2022年06月05日

コロナ危機、ウクライナ危機のもとでの家族農業の役割

家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン第5回総会代表挨拶

2022060501s.jpg村上真平 愛農家の会長をひいて自分の農場を中心とした農業の生活をしている。いま、政府も世論も小規模家族をサポートする雰囲気になっていない。この方向性を変えていきたいのだが、農作業に集中しているとどうしてもそれに集中してしまう。現場にいながら自然を壊さないで質素に生きていくのであれば、それだけで地球に責任が持てるのか。4年目だが皆さんとも一度原点に返って未来、地球のことを考えて建設的な想いでやっていきたい。

学習会:コロナ危機、ウクライナ危機のもとでの家族農業の役割
 FFPJ常務理事、愛知学院大学教授関根佳恵

はじめに

2022060505s.jpg 私の話は農業が中心となる。副代表の上垣さん、二平さんからも後ほど、林業や漁業についてもふれてもらいたい。国連は家族農業をSDGs目標達成の重要なものとして位置づけている。2019年6月に設立された。そして、FAO日本事務所との政策対話、政府への政策提言をしてきた。個人的には絵に描いたような里山の中で育った。これは、フランスに留学していたときの現場、現場に行くのが好きな研究者である。そして、新たな運動として公共調達として有機農産物を取り入れる動きがでてきている。

現在のフードシステムはすでにコロナ前から壊れている

 コロナの以前から食料危機が言われてきたのだが、それをまとめるとこうなる。まず、79億人がいる中で30億人が健康な食事が採れず、8億人が飢餓なのだが、3分の1が食べられずに捨てられている。

 また、温暖化の3分の1が輸送を含めたフードシステム由来で、生物多様性喪失の7〜8話割も農業が原因である。その一方で、食料安全保障も食料主権も実現できていない。つまり、いまのフードシステムは壊れている。

 気候危機に対しては、抜本的な対策、生物多様性の保全、分配のあり方をより公正にする必要がある。また、日本では貿易の自由化が万能論なのだが、それに対する疑問が国連の場でも議論されるようになっている。

 こうした中で2020年にコロナが起こった。コロナの農への影響だが、サプライチェーン、禁輸措置があったし、私たちもアジアで家族農業で活動しているインドの活動家がSNSでつながっていた知り合いが他界した。

直面するコロナ危機〜出てきたワンヘルスという問い直し

 そして、世界中で飢餓が悪化している。日本でも輸入に頼っている加工食品の材料、タネが入らず国産に回帰する。マスクと同じ用に食料も自給していかなければならないという意識が高まってきている。子ども食堂への支援があったのだが、アルバイトができない。

 次に需要の創出だが、学校の閉鎖、外食店の閉店、外国人旅行者の激減、所得減少で家庭内での需要も落ち、農家の経営難、米価の下落として昨年大きく問題になった。

 こうした中で応援消費をしたい、牛乳とかコメが廃棄されることを防ぐことが盛り上がり、消費者とつなぐオンラインの「食べちょく」の市場規模が半年で37倍になっている。つまり、新しい流通がでてきている。

 労働力不足については、大規模農業を進めている地域で技能実習生が入国できず収穫、作付ができないと。そこで、旅行関係業界から応援があったりテレワークによる半農半Xがでてきたりしてる。

 そして、人間と自然の関係性の問い直しということで、コロナは蝙蝠が持ってきたウイルスということで過度の開発への問い直し、人間の環境と動物、ワンヘルスも着目されている。

2022060520.jpg このグラフは、昨年の国連白書から取ったものだが、2090から2020年で栄養不足人口が増えている。コロナの前までも割合も増えている。SDGsの目標から遠ざかっていたのがさらに悪化したと。

日本にとってのウクライナ危機の象徴は肥料高騰

 日本にとっても、これは他人事ではなく、食料値上げに対して「生活に影響がある」と83%が答えている。政府は輸入の依存を見直す議論が必要なのではないか。そして、農家は肥料価格が高騰して苦しんでいる。政府は2022年2月安全保障検討委員会を発足させ、輸入元の多元化や施肥量の削減を提唱しているが、この中でコメ価格が低下している。

2022060506s.jpg なお、日本では報じられていないがガーディアンを見ていると高騰に便乗した、投機マネー存在があるようである。燃料価格の高騰、そして、肥料価格も全農によれば、尿素が94%、化成肥料は塩化カリで80%を値上げするとしている。生産資材も15年に比較して重油が136%、配合飼料も126%高騰している。こうしたことに対して、大規模農家を対象にした2年6月の日本農業法人協会のアンケート調査なのだが、それでも、価格転嫁ができず経営が苦しくなっていると96.1%が答えている。小規模家族農業はさらに厳しいのではない。

