2022年04月22日

米国カリフォルニアの有機農業とアグロエコロジー

池上甲一共同代表挨拶

 西日本アグロエコロジー研究会は、昨年に始まった。アグロエコロジーという言葉がまだ日本では馴染みが薄い。私は、それぞれの地域にあった農業と食について、実践と科学、運動を一緒にやっていくことだと思っている。

 本日は、アグロエコロジーの面では日本よりも先にいっているカリフォルニアの状況をお知らせいただけるということでワクワクしている。今後も、是非、別の機会にもお願いしたい。

村本穣司 サンタクルーズ校で昨年からアグロエコロジー専攻ができたのでそのプロモーションビデオをまず見てもらいたい。

 この動画の最初でメインに出てくるスペイシー女史が所長。環境学科の教授である。いまのこのビデオについてもう少し話をすると、農場のスタッフ、最後に出てきたマイワさんは、アンデス人でGMOの評価やフードジャスティスを社会学から調べている新進気鋭の研究者で大変にいい仕事をしている。

2022040202s.jpg 私自身は日本で土壌学を学んでいた。有機農業との関わりだが、私が小学校の頃、1970年代の前半に妹が白血病でなくなった。当時、有吉佐和子の「複合汚染」やレイチェル・カーソンの「沈黙の春」が話題となり、農薬汚染問題が深刻であった。当時は農薬とがんとの因果関係は明らかにはなっていなかったが、私の母親が、当時始まったばかりの有機農業運動に参加した。そして、提携先の千葉県三芳村の農家からの野菜を取るようになった。僕は小中学生だったので夏休みには三芳村にいって手伝いをさせてもらった。東京生まれで東京育ちで農業経験がないのだが、とても楽しく何回もいかせてもらった。そこの現場で農家の方が必ず口にしていたのが「土が基本だ」ということであった。そこで、土壌学を東京農大で勉強し、その後に博士号を取得して助手になった。けれども、日本では有機農業の研究ができないため、たまたま知り合いがカリフォルニアにいたので、アグロエコロジーの先進地であるサンタ・クールズ校にきた。1996年のことであった。共同研究者にも恵まれ、こちらにいついてしまった。

 また、その際には、愛媛大学の日鷹一雅さんにも大変お世話になった。いま、有機農業学会の谷口吉光さんとか、当時は数名の人しか有機農業に関係する人がおらず、一緒に勉強会をしていた。日鷹さんは米国にも何度も来て、スティーブ・グリースマン(Steve Gliessman)ともお世話になった。

 さて、カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校は学部生が18,000人、院生が2,000人の総合大学である。農学部がない。そして、1965年とカリフォルニア大学群では創設が二番目に新しい大学だが、ヒッピー運動が盛んで、彼らが大学附属の有機農場を作った。そして、1980年代にグリースマンがやってくる。彼は、植物生態学が専門だが、それ以前に、メキシコにおいて、トウモロコシ、マメ、カボチャを混植する伝統農業が機能していることを目にしていた。この方法を用いれば、現在の農法が改善できるということでアグロエコロジーの研究をはじめた。もう一人がミゲル・アルティエリ(Miguel Altieri,1950年〜)である。互いに悪友だと。互いにデータを盗み合って本を書いていると冗談を言っていた。1980年代に彼らがこの分野を開拓してきた。有機農業に対しても、どのようなカタチであれば、それを持続可能なものにできるかを科学的なバックボーンとして発展させてきた。

 そして、当初のアグロエコロジーは、農業生態系に限られた話であって、害虫管理をやってきたが、農業生産だけのアプローチだけでは食料問題はとうてい解決できず、流通や消費も考えなければならない。そこで、2000年からフード・システムのエコロジーとしてアグロエコロジーが再定義される。

日鷹一雅 最近、ブックレットを作った。舞さんの方にも行っているかな。いま、米国は火災がすごい。タイガが燃えている。そして、日本は水と地震で悩まされている。違うとはいえいずれも異常現象の中で生きている。どの国にいってもいろんな問題が起きている。その中でアグロエコロジーがどれだけの役割を果たすのだろうか。

 日本では禁句の「焼き畑」をやった。村本さんは米国で実験をやっているが、羨ましいね。愛媛大学の演習林でやったら2人の先生が倒れて消防署が来た。それ以来、厳しくなった。日本で山に火を入れられない理由は、燃えやすい杉や檜を植林したから。そして、都市農業というが、混住化すると煙を住民が嫌がる。

 生態学の原理を利用して持続可能な食と農を目指すことは同じだが、概念が広くなるよね。ロシアのウクライナ侵攻のおかげで、小麦の価格、肥料の値段が高騰している。一般農家も重油の値段があがって経営的にダメージを受けている。とにかく、僕は村本君のことは全部、知っているので。

米国では有機農業は一般に売られ慣行よりも1.2〜1.5倍

村岡次郎 2012〜13年にかけて米国で有機農業を学んでいたのだが、現状を教えてもらいたい。スーパーでの有機農産物の比率はどれだけあるのだろうか。2017年にでかけたときもウォールマートが扱っていてびっくりしたのだが。慣行農産物の価格差とかもあるのだろうか。

村本穣司 大手スーパー、ウォールマートやコストコとかにおいても、有機農産物をおいていないところはない。野菜や果実類だけでなくスナック、加工食品を含めて相当量がでている。年間売上もこの10年、毎年10%以上で成長している。価格差は、少なくて2割、高いと5割である。ただ場合によっては安くなることもある。市場に溢れて価格が落ちることをイチゴで経験している。しかし、平均すれば、プレミアムはまだついていて最低2割は高いのではないか。

村岡次郎 インフレがあるが価格差はどうなのだろうか。

村本穣司 ガソリンは以前の1ガロン3ドルが5ドルになった。バイデンが政策を売っているが下がらない。野菜はどうかな。

米国は市場手動で有機農業研究が深まっている

池上甲一 USDAがオーガニックのディテールなプライス調査をやっている。それによると、ホウレンソウが一番差が少ない。政府がこうしたオーガニックのプレミアムを調べるところまでなっていることが驚きである。

村本穣司 米国は欧州とは違って有機農業に対する政策的な支援をしていない。マーケットドライブである。最近、売上が増えていることからUSDAでの予算が増えている。オーガニックの統計調査もその一貫である。研究費も一段と増えた。僕らがアメリカに来た頃は有機農業を研究している機関はほとんどなかったが、今はあらゆる大学がやっている。

2022040205s.jpg波夛野豪 池上先生のコメントを聞き間違えたかもしれないが、種類は限られるが、JAS以降には、日本でも生鮮野菜の価格比較は農水省の生産野菜価格調査月報で取り上げられている。

池上甲一 あくまでも、マーケットなんですね。USDAのはミルクや乳製品を含めた価格調査。見たのが2004年以降で、早いのでちょっと驚いた。

2022040204s.jpg橋本慎司 カリフォルニアも何度かいって、IFOAMを介して、ヨーロッパの農業を含めて、いくつかの国の農業を見たのだが、EUは政策的補助金が有機農業を発展させて市場が拡大したと思ったが、米国は必ずしも政府が推し進めないのにもかかわらず、マーケットが拡大している。政策支援がないということでは日本も同じなのだけれども、日本は市場が拡大していない。米国はなぜオーガニックが発展してきたのか。村本さんは、日本と米国とを行き来している中で、これは日本の文化的な背景の中で起こっているのか。提携に関しても原点である日本ではかなり衰退しているが、米国ではSCAが伸びている。ビジネス化しているため、ある程度、その流通の内容も変化していると思うのだが、そこの差はどこにあると思うのだろうか。自らの経験とデータに基づいて話してほしい。

波夛野豪 ヒッピーを知らない研究者が書いた本、ヘレン・S・ペリー「ヒッピーのはじまり」(2021)や畢 滔滔「シンプルで地に足のついた生活を選んだ ヒッピーと呼ばれた若者たちが起こしたソーシャルイノベーション: 米国に有機食品流通をつくりだす」(2020)が最近刊行された。客観的に見ていて面白い。ようやく50年が経過してヒッピーを評価する本も出た。橋本さんなら知っているかと思ったのだけれども。

橋本慎司 ヒッピーがオルタナティブには欠かせない。IFOAMの役員もある程度の年齢以上は元ヒッピーばかりだよね。

日鷹一雅 長谷川浩さんと最初のアグロエコロジーの大学を訪れた。当時は施設もなかった。長谷川さんが送ってくれた。そして、ダウンタウンでビールを飲んだが、そこで、いったときもカルチャーショックだった。日本の国立大学では想像できない。プラクティスもヒッピーがテントで寝泊まりして農場でサイエンティフィックなことをやっている。僕もヒッピー的なのでジャパニーズプロフェッサーとして鳥を見ていた。これを日本でやったのが福岡正信さん。ただのヒッピーでは困ると。それを、ちゃんと正当に科学した上で生かされたのがアメリカの懐の深さではないか。

日本は、未だに幕藩体制

波夛野豪 ヒッピーが悪口ですからね。

小林舞 米国でも悪口ですよ。

日鷹一雅 ミシガン大学のヒプロスのジョン・ヴァンダミア(John Harry Vandermeer,1940年〜)にも多分にそういうところがある。ピーター・ロゼット(Peter Rosset)はヒッピーの権化もいいところで飲むと大変なことになる。こうした人がアカデミアにとどまっているところがすごい。

池上甲一 ディープエコロジーやソロー(Henry David Thoreau,1817〜1862年)はどう?。

日鷹一雅 日本でも清里にEE(Environmental Education)があるが、環境の色合いが強い。向こうは博士号を取得しても多様な職種に就くが、日本は頑なに一つの道をステップアップしないとダメだと。教養としてソローを知っている。そこが懐が深い。ただ、日本にも別の文化があると思う。侍でもいいのだけれども、アメリカにいると僕なんかはいい。村本君は苦労したけれどもいいところに行ったよね。

長谷川浩 2018年に自分が所属する福島県有機農業ネットワークで、地元の子育て世代と有機農家の尿検査をした。子育て世代と農家、1000の尿を採取して、尿中のネオニコチノイドを連携した北海道大学で調べてもらった。論文は英語で書くのが当然なのだが、その結果が学術論文になっているので、ご一読ください。そして、ポール・ホーケンがドローダウンを2冊出している。この再生農業についても聞きたい。

2022040206s.jpg村本穣司 橋下さんが言われるデータに基づいての指摘はできないが、CSAは増えている。とりわけ、コロナ以降に急増したのはオンラインでのCSAである。結局、消費者の方も品物を選定できるし、値段はかさむけれども、家まで届けてくれるのがいいという人が増えている。この5年で増えてきたが、コロナで莫大に増えた。そして、小さいCSAもあるけれども、産業化に近づく動きが現れている。

 今日、お話ししようと思ったのもカリフォルニアはもともと利潤を目的にした農業がベースで伝統農業や自給はない。もともとゴールドラッシュで金塊を掘りに来た人によってできた街なので、そのマインドセットで「一発当ててやろう」で農業をやる人がメインストリームである。

 それが伝統であって、儲けと利益を目的にやっている。だから、東部でいわれているAgrialismとかファミリーファームはなかった。収益が目的なので大規模単作が基本。そこに多様性や環境がようやく入ってきたと。つまり、利益手動が非常に強い。

 カリフォルニアは全米の有機農産物の4割を生産しているが、大規模単作有機が多い。気候的に地中海で夏場に雨がふらないから、それでできてしまう。灌漑で農業をするので病気や雑草がまったく少ない。

小林舞 ただいま大旱魃中ですよね。大規模がどれだけ続けていけるかが試されている。

村本穣司 そう。基本的に灌漑農業なので水が生命線だと。中央部ではシエラの雪解け水を使って、沿岸部は地下水の井戸水。ようやく、数年前に水の使用量の規制が始まった。温暖化の様子を見ても明るいニュースはない。積雪量が減る。そして、旱魃と多雨が増えるという予想がでている。地下水も使用量が増えているので海水が混和している。海岸の井戸水は使えない。その上に気温が上昇する。どうも2070年が転機になるようだとされている。

池上甲一 オガララ滞水層の枯渇もワールドウォッチ研究所が警告していたが、法制化されるまで随分かかった。

村本穣司 基本的にフリーダムの国なので規制はなるべくしないと。

池上甲一 都市とのコンフリクトは。

村本穣司 夏に使える水量が制限されている。だから、水が撒けない。栽培自体ができなくなってきている。

池上甲一 資源価格の高騰。そして、カリフォルニアでは水も制限要因になると。となると、投入をしている農業の方が苦しくなってくる。それを減らしているアグロエコロジーの方が有利になると。

村本穣司 スプリンクラーでの水使用の効率性を高めたり、点滴灌漑に切り換えるということが始まっている。

長谷川浩 カリフォルニアはモノカルチャーでの有機農業だが、肥料は外部投入ですよね。日本でいえば、小祝政明さん的な有機農業だと。それは、短期的には収量があがっていいけれども長期的には持続性がない。

村本穣司 もちろんそのとおりです。しかも、投入されている動物の副残物や家畜糞、血粉、そして、鶏の羽の粉、フザミルは慣行農業の副産物。もともと化学肥料で生産されたもの。循環するのはいいのだが、窒素分は外から頼っているのでこういうものが増えていた時にどれだけ外部投入型の有機農業が維持できるかという問題が出てくる。

長谷川浩 リジェネラティブは、雨の変動が大きいときに土壌の水分吸収量を高めればかなりいいといわれているが。

村本穣司 不耕起や小耕起が多い。そして、土壌構造も発達するので保水性は良くなるのだが、野菜栽培でやろうとしても除草剤がないとどうしても難しい。夏に雨が降らないためにマルチをしても分解しないし、養分も出てこない。そこで、安定したシステムが作られるまで何年もかかる。それまでは、雑草だらけになっている。先進的な農家が協同で実験をしているがなかなか難しい。

長谷川浩 パーマカルチャーでは一度、振った雨を絶対に漏らさないようにしている。けれども、1年では無理だと。

村本穣司 僕も[成功した事例は]知らないですね。

吉川ゆきとし 兵有研の会員です。2年前にコープ自然派で兵庫県とのネットワーク会議があって映画の上映会をやった。そのときにしたのが、ビッゲスト・リトル・ファームだった。ご存知ですか。規模が200エーカー。投資をしてもらって荒れ地を開墾してスタートした。その数年の記録なのだが、内容が非常に面白い。アラン・ヨーク氏が指導に入って、ミミズで堆肥化させたりする。野生動物も取り入れていく。それを活かしながら観察をしながら、ようやく安定していくと。コロナ下でかなり開放されて視察にきている。アグロエコロジー協会としてもこの農場に行きたいと。カリフォルニアはどんな認識なのか。

村本穣司 その映画は見ていないですね。話は聞いた記憶はあるが詳しくは知らない。ただ、そういう小規模で新しいかなり面白い農業はある。マルチを使い、絶え間なく収穫してかなり収入もある。バイオインテンシブと言っているが、それも研究者でなく農家が開発したもので、米国各地でそうした小規模な不耕起農業がいくつもでてきて、都市近郊で消費者にも販売できて経営的にも成功している。僕らも調べて大学の農場でも試してみようかと思っている。

米国カリフォルニアの有機農業とアグロエコロジー

2022040207s.jpg カリフォルニア州は日本よりも少し広い。そして、農業の州で全米の半分を生産している。基本的にキャピタリスト・ファーミングである。低賃金労働力がシステムの一部になっている。

