーズマーケットもやっている。そして、暮らす場所をどう使っていくかで、グループホームもやっている。13人が暮らしている。また、クラウドファンでイングもやってみた。これをすることで、事業内容が地域の応援をしてもらえるのかが確認できる。33万円をかけてウッドデッキにし、食事券を出している。こうした事業を半年間で三つをやった。
障害のある人は工場の方が働きやすい。農業は効率が悪いが、ベビーリーフを詰める仕事とかは早い。つまり、障害がある人にやりやすいのは判断する回数が少ないことである。こうしたことで、作業性は高くないが効率化ができるかも考えている。また、家庭菜園に書いてやることをしてもらおうとしてもダメである。とはいえ、プロの農家のやり方を知ることで、障害がある人の作業性はあがる。
また、一緒に活動している団体を増やすことが大事である。よく、NPOは利益を出すとダメだと言われているが、現実には収益をあげないとやっていけない。そして、売り上げをあげるよりは関わる人をどう作るのかが大事である。そして、今年はワインづくりも始める。また、18歳以上の障害者だが、子どもへの学習支援も始めている。リスク・コンプライアンスをしている。こうしたミッションに共感してくれることが嬉しい。
会場質問 うまくいかなかったことは。
伊藤文弥氏 私は9年目で鬱病になった。うまくいかないことが常にある。大きなトラブルは重なる。常に上下しながら前に進んでいる。あるときにはコアの社員が退職した。そこで、悩んだのだが、こうした中で、一人でやっていたのだが初めて社員に助けられた。実は、それまで誰も信頼していなかった。それが「こんなに信頼される自分がいる」ということで自分が認められて楽しくなった。実は、夢中で仕事をしていて常に不安な状態でやっていた。結果を出さないと次がないと7年もやってきた。最初の頃は成長できている実感があったが、かなり消耗しながらやっていた。それが、楽しく働けるようになった。
大木晶氏(明治学院大学名誉教授) 口コミで4軒から始めたが、いま50軒になっている。昨日も学生を相手にカウンセリングをやっている。農業はとても大事で在来種が減っていることに危機感を抱いている。近々、長野県に在来種を求めに行く。確かにF1で作った方が生産性があがる。また、各地域地域で育てられてきたのが在来種だから、長野のものを千葉に持っていってもそのままではうまくゆかない。実験で数年かけてやっていく。
野菜を買っていく方は小さなお子さんたちだが、どうやったら健康な野菜を彼らに届けられるかが大事だ。ということで、ボランティアで手伝いをしている。
司会 明治学院大学でマクロ的な研究をされてきたが、いま千葉で家族農業も支援されている。両方もなされているということで僕は感動した。では、会場からの質問に答えていただく。
会場からの質問用紙での質問に答えて
中村小太郎 いただいた質問は大きく5つのカテゴリーにわけられる。順番に答えていきたい。
第一は、「『給食に有機を使って欲しい』という声が増えているのに、現実に盛りあがらないのはなぜか」というご質問。これは、全国給食会の既得権益があるからである。教育委員会から一元管理を任されているためドル箱である。彼らの既得権益を骨抜きにしないと駄目である。私は塩尻の地元の吉田小学校に1日寄付をした。「うちを通せ」と反発があったが、こうした実践をしたことで既得権益に穴を空けられた。
第二は「農薬を日本で一番使っているのはなぜか」である。これは、私は消費者側に問題があると思っている。オーガニックなライフスタイルを提案する日本最大級のマクロビオティックをベースとしたWEBマガジン「IN YOU」でも記事を書いたのだが、「○○がおいてありますか」という「聞くだけ革命」をやっていただきたい。消費者からの問合せがあれば、仕入れる方はそうしたニーズがあると考えざるをえなくなっていく。
第三は農業へのやり方への質問である。これは「プロに聞け」である。それしかない。私は稲葉光國さんの弟子である矢口一成氏と出会った。その駆け込み弟子である。土作りの質問だが、私は自然農であるため、緑肥、レンゲをすき込むがそれ以外には入れていない。
第四は「次の代に引き継ぐ準備は」である。これは大事なご質問で、NPOをたちあげるのも私個人ではなく、組織でやりたいと思っているからである。
第五は「物語の作り方は?」だが、お配りしたレジュメにあるように「弱みを売りなさい」を是非買ってお読みいただきたい。そこにはワークも載っている。これをやれば、自分のミッションが明確になってくる。
自分が好きなことをやらずに義務感でやっているとストレスが高まる
伊藤文弥 第一のご質問は、それぞれの事業の規模。野菜が7ha、コメが3.5ha。これはもっと広げたいと思っている。そして、鶏は700羽が飼育できる施設があるが、現在、飼育しているのは500羽である。そして、レストランは40席。
