林業から日本農業がなぜ崩壊したかが見えてくる
政治家になってから、これほど大上段に日本農業の衰退を話すことはない。役人時代には話していたが久しぶりである。そこで緊張している。さて、なぜ日本農業はこんな状態になったのか。私なりに見てきたことを話してみたい。
まず、林業から話したい。林業の方がもっと状況がひどいからだ。最近、タネ問題でしつこく6回、ブログでタネ問題を書いた。そして、技術革新ではなくて、制度を変えることでも日本社会が変わることがあるとして、最初にあげたのが木材である。これで中山間地域がガタガタになって、崩壊集落になっている。まず、戦後復興で材木が足りない。禿山になっていたので1951年に丸太の関税をゼロにした。国内での製材業は維持しなければならないので、それは守っていたが、1964年に製材もゼロにした。関税が完璧にゼロになったのが製材である。それまで、中山間地域の半分は、猫の額ほどの農地しかないので山から収入を得ていたのだがそれが維持できなくなった。1980年の檜の丸太の価格は76,400円/m3であったのが、いまは18,100円と4分の1になっている。米も26,000円/俵であったのが半分強だが、これに対して、木材は4分の1である。1980年に比べると杉の丸太も3分の1となっている。要するに、山を守っていれば中山間地域もこうはならなかった。
石破茂氏に対して「地方創生は簡単だ。山の木が売れるようになればいい」と提言したのだが理解されなかった。国政は米は守ってきたので農村は維持できた。けれども、その米も給与と比較するとかつては1月分の給与と米が同じ価格だったが、1994年の23,000円がいまは1万円と半分になる一方で、給与はあがっている。だから、10ha規模の農家ですらやっていけない。これまで、米だけは死守するとして、TPPやアール・セップでも例外とされてきた。
もちろん、食生活の変化で1956年には120kg消費されていたものが2000年で60kgで、いまは53kgである。1200万tもあった消費が600万tと落ちている。米はいまでも733万tの生産力があるので林業よりはまだマシだが。
財界の思惑で農地も転用していく日本
こういう状態で農家戸数も減少しているし、農地も守っていない。財界はいつも企業が持てるようにと規制改革会議の提言でいっているが、世界の中でもそんなことを言っている国はない。605万haあったものが、2015年で450万ha。優良農地が虫食い状態。ヨーロッパ人は東海道新幹線とかに乗るとその景観を異常だと言う。というのは、都市と農村をきちんとわけているからだ。私はパリにも3年勤務したが、フランスが典型だが、環状道路内には農地はないが、そこを一歩外にでれば、かつての印象派の画家が描いた絵のような景観が残されている。つまり、日本は農業を大事にしていない。
かつては年に13万haであったのが、いまは40万haも転用されている。さらに、誰も耕さない。農業をやる人がいない。一番深刻なのは若者がいなくなることだと。
そこで、民主党が政権を取って副大臣になったらまず「青年農業給付金制度」を作った。150万円をわたす制度を作った。これは、新規参入者ではなく、農業をやる人に5年間で初歩的な経費を出すものだ。
夫婦では220万円。以前は45歳未満が条件であったが、自民党になってからは50歳未満になった。農業次世代創出事業になっている。
よく日本の政治は農政に温かい。農村は過保護だと言われているがこれは完璧な嘘である。欧米は相当保護している。EUは直接保証で中山間地を守っている。所得の8、9割が所得保障である。そこで、日本のような限界集落が生まれていないし、国民もそれを負担することを許している。傾斜地の斜度で、傾斜がひどいところほど保障しているし、米国でもやっている。米国といえども、開発途上国から安い農産物が入ってきたらやってはいけない。
人数割の選挙区が政策に反映
どの国でも農村が守られているのは、米国でも州毎に2人の上院議員が選ばれているからだ。下院は人数わりなので、カリフォルニアは45人だが、ハワイやアラスカは1人。これに対して、上院では地方の声が反映されている。ところが、日本は参議院も衆議院も人口比である。そこで、長野は5人だが、東京は25も選挙区がある。このため、都会人のいいなりになっている。農村の人にもっと政治の力を持ってもらいたいと思っている。
日本の農政がどれほど先細りしているのかを見ると、1973年には農水省と厚生省の予算が3兆円強で拮抗していたが、いま、厚生省は30兆。農水省は2兆3,000億円。これでは、やっていけない。
規模拡大で歪んでいる農政
次に、こうした予算が減る中でもさらに、農水省の政策は間違っている。規模拡大ばかりである。私は現役のときも省内で抵抗してきたが、例えば、財界の提言は10ha 農家を作れば、50万の農家で農業ができると。けれども、これは米であって、野菜や果物は10haなんかとても無理である。3haでも野菜や果樹は無理である。それを単純に10haの農家があればいいとばかり言っている。これではうまくいかない。
いかにこの政策が駄目か。例えば、米農家は、40年前は10haの規模であれば派盤だと言われていたが、いまは、反収が600kg穫れたとしても、10haで10haで1000万円である。これは粗収入で経費が入っていない。いま、日本の農家の平均年収は436万円で10年前も437万円だった。つまり、10ha規模でも平均所得よりも少ない。そこで、兼業ができないと里に降りてくると。それが、東京一局集中である。
東京都は1400万人となっている。千葉、埼玉、神奈川都民で3800万人が首都圏に集まっている。かつては、大江戸八百八町で人口の30分の1が集中していたがいまは4分の1。こんないびつな状態を放置している国は、国連の統計でもない。つまり、兼業農家であることでかろうじて生きていける。土日に農業をやってなんとか生きていると。そして、この間の農家戸数の減少は目覚ましい。
農業就業人口が激減
2005年と1985年の間で、かつては1560万人いた農家世帯数が837万人。前は547万いた就業人口もいま300万。基幹的農業従事者も205万人。そして、平均年齢が66歳。これから10年したらどうなるか。
さらに、私のような団塊世代は定年後も農業をやるが団塊ジュニアはやらないだろうと。この間に農業生産額は、1985年は10兆円を越えていたが、いまは9兆円。その構成比率も昔は米が3割だったが、いまは米が20%弱。畜産が35%と増えている。これを背景にアキタフーズ事件も起きている。
菜種で消え失せる伝統的な景観
菜種は油の原料だが、大豆はどうか。納豆から豆腐から、味噌から欠かせない。それが365万t。食用が101万t。国産はわずか20万t。油用は5.6%。いまはほとんどが作られない。
火山灰土壌が決めるパン食とパスタ文化
小麦も消えた。戦前でも200万tを生産していた。86万haである。そして、麦を作ってから米を作っていた。こうして、長野では、おやき、うどん、そばが食べられるようになった。いま、それが輸入されていて平気である。米は北海道でもできなかったものを品種改良でできるようにしたが、小麦は放置してきた。北海道の米はあっても北海道の小麦でのパンがない。どこかずれている。実は、日本の土壌はパン用の小麦には向かず麺類に向く。イタリアがパスタなのも火山国で酸性土壌だからである。一方、フランスは麺類に向く小麦ができないのでパンになっている。
「地産地消」、「旬産旬消」が鍵
日本は作れるモノを皆、なくしていっている。例えば、外国にゆずったものに花がある。日本は高級品を作っている。そのひとつが高級牛肉で限界まで異常な食わせ方をしている。死ぬ寸前に屠殺するほどである。しかし、このやり方が効かないのが花である。私は「地産地消」、「旬産旬消」という言葉を作ったのだが、花はまさに「旬」が大切で、肉のように冷蔵保存が効かない。けれども、今回のコロナ禍で「結婚式」も中止で売り先がない。そこで、花の消費拡大しかないと議員会館で花を買っては女性に届けたりしていたのだが、途中から困っているはずの農家が「値段が高くていい」と言い出した。なぜか。花、それも切り花の27%は輸入だったのだが、空輸。その飛行機が飛ばない。コロナのためにコロンビアとかから入らない。そこで供給が立たれて価格が維持されている。
けれども、空輸する花が存在してもいいのだろうか。有名なグレタさんは、スウェーデンから16日もかけてソーラーの船でサンティアゴにやってきた。彼女は、花が空輸されていることも知っていると思うが、「そんな贅沢をなぜするのか。コロンビアやケニアから輸入するのか」と言うのではないか。私はこれには300%、400%の関税をかけてもいいと思っている。
日本の農産物は一般的に高級化しているのだが、花はこれとは逆になっている。かさばる花は空輸できないため、メインは輸入で、その沿え花のカスミソウ等を国内で生産している。これは明らかにおかしい。「地産地消」、「旬産旬消」が理にかなっている。花は、とりわけそれになっている。
工業製品を含めすべてで「地産地消」、「旬産旬消」を
簡単にいうと、農業はまず「地産地消」、「旬産旬消」に徹するべきである。電力も送電ロスがあるし、工業製品もそうである。トランプは、フォードが米国内の自動車工場をたたんでメキシコに作るということで激怒した。日本のトヨタが、メキシコに20万台の工場を作るというと、関税かけるとした。米国の賃金が安くなるからだ。けれども、トヨタを否定まではしていない。米国人が乗る車ならば、トヨタはアメリカ内で作れと言っている。NAFTAの関税ゼロを利用して輸出することはまかりならんと。このトランプの発言も理にかなっている。それが、一番、効率的だからだ。とはいえ、パリ協定には参加しないのでよくわかっていないだが。つまり、「地産地消」、「旬産旬消」はあらゆるもので言えると。
日本の畜産業は異常
第二に重要なのは後継者がいないことである。だから、農村に帰ってきて欲しいと思っているのだが、現在はIターンばかりに補助金がいっている。けれども、その土地で生まれた人が都会に出ていく構造になっているのだから、まずUターンをバックアップする。それが農村地域社会の維持につながる。
第三は、食の安全。いま、変なものばかり食べさせている。これはおかしい。
第四は、環境重視。これも世界的にキーワードになっている。その象徴がアニマル・ウェルフェアで、スイスは鶏のケージ飼を禁止したし、2012年にイギリスも禁止した。フランスは地鶏がメインで、ブロイラーの規模はフランスが一番小さい。日本のウィンドレスでの鶏の飼い方をしてはいない。スイスも鶏糞場から出る臭いが嫌だから、そこで高い卵を国民も受け入れている。「鶏道に反する買い方は止めよう」と。こうして、日本は国際的にもこれが勧告されて大臣に500万円が行ったと。日本の家畜ほど哀れなものはいない。ドイツは逆で、犬に鎖をかけてはいけないという法律すらできている。
加工畜産の異常性
昔、私は「加工畜産」という言葉を作った。日本は加工貿易立国しかないと言われてきたが、まさに、畜産も同じで、試料穀物を輸入してこれを変えている。違いは輸出していないだけだ。そこで、糞尿が溜まっている。オランダは相当汚染されている。だから、牛に1haが必要だと。その農地をもっていない農家には畜産はさせない。そして、それを守った農家には環境支払いをすると。
畜産は土地の制約がないから。かっては、庭先養鶏だった。私の家も卵預金をしていて360万農家が卵を作っていた。いまは、2000経営体に集中している。そこで4本足の鶏を描くと。いびつな構造の畜産だが経済的に成功はしている。メガファームの酪農は目覚ましいが窒素過多は問題である。
コロナ禍で見えてきたエッセンシャルワークの重要性
エッセンシャルワーカーが大切と言われるが、コロナのマスクも2割は自給していたが他は中国に依存していた。杉花粉症が増えているのも免疫機構が衰えているからだなのだが、それで、マスクがあったが、今回のことにはまにあわなかった。日本は悲惨だった。一方、イタリアやフランスは高級のアパレルメーカーがマスクを生産しているのだが、日本はない。安倍のマスクも輸入品。いまは、小さいので買ってくれない。つまり、日本の企業は日本政府を信用していない。医療関係もそうでマスク不足だったのだが、これが食料不足になったらどうするのか。食の安全保障。日本も今後、どうなるかわからない。食品ロスの問題もある。そこで、政策を所得保障中心に転換すべきだと。
家計学園では、人畜共通の病気を研究する大学にすると。そして、獣医学部が6年生。ヨーロッパは農業といえば畜産である。そして、ヨーロッパはものすごくそれを気にしている。いま、新型コロナばかりやっているがサーズやマーズ、鳥インフルがかかったらどうなるのか。いつ変異するのかわからない。アフリカ豚熱も水際阻止だが、日本はルーズである。
これについては、私はそうとうしつこくやったのだが、海外では、入国するときに何をもってきているのかと。日本では畜産物がない。オーストラリアは農場にいったかどうかがチェックされる。つまり、そのことをものすごく気にしている。日本は新型コロナだけに敏感だが、他の病気にも敏感であるべきだ。
また、世界的にはベジタリアン、ビーガンが増えている。穀物を食べて野菜と果物でやっていけるのだから、飼料穀物で飼育した動物を食べないという人が増えているのだが、日本ではそれを実践している人がいない。日本はそういう感覚がない。環境を守るのは農業である。安曇野がきれいだと。志賀高原もきれいだと。そのためにこの農家を保護しようという感覚にはならない。ここに思いをはせる国民になってほしいと思う。最近、思いついたことだけを書いた。
質疑応答
法貴誠 日本は8割がちまちま農業だが、日本だけがスマート農業の技術を持っている。暗い話が多かったが、この2つを合わせることで兼業が維持されたのではないか。今後、どうしたらいいかを聞きたい。
