家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン第5回総会代表挨拶
学習会:コロナ危機、ウクライナ危機のもとでの家族農業の役割
FFPJ常務理事、愛知学院大学教授関根佳恵
はじめに
現在のフードシステムはすでにコロナ前から壊れている
コロナの以前から食料危機が言われてきたのだが、それをまとめるとこうなる。まず、79億人がいる中で30億人が健康な食事が採れず、8億人が飢餓なのだが、3分の1が食べられずに捨てられている。
また、温暖化の3分の1が輸送を含めたフードシステム由来で、生物多様性喪失の7〜8話割も農業が原因である。その一方で、食料安全保障も食料主権も実現できていない。つまり、いまのフードシステムは壊れている。
気候危機に対しては、抜本的な対策、生物多様性の保全、分配のあり方をより公正にする必要がある。また、日本では貿易の自由化が万能論なのだが、それに対する疑問が国連の場でも議論されるようになっている。
こうした中で2020年にコロナが起こった。コロナの農への影響だが、サプライチェーン、禁輸措置があったし、私たちもアジアで家族農業で活動しているインドの活動家がSNSでつながっていた知り合いが他界した。
直面するコロナ危機〜出てきたワンヘルスという問い直し
そして、世界中で飢餓が悪化している。日本でも輸入に頼っている加工食品の材料、タネが入らず国産に回帰する。マスクと同じ用に食料も自給していかなければならないという意識が高まってきている。子ども食堂への支援があったのだが、アルバイトができない。
次に需要の創出だが、学校の閉鎖、外食店の閉店、外国人旅行者の激減、所得減少で家庭内での需要も落ち、農家の経営難、米価の下落として昨年大きく問題になった。
こうした中で応援消費をしたい、牛乳とかコメが廃棄されることを防ぐことが盛り上がり、消費者とつなぐオンラインの「食べちょく」の市場規模が半年で37倍になっている。つまり、新しい流通がでてきている。
労働力不足については、大規模農業を進めている地域で技能実習生が入国できず収穫、作付ができないと。そこで、旅行関係業界から応援があったりテレワークによる半農半Xがでてきたりしてる。
そして、人間と自然の関係性の問い直しということで、コロナは蝙蝠が持ってきたウイルスということで過度の開発への問い直し、人間の環境と動物、ワンヘルスも着目されている。
日本にとってのウクライナ危機の象徴は肥料高騰
日本にとっても、これは他人事ではなく、食料値上げに対して「生活に影響がある」と83%が答えている。政府は輸入の依存を見直す議論が必要なのではないか。そして、農家は肥料価格が高騰して苦しんでいる。政府は2022年2月安全保障検討委員会を発足させ、輸入元の多元化や施肥量の削減を提唱しているが、この中でコメ価格が低下している。
そして、世界の食料価格の推移を見てみると、食料安全保障の概念が生まれた1970年代のピークを超えて、さらに食料があがり続けている。その中でも、食料自給率が下がり続けている。そして、飼料自給率を反映するとさらに低い。日本は、子牛や雛も輸入している。
多重危機に対して何を見直すべきか
こうした多重の危機に直面する中で、以前から食料は深刻になると言われてきたのだが、多くの人はいまだにいつでも輸入できることを前提としているが、コロナ禍やウクライナ危機でこの前提が崩壊したのではないか。工業的な食料システムからの転換しかない。
第一に、輸入依存から脱却し、国内農業を支持する政策の拡充、多国籍企業からの自律を目指していくことが必要ではないか。
第二に、地域資源の活用。例えば、輸入飼料でなく、飼料高騰の影響がでない山地放牧も重要なのではないか。そして、飼料作物を作っていく必要がある。そして、有機質堆肥や緑肥を作ること。アグロエコロジーに転換することが重要である。
第三に、新自由主義からの脱却。現行の自由貿易を段階的に撤廃し、連帯と助け合いに基づく新たしい食料体制に移行すべきことが国連の人権理事会でも提言されている。日本ではなかなか知られていないのでこれを議論する時期に来ているのではないか。
20世紀の農業の近代化=エネルギー依存
家族農業はレジリアンスが高いからこそ重要
次に家族農業の課題と役割だが、様々な危機に直面している。タネ採りの困難化もある。高温障害や災害、病害虫の増加があって、コロナに農家が自身が感染したりしていて、タネが採れない。そして、それに、価格転嫁ができない。
ただ、新たな追い風もある。いままで意識を向けてこなかった人も気づき始めている。先程、村上代表からは「認識が足りない」という声もあったが、どう一緒に育てていけるかが大きなポイントである。家族農業は、しなやかな強さ、レジリアンスがあることも評価されている。2008年の食料危機のときもそうだったが、多様な収入源を持っていること。半農半X、地域資源に依存していること。そして、小規模だからこそ資源・エネルギー効率がよく、小回りだからこそ経営転換もやりやすい。これに対して、外食チェーンと契約している大規模農家は柔軟に経営方針が変えられない。これからは、アグロエコロジーへの転換をリードしていくことだと思う。
持続可能な社会に向けて逆行するゆりもどし
一方で、こうした動きを打ち消すゆり動きも起きている。多重危機による国連サミットを含め、ビルド・バック・ベターなのだが、その解決策として、精密農業、日本で言うスマート農業、データ収集、遺伝子工学、貿易の自由化が話されている。市民社会が求めてきた食料主権、アグロエコロジー、市民社会の役割については、一言もふれられてこなかった。また、懸念されるのは2022年3月に欧州連合で「食料安全保障」へのシフトが起こっていることである。食料安全保障というと言うとよく思えるのだが、この美名のもとに、気候危機、社会保護、社会政策が後退している。グリーンディール、F2Fも見直されてきている。グリホサートの規制を延期したり、耕地の4%を自然に返すことが廃止されたり、改革の後退がある。そこにはコパジェタ、フランスのFNSEA、イタリアのコルディレッティ等の保守系のロビー団体が「食料主権を守るために」として、市民が使ってきた言葉を使おうとしている。つまり、市民社会が使ってきた言葉を逆手に取ることで方向が違っていくことが見られる。有機農業に対しても、生産性が低い、高い、需要がない。行政の負担になると言われている。そして、有機ではなく、より緩やかな環境保全型農業を認証する流れが強くなっている。消費者が何が有機なのかがよくわからなくなってきている。
日本はコロナ禍が起きてから、首相が2回かわっているが、安倍政権の最後のときには、半農半Xが認められ、新しい緑の食料システムの法制化もあった。この中で、ゲノム編集、RNA農薬も推進されている。そして、貿易の一層の自由化、農地の集約集積化、無人走行トラクターが推進されている。欧米の変化は数年から数ヵ月遅れて入ってくるので。プラットフォームで重視しているアグロエコロジーの概念も盗用される可能性がある。ただ、そもそも日本ではアグロエコロジーが普及していないので盗用する動機があるかどうかわからないが、今後は、小規模家族農業への攻撃がでてくる可能性がある。そして、経済安全保障の重要性は共有されているが、これがナショナリズムを掻き立てることがある。平和と公正を求める運動が大事である。そして、私が注目しているのが学校給食での公共調達である。この写真はフランスの保育園での給食である。そして、有機野菜の農場をジャーナリストが視察している。
質疑応答
宇田篤弘 埼玉でも千葉でも雹が降ったりして複合的な危機がある。林業、漁業についてお聞きしたい。
宇田篤弘 和歌山県でもビジョンができていない。
二平章 漁業でもウクライナの問題、コロナ問題で、漁業は油を使うのでセーフティネットはあるが、これも先にならないと保障されないので、これの値段があがっている。それから、沿岸の漁業者がこれまで、高級魚、多彩な魚を獲っていたのだが、その消費が止まって出荷ができない。さらに制度的には水産も規制改革路線で漁業法が戦後民主的なものから3〜5km内で知事が認めれば沿岸で養殖施設を作ったり定置網漁業ができると。法的に変わったことが来年からなる。今年の秋には申請が受け付けられて具体的に動いている。知事と業者が仲良くなれば、来年度から漁業圏で、私企業の漁業権が混在する可能性がある。
宇田篤弘 農業では中国から化学肥料でリン酸が入ってこない。タマネギの値段もあがっているが中国からのものが止まってしまったと。イクラ、カニがどうなるのか。川島さん。
藤原敬一 現在、食品業界では大豆ミートなどの代用肉や培養肉がトレンドになり行政も後押ししているようである。しかし、その内実は輸入原料や食品添加物の多用、ゲノム編集技術の活用などの問題がある。家族農業やアグロエコロジーの立場からもこの流れへの対応が必要かと思う。
能村聡 小規模家族農林漁業のことをさらに幅広く普及させていきたいと思う。SDGs関する情報が様々な媒体で流されていて、一時的ブームかとも最初は思っていたが、大手マスメディアなどを通して、企業への周知、教育現場などで若い方、への周知が広がっている。新規就労希望者も潜在的に増えている。なかにはSDGsウォッシュ(グリーンウォッシュ)とも思える、これは「?」というものもあるが、「ほんもののSDGs」である、FFPJの提案する小さな家族農林漁業のあり方を、SDGs関するプラットフォームを通じた発信を、ウォッシュ批判精神は、若干、我慢抑制しつつ、幅広い潜在的関心層ヘリーチする手段として行ってはどうであろうか。
ディスカッション
なかむらいづみ なかなか自給率をあげるのは難しく、和歌山は国よりも低い。ということで、なかなか進まなかったが、国がみどりの食料システム戦略を打ち出したので、それに入っている文言、有機農業とか学校給食を入れて、県会議員に話を始めた。そうした議員の一人が紀の川市の市長になったりとか。和歌山市でも8月に市長選があるのだが、公約で有機給食を政策に入れているとか。これはどんどん向こうから来るな。国が有機農業を打ち出したことを受けて地方でも広がりつつある。それで新しい票が入ると。
市村忠文 素晴らしい。
編集後記
本稿は2022年6月5日(日)13:30〜16:00にかけて行われた「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン」の第5回総会での学習会の内容とその後のディスカッションをまとめたものである。






