第一部 みどりの食料システム戦略と日本農業の未来
農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課長 秋葉一彦
はじめに
農水省は本年5月に新たな政策方針として、「みどりの食料システム戦略」を策定した。農水省は法律に基づいて5年後を目標に策定する「基本方針」を策定しているのだが、これとはまったく異なるものである。
戦略については、有機の方を含めて色々な意見をいただいているが、農業を持続的にしていく。食料を持続的に提供するためには現場で何をしていかなければならないのかを議論して仕事をしていただくことが大事かなと思っている。かなり話は多岐に渡るが今後の議論に役立てばいいと思っている。
気候変動は深刻化
まず、地球温暖化による気候変動と大規模自然災害の増加だが、いまも台風が九州に来ているのだが、平均気温がこの100年で1.26℃あがっている。世界の平均の倍である。数年前までは地球全体の温暖化とのつながりがあいまいであったが、いまは温室効果ガスが地球を蝕んでいることが明らかになり、農林水産業だけでなく、人類が大変なことになることを各国が認識するようになった。
こうした中で、農業も影響を受けている。米が白く濁って品質が低下したり、リンゴやミカンでも着色不足になることが問題になっている。巨峰も夏に色がつかなくなってきている。また、1時間降雨量50mm以上の年間発生回数も増えている。短時間の豪雨が増えているため、これに伴い災害も増えている。雨も適度に降れば土壌に浸透するが大雨が降れば浸透しない。もちろん、これは土づくりにもよるのだが。
日本の温室効果ガスの影響
次に日本の温室効果ガスの世界全体と日本のものだが、CO 2換算すると520億tある中で、23%が農林業由来とされている。4分の1あることから世界的には農林業は温室ガスを出しているので対策をすべき産業とみられていることが事実である。
日本はこれに対して、12.12億tで農林水産業は4,747万tで3.9%である(2019年)。これは「日本は少ないからいい」ということにはならない。やはりどう減らすかを考えなければならない。この3.9%の内訳をみると燃料燃焼、トラクターや乾燥機等の燃料を使うものから出るのが1,570万tで34.1%である。次のメタン発酵がある。家畜の消化が756万t、稲作が1,195万t、家畜排せつ物233万tで46.2%である。N20 で19.7%を占めている。次に亜酸化窒素。排せつ物が369万t、農用地の土壌が558万t。これが窒素の7割が吸われないので脱窒してしまうと。
生産基盤の脆弱化・地域コミュニティの衰退
次に非常にネガティブなグラフだが、5年毎のセンサスを出しているのだが、高齢化が進んでいる。ピークが70代である。また、基幹的農業従事者そのものが2020年で130万人。10年後で100万人を切る。また、農山漁村における人口減少も中山間地域で顕著である。現場の生産農家が減っている。
次にコロナを契機とした生産・消費である。最近は安定してきたが、発生した当初はかなりのざわめきがあった。輸出を制限しようとする動きが19カ国であった。また、食料生産を支える肥料原料の自給率だが、ほとんどが輸入である。リン酸アンモニウムも90%が中国、10%が米国。塩化カリウムもカナダが59%、ロシア16%、ベラルーシが10%。尿素も4%であり、残りが輸入である。全農からも値段があがっているときく。自給することが大事である。
課題解決に向けて①品種改良
では、どうするか。一つが品種改良である。高温耐性の「にじのきらめき」や「秋はるか」の米。高温でも着色がいい果樹の品種。そして、ぶどうでは、環状剥皮技術によって着色することを農家も開発している。
課題解決に向けて②現状から
二酸化炭素は、削減目標は、2013年が14億800万tだが、これを2030年で10億4200万トンに減らす。日本は非常に木が植わっている山が多い。したがって森林という二酸化炭素の吸収源が非常に多い。これは都市緑化地域もあるがほとんどが森林である。
