株式会社大治 代表取締役社長 本多諭
そこで差別化を図るため、東京野菜や有機に取り組んできた。他社が取り扱ってないものをこの20年ほど扱ってきた。
消費者はスーパーでさらに安く買いたい中で有機だけのブランド化は困難
第一に、消費者が購入しにくい。生産規模が小さいために一回の出荷量が少なく、宅配便による物流の割合が高く、市場で扱うにしても宅配便で来るのでこれが大きな課題である。結果として、消費者が購入しにくい。
第二に、商流面で消費者と生産者とが乖離している。生産者は自分の農産物を買い求める場所として、有機の専門店や個人を80%がイメージしている一方で、消費者にどこで買うかと聞くと8割がスーパーである。消費者が買いたい場所で販売されていないというミスマッチがある。
第三に、安値で取引される中で有機だけ高く売ることは難しい。せめて野菜だけは安く買いたいというのが、消費者のマインドだ。そこで、有機のさらなる普及を実現するためには、低迷しがちな慣行農産物の価格についても見直す必要がある。これを同時に解決することが拡大につながる。
大田市場をハブとして大動脈を構築する
大田市場の有機農産物新流通プロジェクト
2つ目にどう流通するかである。これは、既存の流通機能をうまく活用することである。大田市場には、八百屋もスーパーのバイヤーも来る。そして、市場には評価機能もある。そこで、優劣が付けられていく。ただ、いまは有機は慣行品のように扱われている。そこで、関心をもっていただいて、購入する機会を増やすことにつなげる。消費者がより身近に構築できる環境を作る。ということで、昨年協議会を設立した。そこで、品評会等をすれば有機農業に興味のある人が、増えるであろうと行っている。そして、販売促進のために、ただの協議会のための協議会にしないために、ミールキットの開発とか包材の開発にも取り組んでいる。
企業と農家とをつなぐ千菜一隅
それが、生産地の収入アップや出口づくりにつながる。いったい、誰のために何をつくるかということで、受注生産型農業への切り替えをつくる。それは、従業員の福利厚生にもなる。そして、カーボンニュートラル、福祉等の社会的意義を表に出すことで価格維持につながるのではないかと思っている。
ラストワンマイルの流通
ということで、日本有機農産物協会との取り組みで、明治屋ストアーは物流を持っているので実証実験をやってみた。
大田市場がオーガニックマーケットを作る
最後に今後の展開だが、年間を通じて安定供給ができる。そして、JAを含めた既存の物流を活用することが大事である。先日もある県の方と話をしたのだが、JAも力を入れていくが、慣行とは別の有機だけの流通は難しいので一緒に考えていこうと。一から新たな流通を創ると時間もかかるので、大田市場内にオーガニックマーケットができるのであれば、それがいいのではないか。そこが供給すれば、それほど時間はかからない。
[注] 物流におけるラストワンマイル(last one mile)とは、最終拠点からエンドユーザーへの物流サービスのことをいう。「最後の1マイル」という距離的な意味ではなく、お客様へ商品を届ける物流の最後の区間のことを意味する。
編集後記
本稿は、農林水産省の補助事業を活用した一般社団法人日本有機農産物協会の主催で、なされた3月10日(金)15:00~17:00の「物流効率化報告会-新たな有機農産物物流のかたち」の講演会のうち「有機農産物の卸市場を使った物流効率化施策」を聴きながらメモしたものである。ということで、録音はしていないし、正確さは欠く。あくまでも、会場での聞き取りメモを再整理させていただいたものとしてご理解いただきたい。
とかく、有機農業は思想に走りがちで生き方としての有機にこだわりすぎている。とはいえ、それだけを突き詰めても何も出てこない。有機の持つ多様な価値を見える化することで社員の福祉厚生にも活かすというあり方は、非常に具体的でもある。ここにも、東京大学の斎藤幸平准教授が言う「コモン化」の胎動を感じたりもした。