 そして、世界の食料価格の推移を見てみると、食料安全保障の概念が生まれた1970年代のピークを超えて、さらに食料があがり続けている。その中でも、食料自給率が下がり続けている。そして、飼料自給率を反映するとさらに低い。日本は、子牛や雛も輸入している。

多重危機に対して何を見直すべきか

 こうした多重の危機に直面する中で、以前から食料は深刻になると言われてきたのだが、多くの人はいまだにいつでも輸入できることを前提としているが、コロナ禍やウクライナ危機でこの前提が崩壊したのではないか。工業的な食料システムからの転換しかない。

 第一に、輸入依存から脱却し、国内農業を支持する政策の拡充、多国籍企業からの自律を目指していくことが必要ではないか。

 第二に、地域資源の活用。例えば、輸入飼料でなく、飼料高騰の影響がでない山地放牧も重要なのではないか。そして、飼料作物を作っていく必要がある。そして、有機質堆肥や緑肥を作ること。アグロエコロジーに転換することが重要である。

 第三に、新自由主義からの脱却。現行の自由貿易を段階的に撤廃し、連帯と助け合いに基づく新たしい食料体制に移行すべきことが国連の人権理事会でも提言されている。日本ではなかなか知られていないのでこれを議論する時期に来ているのではないか。

20世紀の農業の近代化=エネルギー依存

2022060519.jpg この20世紀の100年で農地面積は2倍になり、生産量は6倍になったのが、エネルギー消費量が85倍になっている。化石燃料に依存した農業になっている。そして、1950年代には生産農業所得が7割あったのが、いまは40%にまで落ちている。

2022060521.jpg 世界の農業累計を見ると、日本のように機械に依存する農業は2.3%でしかない。世界の農業のほとんどはいまだに人力である。

2022060522.jpg 日本は土地生産性、労働生産性を重視しているが、資源やエネルギー生産性、多面的機能の維持、社会的生産性を評価するべきである。大規模農業は資源の75%を使いながら30%の食料しか生産できていない。

家族農業はレジリアンスが高いからこそ重要

 次に家族農業の課題と役割だが、様々な危機に直面している。タネ採りの困難化もある。高温障害や災害、病害虫の増加があって、コロナに農家が自身が感染したりしていて、タネが採れない。そして、それに、価格転嫁ができない。

 ただ、新たな追い風もある。いままで意識を向けてこなかった人も気づき始めている。先程、村上代表からは「認識が足りない」という声もあったが、どう一緒に育てていけるかが大きなポイントである。家族農業は、しなやかな強さ、レジリアンスがあることも評価されている。2008年の食料危機のときもそうだったが、多様な収入源を持っていること。半農半X、地域資源に依存していること。そして、小規模だからこそ資源・エネルギー効率がよく、小回りだからこそ経営転換もやりやすい。これに対して、外食チェーンと契約している大規模農家は柔軟に経営方針が変えられない。これからは、アグロエコロジーへの転換をリードしていくことだと思う。

持続可能な社会に向けて逆行するゆりもどし

 一方で、こうした動きを打ち消すゆり動きも起きている。多重危機による国連サミットを含め、ビルド・バック・ベターなのだが、その解決策として、精密農業、日本で言うスマート農業、データ収集、遺伝子工学、貿易の自由化が話されている。市民社会が求めてきた食料主権、アグロエコロジー、市民社会の役割については、一言もふれられてこなかった。また、懸念されるのは2022年3月に欧州連合で「食料安全保障」へのシフトが起こっていることである。食料安全保障というと言うとよく思えるのだが、この美名のもとに、気候危機、社会保護、社会政策が後退している。グリーンディール、F2Fも見直されてきている。グリホサートの規制を延期したり、耕地の4%を自然に返すことが廃止されたり、改革の後退がある。そこにはコパジェタ、フランスのFNSEA、イタリアのコルディレッティ等の保守系のロビー団体が「食料主権を守るために」として、市民が使ってきた言葉を使おうとしている。つまり、市民社会が使ってきた言葉を逆手に取ることで方向が違っていくことが見られる。有機農業に対しても、生産性が低い、高い、需要がない。行政の負担になると言われている。そして、有機ではなく、より緩やかな環境保全型農業を認証する流れが強くなっている。消費者が何が有機なのかがよくわからなくなってきている。

 日本はコロナ禍が起きてから、首相が2回かわっているが、安倍政権の最後のときには、半農半Xが認められ、新しい緑の食料システムの法制化もあった。この中で、ゲノム編集、RNA農薬も推進されている。そして、貿易の一層の自由化、農地の集約集積化、無人走行トラクターが推進されている。欧米の変化は数年から数ヵ月遅れて入ってくるので。プラットフォームで重視しているアグロエコロジーの概念も盗用される可能性がある。ただ、そもそも日本ではアグロエコロジーが普及していないので盗用する動機があるかどうかわからないが、今後は、小規模家族農業への攻撃がでてくる可能性がある。そして、経済安全保障の重要性は共有されているが、これがナショナリズムを掻き立てることがある。平和と公正を求める運動が大事である。そして、私が注目しているのが学校給食での公共調達である。この写真はフランスの保育園での給食である。そして、有機野菜の農場をジャーナリストが視察している。

質疑応答

宇田篤弘 埼玉でも千葉でも雹が降ったりして複合的な危機がある。林業、漁業についてお聞きしたい。

2022060508s.jpg上垣喜寛 ウッドショックで木材価格が高騰し、ロシアが輸出禁止、輸入禁止となっている。一般家庭ではロシアの材が使われてきたのだが、これがさらに高騰する。こうした中で、木材について国内での増産政策が取られていく。さらに森林所有者が意欲がない中で業者の盗伐がでてきている。FFJPの会員の地域でも業者が無断で切ってくる可能性がある。これがすでに伐採で起きている災害をさらに引き起こす。それが懸念するところである。関根さんの報告を聞いていると家族農業がやれない農家が、森林を売って土台が崩れてしまう。そういう嬉しくない情報である。

宇田篤弘 和歌山県でもビジョンができていない。

二平章 漁業でもウクライナの問題、コロナ問題で、漁業は油を使うのでセーフティネットはあるが、これも先にならないと保障されないので、これの値段があがっている。それから、沿岸の漁業者がこれまで、高級魚、多彩な魚を獲っていたのだが、その消費が止まって出荷ができない。さらに制度的には水産も規制改革路線で漁業法が戦後民主的なものから3〜5km内で知事が認めれば沿岸で養殖施設を作ったり定置網漁業ができると。法的に変わったことが来年からなる。今年の秋には申請が受け付けられて具体的に動いている。知事と業者が仲良くなれば、来年度から漁業圏で、私企業の漁業権が混在する可能性がある。

宇田篤弘 農業では中国から化学肥料でリン酸が入ってこない。タマネギの値段もあがっているが中国からのものが止まってしまったと。イクラ、カニがどうなるのか。川島さん。

2022060510s.jpg川島卓 川島です。21世紀の水産を考える会です。市民目線で活動している。日本はロシアへの水産物の依存度が高く1割近くはロシアから来ている。タラコとか明太子、シャケ、マスもロシア。ズワイガニ、タラバガニもロシア。また、温暖化で漁場が北にシフトしているので、以前の日本海域ではサンマも獲れないので、ロシア海域で漁業もさせてもらっている。だからまだ、禁輸措置をしていない。以前はアジア、中国からだったが、よりロシアからが増えている。禁輸をやると日本の方が干上がってしまう。そして、欧州のノルウェーから空輸されるサーモンもロシア上空を飛べないと。今後の流れとして早く正常な状態に戻すのがいいのだが、国内へのシフトが非常に大事なのかなと思っている。

藤原敬一 現在、食品業界では大豆ミートなどの代用肉や培養肉がトレンドになり行政も後押ししているようである。しかし、その内実は輸入原料や食品添加物の多用、ゲノム編集技術の活用などの問題がある。家族農業やアグロエコロジーの立場からもこの流れへの対応が必要かと思う。

能村聡 小規模家族農林漁業のことをさらに幅広く普及させていきたいと思う。SDGs関する情報が様々な媒体で流されていて、一時的ブームかとも最初は思っていたが、大手マスメディアなどを通して、企業への周知、教育現場などで若い方、への周知が広がっている。新規就労希望者も潜在的に増えている。なかにはSDGsウォッシュ(グリーンウォッシュ)とも思える、これは「?」というものもあるが、「ほんもののSDGs」である、FFPJの提案する小さな家族農林漁業のあり方を、SDGs関するプラットフォームを通じた発信を、ウォッシュ批判精神は、若干、我慢抑制しつつ、幅広い潜在的関心層ヘリーチする手段として行ってはどうであろうか。