第二のご質問は、「ガングロであった妹さんはどうしているか」だが、彼女は、高校1年で定時制を卒業した後、福祉事業をしている。私の母親が老人のデイケアサービスをしていたため、僕が大学に行っていたことから妹の方が先に社会人となった。そして、市立病院がやっている、300人のホームのひとつのだが、40歳とかしかいない中で、23歳ですでにトップとなっている。医療法人であることから、僕を講師として呼んでくれたりして頑張っている。
第三のご質問は「事業を止めたい時に奮い立たせてくれたのは何か」だが、最初は立ち上げの準備をしていて楽しかった。しかし、社員が止めていくと孤独となり、鬱病となり、通院して漢方薬を飲みながらやっていた。では、それをどうやって乗り越えたのかというと、色々なことを試してみた。運動をしたり、食事を良くしたらいいのではないかとか。サウナにいってみたり、フルマラソンをしたり鍼灸をやったりしてみた。
ちょっとしたことでも胸を締め付けられる苦しかったからだ。で、よく、骨折するとそこの部分が逆に強くなると言われるが、ちょっとしたことに敏感になったりして、治らない中で騙し騙しやってきたのだが、振り返ってみれば、結局は楽しくないことがわかった。
実は、ずっと自分は事業を止めたかったことがわかった。いまはその問題は、治っているのだが、それが、治らなかったのは自分の悩みの本質に蓋をしていたからだ。だから、少し良くなっても治らなかったし、トラウマがあったし、それにやっと気づいた。
では、状況が良くなったことはなにかというと、自分が自分であることを好きになることが大事だということだ。社員と関わる中で自分自身を好きになれたことだ。そこで、2年前から楽しく仕事ができるようになった。
中村小太郎 「プロに聞け」ということが大事だと思う。私はJAからは邪魔されることはなかったが嘲笑された。除草剤をまいていないため真夏に除草の車を押している。ただよかったのは義理の父が水利組合で活動していたので地域に信用があり邪険にされなかったことだ。また、矢口一成さんもこだわっているが有機農業をしている人はいい人が多い。
伊藤さんがなされていることは凄いなと思った。私も根底では障害者をなんとかしたいと思っているが、鬱病は心の中の問題で「自愛」と「自己愛」とは違う。もし「自己愛」で終わっていたら元に戻れなかったと思っている。私自身もクモ膜下出血で食の大事さに気づいた。宗教めいているが、どうにか生かされていると思っている。
伊藤文弥 中村さんは本当にプレゼンがお上手だ。
中村小太郎 NHKでは以前に2時間プレゼンをやったことがある。
伊藤文弥 これまでの経歴もあるのだろうが、話がうまいし、資料もわかりやすい。その経験があることが農業でもでているなと思った。僕はベースがなく大学を卒業してから働いているのだが、久松達中さんに教えてもらっている。そして、農業というのは個人の個性が出しやすい職業だと思っている。中村小太郎さんも自分の人生の色を出されているので素敵だなと思った。
農産物の値段を巡って
大木晶氏 農産物はサラリーマン家庭でも買えるものでないといけない。960円で売られているのは立派だとは思うがごく普通の人が買える値段でないと。経済的に余裕がある人だけが買えるというのはおかしい。価格の折り合いをどうされているのか。
中村小太郎 プロに聞けだが、矢口一成さんは550円だ。サラリーマンが買える値段というのはご指摘のとおりで、アマゾンではプライムを取る時には送料無料である。アマゾンの方針である。960円は送料を織り込んだ値段である。沖縄から注文がくると5kgで2,800円になってしまう。そこで値段設定をした。スノッブ(snob)の人に食べてもらいたいと思っているし、私のサイトは860円になっている。アマゾンで勝負をするためにあえて高くしたと。それと、米を作る最大の理由は夏に子供食堂を常設するためのものである。モデルを作ってみたい。全体の売り上げで締めるのは2tかける960円では生活ができない。大したことはではない。
伊藤文弥 いま、いくらで売っているかだが、野菜が8種類、卵が6ケで送料込みで2,300円である。以前は1,500円だったが、直売所でも残るし、マルシェでも残るため、それでもよかった。久松氏は8品で4,000円で売っている。もちろん、普段の生活で使える値段にしないといけないし、地域をどう作っていくかが大事で、富裕層をターゲットにしているだけだと駄目だとは思う。それでも2,300円にしているのは卵が入ったからである。
また、野菜だけだとトウガンが続いたりしてしまう。それは、自分たちの栽培スキルにもよるのだが、生産する側からすれば、ニンジンを1000ケ作るのも1万ケ作るのもそれほどは違わない。たくさん売れれば、そういう栽培にもつながっていく。ある程度、売れてこそ形ができる。そのために、安く値段を設定して売り先を作って、投資をしてやっと値あげをすることができた。
