2024年02月02日

有機の証明〜有機農産物の認証制度について

秋田県立大学教授 谷口吉光

有機認証はJAS認証だけではない

2024-02-02 10.31.20.jpg 自己紹介をさせていただく。秋田県立大学の谷口である。長野県からは有機プラットフォームで1度呼んでいただいた。そして、有機農業研究者会議ではお世話になった。当初、飯田市で対面で開催する予定であったが、コロナのため全面オンラインになった。今日も現地に伺いたかったのだが、昨日はマイナス4℃、今日もマイナス2℃で、雪が深いため、出張を取り止めた。昭和31年の東京生まれである。上智大学で文学部出身で2回卒業している。最初はフランス語、その後、社会学で学士入学した。大学院の2年生のときに28歳のときに、産消提携で有機農業と出会った。互いの信頼で作っていくことは、素晴らしいと思い、それから40年、有機農業の研究をしている。

 縁があって、秋田県に勤務し、文学部出身だが、農工大で学位を取り、地域連携センターで働いている。専門は環境と食と農の社会学で、それを研究している。秋田県では大潟村の水質が悪化したので、NPO法人はちろうプロジェクトを設立したりした。2017年から日本有機農業学会の学会長をしていたが、昨年に茨城大学の小松崎先生にバトンタッチして少し肩の荷が下りた。

p4s.jpg 私が書いた本を紹介すると「有機農業はこうして広がった」と「有機給食スタートブック」が今日のお話と重なるところだと思う。とくに、「こうして広がった」は、どうして自治体が取り組むようになったかを「有機農業の社会化」という視点から、山形県高畠町、千葉県いすみ市、岐阜県白川町、大分県臼杵市と4事例で書いたので参考になるかと思う[資料p4]

 さて、今日は認証の話をする。私は有機認証の専門家ではない。PGSについてもほとんど調べたことがない。認証というと、農学はすぐJAS認証を思い出すのだが、社会学者からみるとそうはみえない。社会に存在するすべては機能を果たしているから存在していると社会学者は考える。例えば、警官は犯人を捕まえるという社会的機能をはたしているので、社会的に認められて存在している。

 有機認証も存在しているのは、そこに機能があるからだと考える。それでは、どんな機能を果たしているのだろうか。そして、その機能を果たすために必要とされる認証の「カタチ」とはどのようなものか。こうしたことで話を進めていきたい。そして、有機認証はどのような条件を満たしていけばいいかを考えたい。「認証=有機JAS」ではない。これから紹介する制度について、「こんなものも認証なのか」と思われるかもしれないが、実は認証制度は、全国に何十もあると。

 先日、講演をする前に長野県農政部農業技術課の前沢みなみさんと小笠原滋治さんとも打合せをしたが、有機農産物の地域内流通が始まると地域の中での認証が始まると。そして、認証を自分たちで作ることになるかもしれない。そして、認証は自分でも作れるし、それは機能すると。そうしたことを本日はお話したい。

認証とは何かは西洋の語源を辿ればわかる

 まず、認証とは何か。国語辞典では、「一定の行為または文書の成立・記載が正当な手続きでなされたことを公の機関が証明すること」となっている。

 日本語では、確かにそうだとは思うのだが、私は外国語を勉強してきたことで、翻訳語はオリジナルの言語に戻って定義を考えた方がいいと思っている。そこで、英語の certification の語源を遡ってみると形容詞で「certain」「確かな、確実な、信頼できる」であることがわかる。これを確かなもの(certain)に「ify」を付けて、確かにするという動詞「certify」にする。確かにする、それに「tification」を付けると「確かにする(certification)」という名刺になる[資料p6]。ここで興味深いのは、日本語では、「公」が出てくるのだが、語源では出てこない。つまり、「公」が認証する必要はない。認証するのは公的機関でなくてもよい。実際に民間団体が作った「民間認証」の例はたくさんある。新しい認証を自分たちで作ってもよい。既存の認証制度では足りないところがあれば、それを補うような新しい認証を作っていけばよい。そこで、今日は「自分たちが必要とする認証を自分たちで作る」という視点からお話ししたい[資料p7]

