2022年12月20日

気候危機待ったなし!ミュニシパリズムと持続可能な未来-岸本総子×斎藤幸平

グブランシャー明日香 今晩は。本日は西荻大作戦・ゼロカーボンシティ杉並の会で「気候危機待ったなし」で、スペシャル対談を企画している。

犬飼祐介 動画発信を担当している。

芹沢悦子 やはり杉並の会です。これほど阿佐ヶ谷の会場が満席となるのを目にしたのは初めてだが、西荻のカフェを拠点に環境活動をして来た。

明日香 気候危機をニュースで聞く。パキスタンでは国土の3分の1が水没。ヨーロッパも熱波でカナダも40℃、日本も酷暑になっている。この中で、一体どうすればいいのか市民として悩んでいる。気候危機を引き起こしているのが、先進資本主義国による大量生産・大量消費・大量廃棄の経済システムとグローバルサウスに問題を押し付けている先進国の生活行動や消費行動であると。過去2000年でものすごい勢いで地球が熱くなって来ている。地球の気温は産業革命から1.1℃あがっている。これを1.5℃以下に抑えないといけない。日本や世界でもゼロカーボンは掲げられているが、各自治体でも取り組みが始まっている。環境破壊や生物多様性の喪失。膨大な量のプラスチックが流されていて2050年には海でも魚よりもプラスチックが多くなっているという。これもその問題を開発途上国に押し付けて移民問題や紛争を引き起こしている。こう話すと暗い未来予想図になるのだが、それでも持続可能な未来を作っていきたい。そこで、何ができるのかをお二人にじっくりとお聞きしたたい。岸本聡子さんは90年の杉並区の歴史の中で初めて女性で区長になられた。欧州のNGOで活躍されていたのだが、そのことだけでもビックニュースだと思うので、区長になるまでの経緯をお話しいただきたい。

岸本聡子 明日香ちゃんの方で言ってくれるとよかったのだが(笑)。住民想いの区長を作るということで、市民グループから擁立されて現職を破って勝たせてもらった。この地区区民センターでも対話、地べたからの民主主義をやって来た。行政経験も議員経験もないのだが、区長になって半年となる。

明日香 斎藤耕平さんは『人新世の資本論』(2020)集英社新書が大ブームになっていて、いつか杉並区に呼びたいと思っていた。最近に出された本、『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』(2022)角川では、現場に行かれる大切さを説かれている。最近の区長選を外から見てどうだろうか。

2022122009.jpg斎藤幸平 祖父母が永福町に住んでいるので杉並にはよく来ているし、大学時代は高円寺にある「2万ボルト」のライブに行っていた。マルクスを使って人新世の資本論を書いたが、最後で書いたバルセロナやアムステルダムは、市民が日々感じていることで立ち上がって、ムニシパリズムを作ってきたので、そこからも学びたい。自分の中でも世田谷区や杉並区でも本で書いたことを作っていきたい。軍事費があがってとか、大変な世の中になっているからこそ、市民がしっかり立ちあがらなければならない。その一員になりたい。

芹沢悦子 さて今日の対談だが、話す内容を勝手に決めるのではなく、PTXでの申し込み時に選んでもらおうと。ツイッターや街頭でもアンケートをした。その結果、トピックのベスト4は、1位がミュニリパリズム、2位が脱成長とグリーンニューディール、3位が恐れぬ自治体、4位が気候市民会議だった。

1ミュニシパリズムについて

岸本聡子 そこで、まず、ミュニシリパリズムについて最初に私から簡単に解説してそれから斎藤先生とコミュニケーションをしたい。皆さんもいろんな体験や活動をされて、その一端を担っているわけだが、大切にする規範もある。この20項目はヨーロッパで、バルセロナ・コモンズでという会議をEU議会でやったときに、急いで作った。まず、恐れぬ自治体。そして、共通の戦略を持つ、ロビイスト活動に負けない、住宅問題を政治課題に、地域民主主義、難民を受け入れる等がある。