さらに、革新的イノベーションとして海藻として二酸化炭素吸収する。また、バイオ炭を投入することで土質改良になることが言われている。また、成長が早いエリートツリーで木の回転を増やすことも進められている。農畜産業からのメタン、亜酸化窒素の排出を可視化するシステムの開発も必要である。餌に物質を混ぜることでメタンの発生も減る。
そして、エネルギーに関していえば再エネルギー。火力発電所は問題があるので、再生可能エネルギーを増やしていく。太陽光発電があるが、農村では家畜の排せつ物を発酵させてメタンガスを発生させるプラントが北海道にもある。電気を作って売電をすることがこれまではビジネスモデルであったが、今後は地産地消を進めていこうということで、メタンガスをただ燃やすだけでなくメタノールにして燃料電池として使うことをすれば、電線をひく量を増やすのでなく地域でエネルギーが確保できるのではないか。
課題解決に向けて③ゲノムでの品種改良
次に育種だが、これも効率化を進めていく。ビックデータを活用したスマート育種。そして、ゲノム編集作物の開発も進めていくと。これは消費者の方を議論をしながらすることが必要ではあるが。
課題解決に向けて④スマート農業
また、人が少なくなっているなかでスマート農業の実装を進めている。人が少なくても自動でできるということで、無人草刈りロボットやドローンによるピンポイントでの農薬散布、林業での自動伐採作業である。これはドイツやフランスで技術が進んできており、効率化よりも地球に環境に配慮した優しい内容となっている。例えば、佐賀にあるオプティム社の資料だが、ドローンによるピンポイントで農薬散布ができる。従来は予防的にかなり大規模に散布してきたのだが、それを機械で病害虫の発生を観測して精度をあげれば、同社によれば10分の1に減らせる。ドローンにカメラを積んで画像解析をするのがノウハウなのだが数ミリ単位での穴、色もスペクトル分析してハスモンヨトウがどこで発生しているのかがかなりわかる。私も実際に現場で見ているが、1ha規模の畑でも観測は数分でできてしまう。オプティムの社長は「ここの出口は有機だ」と言い切っている。畑の状況をどうチェックするか。それをしないと収量確保ができないと述べている。
農研機構は有機農業栽培マニュアルを策定
新たな働き方として何点か申し上げると、有機農業技術の横展開として、農研機構で有機農業の栽培マニュアルも作っている。なぜ有機農業を行うとなぜ病気がでないのか。それが科学的に書かれているため、農家だけでなく普及員の方も是非お読みいただきたいと考えている。
流通を変えなければ有機は難しい
次に方向を変えてスマート・フードチェーンの構築について述べたい。食べ物の流通は太宗は変わっていない。あまりいうと他の役所から怒られるのだが、大規模に作られたものを農協集荷し、大規模な卸売り市場で委託販売をしている。大規模な仲卸しが大規模スーパーと組んでいる。いいか悪いかは別として、それが現状である。そして、有機がかなり広範な流通をしようとしてもこれに乗れないのが日本の現状である。公式見解ではないが事実なので申し上げている。
そして、現場の売り手とつなげるために大事なことがデータである。データでつないで直接取引する仕組みができるとサーキュラーエコノミーが推進できる。これは、スマート・フードチェーンをさらに超えた部分だが今日お集まりの方が関係する部分だと思っている。
有機農業は環境ではない
次に有機である。みどりの戦略でも何度も公表しているグラフだが、日本は増えているのだが、世界と比べると日本はまだまだ少ない。そして、欧州は日本と違って湿潤ではない。そして、ワイン用のブドウがしっかり生産されている。こうしたことはあるが、日本の進んでいるスピードはやはり遅い。有機の話では「なぜ有機を進めるのか」とよく問い合わせを受けるのだが、「有機をやることが環境に優しいから」とは強くいっていない。世界的に言ってすでにスタンダートになっていると。それを享受できる環境を日本でも作っていかないといけないと。東京でもスーパーの加工食品を見ると輸入品は相当有機が多くなっている。ジャムなどがそうである。そして、最近の若者世代の消費行動が、エシカル消費について非常に軽やかに考えている。省内でもそうである。そこで、有機もひとつのカテゴリーとして食べていただくことになっている。それをちゃんと作っていかないと販売戦略的にも輸入品に押されるとの危惧を持っている。
「みどりの食料システム戦略は環境に配慮した戦略なのか」と聞かれるのだが、それだけではない。持続的な食料システムのために何ができるかを述べている。有機農業の生産も入るのだが、食品メーカーも残らなければならないわけで、外国人労働者に依存している状況も考えなければならないと。
プラネタリー・バウンダリー
次にSDGsについて述べたい。これが作られた時に非常に重要なことが二つである。ひとつがプラネタリー・バウンダリー。ある境界を超えると回復ができないということなのだが、生物の絶滅、リンの放出。これを可逆的に戻すことはできない。そこで、ゆっくりさせるしかない。
もうひとつの図は17のSDGsのゴールを三次元で描いた図なのだが、よく、容器はリサイクル、プラスチックは使わない。省エネをして電灯を小まめに消そうとされてきたのだが、そうしたことをしてもベースとなる社会資本、生物圏をしっかりしないと成り立たないと。アフリカでもかなりバッタが発生したのだが、チベットも超えるとされて大騒ぎになっているのだが、これも生物多様性が壊れたためである。栽培環境に直接影響を及ぼす環境変化が起きてくると。
いままで色々とお話をしてきたわけだが、EUのファーム・トゥー・フォーク戦略、そして、バイデンが大統領になったその日にパリ協定にも米国は復帰している。トランプ時代からCO2削減もしようということで動いている。
そして、今年が環境関係の会議がめちゃくちゃ多い。国連食糧システムサミットが9月にある。7月には閣僚級の会議では野上大臣にも出てもらった。こうした大きな会議の中では11月の気候変動枠組条約COP26が大きい。こういった動きの中で農水省も1年以上も前に持続可能な農業に向けて何をすべきかを議論していた。「菅総理の2050年カーボンニュートラルを受けてやったのではないか」とよく言われるのだが、ずっと前からやっていた。それを政策に位置づけたいということで野上大臣に言って、やろうではないかとして始まったものである。
これは、かなりハードルが高い遠いゴールを決めてバックキャスト式でやるというやり方でやっている。技術をどうするかが主要な目標になるのだが、2030年まではすでに開発されている技術を徹底的に横展開する。2040年までにはいまの状況ではクリアーできない技術を開発する。2050年までにそれを横展開して現場に実装する。こういった3段構えの戦略になっている。
さて、従来の農水省の政策体系は、生産流通でいろいろとやってきたのだが、これだけ持続可能な食料システムを考えるとなると、資材やリサイクルも手を付けなければならない。これを所管するのは経産省や環境省になるのだが、そこの政策もあわせて農家が動ける環境を作ろうと。要するに、消費者対策ということで言えば、これまで農水省は、お米の需要拡大とか果物を1日○g食べたいですね、とやってきたのだが、環境に優しい消費を国民運動的にやっていこうと。そこで、ここはかなり幅広く消費者団体とも連携して、特徴的な有機食品を手に取れる環境づくりをしないければならないと。これが戦略の一つなのである。
なお、2050年までにKPIで14の目標を作っている。その中で、CO2 のゼロエミッションや電化・水素化、再生エネルギー。ネオニチノイドも新しい農薬に変えると。これも20数回、意見交換する中で整理されてきている。農薬もリスク換算で50%減。肥料も30%削減。そして、有機は25%、100万haにしようと掲げている。技術革新という点ではご意見があると思うのだが、100万haとして爆発的に広げるためにはすでに地域で始めている人をどうやって横展開してフォローするかである。そこで、令和4年度にもモデル産地を作ったり、学校給食に入れることを支援すると。幅広に金額を多くして要求している。なお、有機の個別開発だが、水田の水管理や緑肥等、通常の収量を確保している農家の仕事をどう横展開するかが大事である。
また、科学的な見地からもそれを検討すると。また、有機の需要をどう増やすのか。それは、これから説明する島田さんが詳しいのだが、日本の国別の有機食品の消費額を考えると2018年のデータでは、日本は年間1400円なのだが、ドイツやフランスは1万6000円、1万7000円、スイスは4万円である。中国や韓国等アジア系はまだ少ないと。
そして、卸売業者ともヒアリングをしているのだが「欲しい人が多い。あればあるだけ買う」という業者も増えている。そして、スーパーでの有機の棚も増えてきている。これまでの青菜ではなく、ナスやトマトといった果菜類も増えてきている印象がある。ただし、産地と流通の接点が難しく、有機農家が非常に売り先に苦労していることも事実である。それは事案として検討しなければならない。
いずれにしても、今日も有機がテーマとなっているのだが、将来性のある商品のカテゴリーとして考えている。よく「農水省は政策を変えたのか」と言われるのだが、変えたわけではない。そうではなく、持続可能や環境が仕事の一丁目一番地になってきているということである。これから、例えば、JAS表示をするのかを含めて幅広く仕事を進めていきたい。
第二部 2050年有機農業を25%にすることは可能か
農林水産省農産局 農業環境対策課 嶋田光雄課長補佐
かごしま有機生産組合代表 大和田 世志人
株式会社アグリ・コーポレーション 代表取締役 佐藤 義貴
株式会社 アグリーンハート代表取締役 佐藤拓郎
ファシリテーター 株式会社金沢大地 代表取締役 井村辰二郎
井村辰二郎 金沢市で有機農業をやっている井村です。「みどりの食料システム戦略」が出て、新しい時代ということでプレイヤー、生産者として頑張らなければならないと緊張している。多くのKPIがあるのだが、その中でも有機農業を25%にすると。現在、0.5%なので、私の感想としてもそう思ったし、マスコミもこれを拾って「本当にできるのか」と言っている。そこで、今日は、若手のホープ、二人の佐藤さんを招いてポジティブな話をしたい。
有機農業は化学肥料、農薬を使用しない、遺伝子組換えをしない農業と定義しているが、環境負荷を低減することが有機農業である。世界的にも各地で行われている。共通するガイドラインがコーデクス委員会である。この定義は、農業生態系の健全性を促進し、強化する全体的な生産管理システムであると規定されている。
世界の有機農業だが、マーケットが伸びている。10年で倍になっている。これにあわせて取り組み面積も倍になっている。日本でも8年で2009年の1,300億円から2017年で1,850億点と8割は伸びている。なお、世界は草地と畑が伸びている。日本は北海道の牧草地や茶畑が伸びている。
政策的には有機農業とは、自然の循環をうまく使って農業をやっていくと。生物多様性の保全に役立つと。土の中に炭素分を入れてCO2を抑制することで温暖化防止にも効果があるとされている。そして、お茶、味噌、醤油も伸びていることでそうした輸出としても大きい。
また脱サラをされる方を着目すると有機農業が2割である。そうした人を応援する環境を作っていく意味がある。また、有機というアイテムができるとそれを扱うスーパーも伸びていく。日本でもスーパーで買っている人が多いし、フランスやドイツでもそうである。
みどりの食料システム戦略では2050年までに100万haを目指しているのだが、そのためにはしっかりしたマーケットが必要である。いきなりボンとはいかないので、当面は現場で実践されている技術を体系化して普及していくと。色々な技術をしっかりと確立してスマート技術も入れながら次世代の技術を確立することをやっていきたい。
なお、現場で取り組まれている技術ではチェーン除草もあるし、畑作でも太陽熱消毒、緑肥もセンチュウ等に効果があることがわかってきている。
とやま有機・エコ農業パワーアップ協議会、千葉県いすみ市、名古屋オーガニックアクション等を支援してきたのだが、具体的にどのような農業を進めていくのかだが、日本は田・畑が全体の74%である。それに対して、EUは永年草地が全体の68%である。ヨーロッパだと樹園地や牧草地が多いのだが、日本は作付面積でいると水稲や野菜が多い。そこで、現場の皆さんの話を聞きながら広めていくことだと思っている。
井村辰二郎 では、まず、順番にどのような経営か、そして、有機への考え方をお聞きしたい。
30年で市民権を得た有機農業
鹿児島での有機農業運動だけでなく、全国で取り組む中、団体の方と一緒になって「全国有機農業推進協議会」を立ち上げて活動して来た。2006年の有機農業推進法にも結び付いたし、いろんな普及活動、農政・政治に対しても政策提言をしてきたところである。その成果がみどりの食料システム戦略として打ち出されたことは、全有協が一緒になって次にステップにいけるということで、これからは各論になっていくと思うのだが、全国に取り組んでいる仲間がたくさんいるし、いろんな経験があるので、それを出し合って次のステップに進んでいければと思っている。
井村辰二郎 推進協議会の議長もされている。ご尽力をいただいている。次に五嶋列島で40歳、佐藤さんからお願いします。
有給農地で安納芋を有機で生産
資本金は1,800万円で農業ファンドで支援をもらっている。従業員は私を含めて4人。面積が43ha。130枚だが、農地はすべて有機認証を受けている。耕作放棄地を解消しながら面積を拡大している。二つ目が「おしゃぶー」という商品があるのだが、安納芋を加工してベビーフードにしている。キャッチコピーが赤ちゃん向けに有機栽培したお芋、赤ちゃんにお母さんに安心をである。
五島市の三井楽町なのだが1,500haある農地のうち、600haが耕作放棄地である。当社は加工品を作っているのだが、30年後のビジョンでは、第一が、オーガニックをプラットフォームにしたまちづくりである。第二が、このため、耕作放棄地600haを解消し、移住者・五島市民が働きたい会社を作る。超大型600haのファーマー、有機安納芋の魅力を最大化したいと思っている。
また、収穫した中で1割、1割5部が貯蔵する中でロスがあるのでそれを食品にするため、2年前に2019年8月に5億円でスイートラボを作った。焼き芋ペーストにしたりしている。これが良かったと思っているのが、私はよそ者だけに、スタッフや行政の関係機関から「いつからいなくなるか」と思われていたのだが、終生やっていくのだなとの理解が得られたとことだ。で、私が、大好きな言葉を述べたい。「早く行きたければひとりで行け、遠くまで行きたければ、みんなでいけ」である。
低コスト大量生産型と高付加価値生産型の2軸
障害者と連携した農福連携とグローバルギャップも取得している。高校を卒業してから農業をやっている。黒石市は地形的に低コスト大量生産型と高付加価値生産型の2軸でやっている。低コストの方はドローンで51haでピンポイントで農薬を散布しているが、ふつうでも半分、凄いところだと10分の1の散布量である。有機で取り組んでいるのは休耕地である。10年、草だけ刈ってきた土地もある。安入地区は5haなのだが、10年使ってなくても田んぼが残っていて用水から水も引けたので、やっている。いわゆる昔の農業である。木村秋則氏の塾をやったり障害者雇用をしている。「モノづくり」ではなく「事づくり」である。そこで、よく、地元からはアグリハートは進歩したいのか退化したいのかと言われる。
世田谷の代田駅前で「だいたんぼプロジェクト」もやっている。スマート農業を使ってファンを一緒にやろうとPRしている。いま自社アプリも作っている。災害・緊急時も米は確保するということで世田谷の人も、あたかも自分で米を作っているようなファンづくりを考えている。個人的には2050年までに25%ということは、私のところは軸が米なので米だけなのならばできると思っている。
生産できる技術と売る力の二つが鍵
播種を含めて地域ごとに技術があり全国一律マニュアルは無理
大和田世志人 技術といえば、色々なやり方があると思うのだが、試行錯誤の中で失敗を重ねてきたのだが、私たちなりの私たちの地域にあったやり方を編み出してきたのが現実である。いわゆる栽培マニュアルのようなものがあってそれにしたがってやれば有機の生産ができるという簡単なものではないと思うし、その地域の風土にあったやり方を各々が見出していかなければいけない。一番端的な例が播種の時期。適期の播種。キャベツや白菜、ブロッコリーを有機で作るには無理に喰われるだろうと言われるのだが、そうでないこともある。それはなぜかというとひとつのポイントが適期の播種である。鹿児島でいうと種まきの時期はだいたい9月の彼岸に蒔けばやられないが、9月のはじめや10日蒔くと気温も高いので発芽はするが虫にやられてしまう。9月の20日過ぎであればそれほど虫の活動も弱くなって大丈夫である。そして、鹿児島でも暖かいところと寒いところがあるので風土に根ざした播種の時期がいつかを身に着けることが出発点だと思う。
井村辰二郎 キーワードとして地域と適期。消費者から見ると旬なのだが、旬のモノをしっかりと作付し、それをしっかり食べる。敵地適作がヒントかなと思った。
ブロフ理論のコンサルが大事
佐藤義貴 有機の前に農業そのものが素人であった。そこで、食料を作ることそのものが技術だと思っている。最初は慣行栽培をしてきて途中から有機になったのだが、肥料の散布する時期が圧倒的に違う。納豆菌で分解させる。栽培技術を持っているブロフから当社に来てもらって2カ月に1回勉強をしている。新規就農をする人が多いのであたりまえのものをあたりまえの時期に作ることが困難なのでハードルが高いと思っている。現場でコンサルティングを呼びながらなんとかやっている。
井村辰二郎 土づくり、雑草、病害虫。それを解決するために試行錯誤されている。
佐藤義貴 芋は月に2回は中耕機で入っている。除草剤は撒いていない。
ブロフ理論を活用、稲葉農法は使えず
佐藤拓郎 技術を語ると長くなるのだが、入り口が木村さんでブロフ理論も取り入れているのだが、指導者が育つまで時間がかかる。そして、土壌の見える化はなんとかなるが、堆肥を入れるとどうなるのかといった地域の資材を入れるとどんな効果があるのかの見える化をしたい。また、民間稲作研究所の稲葉さんの稗は深水管理とコナギは早目の代掻き技術があるのだが、土地改良区の5月にならないと水が来ないので技術があっても活用できない地域の体質もある。
井村辰二郎 いま地域が大事ということと地域と言っても外部的な環境もあるという話をいただいた。標準化されているのではなく、地域地域でできていくことだと思うのだが、栽培指針があると思うのだが、農水省は技術についてはどうお考えか。
各地の技術を分かちあえればいい
嶋田光雄 様々な技術だが筑波に農研機構があり、水田の雑草対策についても三浦さんがまとめられている。8割はできていると聞いている。皆ができるようにしていくことが大事で品目毎にターゲットにすることが大事かなと。現場に卸すためには指導できる体制整備も必要かなと思っているところである。
井村辰二郎 いろいろなステークホルダーが参加して技が広がっているということでよかったであろうか。私も25年やっているが、海外から雑草とかとの戦いだし、全国の優秀な篤農家の技術がまとまって横展開。2040年までに確立して手軽にまでいかなくても、これならば再生産できるという技術を確立していなかければならないのかなと。最近、私がやっているのが米、麦、ダイズのブロックローテーションは理に適っていて3年水田にして3年畑に戻すとかなり抑草効果がある。ただ、地目が畑なので地域のポンプや農水の規制でなかなか進まない。チャレンジしようという人のためにそれを取り払えると思っている。米、麦、ダイズのブロックローテーションはすごく可能性があると思っている。
販路が広がらないと生産があっても広がれない
