2021年02月22日

資本に対抗する下からのグレート・リセット構想

生活クラブ京都エル・コープ 境毅

平飼いが売れるフランスとケージ飼を存続させるために献金する日本

 日本は(脱カーボンやSDG的なライフスタイルへの転換を)義務的にいやいややらされているが、ヨーロッパにおいては義務ではなくむしろ進んだ生活として前向きに受け止められている。例えば、フランスでは鶏も平飼があたりまえで、有精卵しか売れない。一方、日本は既得権益のケージ飼をオリンピックで公認するために献金をしたりしている。

近代を乗り越えるのはもうひとつの近代ではない

Jun-Ui.jpg そこで、まず、1960~70年代の公害先進国であった当時を振り返ってみたい。宇井純(1932〜2006年)は「公害原論」(1971)亜紀書房で重要なことを述べている。公害では、客観的な第三者はいない。自分は公正な第三者であると名乗る人は加害者側の人間である。そして、官庁や労働組合も動かない中、結局、ただ一人だけから始めるしかない。国全体を批判した運動は勝利できず、下からの手近な市町村から攻めていく運動が勝利した。

Beck.jpg 次にこれをウルリヒ・ベック(Ulrich Beck, 1944〜2015年)の「変態する社会」(2017)岩波書店とを比較してみたい。ベックはチェルノブイリ事故で着目されたが、ドイツが脱原発で舵を切った専門委員の一人。2015年に他界したのだが、その遺稿を本にしたのが、「変態する社会」である。

 ベックはこの本で過去のリスク論を否定している。つまり、近代を乗り越えるもうひとつの近代、「再帰的近代化」を目指していたが、それがあかんと考えた。

ムニシパリズム世界都市連合運動がおきている

 地球全体がリスクに直面する中で、国家を超えたコスモポリタン的な拘束力をどう構築するのか。実は、ムニシパリズムで伊藤さんが話したが都市連合が起こっている。都市連合とはベックのいう世界都市である。ソウル市がその魁で社会的連帯会議を提唱した。

 そして、社会学の問題。ピエール・ブルデュー(Pierre Bourdieu, 1930〜2002年)やミッシェル・フーコ(Michel Foucault,1926〜 1984年)は社会秩序がどうやって再生産されるかを示した。そこで、ムニシパリズムの根っこを作ることが大事だが、日本は根っこを抜く力が強い。そこで、外国の事例を紹介するよりも、みんなで力を合わせることが大事で、それが下からのグレート・リセットである。

上からの技術リセットに対して下からの連帯で抵抗を

 20210222S.jpg2020年のダボス会議では「グレート・リセット構想」が提案された。デジタル経済のもとでの経済、社会、生活様式にまで至る根底的な変革が目指されている。これは、世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ会長とオンラインメディア『マンスリー・バロメーター』のティエリ・マルレ代表が、コロナ後の世界を読み解く『グレート・リセット』(2000)日経ナショナルジオグラフィック社を読めばわかるのだが、マイクロチップ等の第四次産業革命の技術が進んでいく。この科学技術の進歩に対抗するのは、縦型ではなく横型の社会の連帯。遺伝子組み換えには、すでに勝ったと言いたいのだが、その事実も報道されていない。

日本の行政は人々が自立することを嫌う

 そして、根っこを抜くのが行政である。役所がそんなことをするとは思わないが、人が横につながることを嫌う。社会福祉協議会も天下りで、高槻市にも4億円が降りる。もともとはNPOも横につながって楽しくやっていたが、天下り先にしようとして交付金を渡して互いに競争させると。

Serge−Latouche.jpg 社会福祉協議会もボランティアだったのだが、人々が自主的にやることをすごくいやがる。日本の官僚制は明治の官僚制が残っている。[菅政権は]600人の高級官僚の任命権を握ったが、官庁を維持する規則を明治時代をそのまま使っている。肩たたきよりも天下ったほうがいい。地方の役場もそれをやっている。ヨーロッパは政府や自治体、スウェーデンは運動側に寄り添っている。それに対抗してどうやっていけるか。村社会や近代以前にそこに帰るのではなく、セルジュ・ラトゥーシュ(Serge Latouche,1940年〜)の話がヒントになる。