2022122010.jpg 2010年、2015年にヨーロッパでは難民危機があった。それを、イタリアのNGOが難民が到着するのを受け入れることを手伝った。そして、気候変動に目をそらさない。バルセロナでは「クライメイト・チェンジ」ではなく、「クリシス」や「エマージェンシー」を使って非常事態宣言を行った。そして、水とエネルギーを民主化しよう。搾取的な労働者、ウーバーとかアマゾンとかのプラットフォームエコノミーに対抗する。そして、価値に基づく公共調達。多国籍軍企業への課税を徹底する。そして、本物の民主主義、政治を女性化する。選挙や政治の性質を連帯や協力の文化そのものに変えていく。国は政党選挙になるのだが、地方は政党選挙にならない。そこで、何を達成したいかに注目しようと。そして、連帯しようと。

斎藤幸平 すごいですね。これが全部できたらマルクスはいらない。私も満足してしまう。マルクスとか社会主義をいうと独裁だと言われる。資本主義とペアとなるものが民主主義で、社会主義とペアとなるものが独裁というイメージがあるのだが、現実には資本主義の方が独裁になっている。プラットフォームエコノミーもイーロン・マスクのように水やエネルギーを大金持ちが独占してしまう。この30年、民営化が効率的で民主的でサービスも向上すると言われてきたのだが、どうしても利益をあげるためにサービスもカットする。透明性もなくして、株主の意向だけで物事を決めてしまおうと。そうなってしまっている。日本でも「竹中平蔵が」とか言われるが、とりわけ、スペインでは人々を苦しめていた。そこで、自分たちのもとでもう一度民主主義を取りもどそう。「コミュニズム」とか「社会主義」という表現は使ってはいないが、自分たちの生活をコモンとして管理していく。それが希望なんだが、どうなんですか。最近の動きは。別のことをしていてきちんと追えていないのだが。

岸本聡子 わたしも選挙で追えていない。ミュニシパリズムは、最初はスペインやイタリアで登場したのでそこが強く、次にフランスやオランダにも飛び火して、左派の緑の党がアムステルダムでも第1党である。私自身は「フューチャー・イズ・パブリック」なので、パブリックは、日本語だと地方政府とかになるのだが、ヨーロッパだけではなく、パブリックを再定義することで世界全体を見ていた。それを2019年にアムステルダムから、チリで応援しようと3年やっていたのだが、こっちに来てしまった。チリでは、自分たちで憲法を作ろうと。アルゼンチンでもアグラリアン、つまり、農とか都市農業、流通の動きがあって、チリもシカゴボーイズがピノチェトの下で1973年にチリの憲法を個人の所有を絶対視するように変えた。地下水や鉱山も私有できる。この憲法を変えようというのがいまの37歳の大統領。内閣も30台がメインで、そこの中で大きな動きがある。その動きの中で、公共経済をどうしていくのかと。ただ、この憲法が国民投票で否決されたと。動きが追えていなかった。

 世の中の動きは、いいこともあるが悪いこともある。ヨーロッパはエネルギー危機が大きいので、40%をロシアの天然ガスに依存しているので、ドイツとかではロシアに依存しているので原発再開の動きも出ている。ヨーロッパは非常に暗い感じがする。

斎藤幸平 パブリックの再定義は大事で、ただ昔に戻せばいいのではない。非効率で国鉄に不満だったから民営化されていった。では、それはどういうことかというと、民衆主義とか透明性である。ただ無償化することではなく、管理や意思決定にも人々が参加して関与していく。それをどれだけ担保できるか。地方自治体はより参加しやすい距離感になっているし、民主主義の領域を広げるために、武蔵野市がやっているのが気候割引。また、経済の領域を民主化していく。企業はどうしても囲い込んでいく。株主とかが決めていく。お金がないとアクセスはできないと。日々の労働において民主的な意思決定に参与できないで「いきなり市民になれ」と言われてもなれない。私がバルセロナがいいなと思うのは、社会連帯経済、自分たちのオーナーで投票権を持って会社を運営していく伝統がある。そこでリーダーを出そうではないかと。そこで、これを日本で広めようと思った時に、リーダーを連れてきて選挙に勝てばいいではなく、地に足がついた運動を作る必要がある。それがわたしの言葉ではコモンになるのだが。

岸本聡子 経済の民主化、連帯経済という話があったが、社会的連帯経済と自治体をつなぐ鍵は「公共調達」ではないか。世田谷区も97万人いるし、区は杉並で一番大きい企業である。そして、自治体の最大の特徴が公的な利益のために働くことである。そこで、買っているモノとサービスは膨大である。そこで、「地域経済に資する」とのガイドラインになったら、労働者の賃金をできるだけ高くする。あるいは、衛生やジェンダーに対してトレーニングをしていく。防災にも貢献している。これまでは安ければいいとなっていたが、調達のルールを決める。労働者がオーナーシップを持っている、または消費者がオーナーシップを持っている消費者協同組合や消費者組合が対象になるのではないか。民主的に運営されているから。杉並区はすでに条例があるのでそれを拡大解釈すれば、調達によって安定的にサービスやモノを売ることを活性できる戦略だと思う。

2脱成長とグリーンニューディール

2022122013.jpg斎藤幸平 気候変動を前にして、再エネやインフラに投資をしていこうと。持続可能な経済への転換と経済成長とを両立させていこうと。このグリーンニューディールがうまくいくこととミュニシパリズムとにはジャンプがある。グリーンニューディールはマクロな国の政策で、財政出動とかグリーン債とかの大規模投資だが、ミュニシパリズムは下からの運動で、この上からのと下からのとがどこまでマッチするか。私はグリーンはいいとは思っているのだけれども、そのやり方をしていれば電気自動車とか電気飛行機に乗って生活をするのでもいいのですかと。ぼくがすごいなと思ったのは、岸本さんが自転車に乗っていること。電気自動車でもできるのだが、それにアクセスできる人はまだ限られている。資源も必要なので限りある資源を使うことになる。事故になれば子どももなくなる。二酸化炭素も出るくらいで。もっと重要なことはみんなが民主的にいろんなものにアクセスできるには、本物の民主主義のためには道路もコモンにしなければいけない。わたしもいつも引かれそうになる(笑)。そこで、道路を半分塞いで一方通行にして、道路を歩行者や自転車に乗っている人を真ん中にして自動車道を端にする。それが脱成長的な考えで、そういうことをパリはすでにやり始めている。東京は外苑前をさらに開発してと。より民主的なまちづくりへのことを考えるわけですが、どうですか。岸本先生。

岸本聡子 グリーンニューディールではかなり混乱させられているなと。誰が提案するかで、AOC、アメリカのアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員とかサンダースと一緒に出したのだが、欧州のグリーンニューディールは異なっている。

斎藤幸平 僕は「成長なきグリーンニューディール」を掲げている。ソーラーをもっと増やすには転換が必要になるが、ただそれがイーロン・マスクのやっているグリーンニューディールもありえる。フェアなモビリティとか。フェアな再生可能エネルギー。成長なきグリーンニューディールで、人びとにフェアな再生可能エネルギーを提供する取り組みは、民主主義を重視していると。

岸本聡子 今、ヨーロッパでも目玉が水素開発。電気自動車。90%の予算が成長型に投資されている。成長でないグリーンニューディールといった時に、経済の民主化、情報技術の民主化、そして、テクノロジーの民主化もそうだと思うのだが、人々に民主的に管理された小規模な取り組みについてもう少しお聞きしたい。

斎藤幸平 岸本さんが書いた『公共の力と未来』のパンフレットにも出ているが、コミュニティに根ざした協同組合型のソーラーエナジーがやられている。環境に優しい電力会社だと。そして、公共バスを充実させようと。人々のウェールビーングが高まっていく。自治体がやろうと思ってもお金がないので、協同組合と団体と連携するといいと思っている。