井村辰二郎 次に販路。私が苦労したのが販路である。作っても売り先がなくて自己満足で有利販売もできないし、場合によっては余ってしまう。作る力とマーケットの広がりがかみ合っていかないと農水省が示したようなきれいなカーブができないと思う。マーケットで苦労されていることをコメントいただきたい。
顔が見える直売を重視
大和田世志人 作ったものがきちんと消費者の手にわたっていかないと生産が継続できないのでいかに届けるのかが一番大きな問題なのだが、私どもの取り組みから言うと、最初は地域の提携でスタートするわけだが、提携のやり方は限られたマーケット。会員さんのところだけの消費なので限界もあった。生産者も増えて生産量があがっていく中で次に取り組んだのが直売。自分たちで店を作って自由にたくさんできたものを販売すると。生協とかとの提携だと相手の要望に制約されるのだが、直売所は制約がないので、できたものをできたときにできた量を持っていくと。一番最初に作ったのが30年前で、その時はかなりの冒険で反対意見もあったのだが、自分たちの想いを伝えていかないと広がらないと。自分たちがお店の中で語りかけて食べてもらい、反応を聞かせてもらうことが面白いのではないかと。
で、作ってみて、マスコミにしろ、テレビにしろ好意的に取り上げてくれて、と同時に地域の消費者の人が足を運んでくださった。それで売れていったと。その時に皆が言っていたのがやはり美味しいのだということと、そんなに手がでないほど高くないのだねと。そういう中で直売が本当にチャレンジだったのだが、しっかりと軌道に乗る。よく言われるのが有機農産物は高額所得者でないと買えない、売れないと言われるのだが、鹿児島県は下から二番目の県民所得地域なのだが、それでも鹿児島のような地域でもしっかりと品揃えして販売する店があれば多くの人から支持されて買い支えてもらえることを実感し、市内に店も3店舗広がって、10年、20年、固定客として買い支えてもらっている。その意味でありがたく広がってきたと思っている。
量が増えると価格が暴落するので輸出を加工品
佐藤義貴 ひとつが輸出でうちも協議会に入っているが香港を中心に、香港市場も有機が欲しいとなっているのでそこで販売している。次に600haをすべて解消したら国内の甘藷マーケットは大暴落するわけで、一次加工、二次加工して、青果物からスライドすることで販売することを考えている。
消費が増えない限り有機の実現は難しい
佐藤拓郎 消費がないと価値がないので、自分の野望をいわせてもらうと、マーケットが大事だと。米国では貧困層がオーガニックを買う時に支援がある。そして、学校給食の公共調達。また、転換期間中を大企業が社食や福祉更生で作れば評価する仕組みがあればうちも安心して作れるのかなと。
井村辰二郎 大和田さんからは地域とつながるお話。佐藤義貴さんからは、人口減少社会の中で有機の生産量が増えていくと価格が下落するので輸出と加工品も伸ばしていくと。そして、佐藤拓郎さんからは、消費が増えないと生産者が増えないと。私も「生産者がいないから売れない」という議論をずいぶんしたし、流通の方もいたのだが、やはり消費者の意識、価値観が変わること。まずは消費。もっと手軽に欲しいと。そういう時代になれば必然的に生産者もどうやって作るか。どうやって価格を下げるのかという次のフェーズに入っていけるのかなと。流通や消費者にも支援があればいいと思う。最後に佐藤拓郎さんから転換期間中という言葉があったのだが、説明しておきたい。有機JASでは3年間は市場ではなかなか有利販売できないし、加工の原料として納豆屋からも買ってもらえない。転換期間をどうやって買い支えるのか。その助走期間をどう支援するのか。オーガニックコットンではプレオーガニックコットンを買い支える運動がある。
今日は、有機を増やしていく、消費が大事という中で耕作放棄地を耕している3人が揃ったのが、そこをもう少し考えられないか。そう思った。最後に一言ずつポジティブな意見を逆順でお願いしたい。
企業が転換期間中を買い支えることで儲かる実例を
