株式会社大冶 本多論
ローカル&オーガニックを扱う大田市場青果物仲卸
簡単に自己紹介をしたい。大治は大田市場で青果の仲卸をしている会社である。大手量販店との付きあいはないが、東京を中心に神奈川、埼玉、千葉の飲食店1,200店ほどに納品をさせてもらっている。一般社団法人東京野菜も運営している。これまで差別化商品を求めて、1998年から東京野菜、2003年からはJASの小分け認証業者の認定を受けた。2021年のオリンピックでは選手村にも提供している。こうした取り組みの中で海外輸出にも挑戦し、シンガポールや香港にも一部出荷をしている。
仲卸から見たオーガニックの三つの課題
このようにして約20年にわたって、有機農産物を扱ってきたのだが、あくまでも当社が考えるものとして、3つの課題があると思っている。
①物流面 まず、物流面では、有機農産物の生産者は比較的規模が小さいのだが、有機の専門店や個人に提供することから、宅配便で使用することが多い。このため、もともと有機農産物は高目であることに加えて、流通費がかかるため、消費者がより購入しにくくなっている。
②商流面 第二は、これもアンケートを取ったことから見えてきた傾向だが、8割の生産者が自分の販売先が有機の専門店であるとイメージをしているのだが、消費者が消費したい場所はどこかというとほとんどがスーパーである。つまり、生産と消費との間にミスマッチがある。
③価格の低迷 この1番目の物流と2番目の消流面はワンセットなのだが、第三は価格である。有機農産物に限らず、いま農産物全般の価格が低迷しているのだが、それは年のうち10〜11ヵ月は生産が過剰だからである。そこで自分の価格が付けられない。そこで農産物の全体の底上げをしないと有機だけを高くすることはできない。
この3課題を同時に解決しないと、みどりの食料システム戦略で増やすことも難しいと考えている。そこで、一社でできることは限られているが、大治としては三本の矢を考えている。
大田市場のハブ機能を強化する
第一に、まず大田市場をハブにすることである。東京には9つの市場があるのだが、大田市場が売上ベースで54%を占めている。モノが集まる場ということで各地からすでに農産物を含めて各地からモノが集っている物流がある。そこで、この物流を効率化するため、遠隔地から有機農産物をまとめて輸送するパターンを考えた。というのは、大規模な生産者も出荷先が細かいのでわざわざ宅配便を使っているという。そこで、これを大田市場にまとめて10t便をチャーターして太い線で持って来て、最後のラストワンマイルの物流は市場側が受け持つというやり方があるだろう。
また、遠隔地であって、かつ、大量に有機農産物を扱っていないとしても、そこにJA等の既存流通がある場合には、一般の農産物の物流コストを減らすため、そこに有機農産物を相乗りさせることもあるだろう。実際に、関係者と話してもそうした声を聞くことから、コーディネートしようとしている。
さらに、近在の茨城県であっても、生産者の場所から消費者までの横持ちの物流が必要である。そこで、新聞の配達等、既存の流通のあり方との連携を協議をしている。
大田市場内で有機の認知度を高める
2つ目に、大田市場を活用した有機農産物新流通プロジェクトを発足している。先ほどの宇部多用に大田市場に有機農産物が集まってきたとして、その有機農産物をどう消費させるかという出口がないと流通していかない。そこで、市場関係者の仲卸や小売店が日常的に扱うために、物流インフラをしっかり確立して、情報を発信し、スーパー等で日常的に販売するようにしている。このため、仲卸を中心とした市場関係者や有識者にも入ってもらい、昨年に協議会を設立している。
つまり、大田市場にモノが集まってくれば買い手がいるので、この当たり前の仕組みを使って有機を売れるようにする。9月16日にキックオフ会議を立ち上げ、意見交換をした。具体的なテーマを設けるため、いくつかの商品開発をした。ミールキットやフリーズドライ商品も試作・開発した。
店舗に有機があるかどうかがわかるオリジナルマークを考える
また、有機JAS食材であるかどうかは農産物に張ってあるシールを見れば認識できるわけだが、それも近くにいかないとわからない。そこで見つけやすいオリジナルのデザインを売り場で展開することも考えている。オーガニックの決められたカラーがあれば遠くからでも一目でわかる。そこで、有機専用のデザインや包装を提案している。
これは海外でも同じである。実は、海外では非常に広いオーガニックの専門コーナーが設けられている。そこにはいろんな国からのオーガニックがあるので、日本製品を出しても埋もれてしまう。そこで、ジャパン・オーガニックをブランド化して存在感を出していく。
例えば、以前に海外では和牛がブランドになっているので、それが販売されているのだが、よく見るとオースラリア産であったということを当時、畜産関係の方と話したことがある。そこで、今年1月26日、27日に大田市場内でオーガニックの品評会を実施してみた。
市場のそもそもの機能は流通もそうなのだが、農産物の評価をするところでもある。各社のバイヤーや買付人が毎日のように来て評価をしている。同じトマトでもどれがいいかで値段を付けている場所である。そこで、市場内で品評会を行うことは理にかなっている。そして、100点ばかりのものが集まった。これを経て、2月15〜17日まで幕張でのSMTSでのスーパーの販売でアピールをしてみた。
千菜一遇~生産者と企業をつなぐ
3つ目は、いままでの流通を変える仕組みとして2年前から生産者と企業につながる消費者を直接つなぐ仕組みをスタートさせている。
これは、ちょっと最初述べたこととは毛色が違うのだが、もともと有機農産物に限らず、直接生産者と取引をして価格を決めて取引をするということを我々はしてきた。
ほとんどが市場で価格が決まるなかで、市場価格よりも生産者が希望する価格はやや高めである。生産者と直接取り組みをすると生産者も我々も利益を出せないことになってきた。そこで、市場の価格を変えるきっかけとして、新しい仕組みを作る前に2019年に一つおこなったのが、8月31日の野菜の日に、企業広告付の野菜販売を行った。広告料をもらってそれを生産者に高く変えて、当日のニュースでも広く取り上げられた。「応援100縁」として、東京野菜の魅力を伝えようとした。
農業体験と収穫物体験を社員の福祉に活用
ただし、この広告が新たなビジネスにつながったかというとまだ仕組みとしては不十分であった。そして、コロナが来たので、生産者の畑を借りて農業体験をして、それを企業にとってプラスになるように活用すると。2アールの畑を借りて、農業体験をする。生産者には収入があがる。とうもろこし1本を100円を200円にするのは難しいが、2アールで農家に20万円を払うと1本が330円に相当する。農業体験や社会的な意義がつけられる。そして、誰のために何を作っているのかが明確になる。
企業側からすればただの社員厚生なのだが、2年目以降は農福連携やカーボンニュートラルを組み込み、農業支援で企業価値につなげていくということを考えている。というのは、2年目から、企業側のニーズが健在化してきた。SDGsやカーボンニュートラルがしたいというニーズがあがってきたことから、具体的にその要素を加えている。
例えば、さる金属系上場企業は、カーボン削減をやりたいので、名古屋大学初のベンチャーのバイオ炭、高機能ソイルを入れた。また、サントリーフラワーズは苗を植えたいので、その苗をクライアントである飲食店で使ってもらうと。自分たちのニーズを使ってカスタマイズすると。
それ以外でも新宿のサッカーチーム、JFLクリアソン新宿から、農業とサッカーをつなげるとの声があった。
これまでは、ただ、安く仕入れることであったが、農産物を流通させるという意味で本質は変わらないと。脱二酸化炭素のための炭を畑に入れる取り組みは、東京MXのニュースにも取り上げられた。
今後の展開は需給生産へ
3つ目は息が長い取り組みである。今後は、大田市場のハブ化だが、JA便を活用すると。物流を改善できることを可視化する。集まってきたものをきっちり価格を提示して、計画生産にしていく。できてしたものを売るよりも、まず先に出口を作ると。小売店からのヒアリングをもとに作付けを計画し、海外に対してもブランディングをしていく。
そして、企業と農業をつなぐ仕組みで、販売の出口で需給生産型の農業を広げていきたい。これは有機農業に限らない。まずは、足元を固める。出口づくりを仕組み化してきたい。農業体験から入るだけでなく、いま、企業に提案しているのは、お中元やお歳暮というギフトについて考えることである。これを慣習として形骸化させず「カイシャ」にとって意味のある発信型のギフトにしていく。オリジナルのクラフトビールを作って配布をしていくと。その原料となる麦とホップとつないでいく。
できあいのものではなく、農業体験も社員教育につなげていく。そういうふうにできたものはただお使い物ではなく、そのギフトを使って企業の社会貢献を発信できることにシフトしつつある。
市場という場所も非常に長い歴史があるし、小売業も長い歴史があるが、これまでの役割をただやっているだけでは必要とされない時代が来る。ここにも、農業ベンチャーと組んで新たな知恵を入れる。大田市場も35年の歴史がある。いまある大田市場をそのまま活用し、翌日からオーガニックマーットが作れれば、当社が旗を振っているので、まず日本の農業関係者、市場関係者、ベンチャーの方々のお知恵を借りながら2050年の目標に向けてより取り組みを具現化させていきたい。
編集後記
大治の取り組みについては、すでにネットで知っていた。2023年3月10日付の拙ブログで「大田市場を使った有機農産物の物流改善」として、まとめてあるので、あわせてお読みいただきたいのだが、ウェブサイトと違って会場にいるメリットは、講師と直接的に口が交わせることであろう。やはり実際に声をかけてみると違う。
このオンライン学習では「うちも45%が飲食店なので、これをラストワンマイル物流でつないでいく」という下りがよくわからなかったのだが、今回、ブースでお話を伺うことで疑問が解消した。大治そのものがオーガニック以外の食材を1,200店舗まで下ろせる自前の流通網を持っているのだ。
また、千載一隅ということで、社員福利として活用することについては、埼玉県小川町の「OKUTA]とよく似ていると思って、以前のブログでもその旨を記載したのだが、直接、本多社長にお話を聞いてみると、ちゃんとご存知であった。
ということで、流通面でもオーガニックはダイナミックに動いている。「これまでの役割をただやっているだけでは必要とされない時代が来る」という社長のベンチャー精神はまさに必要で、高齢化の進行、肥料・飼料価格が低迷し、有機どころか慣行農産物の国内産ものまで確保することが厳しくする中「有機といえども、慣行農産物と同じ値段、同じ品質で、なおかつ、周年で一定程度のロットを確保できなければ扱えない」等という旧態依然の発想でいるとしたら、その流通業界は、どれほど既得権益に守られているとしても、衰退への道をたどるしかないのかもしれないのである。
大治の取り組みについては、「有機農業発展に放つ3本の矢」という記事や温室効果ガス対策に取り組める「千菜一遇 農en カーボンニュートラル PLUS』を開始という記事も参考となる。なお、会場外やブースでも続けて詳しい補足説明やブログアップを快く承諾いただいた本多社長と社員の方にこの場を借りてお礼をもうしあげたい。