なぜ有機JAS認証が複雑なのかを証明の必要性から考える

 私の考え方を申し上げると、味は食味計、果物の糖度も糖度計で測ることができ、こうした品質は農産物を調べることでわかるが、その作物が有機農業で栽培されたかどうかは作物そのものを検査してもわからないからである。仮に残留農薬がでなかったからといって有機だとはいえない。実際には散布していたがたまたま残留しなかっただけかもしれない。また、もうひとつ厄介なのは、「使った」ことの証明は、使ったという事実がひとつあればいいが、「使わなかった」ことを証明することは難しい。では、使わなかったことを証明するためにはどうしたらいいのだろうか[資料p8]

 そこで、栽培期間全体について、施肥と防除について、作業と資材を全部調べる必要があるという考え方がでてくる。これは欧米人が考えた。彼らはこういうことを考えるのが得意で、そこから、農産物の「検査」ではなく、栽培過程の「認証」、プロセス認証という考え方がでてくる。これによって「施肥と防除」について調べて使っていないことを証明すると。認証の用語では「生産工程管理」という工場で部品を作っているような言葉になるのだが、栽培過程全体を管理すると。有機JAS認証がなぜ面倒くさい手続きが必要なのかの理由はここにある[資料p9]

有機であることを証明する5つの方法

 それでは、どのような方法があるのだろうか。有機であることを証明する方法として、認証を5つにわけた。

 1.生産者への信頼(産消提携やブランドなど)
 生産者が有機だと自己申告し、消費者がそれを信じる。
 2.第三者認証(有機JAS認証)
 生産者や消費者とは別の第三者が法令に従って証明する。
 3.二者認証(生協産直など)
 取り引きをしている生産者と消費者が何らかのルールを作って証明する。
 4.参加型認証(PGS)
 地域の団体がIFOAMのルールに従って証明する。
 5.地域認証
 地域の団体や自治体が何らかのルールを作って証明する[資料p10]

 1の生産者を信じることが一番手間がかからない。そして、2の第三者認証は第三者が法令に従って認証する制度である。3から5番目の認証は、聞きなれない言葉だが、生協産直等の取引をするものが何らかのルールを作って証明するのが二者認証。地域の団体がIFOAMのルールで照明するものがPGS、そして、最後が地域認証。長野県の皆さんにはこの最後の地域認証がお役に立つのではないかと思っている。なお、この最後のものは名前こそ違うが共通部分が多い。そして、他の認証制度についてもそれがどのような特徴があるのか。なぜ、それが有機を証明することになるのかを考えうえで有効なのでひとつずつ説明したい。

生産者への信頼~提携運動は孤立の中での覚悟の中から生まれた

・1970年代、日本で有機農業が始まった。農薬の危険性や食の安全に危機感を持った少数の農家と消費者が直接農産物をやりとりしていた。
・社会を変える運動(有機農業運動)だという意識が強かった。
・ 生産者と消費者の関係は、人間的な信頼と交流を基盤としていた。産消提携や提携と呼ばれていた。
・ 有機農産物かどうかは、生産者への信頼、産消の交流、消費者の理解によって保証されるという考え方だった[資料p11]

Hoshi-Kanji.jpg 日本の有機農業の最初の頃の星寛治さんも金子美登さんも亡くなられ、それ以外も多くが亡くなられてきたが、当時は、いまのようにJAS認証もなかった。有機農業と言う言葉もできたばかり、慣行栽培ばかりで、試験場、県職員、農林水産省の職員、JAも「慣行農法で何が悪い」と言われていた時代。当時は有機塩素系の農薬を使っていて、農家は農薬中毒にかかっていたのが、その病状そのものがない。病院で診断書をもらって、また撒く。結果として、重症になって亡くなる人もでてきた。消費者でも体が悪い人もでてきた。そこで、少数だが、ただ、少数ながら、有吉佐和子の複合汚染がでたことで、「農薬が原因ではないか」と疑いを持った人がいた。けれども、慣行農家からは「宗教とか罵られ」、理解がされないので、自分たちで強く消費者とつながるしかなかった。技術もないので虫だらけになることが頻発する。すると消費者も覚悟を決めて、農薬を使わないと虫ができることを知る。つまり、人生をかけた、いのちをかけた中でできている構図で、信頼がなければ続けられない。

 生産者を信じることが当然のことだと思われていた。まさに同志のような関係性で現実的には経済的な取引なのだが、必死であったので「運動だ」とも言っていた。当時は「認証」なんて考えもしなかった。

 ただし、無責任な信頼ではなくて、消費者も生産者の現場の田畑にいって、草取りを手伝ったり、コメの田植えを手伝い、収穫を祝い、どうやって無農薬、無化学肥料でも作られるのかを理解したうえで有機であることを保証するという熱い時代だった。

生産者への100%の信頼が抱えるリスク

 これを認証として考えると次のようなことが言える。

 特定の生産者と消費者とが継続して取り引きしている場合、生産者への信頼は、最も簡単で費用が安い証明方法といえる。「安い」というとカチンと来られる人もいるかもしれないが、信じることですんでしまうのであれば、それが一番簡単で費用もかからない。しかし、これは、交流があって、消費者が農業について理解していることが前提となる。単なる口先だけの信頼ではない。しかも、一番簡単ではなく、その反面、生産者はすべての責任を負わなければならない。どのような状況であって確実に有機栽培でいい作物を育てられるという技術と自信がない場合には関係性が破綻するリスクが大きい。消費者は生産者を信じればいいといっても、絶対に農作物が取れる自信があればいいのだが、昨今のように異常気象が続くとなかなかそうはいかない。害虫が大発生して減収した時にどうするか。生産者としては一回だけは農薬を撒いて防ぎたいかもしれない。それで、有機と言う約束を損なうことになるかもしれない。「ふっていいですか」と事前に相談すれば理解する消費者がいるかもしれないが、別の人は理解しないかもしれない。そして、偽装ブランドもあるかもしれない。信頼に応えられない事態に陥ると、一挙に関係が破綻するリスクがある。偽装ブランドはまさにメーカーが悪いのだが、ブランドに依存するという安直な方法に依存して、果たして健全な関係性なのかとも思う。つまり、生産者に対する信頼は100%いいとは必ずしも言い切れない[資料p12]

第三者認証は合理的だがJAS認証が増えていないため問題がある

p13s.jpg 次の2番目が第三者認証である。
・ 特定の生産者と消費者の間には、人間的な信頼関係が生まれる可能性がある。
 つまり、生産者を信頼する方法、継続する関係性の中で成立していくが、有機JAS認証はスーパーで誰が食べるのかわからないところで売られている。
・ しかし、一般流通のように不特定多数の生産者と消費者の間に信頼を作ることは不可能である[資料p13]。JAや法人は大面積でたくさん作らなければならない。つまり、そういう関係が結べない生産者もいる。それでどうしたらいいのか。
・ 第三者認証とは、取り引きに関係のない認証団体(第三者)が、法令に定められた次の手続きで、生産者が育てた農産物を有機農産物だと証明すること。

 ここでのポイントは取引関係があってはいけないこと。取引相手と仲が良かったりすると不正が起こり、有機ではないのに「有機だ」と言ってしまうかもしれない。そこで、英語でいうと「サード・パーティ」、認証はビジネスなので、生産者に依怙贔屓なし、掛け値なしで、認証することが期待されている。この手続きも法令化されている。

 まず、栽培記録を作成する。紙の山ができる。次に認証団体の検査員がその文書を検査する。そして、現地を検査してその栽培記録が正しいと納得したら有機JASマークを貼ってもいいと使用許可を出す。これが大きな枠組みである[資料p14]

 以上を文章にすると、第三者認証とは、法令に定められた手続きに従って、

 ①生産者は栽培過程に関する記録(栽培記録)を作る。
 ②認証団体は、栽培記録のチェックと現地確認によって、生産者の記録が間違いないことを確認する。
 ③認証団体は②の手続きをもって、生産者が育てた農産物を有機農産物だと決定し、有機JASマークをつけることを認める。
 ①~③までの手続きをもって、生産者が育てた農産物は有機農産物だと証明されたことにする[資料p15]

 では、この第三者認証は認証制度としてはどうなのだろうか。合理的な方法ではあるが、日本ではJAS認証を取得した農家数はずっと4,000人と増えていない。合理的ではあるが、増えないのには何か問題があるのだろう。

 そして、広がらない理由として言われているのは、手間と費用がかかりすぎること。手間と費用は深刻な問題で農地毎に作るので、認証団体に委託すると手数料がかかる。大規模な農業で売り上げが1,000万円とか1億円とか大きければ手数料もかまわないが、1反とか5反とかで手間をかけて生産している農家からすると到底みあわないと。もうひとつが、取得しなくても、顧客が取り引きしてくれることである。お客さんが「いいよ」と言ってくれれば取得する必要がない。

 実は農水省が1回面白い調査をしている。有機JAS認証を取得していない農家がどれだけいるかを調べたことがある。取得していない農家の倍がいた。つまり、取得していない農家が8,000人いる。そして、おそらく、最近はさらに増えている。若い有機農家でも取っていない人が多い。とくに私が強調したのは、なぜ取らないのかというと理由として、「手間がかかる」と「必要がない」が多かった。つまり、JAS認証が広がらない理由は農水省の調査からも裏付けられる。これは日本有機農業学会で発表した資料なので信頼できる報告だと思う。

・ それでも取得してうまく活用している農家もいるので、一概に有機JAS認証制度が不要だとはいえない。

 有機JAS認証が不要だとはいえない。ある若い農家のグループは認証を取った。簡単ではないかと。手間だと思わない農家もいると。一概にいいとか悪いとかいらないとかは言えない[資料16]

消費者が生産者とつながり直接確認する二者認証

 では、次に有機JAS認証以外の世界に入っていきたい。

・ 特定の生産者と消費者が継続して取り引きしている場合で、何らかのルールを作って、有機だということを証明する。

p18s.jpg つまり、ここでもポイントは継続して取引をしていることと、なんらかのルールがあることである。一例として、パルシステム生活協同組合が行っている「公開確認会」を紹介したい。この仕組みを紹介するのは、私はパルシステムの内部組織のアドバイザーを30年くらいやっているからである。

 1990年にパルの内部組織である「生産者消費者協議会」が「生産者自主基準づくり」をスタート。1998年に 「農薬削減プログラム」をスタートし、これを消費者に理解してもらうために、公開確認会をスタートした[資料p17]

 まず、生協なので継続した取引をずっとしている。そして、有機JAS認証では検査員1、2名が現地にいくわけだが、こちらは消費者が何十人も産地にいって栽培記録を見る。そして、答えてもらう。

p19s.jpg 消費者の代表の監査人が質問をしながら、監査人の所見を書いていく。そして、生産現場を生協の組合員が見に行ってパックをしているところを見ている。

 有機JAS認証の認証団体の代りに日頃取引をしている消費者や生協の職員がやってきて現地確認をするわけで、それが公開確認会の特徴である。

 それではそれが証明になるのか。消費者は検査員とは違って専門の勉強をしていないと思われるかもしれないが、「監査人講習会」を受けているので、一定の栽培知識を持っている。農業のことをまったく知らない消費者ではない。もうひとつこの仕組みが狙っているのは、自分たちが食べているものはどのように作られるのかを見ることである。ただのお楽しみの交流ではなく、生産者が真剣に答えることで生産者への信頼が深まると。つまり、二者認証と言ってもかなり第三者認証と重なっているところがある。

 p20s.jpgこれはパルシステムのテキストから引用したものだが、なぜこういう公開確認会をやったのか。左側のボックスは、すべて認証制度がでる前の運動の理念、生協の理念であった。ところが、有機JAS認証制度ができたので、生産者と消費者との交流だけでは足りなくなった。そして、パルシステムとしては、有機JAS認証を取り入れることを止めた。というのは、生産者と直接的な取引や関係がない団体から「これが有機だ」、「これは有機ではない」と言われることになるからである。パルシステムには信頼の歴史がある。であれば、その延長線上に独自の認証制度を作ろうと思ったわけである[資料p20]。こうして、独自の印象制度を構築した。この精神を是非学んでいただきたい。なお、二者認証にはこれ以外にもたくさんの事例がある。

参加型認証(PGS)

 4番目が参加型認証である。私は雑誌や本を読んだだけなので、岩手県で取り組まれている「オーガニック雫石」の事例を紹介するだけにとどめる。詳しい方がたくさんおられるので、そうした方に聞いて頂ければと思う。

 まず、特徴は地域であることである。パルシステムの公開確認会には「地域」が入っていない。取引のある産地は全国にある。つまり、パルシステムは全国区での認証制度である。ところが、PGSは私が知っている限り、地域に限定される。

 原語は Participatory Guarantee Systems というが、第三者認証や二者認証と違うのは、農産物の取り引きと関係のない地域住民が認証に参加するという点である[資料p21]

 日本で唯一、参加型認証を実施しているオーガニック雫石の事例を紹介すると、JAS認証制度は、農家の書類作成などの負担が大きく、JAS認証を持たない有機農業者が有機野菜のラベルすら貼れない状況となってしまい、有機農家の増大にはつながっていない。これに対して、IFOAMにはもっと簡易な参加型の認証制度PGSがある。地域ごとに消費者、生産者が中心となって、農場の調査や認証を行い、小規模ながら簡易に有機農業者を増やす仕組みとなっている。もちろん、消費者と生産者が中心となるとか農場の検査をするとか、これまでの仕組みと共通する点はある。現地調査をしていなので自信を持って語ることはできないのだが、参加型認証とは地域の団体が国際有機農業連盟(IFOAM)のルールに従って、農産物が有機だと証明する方法であると。そして、このためにはIFORMの正式メンバーになる必要がある[資料p22]

地域認証~「オーガニックフェスタinあきた」の事例から

 次が地域認証である。地域認証とは、地域の団体や自治体が何らかのルールを作って有機だということを証明する方法である。2010年代になって地域認証を作る動きが広まってきた。これは、有機農産物を求める消費者は大都市だけでなく、どこにでもいるので、有機農業の地産地消になってきたということだ。もちろん、発展途上で、先ほどまで述べてきた二者認証やPGSに比べて後発で、そうだと思うのが私自身がこの動きに関わってきたからである。「有機農産物を買ってくれる消費者は地方にはいない」というのが、生協にしても、大地を守る会にしても、あるいは、関西にも生協があるのが前提であった。そこで、全国の有機農家は大都市圏を目指して消費者を探してきた。意識が高い消費者は都会にしかいない。地元では見つからないというのが常識だった。けれども、これが2010年代から田園回帰とか、地方に移住したい人が増えて、有機農家も増えてオーガニックカフェとか、レストランのオーナーも増え、自然食の店も増えて、となって来たのではないか。私の仮説が正しいとすると、これからは、有機農産物の地域内流通を考える必要がある。有機農産物の地産地消である。これは、行政の農林畑に関わってきた方々に言いたいのだが、オーガニックビジネス拠点とかの事業では地方は産地として位置づけられ、作った農産物を流通業者とのマッチングを図って大都市に流通させるものであった。ところが、オーガニックビレッジは産地づくりではない。地域づくり、消費者まで含めたことをようやく農水省もやりはじめたと。これからは、地域だと思う。では、市町村や都道府県でどれくらいの需要があるのか。それがこれからの課題となり、そこで必要となるのが地域認証だと思っている。

p26s.jpg 次に2010年8月、東北初の「オーガニックフェスタinあきた」の事例を説明したい。これは、大和田志人さんらの活動があることを知らずに鹿児島県のフェスタに2万人の来場者があったことに大きな刺激を受け「日本の南端の鹿児島でも1日で2万人も集まるのなら、北端に近い秋田でも集まるのではないか」との期待があって、やってみた。すると、道の駅秋田セリオンでやったのだが、涌くように人がきて、予想を超える1日で3,000人の来場者があり、生産者にとっては驚きで、有機についての実感をした瞬間だった。秋田の成功は東北各県の有機農家にも刺激となった。「秋田でも3千人も集まるのか。それならうちの県でも集まるのでは」という期待感が高まった。

「秋田方式」では消費者にも責任を求めた

 p27s.jpgでは、そこでどんな認証をしたのか。我々は「秋田方式」としていて、認証とは言っていない。30人くらいの生産者がいて誰もJAS認証を取っていなかったので、彼らも出店できるように、研究者、消費者、生産者が現地確認をした。現地確認をするときに紙をもっていって栽培記録を書く。「農薬はなしですね」。「肥料は2分の1ですね」と聞きながら、手書きで埋めてもらう。これで信頼することにした[資料p27]

 p28.jpg下の表をご覧いただきたい。現地確認後、記録用紙に記入し、出展者に署名してもらう。この署名をもって、私たちは出展者を信頼することにした[資料p28]

 そして、記録用紙を清書して当日ブースに置く。そして、これを信じるかどうかはお客さんの判断に任せることにした。

※オーガニックフェスタinあきた2010では、有機農業に取り組む生産者を増やすために、将来有機農業に取り組むという条件で減農薬・減化学肥料栽培以上の農産物の出展を認めています。

※有機JASについては、この条件を満たす野菜・果物・加工食品・畜産物等は秋田県内にほとんど存在しないためフェスタでは有機JASを出展の条件にはしていません[資料p29]。

 県内の有機農家(特に野菜・果樹)はほとんど有機JAS認証や特別栽培認証を取得していないと想定されたため、通常の認証方法に代わる確認方法を考案した(秋田方式)。

「有機」に関する基準の策定としては次のようにした。

 ①有機農業推進法に基づいて「有機」を定義した。
 ②有機農業に取り組む生産者を増やすために、将来有機農業をめざすという条件で、減減栽培以上の農産物も認めた。
 ③有機JASや特栽の認証取得を義務づけなかった。
 ④畜産物は自給飼料を一定以上使っていることを条件とした。
 ⑤加工食品や総菜・料理については主たる原料が有機農産物であることを条件とした。

 つまり、出展の基準は自分たちで決めていい。有機農業推進法の定義を使えば、有機だと表示しないと決めれば有機JASに従う必要はない。そもそもなんのために認証するのかというと、秋田の場合は生産者を増やすためである。いまの制度では減減の人は出せない。そこで、将来有機を目指す人は認めた。また、有機JAS畜産物の基準を満たすものはほとんどないので、自給飼料を一定以上使っていることを条件としたところ、肉を加工している人が入ってくれた。つまり、有機農業推進法の定義を使えれば、かなり出店できるようになって来る[資料p30]

 そして、基準を満たしていることを確認するため「現地確認」を実施した。

 ①フェスタ実行委員会から、有機農家(相馬喜久男氏)、研究者(谷口)、消費者1~2名が事前に出展農家を訪問。圃場見学と農家の説明を聞いた。
 ②「出展物の栽培記録の書式」に、出展物の栽培に使用した農薬と化学肥料の有無を記入し、出展者に署名してもらった。

 以上をもって、実行委員会は出展者の申告を事実に相違ないと信用することにした[資料p31]

p29s.jpg そして、対面販売と消費者との対話をすることにした。例えば、イチゴジャム、カシスジャムの裏に栽培カードがおいてある。

 ①フェスタは原則として出展者自身が直接販売することとし、委託販売は認めなかった。
 ②どのような栽培で作ったかを消費者に説明することを求めた。

そして、生産者の説明を補完するために、「出展物の栽培記録」を清書した「栽培カード」を作成し、出展ブースに表示してもらった。また、消費者の自主判断による購入も求めた。

 ここで、大事なことは「信用することにした」つまり、自分たちで決めた。そして、消費者に説明することを求めた。説明を補完するため出展ブースに表示してもらった。ここも頭に入れて欲しい。生産者が実際に販売をする。納得したら買ってくださいと。そして、消費者の自己判断である。認証とは証明なのだが、証明は「本当に有機だ」という責任を追うことになる。けれども、我々は、農家の自己申告を信用しているうえで、消費者につなげることしかしていないので、認証と呼んでいない。そのかわりに消費者の責任を受け入れる。出展者の申告を信用するかどうかは最終的に消費者の判断に任せた。そのために、「栽培カード」の下に次のような文章を載せた。

「フェスタ実行委員が事前に生産者に栽培方法等を確認しています。来場者の皆さんは、このパネルをご覧になり、生産者の説明を聞いて納得した上で購入して下さい。ご質問があれば総合受付までお問い合わせ下さい」[資料p34]

来場者アンケートの結果から消費者は生産者の言葉を信用する

 この「秋田方式」の結果は、2010年は1日で約3,000人、2011年は2日間で約4,000人、2012年は2日で約3,200人の来場者があったが、表示や説明をめぐるクレームやトラブルは一件もなかった。

 秋田県は、JASや特栽に依らないこの方法に対して、非常に心配していたが、それは、杞憂に終わった。出展者からは「この方法でも十分消費者の信頼は得られる」との声が寄せられている。有機JASを取らなくても、法律違反にならずに有機栽培の農産物を販売できる方法として評価されている[資料p35]

 また、2011年には来場者を対象にアンケート調査を実施し、153票の回答を得た。まず、「有機JASマーク」を見せて、「あなたはこのマークがどんなマークか知っていますか」と聞いたところ、「はい」と答えたのは33.3%で、うち、マークの意味をある程度正確に答えた人は24.2%だった[資料p36]

 次に「当フェスタで買い物をしながら何を気にしたかで、①JAS有機かどうか、②無農薬かどうか、③栽培カードの記載、④生産者言葉を聞いたところ、来場者が最も気にしたのは「生産者の言葉」で65.4%もあったのに対して、有機JASは20%程度であった[資料p37]。やはり生産者なのだということがわかる。

 問3として「当フェスタで販売されている農産物は有機または減減とされていますが、あなたはそれを信用できましたか」に対しては、88.9%と約90%の来場者が「信用した」と回答し[資料p38]、「はい」の場合に「信用できた理由は何か」を複数回答で求めたところ、生産者の言葉が50.3%もあり、主催者も大事であるとの回答があたったが、栽培方法の表示は9.8%でしかなかった[資料p39]

 ここから考察できることは、地域規模の市場(いちば)、オーガニックフェスタは、1回だけのイベントだが、それでも、生産者と消費者の信頼形成に一定の機能を果たしたこと。そして、フェスタにおける信頼の構造は、生産者への信頼と場への信頼の二重構造になっていて、生産者に対する信頼の根拠としては、①自信を持って勧められる農産物であること、②十分な説明、③生産者の情熱・こだわり、④生産者の人柄・人間的魅力があげられ、フェスタという場に対する信頼の根拠としては、①開催趣旨、②主催者の実績、③現地確認、④栽培方法の開示などがあげられた[資料p40]

新たに認証制度を作る場合に大切なことは理念・認証そのものが目的ではない

 次に新たに認証制度を創るときの条件は以下のとおりである。
 1.理念・方針・基準を決めて明示する。
 2.理念を実現するための手段として認証を位置づける。
 3.生産者、消費者、主催団体などの責任を明確に決める。
 4.関係者が納得している。
 5.できるだけ費用や労力をかけない。
 6.トラブルが起こった時の対応をあらかじめ決めておく。

 まず、理念を実現するための手段として位置づけることが重要で、たえず、理念に遡って理念を実現することを大切にし、認証そのものが目的になってしまってはいけない。

 また、責任を明示化すること。とりわけ、フェスタでのように消費者の責任を明確に決めることが大事である。すると消費者も「騙された」とは言わなくなる。また、関係者が納得していることも大事である。開かれた認証制度として、トラブルが起こった時の対応をあらかじめ決めておくとよい[資料p41]。なお、総合受付に来た人はほとんど誰もいなかった。

主体を応援するために国、県、市町村にはそれぞれの役割が

 いろんな認証があることはわかったが、最後に国や市町村にどのような役割があるのか。まず国の役割はボトムライン。最低の条件を決め環境を整備することであろう。であっても、これに縛られる必要はない。長野県は、有機農業推進方針に基づき、農家、民間団体、市町村を支援すると。先ほど前沢さんからの説明であったように、国のみどりの政策の問題点は、減々から無農薬へのプロセスをどう進めるかがない。そして、無から有機へも難しい。長野県はそこに重点を絞ったことをなされたらいい。

 市町村は自らがプレーヤーとなって、自ら認証基準を作るのもいいし、地域にある団体を応援するのもいい。そして、最終的にやるのは民間のプレーヤーである。それの基盤を整えるのも県や国ではないか[資料p42]

【画像】
星寛治さんの画像はこのサイトより

編集後記

 この内容は2024年2月2日(金)に長野県の主催により、松本合同庁舎講堂及びオンラインで行われた「令和5年度有機農業プラットフォーム研修会」での秋田県立大学の谷口吉光教授の講演内容の一部をまとめたものである。

 なお、毎回、お知らせしているとおりだが、この内容は録音をしたものをテープ起こししたものではなく、オンラインを聞きながらメモしただけのものである。このため、谷口教授からは「上記の口述筆記は概ね正確ですが、細かい点では私の言葉通りでないところがあります。正確な内容は長野県から公開されている動画でご確認下さい」との条件付きで拙ブログへの公開を承諾してくださった。また、谷口教授からの言葉添えもあって、公的機関での発信内容の拙ブログへの掲載を承諾いただいた長野県の有機農業担当の方々にはこの場を借りてお礼を申し上げたい。

 なお、掲載した資料も谷口教授が提供されたものだが、言及された星さんの写真については以下のサイトから編集子の判断で掲載した。また、見出しタイトルも編集子の方で勝手に付けた。

 なお、谷口教授が言及されたPGSについては、やや古いが拙ブログでも2019年10月24日付で「第三者認証から参加型認証へ」との雑文を書いている。また、2020年1月28日には第2回長野県有機農業PF情報交換会で「有機農業をとりまく状況と参加型認証制度(PGS)について」と題して、IFOAM Organics Asiaの三好智子副理事長氏の講義を動画として見ることができる。また、同じく拙ブログだが、2022年1月16日付では「アグロエコロジーを支える参加型認証制度(PGS)を学ぶ」と題して國學院大學の久保田裕子教授の講演会を2022年2月20日付けでは「小川町有機農業フォーラム2022、第三者認証のメリット・デメリット」題してJONAの高橋勉理事長の講演のメモを掲載してある。いずれもPGSについて言及されているので、参考にしていただきたい。
posted by 情報屋 at 10:00| Comment(0) | 有機認証 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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