ディスカッション

M.A 運動の方法はどうしたらいいのか。

境毅 社会的連帯経済は、スペインやラテンアメリカ諸国で発達している。単体ではできない。社会的連帯という大きな枠組みの中の組織で、労働者協働組合は現に、いっぱいある。法律はないがそうして一般社団、NPO、事業協働組合、有限会社でやっているのもある。

 ただし、今度の法律、労働者協同組合法では、雇用関係を結ぶので最低賃金を払うことになる。生活クラブのワーカーズ・コレクティブでも最低賃金を払うのが大変である。

 ヨーロッパ諸国でうまくいっているのは自治体が仕事を出しているためだ。日本は行政の下請けの仕事は出すが仕事は出さない。例えば、団地の運営の仕事も天下りした役人がやっている。そういう仕事をどう起こせるか。日本労働者協働組合は規模も大きいし、行政とも関係があるので。レイドロー報告との関係については次回行いたい。

T.I ヨーロッパにおけるミュニシパリズム運動の背景には、水道事業の民営化がある。日本の場合、農に鍵があるのではないか。米国から核の傘を借りているため、今は日本農業のためになることをやらずにいるが、農業の基本的な解決方向があるのではないか。

長谷川浩 食の問題は本当に深刻だが、マスコミを通じて真実がほとんど知らされていない。大都会の消費者でも意識しているのはごく一部である。数あるフェイクニュースでなく正しい事実に行けるかが大きい課題である。いまは、SNSで誰もが発信できるので、世論づくりが大事である。だが、どういう仕事がこれから、できるのか。指定管理制とか、行政が仕事を出すのになるのか。

個々は弱いが横の連帯がある韓国と違いで分裂していく日本

境毅 韓国の市民が、「生活クラブかながわ」等、日本の市民団体を行脚して調べた。彼らの結論は、それぞれは立派だが横のつながりがまったくないということだった。逆に韓国は個々の事例では日本よりも劣るが横のつながりがあると。それが日本の弱点である。日本は違いがあったら分裂してしまう。違いを認めて互いを力になる。そういう場、実践が必要である。

 それには、事業体であることが大きい。一人の市民だと行政への働きかけも弱い。2005年まではNPOには横の連帯があった。共生型社会推進フォーラムも自治労や釜ヶ崎支援機構も入っていた。そして、1,000人規模のイベントができていた。けれども、橋本徹が大阪市長になって自治労を締め付けた。解散したのは、事業がないからである。僕はシンクタンクにしようといったのだけれども。

 日本では、シンクタンクをやっていても仕事が取れない。市民団体もバラバラだが業界団体もバラバラである。青年会議所がかろうじてあるくらいだ。官も縦割り。ただし、自治体も高齢化で何もできなくなっていることが、ある意味ではチャンスかなと。

Y.T 人をつなぐ。そして、協同を広げる。半藤一利氏も言っていたが、そうしたことを経済のみならず政治にも反映していく。違いを超えて大きなネットワークを作っていくしかない。

【画像】
沖縄大学宇井純名誉教授の画像はこのサイトより
ウルリヒ・ベックの画像はこのサイトより
グレート・リセットの画像はこのサイトより
オルセー大学セルジュ・ラトゥーシュ名誉教授の画像はこのサイトより

編集後記

 本稿は2021年2月22日に一般社団法人 縮小社会研究会 & 母なる地球を守ろう研究所の共催によってなされたオンライン連続セミナー第1回「自分達で自分達を雇う労働者協同組合学習会」での生活クラブ京都エル・コープの境毅(1941年〜)による講演の内容である。
posted by 情報屋 at 19:30| Comment(0) | 講演会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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