岸本聡子 環境というと、建設、交通、ゴミとなるのだが、今の社会に必要な医療とかケアとか保育とかは、国家政策でほぼ語られない。脱炭素社会はケア産業である。ケアはほとんど二酸化炭素が出ないので。いまの社会は脱炭素や脱コロナなのだが、ケアが出てこないので、ケアとグリーンディールの関係は。

斎藤幸平 非常に重要なテーマですよね。太陽光パネルやリチウム電池で成長するのであればますます自然を収奪していく。大企業が独占したら本末転倒。奈良の生駒市では市民がパネルを買って市民電力を作っている。それで、第二号を作ろうと。それで保育園の屋根につけている。保育園の子どものために設置する。ケアを重視すれば環境に優しいプロジェクトとなる。これも行政ではなくて市民がまず動いて、結果的に生駒市もSDGsシティに申し込もうと。まず、市民の動きがあることで市民が主体になることで脱炭素化で、市民と政治とが連携する。同じグリーンでも企業と政治が癒着して企業独占型のもありえる。経済を重視している価値観を転換すると。

岸本聡子 地球をケアする。リペアで生態系とか森林を再生するのが大切なのだが、そこは資本やお金が使われない。脱成長の人が働くのは大事だと思うのだが。

斎藤幸平 リペアと賠償。今の資本主義的なやり方によってさんざん奪ってきたことをちゃんと取り残された人に返す。様々な被害もウーバーで書いているのだが、神戸の石炭火力も被災した人の復興団地の横に立っている。押し付けられていると。アメリカもそうで。なので、取り残されないようにしようと。コミュニティを破壊し、抜本的なことを踏み込まないグリーンニューディールではなく、本当に取り残さないようにするのであれば、そこまでやらなければいけない。というときに脱成長がわかりやすい。それは、いまの企業や政治家からは出てこない。だから市民が動いて頑張らなければならない。

3恐れぬ自治体

明日香 「市民の力」ということで恐れぬ自治体に戻ってきたので動画を見てもらいたいと思う。バルセロナのアダ・コラウさんは、「道は歩くことで作れる。変革が必要。別の自治体とも手を組んで大きな変化が必要である。そのためには創造力が必要である」と述べている。岸本さんお話いただけるだろうか。

岸本聡子 わかりやすい事例を二つ。住宅は大都市では賃貸住宅が多い。その価格が自治体で規制できるかといえば、できない。国はできるかというと国も規制がほぼできない。「まちにすむ権利」という運動があるが、今やまちに人が住めなくなっている。これを制御するシステムがあるんですかね。

斎藤幸平 買っちゃえばいいんですよね。

岸本聡子 アムステルダムも70%、オーストリアも3分の2。かつては、ヨーロッパでは50%が公共住宅だったが今や20%に縮小し、バルセロナは2%。それが、コントロールできない。物価上昇で多少はできるが、それが挑戦。どうやってアフォーダブルな住宅を確保するか。これが恐れぬ自治体。本来、住宅は公共的な役割がとても高い。今は学校とか病院とか保育とかは水道かもそうなのだが、なぜここまでほぼ及ばないのか。極度な資本主義の中で、それを考えなければならない。そこで、挑戦がある。

 もう一つが公共調達。ヨーロッパでは競争政策がある。独占禁止とか。コラプションとか。汚職を禁止するために入札がないといけない。地元の工務店や地域の協同組合とか地元の電気を作るところを自治体が優先して購入しようとした時に、競争政策の中で規制があってできない。地域経済を守ることは理由にならない。EUは特にそれが厳しい。入札は27カ国に開かなければいけない。これが問題になっているのは、気候変動や脱成長等で地地域経済を活性する調達をしようとした時にEUでは違反にされてしまう。それらを「恐れない」。訴えられてから考えようと。それが「恐れぬ自治体」。まずは、ここで切ります。

斎藤幸平 いやぁそうなんですよ。コロナ禍で明らかになったのは、日本では公営住宅なども減少していること。ヨーロッパでは、みんなで買う協同組合型の住宅もあるが、転売できないし、投機目的のアクセスができないので、ヨーロッパのものが日本でも広がるといい。コモンにしていくことが大事で、奥田知志さんが『希望のまちプロジェクト』で話されたが、ホームレスとハウスレスは違うと。ハウスレスは野宿。ホームレスはアパートに入れたのだが、ソーシャルワーカーが帰ってしまったらコンビニご飯。隔離されているだけではないか。自分が帰属する社会がない状態がホームレス。これが大事である。住宅も貧しい人が入れればいいだけではない。コモンにしていく視点では触れ合えるコミュニティを作っていく。ある種の開かれたコミュニティを作っていくのというが奥田さんで、非常にコモン的だなと。そこに北九州市が支援して、みんなでやって行くと。それが非常に私が考えるコモンに近い。

岸本聡子 これはイタリアのラッチオの写真。住宅は公共材なのに極度に金融化されている。これをどう共有化、コモン化していくか。日本は賃貸等も十分に協同組合的な方法にできるのではないか。もう一つが国営住宅。低所得者のコンセプトがあるのだが、所得が上がると追い出されるのだが、ウィーンでは3分の2の市民が普通にチョイスしている。だけれども、価格はアフォーダブル。私有になるものをどうするか。空き家対策。老朽化しているが、自治体が戻せないか。例えば、ある空き家を認定をする。そして、自治体は信用があるのでお金を借りることができるので、ここに入りたい人はどうですか。30人でイノベーションしますかと。そして、綺麗になったアパートは管理していく。オーナーシップが移り、信用と創造力が重なってビルもイノベーションされる例がヨーロッパである。

斎藤幸平 そういうのを市民がやっていくのが大事で。それをやるためには創造力とイマジネーション力が求められる。先日、グラミーン銀行のムハムド・ユヌスと対談というか、話す機会があって、私がマルキストだと言ったら、ユヌスは「私はマルクス主義は嫌だ」と。だた、起業家精神は大事である。それがネグリとハートのアセンブリのメッセージ。賃金労働者になるか。起業家になるか。二つの道がある。そして、起業家にはなれるよと。自分でも必要なものをちょこっと作ると。それには、メンタリティも必要である。貨幣を使う賃労働者は無力な消費者でもある。マーケットにあるものしか買えない。そして、一人では作れないが、一緒にアイデアを出したりとか、太陽光パネルもとかアーバンガーデニングとなんでもいい。アントレプレナーシップ、起業家精神を身につけることが必要だし。恐れぬ自治体もそうであると。なお人新世の資本論はスペイン語とカタロニア語にも訳されたが、そんなのやってないよと言われるかもしれない。

4気候市民会議

明日香 では、最後のトピック。気候市民会議も北海道大学でのセミナーを開きました。ラジオでも話されていたので少し。

斎藤幸平 ヨーロッパの話ばかりしても仕方がないのだが、新しい民主主義での特徴は無作為抽出(くじ引き)でランダムに選ばれた人が、普通のおっさんとか若い人とか女性とかが、150人とか集まって数カ月かけて気候変動の問題について話し合う会議。もちろん、関心ある人が参加するので完全なランダムではないが、そこで決めていく。政治家ではないし、企業からのお金もないし、そして、様々でいろんな意見が出てくる。それが気候市民会議。武蔵野市でもされたが、最初に20分くらい専門の先生が、自転車とかバスとか、吉祥寺での問題とかを議論して、10人くらいのグループに別れてモビリティや交通の混雑についてどうしていくかを議論する。法的拘束力があるわけではないが、バスの値段が高すぎるとか、皆がいろんな意見が出せる場になっている。面白いなと。岸本さんもやるんですか。