 農産物の順位も絶えず変化している。過去80年で見るとほとんど変わらないのが酪農だが、それも生産額は多いが農家数はどんどん減っている。大規模化している。オレンジも以前は多かったが下がってきて、トマトも2000年まであったが落ちている。要するに投資的な農業を行っている。市場が溢れ海外に撒けたら次に移ると。そういう農業をしている。

2022040209s.jpg  この写真は、サリナスのレタス団地だが、後ろの茶色の山。これが、ここの自然植生である。灌漑で生産している。これは、土壌の燻蒸とイチゴの生産の写真。労働は重労働でほとんどが移民である。

2022040210s.jpg 有機農業の全米第2位のペンシルバニア州の660Sの4倍がある。年に20〜30品目を作る小規模な農家。冬に緑肥を作っている。そして、自分で堆肥をつくっている農家もいるが、最近は堆肥の基準が厳しいので買っている。そして、天敵も外部から購入してきている。そして、大規模な有機農家は天敵のハビタットとしてアリッサムを植えている。

 この写真の左下は米ぬか。土壌還元殺菌法で滅菌している。そして、イチゴの畝。右下の写真はバキュームという物理的なやり方で害虫を吸い込んでいる。

2022040212.jpg 有機農場で一番古いのは1974年で、いま全体の4.3%が有機農場となっている。米国ではバーモンド州が面積比率では一番で約1割。2番目がメイン州で6%である。そして、有機農業の生産は伸びているが、全体のわずか2割に過ぎない農家が全体の売上の94%になっている。つまり、企業的な有機農業が広まっている。

  イチゴは、全米の9割がカリフォルニアが産地で大規模な栽培である。イチゴは暑いと実ができないが、カリフォルニアは夏場に雨がふらない。そして、内陸は気温が高くなるが、沿岸に寒流が流れているので25℃にならない。夏でも涼しい沿岸部は最適である。そして、カナダのチェルノーゼムと言われる肥沃なMollisol、黒色土壌にも恵まれている。そして、技術的には慣行農業で、臭化メチルとクロルピクリンの使用がこの50年の標準となっている。そもそも、土壌燻蒸も1956年にバークレーの研究者がやった。しかし、その後、臭化メチルがオゾン層を破壊することがわかり、2016年に使用が全廃された。

2022040213s.jpg 人体にも有害で、新生児が小さいという疫学的な研究調査もあって燻蒸剤が規制されている。

 有機でのイチゴ栽培は、グリースマン1980年代に着手したが、いまは全体の13%を占めるまでに増えてきた。

2022040214s.jpg  その伸びの大きな要因が販売増。初期はCSAやファーマーズ・マーケットだったが、いまは大規模な小売店舗での販売が広まっている。これは、一面はいいのだが、どうしても大企業は本来の有機農業の精神よりも利益を求めるため、抜け道を抜けようとする。水耕栽培での有機がよくなり、かつては、アニマルウェルフェアでなければいけなかったが、家畜の飼育法もゆるくなっている。以前の精神が蔑ろにされている。

2022040216s.jpg これに抵抗しているのがリアル農業プロジェクトである。ちゃんと土を使う。家畜は草地で飼う。コミュニティを作るといった新たな基準を作っている。農家が新しいシールを作っている。全米の有機農家のわずか3%だがすでに603が認証されている。

 もうひとつが、ロディール研究所の主導でパタゴニアと連携してやっている再生農業。こちらは、オーガニックの基準に上乗せをしている。

 そして、私のようなポジションも設けられた。これはまだひとつしかない。半分は民間からの寄付金である。ひとつの企業は登山にいくときのエネルギーバーを作っている。これを有機で作っていて利益をあげて、これによって2020年に有機農業研究所がバーチャルだができた。

 そして、有機農業の売上が増えて公共の大学に寄付をしていて、研究をしている。ただ、こういったポジションでは出資者の意に沿わないといけない。大規模が多いので、そうしたことへの支援を意識しないといけない。

  USDAの基準は生態学がスタンダードなのだが、経済的、環境的、社会的に公正である必要があるのだが、このソーシャルが抜けている。もともと含まれていたのが抜け落ちたと。そこで、出てきたのがアグロエコロジーである。

2022040217s.jpg グリースマンによれば、このステップは5段階ある。最終的には、デザインを変えないといけない。そして、フード・システムで考えなければいけない。我々は、アグロエコロジーはフード・システムで全体で考えると。そして、先住民の知恵、運動を兼ね備えたべきであると。そして、超学際的である。つまり、農家の経験も重要である。そして、参加型の研究と行動型の研究をしていく。

2022040218s.jpg  これが、一緒にやっている研究者のリスト。25年前は片手であったが、いまは40人以上。デイビスの方が多い。まさに時代が変わってきた。

2022040219s.jpg さて、お手元におくばりした最近の論文だが、土壌の健全性についてのものである。世界中の土壌学者が研究しているが、ここ20年くらいで、土壌病害の研究が大きく進んできた。例えば、いちごは病気に弱いので植物病理と一緒に研究をやってきたのだが植物病理の研究者がみる健全性と土壌学者が見る健全性とにはギャップがある。土壌学者は病原菌を調査しない。

Hirokazu-ToujuS.jpg 有機農業においては、病害にも影響するのだが、そして、土壌病原の同定もしにくい。かつては1月も同定するのにかかったから、総合防除的なことは行われなかったのだけれども、分子生物学の発展でいまでは1日で同定ができる。そこで、同定して対処することができるという意味では害虫と土壌病害が同じになった。そして、京都大学の東樹宏和さんもやっているが、核となる微生物、コアが鍵であることがわかってきた。まさに病害の抑止土壌があると。どうすれば、抑止できるかの要因が徐々にわかりつつある。これは、非常に活発な研究領域で将来的にも有望である。この有益微生物の指標は農場の選択にも使える。

2022040220s.jpg そして、そして、土壌の健全性、そして、欧州、畜産から2005年に始まったコンセプトが、ワンヘルスの概念だが、動物、人間は微生物の循環でつながっていると。これまでは養分の循環だけであったが、いまは微生物の循環になってきていると。ハワードが言った土壌と健康の関係がいまやっと科学がおいついてきて説明できるようになってきた。

2022040221s.jpg そこで、僕らが提唱しているのが、4要素の診断システム。病原菌、有益な菌のコミュニティ。そして、様々な農法。輪作や有機物の施用。それをやって、診断によってさらに強力な方法を使う。農家の経験も味噌である。農家は場所毎の適応力がわかっている。この科学的な知恵と農家、データの解釈をサポートするソフトウェアを一体で使ったときに土地固有の健全性の戦略が作れるのではないかと。ということで、枠組みとして提案している。

  有機農業の技術は場所の固有性が高く知の集約型である。これまでの技術はロケーションがなく、ケミカルインテンシヴであったと。

2022040222s.jpg そして、こうした技術は、従来のトップダウンの普及作法では広がらないと。いろんな知を持たないと対応できない。まさに、ソーシャル・ラーニング。水平な学習が重要になってくると。

 では、一番いい方法はなにかというと、すでに投入量を減らしてうまく成功している有機農場を調査することが最も優れている方法である。つまり、ベテランの有機農家は害虫が少ない。実際に研究者が調べたら土壌微生物相の違いが植物に抵抗性を与えていることがわかった。この論文が土壌における初めての研究である。というか、こうした考え方は、もともと日本ではやられていたのだが[いつしか失われてしまった]。

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池上甲一 分子生物学が手をのばすことでわかってきたと。

久保田裕子 最後にハワードが引用されたので嬉しかった。最近、コモンズから増刷されたが、ハワードの誕生日は有機農業法が成立したのと同じ12月8日である。

アプリコット・レーン農場の詳細はこちら。カリフォルニア州ベンチュラ郡ムアパークにある。

編集後記
 これは、2022年4月2日(土)にオンラインで開催された西日本アグロエコロジー研究会の講演記録である。
【画像】
 京都大学生態学研究所の東樹宏和准教授の画像はこのサイトより
posted by 情報屋 at 20:00| Comment(0) | 講演会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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