ディスカッション

2022060513s.jpg関根佳恵教授 各地で講演もするのだが、いまは意識の転換の途中で我々の考え方を支持してくれる人もいるが、日本の新しい価値観に馴染んでいない方が圧倒的に多いのかなと。世界的にはこうした考え方は、10年以上は共有されているのだが、韓国も今度勉強会をするのが、それを[農林省の人に]紹介すると「この遅れた国に何を学ぶのか」と上から目線であると。また、グリーン・ウォッシュも広がっている。GMOの餌を家畜に与えるCMが流れたりと不思議な状況もある。ただ、若い人は変わってきている。そして、高齢の人でもわかっている人もいるので、世代で分断するのは良くない。さらに、今は違う考え方であっても接点を持つことでも相手も変わっていくこともある。地元でも広がることを期待している。

2022060515s.jpg三浦広志 南相馬市で農業再生をしている。昨年に宇田さんに来ていただいた。そして「食の安全」の映画をやってきた。2年目でコットンの種まきイベント、ソーラー・シェアリング、そして、田んぼの生き物調査もしている。最終的に68haを管理し、実験場にしようと思っている。メガソーラーの収益金を農業の投資にあてる。スマート農業でロボットコンバインも入れた。昔は合鴨であったが、スマート農業でアタッチメントを付けた。機械力でできるようにしている。有機農業ができることがわかったので若い担い手を育てていく。全員が避難しているので戻ってくる人は一人もいない。新しい農村、集落ができることを試してみたいと思っている。家族農業と半農半Xを考えている。コモンズという会社を作って出資をして実現していくと。そして、入植したシェフの人からも「オーガニックて何って」て聞かれたので周知していく必要がる。また、みどりの食料システムについて市から聞かれたので話したら、「三浦さんがうまく行ったら応募します」と。何が持続可能かを実践しながら浜通りでやっていく。

2022060512s.jpg全日本農民組合連合会市村忠文 では、次に和歌山の活動を。

なかむらいづみ なかなか自給率をあげるのは難しく、和歌山は国よりも低い。ということで、なかなか進まなかったが、国がみどりの食料システム戦略を打ち出したので、それに入っている文言、有機農業とか学校給食を入れて、県会議員に話を始めた。そうした議員の一人が紀の川市の市長になったりとか。和歌山市でも8月に市長選があるのだが、公約で有機給食を政策に入れているとか。これはどんどん向こうから来るな。国が有機農業を打ち出したことを受けて地方でも広がりつつある。それで新しい票が入ると。

2022060517s.jpg そこで、沿岸であれば沿岸でのものを給食で食べさせる。さらに、公共調達なので、公共施設、老人施設、病院、できれば庁舎の食堂とか。さらに、大手の企業でも使うとメリットになることを条例に入れたい。つまり、ローカルフード条例をいれていきたいと。世界と連帯しつつ、国が出したことは利用しつつやっていきたい。

市村忠文 素晴らしい。

2022060502s.jpg村上真平 自伐型が今後の方向性だと思います。とはいえ、環境や有機への意識の差は、地方にいるのですごく実感している。FFPJがまとめていくのが本物だというのだけれども、実際問題で地域で動かしている人の意識は有機農業についてはポジティブではない。小さなヘリコプターが飛ばせないんだよねとよく言われる。そして、人も少なくなっている中で大きな問題になっているのだが、僕は豆乳、豆腐、パンも作っていてその生き方で、個人ではかなりの形になっているのだが、それが広がっていくことに対して、あまりにも理想を語ると難しいことがあった。そこで、福島と岡山のPFの動きは刺激を受けた。三浦さんともお会いしましたが、ソーラー・シェアリングとスマート農業で福島県という地域もあって補助は入りやすい。でも有機農業をメジャーにしていくと。実践されているということで是非、お伺いしてお話をしたいと。また、和歌山のはさすがだなと。僕らは緑の食料システムは問題提起ばかりしているのだけれども、前に吉田[太郎]さんから「国が変わると地方は前向きに変わる可能性があるよ」と。まさに、それを利用している。都合がいい言葉を使えば選挙に勝てるよと。

編集後記

 本稿は2022年6月5日(日)13:30〜16:00にかけて行われた「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン」の第5回総会での学習会の内容とその後のディスカッションをまとめたものである。

posted by 情報屋 at 13:30| Comment(0) | 講演会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください