2024年10月10日

リジェネラティブ・オーガニック・カンファレンス2024⑨

多年草穀物カーンザ~未来に根差した選択肢
北海道大学 内田義崇准教授

20241010121.JPG 私は北大で、物質循環、炭素や鉛がどう循環しているのかを研究している。循環型農業についても本当に循環しているのかを研究している。3年前にパタゴニアの近藤勝宏さんと木村純平さんから「リジェネラティブ農業のポテンシャルを調べたい」と声をかけられて嬉しいと思った。私はニュージーランドの大学を出ていて、米国の研究者とも派閥抜きで楽しく交流できてきたことから、作物学の同じ年代の先生と組んで、研究をやっていこうと。今日は、あまりデータは見せられないのだが、多年生の穀物カーンザについて紹介をしたい。

世界規模の課題の多くは農業と関連

20241010123.JPG さて、このグラフは色々なところで使っているのだがすべてが指数関数的にあがっている。これは何かと言うと、ハーバボッシュ法による肥料の消費量が指数関数的に増えているのだが、同じように指数関数的に種が絶滅していると。つまり、我々は指数関数的に資源を枯渇させながらここまで豊かになってきたのだが、いろんな資源もなくなっていて、このままのやり方では食料を生産し続けることはできないし、うまくいかない社会になると。

20241010125.JPG それは今日、この会場にお見えの皆さんはわかっておられるであろう。そこの大きな背景を踏まえて私は多年生作物に着目している。というのは、それによってトラクターで耕す回数が減らせるし、土壌流亡も防げる。

耕起で土壌の団粒構造を破壊することが世界的に問題を引き起こす

 20241010126.JPG耕起によって引き起こされる世界規模での課題として、いま33%の土壌が劣化しているのが、2050年までに90%以上が劣化すると。これはラタン・ラルがよく使うのだが、マダガスカルのベスティボカ(Bestiboka)の渓谷の写真である。これを見た宇宙飛行士が「地球が血を流している」とのコメントを寄せた。

 これは世界の熱帯地方だけではない。北海道でも十勝地方では「十勝おろし」が5月頃に吹くのだが車道が煙でもうもうとしている。皆が春に向けて一生懸命に耕しているので、土が大量に舞ってしまう。耕すことによって土壌の団粒構造が崩壊し、つぶつぶの単粒構造に戻ると。

20241010127.JPG この写真をご覧いただきたい。水を染み込ませると単粒構造の方はふやけ方がひどくなる。そして、土は耕さないほど水に溶けにくい。こうなった団粒には空隙があり、雨が降ったり、日光が強かったりといった外的撹乱に耐えられる。土壌の流亡もまずは防げる。

カーンザは播種量を増やすと米国での収量に近づく

20241010128.JPG さて、多年生穀物のさらなる特徴で、これはカーンザの写真だが、多年生は穀物は、まさに多年性で根が1.5mよりも深いので一年草ではアクセスできないところの水や養分も吸いとれる。そして、この根は微生物に食べる栄養として届けられるので、それに依存する微生物や土壌動物が増えることが期待できる。物質循環的に化石燃料への依存からの脱却につながるし、持続可能な農業に貢献できる。

20241010129.JPG カーンザはIWG(Intermediate WheatGrass)と言われているのだが、多年生なので毎年大きくなるのだが、ひこばえのように再生する。そして、深い根があるので少ない雨でもできるし、硝酸汚濁も少なくできる。そのことは効果として学術的にはわかっている。

 世界中にもパートナーを設けているので、世界中で調べられているが、日本だけは気候が違う。そこで、日本でもできるのかをやることが必要である。そして、これが、日本で栽培されているカーンザの唯一の写真。どこでやっているのかは言えないのだが。

20241010132.JPG さて、米国の事例に較べて日本は収量が低い。雑草が多いのと夏の植えるタイミングで土壌が湿潤で粘土質だと初期生育が悪いことがある。北海道は永い冬があるので越冬前にどれだけかを調べてみた。すると思ったよりは越冬はしてくれる。そして、播種量を倍にすると米国の収量に近づけられると。

 20241010133.JPG土壌炭素の削減の効果の結果もほとんどないので学術的にはないので小原君にきてもらって研究をやっている。「うちでもやりたい」という方がおられればできるようにしておきたい。

北海道は日本の食糧基地として大切だが文化にどう組み込むか

 20241010134.JPGさて、私は土壌教育とか社会学的な研究もしているのだが、日本の食料安全においては極めて北海道は重要になる。そして、こうしたものを普及するための課題は、社会的、経済的、文化的な理解の必要性である。どうやって理解を広げていくのか。北海道の食文化というとビールでは難しい。では、食糧生産のパラダイムシフトを引き起こすためには何をどういうステップでやっていけばよいのか。まとめだが、収量性の確保だが、食文化とか文明の中にどう受け入れられるのか。どう売ってどう消費者にわかってもらうかが大事であると。

閉会挨拶

20241010135.JPG近藤勝宏 今日、行った内容は最初に木村の方からリジェネラティブ・オーガニック認証について紹介し、それがもたらすベネフィットを金子信博先生からお話いただいた。第二部では、生産者の方々から実例を交えた多角的なお話をいただいた。第三部ではリジェネラティブ・オーガニックを加速化させるための研究ということで、茨城大学の小松﨑先生と北海道大学の内田先生からお話をいただき、内田先生からは多年草の未来についても情報をいただいた。今日は、ワクワクする熱量を感じた。

 実際にこれが実現できるかどうかは、皆さんにかかっている。奇跡の循環のためのネットワークを作っているので、その実現に向けて働きかけていきたい。こういった場をパタゴニアとしても継続的に持っていきたい。アンケートでのフィードバックもお願いしたい。今日はありがとうございました。

編集後記

 本稿は、2024年10月10日(木)17:00~17:20にかけて、パタゴニア・インターナショナル日本支社の主催によって都内の会場である自由学園明日香館とオンラインで行われた「リジェネラティブ・オーガニック・カンファレンス2024Fall」での「多年草穀物カーンザ~未来に根差した選択肢」と題する内田義崇准教授の講演の内容をまとめたものである。あくまでも、会場での聞き取りメモを再整理させていただいたものとして正確さに欠けることをご理解いただきたい。

 なお、20分という短い時間の中でも、カーンザを活用する意味を明確に伝えていただけた。

 なお、こうした形での情報発信はかまわないと承諾いただいたパタゴニア・インターナショナル日本支社の皆さんにこの場を借りてお礼をもうしあげます。
posted by 情報屋 at 17:00| Comment(0) | 講演会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください