2023年09月15日

Catch-up オーガニック!~峻烈熱風 躍動するアジア、沸き立つオーガニック

Catch-up オーガニック!~峻烈熱風 躍動するアジア、沸き立つオーガニック!
最新動向をキャッチアップしよう

セッション①オーガニックとは何?まずは知っておきたいこと

株式会社プラスリジョン IFOAMOrganics ASIA理事 福井佑実子

hukui-yumiko.jpg これからオーガニックのビジネスを始める人のために正しい情報を提示したい。オーガニックの原則4と3.0について話したい。次にアジア地域のオーガニックの動向がビデオで30分ある。そして、摂南大学の谷口准教授から「データで見る日本のオーガニック市場について」について講義をいただき、12:15から15分ほど質疑応答の時間を設けたい。

 まず、IFOAMによる有機農業の原理と組織について私からお話する。IFOAMは、1972年に設立され、現在、132カ国からの850団体が加盟する国際組織となっている。本部はドイツのボンで、世界で唯一の有機農業のための国際アンブレラ組織となっている。

 IFOAM Organic ASIAは7つある地域団体(リージョナル・ボデイ)のひとつで、2012年11月28日に設立された。また、ナショナル・ボディとして、オーガニック・ジャパンがある。この中にナショナル・ボディがあるのだが、例えば、オーガニック・ジャパンはここに入っている。

オーガニックとは何か? 安全だけではない4つの原理

 さて、私に対して個人的に「オーガニックとは何か?」と聞いて来られる方もいる。そこで、「では、どんなイメージですか」と聞いてみるのだが、だいたいオーガニックという言葉から受ける印象として、日本では、無農薬、安全といった農法をイメージされる方が多い。

 有機JASマークは農林水産大臣が認めた登録認証機関だけが貼ることができる。EU、米国、台湾等の各国が独自の認証マークを持っている。この認証は第三者の国際認証となっている。そして、国家間において同等性が認められた国では有機とすることができる。日本が、同等性を認めているのはEU、イギリス、アメリカ、スイス、オーストラリア、アルゼンチン、カナダ、台湾となっている。

2023091502s.jpg しかしながら、世界を見ると有機農業はもっと幅広く、暮らしの質を高めるための農業原理となっていて、①健康の原理、②エコロジーの原理、③公正の原理、④配慮の原理からなっていることがわかる。

 第一の健康の原理では、有機農業は、土・動植物・人、地球の健康を別々に切り分けては考えられないものと認識して、これを維持・助長すべきであるとなっている。そこで、農薬を使わないことになる。

 第二のエコロジーの原理では、有機農業は、生態系とその循環に基づくもので、それと協働するべきとなっている。いま100万もの生物種が絶滅の危機にさらされているが、生態系に配慮しなければならない。

 第三の公正の原理は、英語ではフェアネスとなっている。いまの若い人はイメージしやすいのだが、共有や環境と生存の機会についての公正を確かにすると。生産、流通、加工、販売の段階において、誰かだけが得をするのではなく、天然資源や環境資源も公正に管理されて未来世代に信託されるという認識である。食料主権や貧困撲滅にも貢献すべきであることわかる。

 2023091503s.jpg第四の配慮の原理は、現世代と次世代の健康・幸福・環境を守るために、予防的かつ責任ある方法で管理すべきであるということである。現行の技術を見直して、新たな技術も評価すると。ただし、我々の現在の理解が不完全であることを認識して、十分な配慮、予防が必要となる。遺伝子組み換えのような予想不可能な技術の使用は配慮すべきであるとなっている。次に有機農業だが、2015年から第三段階を迎えている。真に持続可能な包括的なあり方を向けた大々的な転換がされている。このオーガニック3.0を進めるためのガイドラインも出されている。

セッション③ データで見る日本のオーガニック市場

摂南大学農学部 谷口葉子准教授

taniguti-youko.jpg 私はデータで見る日本のオーガニック市場についてお話をしたい。本日、お見えになっている方々は、オーガニックを扱っている事業者であろうか。おそらく、すでに扱っている方も日本の全体像が見えてこないことにフラストレーションを持っておられるのではないだろうか。そこで、共同研究としてどうしたら日本のオーガニック市場を定量的に把握できるのかを収集してきた。

2023091521s.jpg まず、日本の話の前に国際的に見た日本の立ち位置を見ていただきたい。スイス有機農業研究所FiblとIFOAMの年次報告書がある。これをみると全体の傾向がわかる。通称WoAと言われている。そして、これを見ると世界の有機食品市場の中では日本が大きくないことがわかる。小売総額を我々は市場と言っているのだが、圧倒的に多いのが米国である。

2023091521s.jpg 次がEUで、ドイツ、フランス、イタリアが続く。近年ではアジアの中では中国が市場を拡大し世界3位と言われている。日本はランキングがよくない。2022年3月の農林水産省の値が2,240億円となっている。前よりは若干伸びているが、14億93ユーロで、オーストラリアも追い越してはいない。

1人当たりの購入額でも低迷する日本

2023091517s.jpg その国の市場規模は人口が多いと大きくなるので、一人当たりの購入額でみると、実際にどれだけ有機が浸透しているかがわかるので、この割合を見ることが適切である。これではシェア率が高いのがデンマークである。食品市場の13%、続いて、ルクセンブルク、スイスと続く。こうした中で、日本は0.41%で1%にも届いていない。商業動態統計年報の小売市場の値からこうした数字を出すことができる。

2023091518s.jpg つまり、一人当たりの購入金額でみると、スイスとデンマークとが1位争いをしているのだが、日本は農水省の推計学でみても11ユーロでベルギーと比べても10倍以上の開きがある。

 円安とはいえ、購買力はそれほど落ちてはいないのにもかかわらず、日本の状況が芳しくない。これは見方を変えれば、日本はこういう状況に持っていけないわけはない。先例がすでにあるわけで、希望を与える数字でもある。

日本が世界トレンドになれば有機大国になれる

2023091519s.jpg もし、がんばってスイス人並にオーガニックを購入しているとその市場規模は7兆6,500億円、510億ユーロで世界最大の有機食品市場となり、米国を超す。米国人並であったとしても、2超円を超えて、世界第2位となる。これは、生産が成長するための潜在力にもなる。

 そして、実際に有機農産物への興味がないわけではない。私自身がしたアンケート調査でも回答者の25.6%が買いたいと言っている。すでに買っている人も含めると過半数が購入意向を持っている。

 それでは、なぜ、実際の消費が伸びないのか。値段が高いとか、品揃えがないとか、近くで売っていないとか、本当に有機か信用できないとかいろんな理由があるのだが、価格が高いのが最大の理由だが、価格に見合う有機の価値を伝えて、価値創造をし、それを消費者に提供する価値伝達が大事であると思う。

有機市場が述べる米英に抜かれている日本

2023091522s.jpg 有機農業に私が関心を持ち始めた20数年前には、日本は世界の中でも進んでいたのだが、世界ではその後7倍にもなったのだが、日本は世界ほどは伸びていない。結果として、アジア各国からも抜かれている。有機JASで見ると、日本は0.3%で、実際には0.5%を超えてくるわけだが、それでも置いてきぼりをくらっている。

 2023091523s.jpg有機市場のトレンドをみるとEUだと25カ国で東欧は数値がいい加減と言われるが、まあそれでも割合正確で、過去17年で5倍になっている。米国も5倍である。

日本の農産物市場はバラバラで推計が難しい

 日本も伸び率が高くないのだが、日本は定義が曖昧で、1990年代はバラバラで調査がなされ、その後の間がなく、2009年にOMRとIFOAM JAPANが推計をし、近年の2017年からやっといろいろな推計が出てきたのだが、それをみると値がバラバラである。何が市場なのか、その言葉の定義も統一されていない。では、どうやってデータを推計するのか、その推計手法もバラバラである。

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 加えて、毎年調査がなされているわけでもない。ただ、2009年と2017年が同じやり方なのでこれを見ると2009年が有機JASで1,300億円で2013年が農水省で1,850億円で42%増えたとされている。そこで、どうすれば諸外国と比較が可能なのかのリサーチを始めた。

購買履歴を用いて有機食品市場を推計する

2023091526s.jpg 海外では購買履歴データを使っており、とりわけ、ドイツがこれを使っており、ドイツの方が私にやり方を教えてくれたので、購買履歴データを収集している「マクロミル社」からデータを購入し、それを使って推計してみた。ただ、どんな調査もメリットとデメリットもある。購買履歴データのメリットは、客観的であることである。買ったかもしれないとか記憶がおぼろげになることではなく、確実に買っている。そして、時系列データが効率的に集められる。さらに、海外との比較が可能でもある。だが、問題はバーコードがついた商品しか集まらない。加えて、購買履歴データのデメリットはモニターによってバイアスが生じることである。マクロミル社のものは70代以上の高齢者の方のデータが入らないのだが、オーガニックは高齢の方が多く買っているので過小に算出されてしまう。また、バーコードデータがついたものしかない。有機で売れ行きが大きいのは野菜とお米だが、これにはたいがいバーコードがついてはいない。ドイツでは、バーコードがついていない商品のものまでデータを収集する仕組みを作っている。

コロナの影響か2020年から有機が増える

 2023091527s.jpgまた、日本では農家の3分の1しか有機認証を取っていないとされているのだが、比較可能性からJAS認証されたものに限定した。これからみると、2020年から大きく伸びることがわかる。それまでは0.38%の伸びでしかなかったのだが、プラス17.7%となっている。2022年になると欧州ではインフレが大きく、それによって購買が減少しているのだが、日本では伸び続けている。

2023091532s.jpg カテゴリー別にみると、生鮮食品が一番大きい。ただし、国内流通している米や野菜はバーコードがないのでそのごく一部である。したがって、これも本当に伸びているのが、それともバーコードが付けられるようになったのかどうかはわからない。

 二番目に大きいのは有機豆乳である。三番目はコーヒー、四番目がナッツ・レーズン。水物は豆腐、納豆、こんにゃく。そして、パン、シリアルも伸びている。とりわけ、2022年からの食パンの伸び率が大きい。

既存ユーザの裾野が広がっている

 2023091530s.jpgこうしたデータを見ながら仮説を立ててみると、洋食向けがオーガニックがなかったものが、オーガニックが出てきたことによって、片栗粉等もオーガニックでなかったものがでてきたので置き換えている。これはおそらく既存のユーザーがカテゴリーを広げてきていると。ただ、仮説ができても検証はできていないので、需要者へのヒアリングをする必要はなる。

2023091533s.jpg その一方で、自宅でクッキーなどを手作りする。この手作り志向も定着しているのかもしれない。つまり、オーガニックでも簡便化も進展している。これは、既存でなく新規ユーザーではないか。果樹飲料、野菜ジュースも増えている。これは従来の消費者層ではない新規ユーザーが増えている裾野の広がりではないか。

 そして、購買履歴からもそれぞれのカテゴリーについて、どういう人が購入しているのかがわかる。

 2023091534s.jpgこの購買層から読み解くと、ドリンクは男性が半分、それも若年が買っていることがわかる。一方、パンは半分以上が女性である。また、国民全体では所得が300万円未満が34%もあるのだが、低所得者が買えていないことが見えてくる。買っているメインは600~1,000万円層だが、1,000万円以上の所得も購入割合も全体とも変わらない。つまり、少し金に余裕がある人が買っているのであって、金持ちだけが買っているわけではない。そして、有機の食パンは中高年女性に訴求する製品であろう。

日本の有機食品市場規模の2018~21年の伸びは20%

2023091535s.jpg ということで、野菜や米を除いて見てきたのだが、これとは別にアンケート調査をすることによって米と野菜のデータも集めている。全体の推計もしている。2022年のデータは輸入も入れているが、335億円なので、これが思ったよりも大きい。それが伸びになっていると。そこで、2018年からの比較だと輸入を入れると52%になっているが、入れないとプラス19.4%が適切であると。農林水産省の推計値も21.1%なので、ほぼこれと一致する。ということで、最後のまとめは以下のとおりである。

2023091536s.jpg質疑応答

福井佑実子 マーケティング戦略を作っていくうえでとても参考になると思うのだが、何かご意見があれば。

吉田太郎 他のどなた方も意見がないので、口火を切らせていただく。海外では有機が伸びているのに対して日本では伸び悩んでいる理由には食品の表示もあるのではないか。例えば、豆腐や納豆や卵も遺伝子組み換え表示ができなくなり、それのみならず、国産も国内製造として表示できなくなっている。海外との消費動向のズレの中には、こうした食品表示問題もあるのではないかと思う。世界の流れとなぜ日本が逆行しているのか、それに対して何かご見解があれば。

谷口葉子 海外をみると和食への需要が高まっているが、国内ではこうしたものの売り上げが縮小している。世界のトレンドとずれている。

福井佑実子 消費者の選択しやすさの中で、豆腐は伸びているのではないかと思っていたのだが、実は国内での豆腐市場が減っている。製造メーカーの方と話をすると有機大豆を確保するのが困難であると。これには複数の要因があるのではないか。また、表示については、遺伝子組み換え技術を用いた原料は使用不可のため「有機JASマーク」が手がかりになる。

会場 日本有機食品は国内の有機栽培面積が0.6%しかない中で、市場規模もほとんどないと思うのだが、仮に25%になった時には市場規模はどうなっているのか。谷口先生からのご示唆があれば。

谷口葉子 食料システム戦略で掲げられている目標値が達成された暁にどうなるかの推計については私はまだやっていないのでお答えできないし、わからない。ただ、輸入原料の加工食品が多くなっている。例えば、日本のオーガニックの投入やナッツは輸入である。コーヒーや紅茶もそうである。日本のオーガニック市場は輸入オーガニック農産物に支えられている。そこで、25%になったときのインパクトがどれだけか。外食に回されるのかもしれないし、推計が難しいタスクだと思うが、将来予測もやっていくべきだとは思う。

2023091501s.jpg福井佑実子 学校給食を含めて政策を売っていかなければいけないが。

会場 熊本県庁からきた小川と言います。谷口先生にお伺いしたいのだが、私は生産を所管する部署に所属しているのだが、日本の有機食品は輸入に頼っているとのことだが、こうした農産物であれば海外にも売っていけるのだというご知見があればお教えいただきたい。

谷口葉子 輸出に焦点をあてた調査研究を行っていけないのでお答えできない。ただ、海外市場を視察する機会はあったのだが、そこで見た限りでは、日本の有機食材へのニーズは一定程度ある。最近、伸びているのが緑茶、抹茶で、ドイツでも中国産でなく日本産が売られている。また、抹茶カプチーノもドイツで定着している。また、意外に日本の豆乳が美味しいとして売れているということも聞いている。これもきちんとリサーチして輸出の潜在力を把握することもやっていく必要がある。

会場 谷口准教授の膨大なデータを解析された中では、オーガニックを選ぶのは美味しいからではなく、安全だから選ぶのではないかと思うのだが、購入動機では何があるのだろうか。

谷口葉子 消費者のアンケート調査はかなりなされているのだが、そこから見る限りでは新たな知見というのはない。直接的に消費者に尋ねると安全性や健康が出てきている。一番大きいのがコロナの中では健康であった。免疫力をあげたいと。ただ、この購入動機が実際の購買行動につながっているのかどうかは検証する必要がある。ある研究によれば、有機農産物の購入への入口は十人十色で掴みにくいとい。妊娠や子どもが生まれたことがきっかけということが多い。ただ、多数が有機農産物について「美味しい」と回答していることもある。消費者が農産物を高く評価している事実があるのだが、その大半が購買につながっていない。これは、態度と行動とのギャップと言われている。態度と行動のギャップをどう埋めるのが我々がやらなければならないタスクである。

福井佑実子 では、時間にもなったので最後の方のご質問を。

会場 ペットやベビーフードについてご意見があれば。

谷口葉子 ペットフードはお示ししたデータの中には含まれていないので私は状況は掴んでいない。ベビーフードは規模が小さいが、伸びてきている。諸外国で品目別に見てくるとベビーフードは比率が高い。おそらく日本でも今後そうなってくるのではないか。

編集後記

 本稿は、2023年9月15日(金)の10時30分から12時30分にかけて、東京都立産業貿易センター 浜松町館において、(一社)オーガニックフォーラムジャパン(OFJ)の主催、Catch up Organicsの協力においてなされた第8回 Organic Forum JAPAN~オーガニックライフスタイルEXPOでの講演会の内容をまとめたものである。講演会を聴きながらメモしたもので、録音はしていないので、講演内容すべては網羅されてはいないが、多忙な中、福井佑実子さんと谷口葉子准教授は、原稿に赤ペンを入れ、編集子のミスを修正すると同時に加筆もしていただいたので、正確さを欠くことはない。これは、校正推敲のうえ、修正をいただいたバージョンである。貴重な話題が盛り込まれているので参考にさせていただければ幸いである。
posted by 情報屋 at 10:30| Comment(0) | 講演会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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