司会 国連でも市民が投資することで契約栽培ができることが理想とされているようだが、現実に難しい。僕は3カ所と契約栽培をしているが、そちらは地元が中心だろうが、一回ずつなのか。それとも定期なのか。端境期もあるし、トウガンばかりになる時もあるが、それをどうされているのか。
伊藤文弥 いまはそれ以外の野菜も出せるようになってきている。今のこの冬の時期でも13種類は取れている。ただし、3月は厳しい。そして、今よりもクオリティが下がると。その場合は、久松さんのベリーリーフとかは有機なので、他所から仕入れて対応している。
中村小太郎 日本ではスーパーで簡単に買えるが、そういう流通ではなくなってきている。CSAである。トランプが有機農業を支援しようとしている。私はJAから金を借りられないので。
マーケティングを考えて高く売る農業が必要
会場 いまの農産物の値段のことだが、私の意見と感想を申し上げる。40年、50年前は農業人口が1500万人いた。今は220万人で平均年齢が65歳である。ここまで第一次産業が衰退してきたのは、それが儲からないからだ。その意味で、マーケティングを導入するという小太郎さんのお話は素晴らしい。私は、ユニクロやシャネルもありだと思う。個人的には高いのはおかしいとは思うが、買う人がいる以上、それもありだと思う。ビジネスのことを考えればリッチな人向けのマーケティングもあるだろうと思う。そうではないと農業は上手くいかないと思っている。
中村小太郎 実は農業は資本主義とは食いあわせが悪い。農事法人に経営手法を持ち込むことは難しい。「れいわ新撰組」が提唱する所得保証が必要である。フランスでもスイスでも農業は国防として位置づけられている。日本だけが一次産業が打ち捨てられている。実は私も嫁のアパート収入の方が農業所得よりも大きい。
伊藤文弥 私がマーケティングで意識しているのは、ランチェスター戦略、弱者の戦略である。農産物の品質がプロ以上であることは大切だが、少量多品目で直接消費者に売ることは、有機農業のプロ中のプロがやる手法であることから、こちらには勝てない。私たちもかなりしっかり作れてはいるのだが、細部へのこだわりが弱い。したがって、東京をターゲットにメインで有機をやるのは難しい。そこで、局地戦でつくばで売ることをやっている。
農産物の品質が悪い時の解決策は?
会場 私はソニーでブランディングをしてきた。中村小太郎氏のいう戦略はいいと思うが、高校でのまま不登校になっているとか、いま引きこもりの人たちと接触している。また、かわいそうなのが母子家庭である。日本の母子家庭での貧困率は世界最大で40%である。お母さんが働いているのだが生活に余裕がない。ちなみに、札幌の特殊医療の団体顧問をやったことがあるが、隠された弱者がある。今日の伊藤さんのお話は、31歳でこうしたことをされているというので脱帽した。本当に嬉しい。で、質問だが、品質が悪い時には誰がどう解決するのか。
中村小太郎 ポケットマルシェはクレームがあったら何かしないといけない。クレームは生産者がやらないといけない。
伊藤文弥 対等の作っていくことが大事だし、そうした関係を作っていける広がりがあるといい。
農協は必要なのか?
会場 「農業は国防だ」という話が出たが、いま日本の農業者は168万人になっているが、2000年には390万人いた。日本のように山があり谷ありのところでは農業によって景観や防災が保たれている。農業がなされなければ山河が大変なことになる。新規就農が少しは増えているが、それが現状の数字である。
会場 農協は必要なのか。いらないのか。あるいは、いいのか、悪いのか。小泉進次郎が言っているように解体しないといけないのではないか。もともと農家が作った組合だが、現在は、賛助会員で銀行と同じようなことをやっている。どうなのだろうか。農水省の予算も以前は大きかったが、いまは各省庁の中で100兆円のうち4兆あるかどうか。なぜそうなったのだろうか。
中村小太郎 大変鋭いに鋭い意見だ。私も勉強してみたが、前後にGHQは農業者だけにしようともしたが、地主を入れたことでGHQが考えたローンセンターになるようになった。農協には農業のことを知っている人がいるのだから、ビジョンとミッションを組み換えてやればいい。つまり、除草剤へのローンを止めるようにすればいい。グリホサートを使わないでもいいのではないか。
伊藤文弥 自分は直売をしているが、JAから肥料を買ったり、JAの直売にも売っている。本当にJAはいろんなことをやっているし、地域を支えていることも確かだ。JAには良くない部分があることも確かだが、「ありか」「なしか」ではない。また、地域性もある。僕の事業もそうだが一概に語ることは難しい。
司会 お二人から本音で話してもらって面白い内容だった。なお、この会の食の問題ではグルテンフリーもやっている。環境問題はあまりにも広すぎるがプラスチックゴミもやりたい(終)。
【画像】
矢口一成氏(左側)の画像はこのサイトより。右側は矢口氏から有機農業についての話を聞く池田町の甕聖章町長
久松達中氏の画像はこのサイトより