岸本聡子 杉並区でもやる。一応公約なので。熟議して、提案にまとめていくのだが、なんらかの政策的なものが生かされるのではないと市民が話し合って提案してもどうなのか。テーブルに乗って可決することがないと。その辺はどう考えますか。

斎藤幸平 フランスは国レベル。120くらい政策提案が出されたが、デカすぎるショッピングモールを作らないとか、高速道路の最高速度を出さないとか。マクロン大統領が大統領権限で却下するくらいのものもあった。とても、大きかったと思う。二つ問題がある。拘束力がないこととランダムだと言ってもランダムにならないこと。関心が高い人が選ばれたり、関心がない人は来ない。

岸本聡子 参加型予算が杉並区にあるが、試験的に取り入れていきたいと考えているが、日本は議会もあって、首長も。議会があるにも関わらず参加型予算のように市民が執行できる。二元代表制がないがしろにならないかと。

斎藤幸平 「そういうものを崩していこうね」じゃないですか。代表が本当の代表になっていないよねと。いま成田悠輔が流行っているが、彼の本も一理はあって、関心があるのに一票しか投票できないのはおかしいし、全体でみたらゴミみたいな政党だったりする。そこで、彼の場合はそれをアルゴリズムとかやっていくのだが、参加型予算とかは自分たちが意思を反映させることが多角的で。

岸本聡子 選挙以外の政治参加を加速する部分とコモンや潤沢なコミュニティ育むことは親和性が高いものなのか。

斎藤幸平 縁故企業ではないが、大企業が改革を遅らせようとするのを、排除されてきた人の意見を入れることで反資本主義的なものを増やしていく。潤沢なコミュニズムを作っていくことと強い連関があると思っている。

岸本聡子 杉並区の区民とディスカッションしている中で気候正義、クライメート・ジャスティスというコンセプトがでてきた。生物多様性や世代に対しても責任がある。グローバルサウスから奪い取ってきたものを返す。ただ、杉並気候会議の中では、話し合っているが、会議を「気候正義会議」にできないかというと、区役所ではどうしたらいいのかと。日本ではどうしてもライススタイルに終始しやすい。社会構造や権力構造を考えないことはこれまで受けてきた教育もあるので、既得権益を代表してなくても「正義」という言葉が出てこないので、何かアドバイスを。

斎藤幸平 正義とは人権。日本人は人権に興味がないでしょう。僕はサッカー部なのだがカタールの人権問題からワールドカップを見ないできたし、グリーンウォッシュとかもある。気候変動とかフェミニズムと言っている人は、ヨーロッパではパブリックビューイングをやらないとかがあるが、人権とか正義とかが根づいていない中で正義を入れるのはチャレンジングだな。気候正義と言ってもわからないんだと思う。

岸本聡子 ならば「フェア」がいいんじゃないか。Z世代は研ぎ澄まされた感覚があるし、想像力を超える。こういう人たちにこそ、斎藤さんにレクチャーしてもらって。そう思っているんですけれどもね。是非、専門家として。


質疑応答〜やる気をキープするには目指す星と理論的バックボーンが有効

明日香 では、質問コーナです。

女性 府中市に住んでいて府中市でも市民気候会議をやってもらいたいと。どうしたらいいでしょうか。

岸本聡子 議員へのアプローチがいいと思います。

女性 とても、面白かったです。風力発電を作る仕事をしている。課題が重くて苦しい未来だったが、持続可能な未来についてどうやってモチベーションをキープしているのか。そのコツを。

斎藤幸平 マルクスを読むといいと思います(会場・拍手)。家族が死ぬけれどもなんとか最後まで資本論を書きあげた。ぼくはマルクスには届かないけれども。「星」みたいなものを作ったら。フォーエバー・マルクスですか。

岸本聡子 とても、明快な答え。理論的な支柱があると大きいと思う。私の場合は環境的公正という哲学。やる気は、あがったり下がったりするけれども、こういった会場で仲間と会う。そして、良くなっていい施策をしている人をチェックしたり。地方議員は話を聞いてくれるので。首長は私は聞きまぐが、皆がそうだとは限らないので地域の議員さんは大事。

男性 脱成長に共感する。成長を強制されるのは嫌だなと。ただ、それには、お金が必要だなと。そこで、発展が必要だと。杉並の独自性があるのか。また、ベンチマークできる他のモデル自治体は。

斎藤幸平 脱市長は貧しくなりましょうではないです。成長するために高円寺の前にタワーを建てましょうよりは子どものためにもっと予算を振りわける。それが脱成長。発展を内包する。お金は必要になるのだが、コミュニティを発展させたほうがいい。地方はより明確でショッピングモールができてもお金が出ていってしまう。杉並区は高円寺とか商店街が残っているので、コミュニティを支えながら発展の道を作って言って欲しい。具体的な方法は岸本さんに

岸本聡子 短く答えると脱炭素、地域経済、ケアとなると、そこで地域内で循環する。脱市長型の杉並区が見えてくる。世田谷区の保坂区長は「無い物ねだりよりもあるもの探し」と言っていたが、杉並区は商店街があるし、社会運動もある。まさに新しいテーマ。そして、多様性も掛け算に足したい。

明日香 130人近いウェビナーもあるので一人だけオンラインでの質問を受けたい。脱成長的な話題だが、茨城県でコモンズを作ろうとしているが、昔の方が貧困や飢餓が深刻で乳幼児死亡率も高かったので悩んでいるのだが。

斎藤幸平 誰も江戸時代に帰れなんて言ってません。なんでもかんでも万博とかリニアとか。軍事費とか経済成長するけれども、人々も幸せにならない。それを止めましょうと。成長する分野もあるし、全ての技術を捨てる必要がない。逆にこれだけ技術もあるので、研究とかもっとやる必要はあるけれども何でもかんでもGDPに結び付ける必要はないなと。

岸本聡子 今の質問には斎藤さんのお答えがあったので、そういう時に考えるのが所有や技術の民主化。所有が私有化されていて最後の砦が公共財。公園の中でも、ここでやったら儲かるよねとかになっている。図書館を民間に所有を移すとか。そこで、公共財、特に技術が鍵になる。住宅だけでも公共性も高いし、ワクチンもその最たるものである。私企業にお金が返っていく。そこで、民主的な政府が必要なのだが、私たちにお金が戻ってくる。創造力を変えていくことが必要ではないかと。

明日香 ここは公共施設なので締めなければなりませんので、時間になりましたので、最後にメッセージを。

斎藤幸平 大変な時代になってきたので、大変になればなるほど今日の話を踏まえれば、ますます民主主義が重要になるのだし、弱い人から「さようなら」という社会になってしまうからだ。そして、民主主義を作れるのは私たちなので私たちが主人公なのだ。

岸本聡子 持続可能な未来。中野区でも一昨日に市民会議で話をしたが地理的にもつながっているので、元気な市民がいい代表を出して、自分も議員も育てていくことが大事で地域社会でポジティブな連鎖を作っていきたい。

明日香 今日、こうした議論ができるだけも希望なんではないかと思います[終]。

編集後記

2020122001S.jpg 市民団体【西荻オトナカ大作戦】ゼロカーボンシティー杉並の会の共催で有料講演会12月20日19:00から杉並区の阿佐谷地域区民センターでされるというのでさっそく行ってきた。本稿は、同講演会を聴きながらメモしたものである。録音はしていないし、あくまでも、会場での聞き取りメモを再整理させていただいたものとしてご理解いただきたい。
 なお、会場では終わってからサイン会もされていたので、岸本、斉藤両先生のサインをいただいた。斎藤幸平氏は左利きで、わざわざサイン用のペンをもっていったのに、かすれたご自分のペンでサインをしてくださった。素晴らしい記念品である。
posted by 情報屋 at 19:30| Comment(0) | 講演会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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