青野豊一 いまの政権が変わるのを待っておられないほど地域崩壊が起きている。水利が放棄される現実がある。そうなれば、米も作れなくなる。米も作りたくないと。そこで、篠原さんの言われる労働者協同法で利用できるかどうか。いま、多面的機能の支払いも受けたくない人が続出している。集落営農も75歳でこれもあかん。5年、10年耐えていこうと思っていたが、いまだけ、金だけ、自分だけと。ボランティアはアホのやることと露骨な意識になっている。なんともいえない人間がでてきている。まずは、何人かが集まって生き残りができる事例を出したい。質問というよりも、今日のお話で心の整理ができたと。是非、本にはならないまでも口述筆記を。厚くならない冊子にして欲しいと。
松久寛名誉教授 青野さんは加賀で苦労されている。
篠原孝 最近のメルマガにも書いたが、労働者協同組合法が2年後に施行される。40年前のレイドロー報告がでたことがきっかけである。自分たちで労働を提供し、何をやるかで見返りをいただくと。配当はない。青野さんは農村にいるのでわかるのだが、川普請をしてまつりをやるのと同じ。介護でも同じ。林業でも1haでは薪炭林を維持できる人がいないので、労働力を提供すると。それでやっていくと。米ではオペレーター。それを農村地域社会で作っていけばいい。10年、15年早く作れればよかったのだが、1998年頃に言い始めたのが、できなくてやっとこさできた。農村地域社会では若者が減っている。日本農政に一番必要なのは、農村で農業をやる人を増やすこと。地域社会のルールがわかった人がいいので、それを増やすことが元に戻す早道だと思う。総務省でも地域協力隊をやっているが、東京一極集中を是正する政策はやっていない。
これを変えるには、テレワークが典型的だが、いま飯山市も新幹線が止まる。これは金沢までいっている。そこで、毎日、会社に行く必要はない。週末に飯山で農業をやったりするといいと思っている。フランスはそういう生活スタイルが定着している。パリはフランスの真ん中からやや北にあり、どこにでも行ける。ちなみに、コロナで7〜11月だが、やっと東京からの社会的流出が流入量を上回っている。アンチテーゼができつつあると。田舎が安全だと。
長谷川浩 有機農業の研究開発をしていたが、都会で失業がでているがそれを農村で受け入れる仕組みがあれば農村の人で不足になると思うのだが。
常松修 日本の政権は大規模化ばかりを進め種子法廃止もモンサントの多国籍企業に利するためではないか。これに対してなにをどう展開したらいいのか。政権交代しかないのか。また、国連の小農宣言も無視している。
篠原孝 2009年の政権交代では308議席を確保した。野党は一番の農村政党となっている。いま、逆に都市部がガタガタである。立憲は都市部もいるがどこが選挙区で勝っているかというと例えば、東北だ。だから、これを進めればいいと思うのだが、東京が25議席もあってこれがさらに増えるので危ういと思う。また、アニマルウェル・フェアの質問がチャットであったが、日本の鳥は奇形鳥、奇形豚であって、病気に弱いと。狭いところに押し込められている。また、長野の田中猛之さんから「学校給食」という意見だが、これも飽きるほど言っている。
これは家計経済を守るものだ。ただし、困るのは皆、白菜、じゃがいもになること。そこで、ランドセルで他のものを持って地産地消をしていた。地元産の食材を使った献立を競う第1回「全国学校給食甲子園」を伊那市の旧長谷村が優勝している。小さな村だからできる。長野市は38万人。確保できるのは、りんごとえのきだけだ。けれども、クラスによってこっちは大根、こっちは人参でいいとしてもいい。それが一律でなければ駄目だということで給食センター方式で大量生産、大量消費になっていく。これを分散化することが安全にも平和にも地域社会の絆の復活にもつながると思う。また、小野山敬一さんからの労協法の質問。さきほど、やる気がない人が多いと青野さんが言われたが、やる気のある人だけを集めると。それをやっていくと。集落営農は全部ではできないので賛成する人だけでやっていこうと。そこに使えるということ。まだ施行まで2年あるが事前着工してもいい。
編集後記
2020年12月27日、17:00〜18:30にかけて、オンラインでなされた縮小社会研究会の第49回研究会の内容をまとめたものである。レジュメは同研究会のこのサイトからゲットできるので、参考にしていただきたい。
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