佐藤拓郎 転換期間中を買い支えるといっても、転換期間中がまず普通の人は聴いたことがないワード。学校給食はJAS有機がいいので、そこで、対象は企業さんとかだろうと思うのだが、地元スーパーにおいたときにそれを支援できる体制があるといい。地元で消費されると嬉しい。それと一般の慣行農業が転換することもすごく大事なのだが、リタイアする人とかがその受け皿になる方が早いのかなと。また、水路とかでドリフトもあるので行政側で特区、有機の推奨エリアを作ってもらうような、つまり、行政単位で生産基盤を整備してもらえると米は作りやすい。なお、農薬や肥料を使っている方はすでに実績があるので、使わずにできることを実証するとその人の人生観を否定することになるので、まずは、有機でも稼げるという実例を見せる。なので、売りやすい体制の支援をお願いしたい。
自衛隊と学校給食の公共調達が農産物価格を下落させている
佐藤義貴 現実的に耕作放棄地を解消する中で農地を増やすしかないので耕作放棄地を解消する使いやすい支援事業があるとやりやすい。新規就農も個人ではなく大企業も入ってきているので、有機農業をすれば自動車税が安くなるとか法人税が安くなるように、取り組めばよい。減税になるとなれば、そうした会社は資本も大きいので。大胆な政策だが、いまは、学校給食や自衛隊の入札が農産物の低価格化につながっているのでそれを有機ということでやっていただきたい。
嶋田光雄 いろいろといただいたご意見を踏まえて担当として考えてまいりたい。需要を喚起する。オーガニックEXPOもコロナ禍の中でもB to Cがされていると。2時からの勉強会でも話があるかと思うが、令和4年度から市町村を中心に事業関係の方と一体となって農地を団地化するような地域のビジョンに基づいて農業だけでなく、生産・流通・消費まで一体でご支援できないかと予算要求をしているところ。現場のお声を聞きながらまた教えていただきたい。
新規就農者のための販売コーナーも大切
大和田世志人 我々の取り組みでは有機農業に取り組む農産物は転換期間中であろうとJASがついているものであろうと同じ販売をしている。消費者もJASがいい転換期間中はダメだと評価しないのであまり気にならない。ただ、加工原料として使う時には苦労がある。それと販売の面ではスーパーの中でも有機野菜コーナーを作ってもらっているのだが、新規就農者向けの「初めて作りました」というものもある。それも有機チャレンジコーナーを作ってもらってそこで販売してもらっている。チャレンジは支援してくださいというメッセージも込めている。こうした販売での工夫もあると思った。なお、今日のメインテーマは25%の有機が可能かということだが、36年前には10名だったがいまは162名まで広がったし、目標は鹿児島のどの町でも有機農業に取り組む仲間がいる社会をと描いたわけで、それが現実になりつつある実感がある。数字だけ見ると途方もない気がするが、現実に地域で隣が転換すれば2倍になるわけで、そういう考えていけばそんなに難しくない。埼玉県小川町も12%、岐阜県の白川町も7%という数字も聞いている。みんなで取り組めば無理ではないと思っている。
井村辰二郎 多様な農業があり、その中に有機農業があると思う。25%という野心的な目標だが、いまあるファクトを積み重ねればどうやって達成できるのか。そのようにしていけば私は達成できると思っている。チャットでいくつかいただいているが、コメントいただいたみなさんありがとうございました。消費者が手軽に手に取れる世界が30年後にあるように頑張ろうと思います。
編集後記
本稿は農林水産省が2021年9月17日(火)10:30〜11:30にかけて、第6回オーガニックライフスタイルEXPOのスペシャルセミナーとして、オンラインで実施された「みどりの食料システム戦略と日本農業の未来」のの講演内容をまとめたものである。当日の動画もこのサイトからゲットできる。そして、後半は「2050年有機農業を25%にする~は可能か」の対談内容をまとめたものである。こちらも当日の動画がこのサイトから視聴できる。






