2026年07月26日

館野かえる農場の水田見学

トロトロ層をうまく使えば除草は不要

「普通、田植えから米づくりが始まると言われていますが、私からすれば、田植えは卒業式です。田植えしてからは草取りもしないし、収穫をするだけ」。

20260726003s.JPG だから、その前段階としての苗づくりと 苗づくりと代かきがポイントだという。館野さんの水田15ha、小麦1ha、ダイズ1ha。すべて有機農業である。水田は8haはほぼまとまっている。水田の傍らで館野さんは説明を続ける。

「一番大切な肥料は光です。だから、基本的に無肥料です。ただ、育苗は一緒に多くの苗を生育するため、割れたダイズとか屑ダイズをつかっています。タンパク質7%がありますから、化学肥料並みです。ポット苗は、10aに30枚必要ですから、4,500枚は作る。予備を見て5,000枚は育苗します」

 館野さんはピンと立った苗の先端を軽く指でつまむ。

「この背が一番高く長いのが親株。慣行栽培では4、5本をまとめて植えますが、理想は1本植えです。ただ、それだとその株がダメになるリスクがありますから、2本植えにしています。いま、19株くらいに分蘖している。これが20~25本になれば十分です。それに丸タニシが多くいるでしょう。これも雑草を食べてくれます。肥料をいれるとイモチ病がでますので、ほとんど入れていない。そして、有機農業は追肥が難しいのです」

葉がベロンと垂れていると水滴が残ったりしてイモチ病になりやすくなる。

「ジャンボタニシも自分の身体を押し付けて、へなっとなった苗を食べます」

西日本ではジャンボタニシも問題となっているが、だから、これもいい苗を作ることがポイントになるという。

 カメムシの害も一昨年は出たが昨年は問題がなかった。

 この地域の慣行は7~8俵だが、館野農場は5~6俵。夏の中干しもしない。小松島市のICEBAの会議で出会ったカゴメ株式会社の中島佳子中島さんに調べてもらったが、メタンも発生しているものの、慣行よりもでていないという。

 館野さんの農法は、稲葉光國さんが開発されたやり方を改良したものだ。代かきによって、泥が舞い上がると軽いものが最後の沈殿してトロトロ層を形成する。すると表面をふさいでしまうから雑草の芽がでない。素晴らしいではないか。

「このやり方を見てまわりに普及していないのですか」

 農ジャーナリストの小谷あゆみさんはおもわず問いかける。

「民間稲作研究所を通じて各地に広まっています。ですが、全部の水田でうまくいくわけではない。砂地のところとかだとトロトロ層ができない。だから、草がでているところとでていないところを一枚の圃場でも様子をよく見ることが大事ですね」。


畦畔の草刈りと生物多様性の保全

20260726006s.JPG 館野さんが所有しているのは2haだけ、あとは借地である。土地改良事業をしたときには20戸あったが、現在は離農者が続き3戸だけである。広い圃場を指さしながらところどころ、稲の葉の色の違いを館野さんは指摘する。

「2014年に土地改良事業をやったときに表土が多くなった場所は、まだ土壌養分が多くて、それがあのように濃緑色としてまだ残っているんです」。

 その色の違いを見極めながら館野さんは土づくりを行っているが、その主役となるのが、畦畔の雑草だ。

「刈った雑草を入れた場所は緑色になっています。窒素が増えていることがわかります。本当は窒素が少ないコメの方がおいしいのですが」。

いま、やっている草刈りの作業は年5回。

「草取りと草刈りの違いがわかりますか」と館野さんは問いかける。

「草取りは根から抜くから死にますが、草刈りは根は死なない。新しい草を出すためにやるのです」

 館野さんはそれを脱毛剤での脱毛と床屋での散髪に例える。

「私たちは草が憎くて草刈りをやっているのではありません。老いた草は病害虫が付きやすい。そこで新しい草を出し、それについている微生物を入れるために刈っているのです」。

 ハンマーナイフモアは草を細かく粉砕してしまうため、草刈り鎌でやるという。もちろん、熊手で集めるのはかなりの手間がかかる。

「向こうに見えるのはノカンゾウ。現在の土地改良事業では、生き物の保存が義務付けられていますから、土地改良区の中に環境委員会を作って、黒めだか(南めだか)、トウキョウダルマガエルを保護していて、カエルが登れる魚道等を整備しています。病害虫や雑草を排除するのではなく、いかに味方にするかである。自然の仕組みに沿って育てれば病気にならないのです」

深刻な平地林の減少と山火事

 育苗は、井戸から引いた水でしているという。平場ではあるが、ところどころに平地林があって、そこが、水資源を涵養するうえでも重要だと言える。館野さんの山は、コナラ、クヌギ、アカシデ等からなるが、平地林の落ち葉履きが冬の仕事だという。

20260726007s.JPG「白色腐朽菌とかトリコデルマとか落ち葉を分解するための強力な菌がいますから、2年もおいておけばよい腐食土ができます」

 雑木林は昔は薪を取ったり、椎茸を作ったりして、以前は、松林だったという。けれども、いま、多くの農家は落ち葉履きをしなくなっている。

「そのため、山火事が多く起こるのです。加えて、樹林地は農地よりも固定資産税が高いですから、どんどん森が減っている」

 昨日の講演では館野さんは宮沢賢治を例にあげながら、都会人も農業に参加すべきだと説いていた。そこで、都会人として農作業で応援に関われることに何があるかと聞いてみると「落ち葉履きと草刈りでしょうね」という答えが返ってきたのだった。

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2026年07月10日

有機農業運動から「運動」が脱落すると何が起きるのか

近畿大学名誉教授 池上甲一

有機農業が産業主義的な方向へと舵を切っている

 コメント、何をコメントしていいのか。これだったらコメントになるかなということを勝手に想像してきました。私の考えを発表することになるかもしれませんが。この会議に来る前に農林水産省農産局農業環境対策課の有機農業推進班の方とお会いしてきまして、いま問題になっている有機農業推進基本方針の原案が昨日、有機農業部会で提出されたということで、その資料をいただいて少し説明を受けてきました。この有機農業推進基本方針もそうだし、数日前にも財務省が有機農業への転換事業に対して予算の執行状況を点検したところ生産性が下がっていて、食料安全保障に問題があるから、有機農業の推進を止めろとまでは言わないけれども、「有機農業推進の概算要求に反映しなさい」というコメントを出したり、新しい水田活用の交付金の全面的な見直しの中にもみられるのだが、産業主義的な政策に舵を切っていく。舵を切っていくだけではなくて、財務省から言われるので仕方がないのかもしれないのかもしれないけれども、財務省に媚びへつらわないと予算がもらえないと思い込んでしまっているような気がして。そういうような感触や感想を持ったりしました。それについても後ほど申し上げたいと思っています。

 さて、今日、コメントしたいと思っているのは、有機農業運動から運動を落としたらどうことが起きるのか。そういうことへの私の考えをご報告して、一番、最後に付けたしで、お二人に質問をしたいと思います。

いまに生きる一楽ブランド

 20260710018.JPG雨宮裕子さんの報告にもありましたが、徳島県の小松島市のJA東とくしまの直売施設「あいさい広場」には「一楽米」があり、このように写真付きで売られています。ただ、小松島にあるのは一楽米だけではなくて、コープ自然派の「コウノトリのお米」、そして、「いのち育む田んぼのお米」もあります。

有機農業運動からオーガニックへ:全体的な俯瞰図

20260710019.JPG そして、これまでの日本の有機農業運動をふりかえって、おざっぱですけれども4つくらいの段階にわけられるのかなと思っていまして、その全体図です。

 いわゆる第一世代、第二世代、第三世代、いまは第五世代になっていると思いますが、第三世代と第四世代はあまり差がないと思っています。

初期の有機農業のモメンタム

20260710020.JPG
 最初の頃の第一世代の大事な点は、雨宮さんの立派な大著を読んでいただければよくわかると思いますが、農民運動と消費者運動と農村医療運動が統合されるような形で有機農業運動が展開されたことだと思っています。その中でも一楽さんが役割を果たされたわけですが、柳瀬義亮さんや若月俊一さんと一緒に推進されたと。そして、私は、あまり存じ上げていないのですが、いま、日本有機農業研究会でお医者さんは何人くらいいるのでしょうか。

久保田裕子 ごく少数

 それから、研究者も減っているのではないかと思います。初期の頃にはいろんな人が集まって多様な意見をぶつけて運動を展開していた。それが、重要な役割、特徴ではなかったかなと思っています。

有機農業の事業化と提携後退の兆し

20260710021.JPG それが、1980年代~1990年代の第二世代になりますと、提携だけではなかなか有機農産物に手が届かない人たちにも有機農産物を届けようということで、事業化、第三世代になりますと、配送の事業化が始まってきて、それとともに、提携が少し後退していく兆しがみられたと。「らでぃっしゅぼうや」とか「大地を守る会」とか、「オイシックス」とかがの配送事業者が誕生して、いまは経営統合して、「オイシックス・ラ・大地株式会社」になっているわけですね。ただ、同じ株式会社という形式をとっているのだけれども、京都の「安全農産物供給センター」とはちょっと対称的かなと思っています。オイシックスは株式を重視しなければならないのでなかなか社会的な発言がしずらいと。藤田和芳さんが追放されるのは、原発の処理水の放水をTwitterで「汚染水」と書き込んだことが問題となったらしいのですが、そういう形で忖度をせざるを得ない。それに対して、安全農産はメンバー重視で配当がない。私も株主なのですが、供給センターがちゃんとたちいくような出資金。同じ事業化をしていても、事業体の性格の違いによって運動性が担保できるかどうかで違いが出てくるような気がします。

現代有機農業のモメンタム

20260710022.JPG そのあと、有機JAS制度のような表示の問題、そして、有機農業推進法が2006年にできて、ここにおられる皆さんも多大なご苦労をされたと思いますが、そのあたりから、有機農業の表面的な捉え方が出てくるのではないか。初期の頃の捉え方と少し違う方向へと一般的な理解が広がっていったのではないか。邪推でなければいいのですが、そう考えています。有機農業推進法の定義ももう一度、議論する必要があるのではないかと思っています。こうして、有機農業運動が有機農業ビジネスへと変わっていってしまって、本来的な有機農業、多品目少量生産の有機農家とモノカルチャー型の有機ビジネス界との間で二極化が進んでいるというのが私の感じです。

農政の「大転換」だった? みどり戦略

20260710023.JPG その後にみどり戦略が出てきたのですが、このみどり戦略の中に有機農業が政策的に位置付けを与えられたことによって、有機農業の目標が脱炭素へと矮小化された。手段として、オーガニックビレッジとか、有機学校給食とか、環境負荷低減事業とかへと矮小化されてしまった。オーガニックビレッジも160近く大幅に増加したのだけれども、実質はなかなか厳しい。内実が伴っていないものがかなりあって、当面の予算支援期間が終われば、また元の木阿弥と思われるところもかなりあると。学校給食もとりあえずオーガニックビレッジの予算があるから出しておこうと。これが5年たったらどうなるかとちょっと不安です。しかも、学校給食が無償化ということで親の負担がなくなったということで。もちろん、学校給食を運営するうえではお金がいるわけで、それは市町村の予算からでるので、逆に質が落ちるんじゃないかと心配している給食担当者もたくさんいます。まだ、始まったばかりなのでわかりませんけれども、そこも検証が必要かなと思っています。

産業主義化に向かう有機農業と有機農業叩き

20260710024.JPG そして、最後の産業主義化の現段階ですが、とにかう、有機農業の基本方針が強調しているのが、広域流通して供給力を強化する。とにかく、全国を流通させる。それには、ロットを大きくする。そして、輸出をしようと。前の2022年の基本方針に比べるとこのあたりがかなり目立っています。スマート有機農業とかがかなり強調されていて、高市首相が陸上養殖と植物工場を盛んに言っているので、植物工場も少なくとも農薬を使わない、化学肥料も使わないことを売りにして販売していくと。植物工場が有機農業とは思えないのだけれども、そういう分断も出てきている。

 国の税金を使っているのだから、たくさんとって、食料安全保障に貢献できるようなことに使えということを財務省から指摘されたわけですが、これに対して、鈴木農相は「お説ごもっとも。単収増も必要だと。違う見方、複合的な見方があることを主張して欲しかったのですが、どうもそうはならない。有機農業の捉え方が、変質しつつある。食料安全保障がまた量に戻ったと。せっかく、食料農業農村基本法で国民一人一人の食料安全保障ということで、アクセスビリティの改善に舵を切ったのに、またたくさんとるという方向に切り替えなさいということで、ものすごく危機感を感じます。

消費生活者にとっての有機食品

20260710025.JPG 有機農業が誕生してすでに半世紀以上、有機農業推進法ができて20年。なのに、ファーストフードとかでも、ハンバーグでもレタスが有機であるのを売りにしているのもあるにもかかわらず、有機オーガニックという言葉を初めて聴いたというのが、6.5%だし、言葉は聞いているけれども内容がわからないというのが55%いる。だから、無農薬栽培とオーガニックと有機とどれが一番いいんですかという聞き方になってしまう。そこでも認識が違う。オーガニックライフスタイルエキスポを東京で十数回、徳江さんが一生懸命やっていて、3年前から京都でもやるようになりまして、ここで日本の有機農業は小さいといわれているけれども、いろんなセミナーがあって面白いのです。変容してきた食品安全性の焦点も変わってきているのですが、時間がないので省きます。

有機農業への山下惣一氏の違和感

20260710027.JPG そして、同じ農民作家、農民芸術家、星寛治さんと山下惣一さんですね。星さんはご自身の健康問題と環境問題と地球への危機感から有機農業に入りましたが、惣一さんは有機農業が嫌い。それが、まだまだ特別視されて一人歩きしているところが嫌いであった。ビジネスになるので好きではなかった。違和感があることももう一度見ておきたいと思った。

産消提携の専業主婦モデル

20260710028.JPG そして、参照提携がよく言われていますが、専業主婦じゃないとなかなか対応できないということも言われていて、私も結婚以来、京都の使い捨て時代の会員なのですが、班のメンバーとして、ちょうど同じくらいの子供がいたのですが、中高生になるとやめてしまう。子育て終了で抜けてしまって、ちょうどM字カーブで提携の関り部分が細っていくと。

演者への質問

20260710029.JPG で、雨宮さんへの質問ですが、原点に帰ることの重要性。どう原点をいま読み解くのか。それをもう一度考えてみたい。漢字でかく「提携」と海外に伝わって「TEIKEI」になると意味が違うようなので、そのあたりもお聞かせいただきたいと思っています。また、消費の一局面、食べることだけでなく暮らし全体をエコにすることはとても重要だと思います。

20260710030.JPG それと、伊丹さんの報告ですが、生協運動が市民運動の中で、どのような位置づけになっていくのか。主婦、婦人、消費者。言葉が違うのですが、それから今日いただいた資料に「雨宮さん」の余白があって。最近、流行っていまして、ジェームズ・スコットのモラルエコノミーもそうなのだが、国家の余白に生きる人々がいると。その積極的な意味は何なのか。それを聞いてみたいと思います。また、認証の評価もエコラベルのサイトによると199カ国で25業種、456のラベルがあるそうです。まさに、ラベルが氾濫しているわけで、この中に有機J ASも埋め込まれて、埋没している。そういう中で、PGSをうまく位置付けられないかとか、学校給食であればもっとほんわかとした、確認しあう現場を知るという感覚でできたらいいと思っています。

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戦後生協運動の発展と提携の現在地を考える

法政大学大学院公共政策研究科教授 伊丹謙太郎

食は平和運動とも直結する―考える生産者を作り育てる有機農業運動

 私の専門は国際開発経済、賀川豊彦が生きた時代、1920年代、1930年代の協同組合、産業組合運動について色々と勉強をしている。それと同時に、現代において協同組合運動はどこまで可能性があって逆に何が足りないのかを考える。そのひとつの補助線となるのが社会的連帯経済という考え方です。池上先生もよく言われる社会運動論が専門になるのかもしれませんが、それもただ頭の上で思い描くものではなく、やはり胃袋と直結するようなリアルな生活とのつながりの中で社会のあり方を考えている。それも皆が考え、皆が連帯していくことが重要であると。それも、戦前からあった。なぜ、生協運動に魅力を感じるのかというと、それは食だけではなく、食そのものが、賀川豊彦が非常に重視した平和運動とも直結するんですね。自分の日常の暮らし、どういう社会を実現しなければならないのかを考えるうえで、皆が連帯して協同していく。それは必然的に食の問題、平和の問題というマクロな問題と直結しますし、「○○主義」とは一線を画したものがあるのではないか。それ自身が非常な魅力です。考える農民を作り育てることが有機農業だとすると、考える消費者を作り育てることが生協運動で同じような目的ではないかと思いました。同時に生産者と消費者が相互に学び合えるのが産直ではないか。こうした歴史があるのではないかと思う。

今だけ金だけ自分だけは助けを求められない社会システムが生み出す

 つながりを実装する社会的連帯経済だが、そこで、何が重要なのかというと、皆が分断されてしまっていて、分断そのものが不幸を生み出している。何をしているかがわからない。それぞれが一人で孤独でもがき苦しんでいる。産直提携で色々な人がつながることで、連帯することで何かが生まれるというのが社会的連帯経済の鍵となるコンセプトなのですが、今の日本のメンタリティー、私たちが日々何を考えているかというと、農業経済学者の鈴木宣弘さんが語っていますが、「今だけ金だけ自分だけ」。これが、代表的な日本のメンタリティーになってしまっている。実は、「今だけ金だけ自分だけ」というのは、悪い意味ではなく、それだけしか考えられない方向に一人一人が追い込まれてしまっている。「助けて」と言えない社会に日本がなってしまっているがゆえに、先のことが考えられない。お金のことしか考えられない、自分のことしか考えられなくなっている。それに対して、一緒にこう解決していかないかという方向に切り替えなければならない。そのつながり方を考えるのが、社会的連帯経済であって、「今だけ金だけ自分だけ」が進んでいくと、全体が沈んでいく。そこで、初めて「そうか、こんな社会ではいけなかったんだ」と気づく。しかし、それでは、もう何もできない。もはや遅すぎる。では、今の時点で、今だけではなく、お金だけではなく、そして、自分だけではない社会運動をどう作っていくか。

グローバリゼーションへの反対だけでは狭くなるので広い連帯が必要

 つながりの経済、つながる経済、それこそが新しい経済だということで、この議論が始まったのは2000年前後、「もうひとつの世界は可能だ」というスローガンを掲げて、「世界社会フォーラム」が、「オルタグローバリゼーション」という考え方が出された。弱肉強食のグローバリゼーションが広がっているから、それをなくしていかなければならない、反対していかなければならないというのが1990年代の流れでした。それが、少し変わって、反グローバリゼーションではなくて、オルタグローバリゼーション、別のカタチのグローバリゼーションを考えていかなければならない、へと変わった。

 なぜかというと、現状のグローバリゼーションを批判する反グローバリゼーションは人々をより小さい狭いところに閉じ込めさせてしまう。そうではなくて、広い連帯、つながりが大事であると。お金だけでなく、どう人々がつながれるかを考えたのが社会的連帯経済で、そのモデルとして語られたのが、フリートレードに対するフェアトレードでした。これは、まさに、生産者自身と消費者とがしっかりと結びついてお互いが考えながら経済をまわしていくということで、日本では国際産直ということで、日本国内での産直運動の精神を国際的に展開しようということで試みられてきた。一方で、フェアトレードで認証マークが広く普及する。これそのものは良いことで、システム化されている。しかし、そこで失われている精神もあるのではないか。今日もみどり戦略システム戦略をイノベーションを通じて広めていくのは眉唾ではないかという話もあったが、これも通じる話であって、スケールする、拡大していくためには、フェアトレード認証のようなわかりやすいシステム化が効果的かもしれない。しかし、フェアトレードマークがついたものを買えばそれですむのかというとそうではなくて、本来的には遠く離れた生産者との消費者との連帯、交流を重視するのが産直でありフェアトレードの運動であった。生産者や消費者、作る人や食べる人に対する想像力を失ってしまうような形で広がったら、それはいいことなのだろうか。そこには、ある種の課題を解決するために考えなければならないことがあるのではないか。

公助や自助の他に共助も必要

 実は社会的連帯経済では、公助や自助ではなく、「共助」がコンセプトになっている。我々一人一人が助け合っていく。かつての村落共同体においては、すべてが「共助」でまかなわれていた。相互に助け合っていきていた。しかし、公助や市場が発展する中で、人々はどんどん共助を失ってきた。

 20世紀は市場と行政との混合経済であったのだが21世紀にはそれが破綻していることが目に見えている。それが、社会的連帯経済である。しかし、難しいのは、市民社会の領域だけではすべての経済をカバーすることはできない。一部は政府の力も必要だし、一部はマーケットも必要だと。三者がどういう形でベストミックスができるのかが大きな課題になっている。そして、最近、新しい社会計画という言葉が流行にしている。20世紀まではすごく有効に機能していたものが、いま機能しないものが非常に増えてきている。もういちど、人々がどんな社会を目指すのかをしっかりと議論する形になってきている。

アメリカや北欧だけでなく南欧・フィリピンも参考に

 そうした中で、大きな話になったが、社会的連帯経済をわかりやすくすると、日本においては、他の西洋先進国をモデルにして、いかに日本でローカライズするかという歴史がずっと続いてきた。ある時代はアメリカだったし、ある時代はドイツであったし、福祉は北欧がモデルであった。日本にはいろんなものがアピールされてきた。スローライフでイタリアが着目されたりしたが、南ヨーロッパのモデルは、輸入・注目されることは、北欧、イギリスに対して着目されてこなかった。こういうことにチャレンジしているのが社会的連帯経済である。

 一つは推進する主体が中心にあるのは生協やN POとか共同組合である。社会的経済、民主的なことが組み込まれていることで、いくつか事例をあげると、例えば、フランスではローカルの有機農業を推進するAMAPがある一方で、遺伝子組み換え作物を推進する団体もある。いずれも協同的なものを考えている。東アジアでも、フィリピンは社会的連帯経済がロードマップになっていて、一番古いアヤラコーポレーションが直接かかわって推進している。大規模な事業体と共同でやることが望ましいのかと。日本ではフィリピンのあり方に極めて否定的である。どこまでもの資本への妥協が妥当なのか。そうしたことも時間をかけて考えなければならない。

いすみ市の時間をかけた話し合いでの共助は日本のモデル

 一方で、日本において、千葉県のいすみ市の有機給食、公共調達する動きが2012年から議論がはじまって時間をかけてやってきた。いすみでは生産者も行政も保護者も一緒に考えながらやっている。学校給食を有機農業にする動きはイノベーションのように急にはできない。社会的経済は非常にすぐに解決できるわけではないが、時間をかけて少し通津進んでいく。それぞれの当事者が一緒になって進めていく。遠い道が一番近道なのではないか。それが大事ではないか。

 それぞれの分野でそれぞれの授業が進めていくだけではなくて、いろんな領域が活躍していくと、大きなところでつながっていくので、全体の流れの中で自分はどのように位置づけられて、どのようにつながっていくのかを考える必要がある。消費者の組織者、生産者の冷帯だけでなく、そこにつながるようなシステムを作ることが社会的連帯経済である。

 市民社会だけでできることには限界がある。他方で、それをマーケットや行政だけにまかせ切ることもできない。それぞれのセクターが協力しあうひとつの例がいすみ市の有機給食の公共調達ではなかったか。そのやり方は、今日の日本における有機農業の議論と結びつくのではないか。

杉並区の岸本区政のムニシパリズムは社会的連帯経済の政治的な形態

 社会的連帯経済をいかにローカライズして日本社会に社会実装していくか。具体的な戦略として、最近「テリトリオ」というコンセプトを通じて社会的連帯経済を広げていくという概念がある。地域性あるかどうか。そこにかかわる主体が個別なのか複数で助け合っているのか。ボトムアップ型かどうか。また、イタリアとかでは広がっているのだが、日本型のやり方は、地域と地域が関われるあり方ではないかという議論もされている。最後に杉並区でも先日の区長選で岸本区長が再選された。岸本区長が提唱しているのがムニシパリズムでそれが区政の特徴になっているのだが、実はムニシパリズムというのは社会的連帯経済の政治的な形態だといわれている。この両者ともスペインで発祥して、スペインでどう地域を作るかの二本柱になっている。

 実際に岸本区政がどこまで進んでいるのか。区民からの評価は高いのだが、再公営化という言葉でムニシパリズムはイメージされがちである。だからこそ、水道代が高くなる。だから、水道とかをもう一度公営化しようとう単純化した議論とされているのだが、市民に取り戻すことがコンセプトで、市民のために取り戻すために公営化するということが重要であって、行政がサービスすることが大事であって、自治体である必要もない。自治体が予算を立てて地域住民がやることも議論していくべきである。

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2026年06月02日

トランプ米政権のキューバへの燃料封鎖問題について

山添拓 日本共産党の山添です。今日はキューバの現状について伺います。キューバは石油の6割をベネズエラから輸入していましたが、1月の米国によるベネズエラ攻撃の後はなくなりました。さらにトランプ大統領が、キューバに直接間接に石油を販売・提供する国への追加課税に署名したことからメキシコなどからの輸入もなくなりました。

 2026060401.jpg現在一滴の石油も入っていません。いわば兵糧攻めの燃料封鎖です。備蓄が枯渇し、首都ハバナでも1日18時間停電という事態であり、電力不足のために、約10万人が手術を待ち、うち1万1000人が子どもたちだとも伺います

 記事をお配りしていますが、ここでは燃料不足でゴミ収集者が来なくなり、ゴミが溢れ、蚊やネズミが増えたということも紹介されています。人道的な事態が生じております。まず外務大臣の認識を伺います。

茂木茂木敏充外務大臣 キューバ私も3年前に訪問いたしましたが、コロナ禍以降ですね、主要産業の観光業が打撃を受けたこともありまして、国内経済の状況が悪化をしてですね、国民生活は、厳しい、状況に当時からありました。また、当時から燃料不足の問題もありまして、キューバに行くとアメリカのクラシックカーが走ってるのかと思ったら、「あんな燃費の悪い車なんかとても使えない」とこんなことを言っていたのを非常に覚えているところであります。

2026060402.jpg それが今年に入りましてですね、主要な燃料供給国でありましたベネズエラ等からの供給が、突然途絶え、燃料事情が急激に悪化したと承知をいたしております。これによりまして急遽国内では大規模停電。ま、以前から停電はしてたんですけれど、大規模停電があったり、断水があったり、さらには医療機関での、手術の遅延等が頻繁に発生し、交通公共交通の制限があったり、学校閉鎖等の緊急措置が取られるなど国民生活等の緊急措置が取られるなど、国民生活に重大な影響が、拡大していると、このように認識いたしております。

山添拓 はい、ありがとうございます。先週末、我が党の志位和夫議長と共にキューバのヒセラ・ガルシア大使と懇談し状況を伺いました。乳幼児の死亡率、半年前は1,000人に4人。これアメリカよりもいい数字だったのですが、今は倍以上の9人になってしまったということです。モーターが回せず200万人以上に水へのアクセスに問題が出ているとも伺いました。看過しがたい事態だと思います。

 で、日本とキューバは2029年に国交100年を迎えます。伊達藩、支倉常長(1571〜1622年)のヨーロッパ使節団が1614年にキューバに立ち寄ったことを含めると400年以上のつながりがあるともうかがいます。良好な関係を維持してきた2国間だろうと思います。で、近年日本政府はキューバに対してどのような支援を行ってきたのか、また10.6億円の無償資金を発表しています。内容をご説明ください。

2026060403.jpg外務省大臣官房西崎寿美審議官 はい、お答え申し上げます。我が国は近年キューバに対し人道的観点からの支援や同国が進める経済改革を後押しするような人材育成を行ってきております。最近では昨年のハリケーン被害に対し水衛生及び保健インフラ改善のための無償資金協力をユニセフと連携して実施しております。

 また、現在キューバでは深刻な電力不足のため特に病院への電力確保が緊急の課題となっていると承知しております。かかる状況及びキューバ側からの要請を踏まえて太陽光パネル等の整備を行うことを決定しました。同支援はキューバ国内10カ所の病院におけるエネルギー供給の安定化及び医療サービスの持続力可能性の向上を図り言下の人道状況の改善を目的たしのものでございます。

山添拓 あのキューバはこの間太陽光発電の比率を、短期間で3%から10%に引き上げ、エネルギーの確保を探っているそうです。そうしたもとでの今ご紹介になった病院への太陽光パネル設置の支援は大変歓迎されております。2025年10月29日国連総会はアメリカ合衆国によるキューバに対する経済通商金融上の禁輸措置を終わらせる必要性についての決議を賛成多数で採択しました。内容と日本政府の対応についてご説明ください。

外務省大臣官房門脇仁一参事官 お答えいたします。ご指摘の国連総会決議は全国連加盟国に対し、米政府による金融措置のような他国の自由貿易を妨げるような法令、措置の制定を差し替える要求し、現在そのような法律や措置を取っている国に早期にそれらを廃止無効化することを要求するものと承知しております。我が国は日本企業を含む第3国企業国民の米国外での経済活動の保護の観点から1997年以降まで本決議に対一貫して賛成票を投じておりまして、ご指摘の昨年の決議にも賛成したところであります。

山添拓 同決議は92年以来毎年圧倒的多数の国の賛成で採択されてきました。60年以上続く米国の一方的な金融政策に対して国際社会は反対してきたわけです。外務省に重ねて伺いますが、日本政府が賛成してきたのも、今日本企業への影響などもご紹介ありましたが、基本的には主権の平等あるいは内政不干渉、こうした国連憲章や国際法の原則をも考慮してこういう態度を取ってきたこう考えてよろしいでしょうか?

2026060404.jpg外務省大臣官房門脇仁一参事官 この賛成票を投じてきた理由でございますけれども、こういったあの制裁にあの米国のキューバに対する経済政策、これが、日本企業を含む第3国企業国民の米国外の経済活動がこういったことが過度に制限されますとですね、国際法上許容されない国内法の域外適用にあたる恐れがあるということを各国の件を共有して一貫して賛成をきているとこであります。

山添拓君 国連憲章や国際法の原則をも当然考慮したものですよね。

外務省大臣官房門脇仁一参事官 繰り返しになりますが、日本企業を含む経済活動の制限について、あるいは国際法上許容されない国内法の域外適用の恐れがあるという懸念を共有してのことでございます。

山添拓 こうしたもとで米国のトランプ大統領が「次はキューバだ」等と述べて、対キューバの軍事作戦を示唆しているのは重大です。アメリカメディアはトランプ政権がキューバへの軍事行動に備えて机上演習を実施したと報じ、空母打撃軍がカリブ海に入った。あるいは強襲上陸艦教が米部バージニアで待機していると伝えられています。

 一方でブラジルのルラ大統領は、トランプ大統領との首脳会談後、トランプ氏がキューバ侵攻を考えていないと述べたと明らかにしています。また、ルビオ米国務長官はキューバとの外交交渉の見通しを説明する中で我々が常に望むのは外交的解決であり交渉による合意だと述べています。これを外務大臣に伺います。キューバを巡る現状は危険をはらんでいますが、外交的、平和的解決が重要であり、必要であることは確かだと思います。認識をお示しください。

茂木外務大臣 我が国としてですね、あらゆる国家の問題について話し合い、外交的解決に、よってですね、外交的なものに、外交的に解決することが重要であると、このような姿勢は一貫しております。

2026060405.jpg山添拓 ブラジル、メキシコ、スペイン3カ国の首脳は4月18に共同声明を発表し、一方的な武力行使に反対する姿勢を示しました。キューバ問題は国際法に沿った真剣で相手を尊重した対話を通じた解決をと訴え、キューバ国民の生活状況を悪化させる行動を避けるよう求めています。この声は米国を名ざしをしていませんが趣旨は日本政府も同意できるものだろうと思います。ですから、やはり平和的な解決が前提だとこういう態度で望んでいただきたいと思いますが、改めて大臣いかがでしょう。

茂木外務大臣 これは、先ほど申し上げたような形で、問題が起こった場合に話しによって解決をする、これがあの基本だと、考えております。ただその上で個別具体的な状況につきましてはですね、その事情がどういうことから発生してどうなっていくかと、様々な課題があるっていうこともあれでありまして、個別の事象に対してですね、どうであるべきだ、第3国としてあの申し述べるのは控えたいと思います。

山添拓 先ほどの外交的解決が重要だというご答弁だと思います。キューバの現状依然として深刻です。状況を踏まえてさらなる人道支援についても検討すべきと考えますが外務省いかがでしょう。

外務省西崎審議官 現状をお答え申し上げます。現状キューバでは国内全土で大規模停電化が頻発するなど人道面で困難な状況に直面していると承知しております。こうした状況を踏まえ人道的観点から今後必要な対応を検討してまいりたいと考えております。

山添拓 明日から始まる世界島嶼国海洋会議に合わせて、副首相が来日中と伺います。良好な関係を築づいてきた日本政府として、必要な対応を取るようあの求めたいと思います。米国司法省は5月20日、30年前の小型機事件を理由にキューバのラウル・カストロ元国家評議会議長を起訴しました。同じように米国が体制転換を狙う相手の国家元首を起訴したのがベネズエラです。今年1月米国はベネズエラへの軍事作戦によってマドロ大統領を拘束し、本国に連行して裁判にかけました。

 この点について日本政府はベネゼラにおける民主主義の回復及び情勢の安定化に向けた外交努力を進めていくなどと表明しましたが、いかなる理由があっても主権国家に対して軍事攻撃し指導者を拘束連行することなど許されません。国連憲章と国際法を乱暴に踏みにじる侵略に他なりません。大臣の認識を改めて伺います。

茂木外務大臣 あのベネズエラの現状についてお話をしますと、1つは米国との外交関係、再開が発表され、そして、一部の政治犯の釈放が実施され、さらにですね、経済開発に向けた法改正等の動きがあると、このように理解いたします。我が国としてベネズエラにおける民主主義が回復されることが重要であるとの一貫した考えに基づき、ベネズエラ情勢に対応してきましたが、ま、今後、これらの動きがですね、いかにベネズエラでの民主主義の回復につながっていくかということを含め、情勢を注視していきます。引き続きG7や関係国土と緊密に連携しつつベネズエラにおける民主主義の回復や情勢の安定化に向け、避難民とベネネラ国民の、民政支援、そして国の支援を含め、取り組みを進めていきます。

山添拓 私が伺ったのはトランプ政権が行った軍事による大統領の拘束連行問題です。いかがですか。

茂木外務大臣 1月のあの事案についての評価でありますが、国連各国政府専門家と、国際社会で様々な、議論が行われているところでありますが、我が国として、今回の事案について正確かつ詳細な事実関係を、十分把握することは困難であることから、評価を行うことは差し控えたいと思っておりますが、ずれにしても今必要なこと、今やるべきことについては先ほど答弁をさせていただいた通りです。

山添拓 攻撃によって指導者を拘束拉致することを要認されるのですか?これは詳細な事実関係がどうかという以前に客観的な事実関係で誰もが承知してることじゃありませんか。容認されるのですか。

茂木外務大臣 事案全体について申し上げると評価できないと、評価することは困難であると申し上げております。

山添拓 それは、私は極めて情けない、法の支配とは駆け離れた態度だと思います。だって先ほど別の方の質問に対してはロシアのウクライナ侵略に対して国際秩序を根幹から揺がす、力による一方的な現状変更とお話になったじゃありませんか。ベネズエラに対して行われたこともそうだと思いますよ。誰は見てもそうとしか言えないと思います。米国は戦後ニカラグア、グレナダ、パナマなど中南米で侵略を繰り返してきました。日本政府は1度も批判していません。いや、米国が世界中で行う国際法の先制攻撃、侵落戦争に1度として反対したことがありません。しかし、力による平和を許さないためには法の支配を貫くことが求められます。それは相手がどんな国であってもです。西半球を再び米国の裏庭にしようというトランプ大統領です。私はこのベネズラ侵略はもちろんですが、キューバへの軍事介入など断じて許されないと。そういう立場を日本政府としても表明していくことが必要だと思います。そのことを強く指摘をして質問を終わります。

編集後記

 本稿は2026年6月2日、参議院外交防衛委員会での山添拓参議院議員による質問である。以下、動画の文字をコピペしておく。

米の軍事介入許すな対キューバ燃料封鎖で山添氏
 日本共産党の山添拓議員は2日の参院外交防衛委員会で、米国による燃料封鎖で非人道的な事態が生じているキューバへの支援を求め、政府として米国のキューバへの軍事介入は断じて許されないと表明すべきだと強調しました。キューバは、燃料備蓄が枯渇して大規模停電が続き、医療や公衆衛生に甚大な影響が出ており、山添氏はさらなる人道支援を要請。昨年10月の国連総会で日本も賛成して採択された「対キューバ禁輸解除」決議について、主権の平等や内政不干渉を定める国連憲章・国際法の原則を考慮したものだと強調しました。
 トランプ米大統領が対キューバ軍事作戦を示唆しているのは重大だと指摘し「外交的、平和的解決が必要だ」と強調。ブラジルとメキシコ、スペインの首脳が4月、共同声明で「キューバ問題は国際法に沿った真剣で相手を尊重した対話を通じた解決を」と訴えており、日本政府も平和的解決を前提に臨むべきだと求めました。茂木敏充外相は「国家間の問題について外交的に解決することが重要だ」と答えました。
 山添氏は、米司法省が5月、キューバのカストロ元国家評議会議長を起訴したが、同じように米国が体制転換を狙う相手の国家元首を起訴したのがベネズエラだと指摘。米国が1月にベネズエラへの軍事作戦でマドゥロ大統領を拘束したことについて「評価を控える」とする茂木外相に対し、山添氏は「軍事攻撃によって指導者を拘束、拉致することを容認するのか」と厳しく批判しました。
 山添氏は「力による平和」を許さないために法の支配を貫くことが求められるとし「ベネズエラ侵略はもちろん、キューバへの軍事介入は許されないと表明すべきだ」と求めました。

 なお、こちらのサイトも参照いただきたい。
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2026年05月09日

杉並区から考える人中心のまちづくりー東京の創発的アーバニズムと自治体の役割

東京の西荻窪には世界が感じる魅力的なまちづくりがある

2026050901S.jpg岸本聡子 今日は、慶應大学理工学部のホルヘ・アルマザン(Jorge Almazán)教授との対談である。とても楽しみにしていた。ホルヘ先生と出会ったのは、2025年だが、朝日新聞に「東京をリデザインする」との記事を寄稿をされていて、大変に啓発を受けた。私は西荻窪に住んでいるのだが、その後『東京の創発的アーバニズム』の本が出ていて、そこでは、西荻窪と高円寺も登場するので是非お会いしたいと思っていた。今日は教授ではなく、ホルヘさんでいきたい。

ホルヘ・アルマザン 今日は皆さんと話せる機会を持ててうれしい。私は東京での生活が長くて20年以上になるが、色々と研究をして生活をしていると、すでにある本の中では東京の面白さがなかなか表現できていない。そこで、最初は2022年に英語の本「Emergent Tokyo: Designing the Spontaneous City」を出した。すると驚いたのは、これがアメリカでヒットして日本語の出版社もアプローチしてきて、日本語の読者向けに内容を調整したのだが、『東京の創発的アーバニズム』学芸出版社を出せた。世界で知られていない東京の素晴らしさが言語化されていない。そして、私は建築家なので良いところを書く。その背景として、私は2003年に来日したのだが、森ビルの六本木ヒルズにも行ったが、それよりも西荻窪の柳小路の方が国際的だと私は感じた。

岸本聡子 いまの先生の最後の言葉にエッセンスが出ている感じがする。それをさらに聴きたいと思う。先生の本を読んで面白いと思ったのは、暗渠ストリート、低層の密集地域は排除されやすかったりする。先生は建築家としてデジタルも使われているのだが、航空から解像度を上げていくと森ビルとか新宿の高層ビル街ではなく東京がこういう都市だということが新ためて浮き彫りになる。住宅地、低層密集地域が東京の中心で人が生活する街であることがわかる。本の中では様々な人の動きが紹介されているのだが、創発的、英語ではエマージェンスとは何なのか。西荻窪と六本木ヒルズの違いについて先生に聞いてみたい。

自然の秩序はトップダウンではなくボトムアップで創発されている

ホルヘ・アルマザン 本を書くときに優しい日本語を選ばなければならないと思ったのだが、新しい概念は必要なので、それを一般化したいので、あえてエマージェンス、創発を使った。エマージェンスとは、複雑性科学の概念で、ボトムアップでの小さい操作でシステムが自己組織化することである。よく秩序を考えるときにはトップダウンの命令で動く。体も脳でコントロールされていると直感的に私たちは思っているが、自然も動物もそうだが、実は意外にボトムアップで組織化されていること多い。鳥の群れが典型的である。空を飛行するときには矢印の形をとるので、鳥の先頭にいるのがボスだと思うのだが、そうではない。実は別の個体に代わっていたりする。そうしたことで見てみると都市も面白い都市はボトムアップなのではないか。トップダウンだと大体活気がなくなってコミュニティが衰退していく。20世紀のヨーロッパも創発的でないのでうまくいっていない。まちが人間によって、自然発生的にできているのが東京の面白いところではないか。そこには、世界の各都市が参考にするべきアプローチがあるのではないか。最後に他の都市もインスピレーションできる原理がそこにはまとめられているので、それでアメリカでの反響が良かったのではないかと思っている。アメリカの都市もヨーロッパの都市も問題を抱えているので、創発的に、段階的に漸進的に作っていくと魅了的な都市ができると。もちろん、中にはインフラのようにトップダウンのものも必要である。ただし、東京の面白さは創発的なものが強い。

黒か白かの二項対立で伐採された神田の並木通り

岸本聡子 創発的とは、色々な人たちがインターラクションする。相互にある種の化学反応を起こしながら自然な秩序を作っていくことである。それが杉並の面白さで魅力ではないかと。それが私にはとても心強いのだが、もっと先生にお聞きしたいのは、ホルヘさんはスタジオラボを作っている。建築設計事務所である。それは「共創の場である」としているのだが、大学の中でそんなことが可能なのだろうか。

ホルヘ・アルマザン それが日本の大学の良いところではないか。韓国もあるのだが、日本には他の国にはない研究室制度がある。そこが研究プロジェクトのための資金を集める。だから、日本では長期的な研究ができる。建築分野では丹下健三(1913~2005年)とか、長い伝統がある。自由度が高い。これは自分が作ったものではない。

岸本聡子 私はホルヘさんのことに注目してからYouTubeを見ていたのだが、例えば、千代田区の神田通りの樹木の問題がある。これに反対している住民がいて、ホルヘさんを呼んだ集会の和室で話されているのを見て、大学の中の学者や建築家が新しいことを創造していく姿をとても面白いと思った。

ホルヘ・アルマザン 千代田区の住民からはデザインを依頼された。実は神田警察通りの銀杏並木が千代田区によって伐採されると。その理由として、バリアフリー法によると2m以上の歩道の幅が必要である。立派な銀杏並木があってもそれが20、30cm足りないから伐採すると。それはあり得ないではないかなと。それ以外の解決法があるのではないか。住民の方と一緒に議論して、私は二つの代替案を出した。千代田区が決めた設計はどこにでもある設計である。そこで、この設計か、それとも、現状のままかということで対立することが多いのだが、実際には複数の案が無限にある。街づくりでは完璧な正解の答えはないのでトレードオフが必要である。そして、メリットとデメリットを比べてメリットが多い方を選んでいくことを私は示したかった。千代田区の現在の条例とかルールを守りながら、可能な限り銀杏並木を保全する設計案を提案したのだが、結果として、裁判で負けてしまったので伐採されてしまった。今は、幹が細い桜を植える予定である。

岸本聡子 エマージェンシーとか、複数の選択があるとか、いま、色々なキーワードが出てきました。1か100か、黒か白かの二項で対立することが多いし、それを私は世界中で体感してきたのだが、そうではない道を探したい。最適解を探していく作業、都市のデザインが本当に大切だと思っている。20㎝、30㎝だけで樹木を伐採しなければならない。裁判が基づいたのは法律的にダメだと言うことだろうか。

ホルヘ・アルマザン 都市計画でちゃんとしたプロセスを踏んで決定された方法だからである。法律に指定されたプロセスを踏んだかどうかだと思う。デザインの良さよりもプロセスである。

岸本聡子 日本の行政は、物事が決まるまでは皆さんには言えない。そして、物事が決まったらあとは変えられないと[会場・拍手]。いわゆる行政的な都市計画法であったり、それがすべての開発のプロセスである。こうした中で区長をやっていて、この狭間の中で辛い思いもあるのだが、代替案についてスペインの事例などもあるかもしれないのだが、問題を課題を解決しようとした時に無数の解決策がある前に、「すでにこう決まりましたので」というのが行政側からくる。その根拠は技術的な観点からしても完璧なものがないのだが、もちろん、都市計画法でも縦覧期間とか手続きはあるのだが、住民が代替案を考える時間も空間もない中で物事が決まっていくことが多いのだが、なぜだろうか。なぜ、二項対立になるのだろうか。

社会実験で人間のための空間ができたバルセロナ

20260509002S.JPGホルヘ・アルマザン もちろん、デザインだけで決まらないこともある。街づくりでもいま、色々な実験がなされている。例えば、スペインのバルセロナではアダ・クラウ(Ada Colau、第113代市長、2015~2023年)と言う市長がいた。バルセロナは、中世の旧市街があり、それ以外の新市街は100mと100m区画の街区である。ここで、エコロジーやサスティナビリティの研究者がスーパーブロックを提案した。つまり、複数の街区をまとめて歩行者優先の道を通ろうとした。写真を見ていただきたいが、30年前はこう言う風景が多かった。道路が広くて歩行者は歩道橋を使わないといけなかった。今の日本の千代田区や港区のようにである。市役所計画では、この赤色は自動車の道だが、緑色は車の侵入は禁止されていないが、歩行者と自動車とが同じ速度で行く道であると。もちろん、保守的な人もいるので、反対される前に、まずは、実際に交通を止めて安い予算で植物を置いてみる。あるいは、ベンチを置いてみる。そこで、住民の行動を観察をして、実際の効果を見る。二酸化炭素がどれだけ減ったか。あるいは、蝶々がどれだけ増えかると実験をしてみる。蝶はエコロジー的に間にある。蝶がいれば、蝶が食べる虫もいるし、蝶を食べる鳥もいるので、蝶々が生物多様性の指標になる。こくしたことを証明した上で住民と話し合って実験する。反対する人もいるので、科学的に実験してエビデンスを見て実験をすると。これが、戦略的アーバニズムである。日本もできればいいのだが、社会実験が1日だけとか短い。バルセロナは1年から3年。1日だとちょっと。

20260509006S.JPG岸本聡子 人中心のまちづくり。このバルセロナの事例を掘り下げたいが、新しいことには皆、賛成しないので、まず、社会実験をやってみる。私はヨーロッパに長くいたのだが、例えば、「カーフリーデー」があった。365日の1年のうちまず1日やってみようと。すると「車がないとこんなに都市は静かなのだ」ということに気づく。あるいは「こんなに道が広い、空が青い。子どもが安全だ」とか、「こんなに自転車で入れることが楽しい」と体験する。では、次に月に1度にしようと。実は、バルセロナの場合、車の侵入禁止はハードルが高いのが、車が入りにくいので「入らなくてもいいや」という設計になっている。アダ・コラウの地域政党が出現したことで、参加型の市政が始まったのだが、さらに、コロナがあったので、その時に、全然違う世界になった。スペインでは行動規制が強く自分たちのプロキシミリティがすごく可視化されて、「通りは人と出会う場所である」「話してサンドイッチを食べて座れる都市づくりをしていこう」という体験がすごく融合したと思っている。そこで、公共空間について、公共とはなんでしょうか。

公共とは何か―公開空地は市民のための空間ではない

ホルヘ・アルマザン 二つある。まず、公共だから国や自治体が持っている皆の土地、道路、広場。一方で、ほぼ公共空間のような場所もある。誰もが行けるショッピングモール、横丁はインフォーマルな公共空間ではないか。いま、東京で出現している高層ビルは容積率の緩和によってできているのだが、どの国でも高さとかボリュームをコントロールすることがあるのだが、アメリカでは、公開空地を作れればいい、それで公共への貢献をすればいいという考え方がある。土地の所有者は企業やディベロッパーで、これをプライベートリー・オウネッド・パブリック・スペース(Privately owned public space=POPS)、この実験はニューヨークで始まったが、矛盾で失敗だと思う。本当の公共空間はオーナーシップが国や自治体でないとうまくいかない。というのは、デザインをプライベートが所有していて決められないから。例えば、私は区民や市民として、区役所や市役所には「このように公園をしてほしい」と意見を言えるが、ショッピングモールや公開空地に対しては何も言えない。例えば、東京の公開空地はほとんどが飲食禁止である。サンドイッチを食べてもいいと思うし、それは、許すべき振る舞いだと思うのだが、プライベートな管理会社がゴミを掃除しなければならないので、あえて人が入りにくいように工夫している。「日本のランドスケープデザイナーは下手くそで人が入りにくいな」と思っていたのだが、そのデザインを依頼された人から聞いたので名前が言えないけれども、あえて、高級な材料、大理石のベンチとかを使っている。「ここには入ってはいけない」という心理的効果を醸し出すためにやっている。そのようにしてくれとオーナーから頼まれたからだと。つまり、皆が自由に意見を言える道を残さないと公共性が減る空間になるだけである。

岸本聡子 とても重要な問題提起でした。「公共空地」という訳そのものがおかしいですよね。いま、東京がどんどん綺麗になっていくのは、タワマンができて、人の住む場所が効率的に集約されてスペースを作って、余ったところを緑ということなのだが、ホルヘさんがいう杉並区の商店街は、道はパブリックだが色々な人が商売をしながら文化を作っている。それはみんなの場所であって、ある種の公共性を持っている。安全性もある。治安が守られている。年寄りも含めて歩いていける。公共の福祉として、幸せを作ることは絶対に行政だけではできない。そこで、公共とはなんだろう。人々の営みから生まれる豊かさ。これを継承していく豊かさ。私は、選択のスピードやバランスが町を作っていくと考えているのだが、ホルヘさんの側から私に聞きたいこともあるかなと。

欧州のように政権が変わらないことも日本の強み

ホルヘ・アルマザン 実を言うと岸本さんが区長に選ばれた時に国際ニュースになっていた。海外からの東京のニュースは見るようにしているのでびっくりした。そして、調べたら、スペインとのつながりもあり、ムニシパリズムと言うことで、つながりを感じた。そこで「是非、インタビューしたいな」と思っていたのだが、忙しそうだし、無理だなと。今日はお会いできて光栄です。さて、私はスペインでのアイデアには普遍性があって、創発的な概念もそうなのだが、ただ各地域にアダプテーションはしないといけない。そして、スペインでは、それは国政レベルでのポデモス(Podemos)ともつながっている。ヨーロッパはサイクルがあって、4年、8年毎に政権が変わる。スペインも社会労働党(PSOE)から中道右派の国民党(Partido Popular, PP)に代わった。その波に、ムニシパリズムも入ったことで、議席が減ってしまっている。そこで、アダ・クラウも再選されなかったし、マドリッドも別の女性市長、マヌエラ・カルメーナ・カストリージョ(Manuela Carmena Castrillo)がいたのだが、落選した。こうした政治のサイクルを超えて残るような対策をどう作れるのか。スペイン人からみると気になるので。何かお考えがあれば。

岸本聡子 こうした政治のサイクルが日本では特徴的にない。とりわけ、国政ではない。それがスペインとは大きく違う。国民が政党を選択することが難しい。スペインではポデモスという国政政党が2011年に生まれて、地方自治体の地域主権の哲学がでてきて2015年から7、8年続いた。ホルヘ先生はバレンシア出身なので、国との連動があるゆえに地域のムニシパリズムが衰退しているとの話をされたのだと思うのだが、私は、ムニシパリズムのことを「地域のことは地域で決める」と訳しているのだが、そして、それが、普遍的に成長していけるのだろうかという問いかけだとも思うのだが、それが日本の強みかもしれない。私は、対話の区政を進めているが、そうした民主的な考え方は、東京都とかと国とは折り合わない。そして、区長段階では決定権がないこと多い。それでも地域で決められることは数多くある。そして、市長や区長も選挙で変わるので、自分の思想や哲学、倫理を継承していくには、選挙民の支持を得ないといけない。そこで、私は選挙と選挙との間で区民を作っていくことで区民にそうしたことがいいかどうかを問いたい。やっていきたいという人がたくさんいること。そういう仕事をしていきたい。

質疑応答

質問 私は建築設計をやっている。ホルヘ先生が修士号を取られた東工大の塚本由晴の研究室出身でアトリエ1で働いている。高円寺や西荻窪のまちづくりだが、それが、なくなるとスキルも消えてしまう。それをどう次の世代につないでいくか。岸本さんにお聞きしたいのは、公園で花火が可能になったと。日本は一度禁止になったことが許されることが、どうして可能になったのかを聞きたい。

質問 高円寺で再開発問題に取り組んでいるが、住民で見え方が違うということで体験を調査をしながら道路の拡張を考える活動をしている。いま、屋敷林、大地主の家がディベロッパーでローコスト住宅に代わっている。樹木が減っている。産官学で誰が考えるべきか。

質問 西荻窪。私は最近頭に来ていることがあるので海外の事例をホルヘ先生に聞きたい。世界のニュースを書いて駅前に立つことがあるのだが、バスのロータリーでは一切禁止で、チラシが禁止されている。危ないと。人の邪魔をしているわけでもないのだが排除されるので。

ホルヘ・アルマザン 私は塚本研究室出身なので、スキルの継承について答えたい。商店街は単なる店が集まっているだけではない。ジェーン・ジェイコブス(Jane Jacobs, 1916~2006年)が1961年に「アメリカの大都市の生と死」で初めてソーシャルキャピタルに気づいた。商店街を壊すと建物だけでなく、キャピタルもなくなる。それは、定量的に計算できないのだが、小さいスキルかもしれないが、どうやって挨拶するか、日常的に気づかないスキルが失われる。それをキープすることが大事なことで。礼儀正しいとかマナーがいいとか。また、駅の話も気になる。

岸本聡子 西荻窪だけ路上のチラシが禁止されている。なぜ西荻窪だけが。

ホルヘ・アルマザン それはJRの土地だからで区としては何もできない。

岸本聡子 樹木の課題もあるのだが、いま、神社に7割の緑がある。屋敷林、それは相続で場合によっては樹木が切られる。実は東大の研究だと樹木の喪失率が23区で一番大きいのが杉並である。いわゆる大きな開発で容積率を上げることで偽物であっても緑を増やす。それしか緑化はできないという人もいるのだが、それを杉並区では区民は望んではいないと私は思っているのだが、みどり問題は、都市構造を変えないといけない。学校とかではできるのだが、緑の課題はホルヘさんの考えでは。

ホルヘ・アルマザン 世田谷区では、個人の庭で綺麗な庭がある。そうしたものが駐車場とかにある。一方で、過疎化している個人の庭があって、創発的に区が管理しているのだが、対策が必要だと思う。条例とか、道路工事があったら樹木を増やすとか。開発者に一定程度のみどりを求めるのもありだが、規制緩和はない方がいいと思う。デザインも大事だが。空き家も増えているし、人口減少もするので、空き家を若いクリエーターに貸したり。条件付きで庭をメンテナンスするとか。小さい緑、大きな公園でなく、分散したマイクロガーデンを分散されることができるかもしれない。

岸本聡子 ソーシャル・キャピタル。ジェーン・ジェイコブスについても言っていただいたのがありがたい。西荻に来た時に、それは、ジャーン・ジェイコブスの映画から始まった。そこで、私の杉並の人生が始まった。小さい緑が戦略として、ソーシャル・キャピタルを作っていくのが大事であると。

第二部 区長と議論する

阿佐ヶ谷文化村を生かすには

質問 杉並の高円寺から。善福寺川沿いに40年住んでいる。私は言葉を扱う仕事をしていたのだが、政策でいうと川沿いを阿佐ヶ谷文化村があるので、ポエム・ロードを作りたい。

岸本区長 文化の話ありがとうございます。文化は幸せの重要な軸だと思っている。福祉文化都市杉並であったので、それをもう一度、再発見したいと思っている。例えば、三鷹市が市全体が文学館であるという条例を作った。そういう考え方があるので、次の4年で挑戦したいと思っている。

質問 一言で質問したいのはタワマンへの区長の見解。賛否両論があるが神戸では規制がなされた。タワマンのメリットを含めて区長の見解は。

岸本聡子 タワマンについても神戸のタワマン規制はすごいなと思っているが、杉並区はタワマンの機運はないと思っている。場所もないし。そこで、杉並区でも考えられていない。

質問 このような会を持っていただける区長さんがいて区民として幸せである。自転車の法律が変わったので。杉並だけでも自転車が共生しやすいものができないかと。それと、杉並ネクストでは一切の広告をしませんと。それについて。

岸本聡子 5月15日にリニューアルされるウェブサイトは杉並ブロードリスニングで、これは、チームみらいに触発されているのだが、杉並ネクストについて区民の皆さんに意見を言うことができる。また、自転車についての意見もありがとうございます。過渡期であって、杉並区は4m以下の狭い道路が大半。狭い通りの良さ。歩行者も自動車もお互いの必然的な文化がある。とはいえ、例えば、自転車が車道を走ることに対して、そんなに厳密ではない。そんな厳密に捉えなくてもいいと思っている。実は、日本の自転車のルールは弱い。自転車の乗り方の教育がない。自転車が車と同じだという感覚がない。歩行者と同じなので危なさが増している。自転車に乗りやすい街にすると公約で掲げてまだまだ道半ば。京都市とか10年とか20年とかやって事故が激減した。基本的にはきちんとルール。ヘルメットを被りましょうである。そして、最後に選挙。どういう選挙かというと、私は、政策で選ぶ選挙、公正で開かれた選挙、攻撃をしない選挙。

 実は、今の選挙では有権者は政策を皆見ない。イメージと広告だけだと。有権者が悪いのではなく政策が悪い。こういう対話で。デジタル民主主義の実験をしたい。公開討論会がない政治文化を危惧している。私は政治活動はそれだけでいいと思っている。聞かれたことに答えなければいけない。候補者が議論することで、現職が参加しないので成り立たないことが多い。現職がしないからしませんという言い訳をできないようにする。

 それと資金力とアルゴリズムが左右するYoutubeの広告は使わない。広告でなく広報。UDに来ていただきたいと思う。私も誹謗で苦しんでいるが、抑止力を作らなければいけないと思っている。

質問 ホルヘ先生も区長さんも対話でまちを作ると。その鍵は住民参加だと思う。バルセロナとかも。それをお聞きできればと。区長さんにはどうやって住民参加を作るか。以前は私も行政の一人として、商店街も何回も来ましたが、コミュニティがあった。どうやって住民参加を作るか(会場拍手)。

岸本聡子 まず参加の仕組みではホルヘさんに聞くのが一番かなと。何かヒントがあれば。

ホルヘ・アルマザン 参加の仕方もいろんな実験があって、バルセロナとかはなんでも参加型で決めようとしていて、印象として、住民も忙しくてすべて参加できないので、会議に疲れてしまった。大きなプロジェクトは日本がないが、住民が投票できるデザインコンペ、マドリッドでスペイン広場は住民投票で決まった。展覧会もあって、メディアもあって。それがアイデアかなと思う。住民投票からワークショップまで色々と大変なので、最初にアンケートを取って。それで調整する改善していく。場合によっては改善がいいと思う。参加疲れがある。

岸本聡子 いま話を聞いて思ったのは、色々なことを書いてくれるだろうなと思った。ご自分の想いとか意見とか、いろんなレベルがある。区長さん見ていてくださいなと。そこに情報が蓄積されていくので。ウェブサイトを皆が見ることができるので。

吉田太郎 この和泉公民館の近くの下高井戸から来た。ずっと地方で仕事をしていて定年退職して東京に戻ってきたのだが、幼少期に育った下高井戸商店街が再開発でなくなってしまうことに空虚感を覚えた。まちづくりということで参加させていただいた。さて、先ほど樹木がなくなるという話があったが、私も家も江戸時代から住んでいて、庭には先祖から続いてきてかつては地元の信仰のあったお稲荷さんもあるのだが、おそらく相続でなくなってしまう。いま、足立区にも都市農業公園があり、世田谷区でも都市農業公園ができた。都市農業公園で都市農業を守れないか。農業についての区長のご見解は。

20260509008S.JPG岸本聡子 都市農業についてのご提案ありがとうございます。緑を残すにはいろんな制度がある。相続のために売ってということであれば、解決策はないが、そうでなければ土地利用について緑地制度があるし、憩いの森の制度もあるので。管理は行政がやる、しかし、憩いの森として認定するのがある。自分の土地だが売る必要がなければ農園にすることもできる。緑地にしてもいい。また、都市農業公園を増やしていきたいと思う。週末に都市農業をやるだけでなく、循環の拠点にしたい。コンポストプロジェクトも始まりました。生ゴミで作ったものを入れたい。そして、農福連携、農園の公共性を生かして野菜を育てていきたい。

質問 阿佐ヶ谷の本屋は八重洲ブックセンターが引き継いだが、書店が続けていく上で薄利多売なので。住民として本屋さんが守れる仕組みがないかなと。

岸本聡子 図書館とまちの本屋が支え合う本のまち杉並へしたい。実は、杉並区の魅力が本屋である。永福町にあった本屋も昨年の夏に閉店した。一方で、個性的な本屋も増えている。これが面白くて、高円寺とかの個性的な本屋を含めて、空き店舗ができて、本の棚を皆で共有する取り組みはある。棚だけ管理するとか。小さな図書館を作ることもやっていて。この作家が好きな読書会が盛り上がっている。そうした本屋の文化を作ることができるのかなと。また、電子地域通貨もやりたい。街の本屋で本を買う。2,000円の地域商品券を支えていけると思っている。杉並区には図書館が13あるのだが、本を買うこと、本を楽しむことともつなげていきたい。学校の図書室も充実させたい。そこが、区民の居場所になり、支えになると。そして、司書が大切にされると。その背後にあるのは子どもたちをネット空間から守りたい。いま、子どもたちはネットの暴力性に晒されまくっているが、本と出会うことで、事実を確認すること。そういう構想を持っている。そうした子どもが今度は公園に行きたいという街を作りたい。だから、図書館に行きたいということまでイメージしてもらいたい。なぜそこまで書けないか。書いているとキリがないので。最後に参加について、ホルヘさんが言ってくれたことで。いろんな参加の仕方があったのだが、それは地域の課題なので。フィルタリングしたアイデアを行政が出す。もう一度検討して、本当にできないか、検討する。最後は全員がハッピーでないが、まとまっていく。デメリットとメリットで。それは施設マネジメントで本当に成果が出ている。やりながら走りながらやってきた。最初は怒りとかが爆発するのだが、きちんと返事を返すと信頼関係が作れていくことを職員が体感しながら教えてくれた。参加型予算もやっているのだが、防災とでアイデアで6,000万円。パリの参加型予算 (budget participatif)は、約80億€(8,000億円)だが。デジタルで投票。150くらいあるので、それを10個に絞って投票し、LED、ソーラーとか、雨をためる庭づくりとか。「防災と〇〇」で抱え合わせると。環境とか蓄電もできる。こういう解決策が縦割りボックスからは生まれてこないし、縦割りボックスの中だけで処理される。「やっているんですよ」ではなく、区民がデザインしたら、こういう言葉になったよと。皆で決めて考えて愛着とかが育っていく。また、デジタルを使うことでたくさんあるので、試行錯誤しながらデザインをしている。次の試行錯誤は合意形成のために適切な技術としてAIを使っていきたい。複雑なプロセスをもう少し可視化できないか。AI的な技術も含めてやっていきたい。AIは民主主義を深め進化させる。熟議をどう共有して可視化するかのツールとしてデジタルの技術も使っていきたい。

編集後記

20260509010S.JPG 本稿は、岸本聡子後援会(ソシアルサトコズ)の主催で5月9日10:00から杉並区の和泉地域区民センターでされたものを会場での聞き取りメモを再整理させていただいたものなので正確さに欠けることをご理解いただきたい。

 なお、会場はうちから歩いて10分ほどで行ける場所で無料でもあったのだが、なかなかどうして感動的な内容であった。複雑系とまちづくりはなかなか一致しなかったのだが、ホルヘ教授の鳥のたとえで「ボイド」を思い出して納得ができた。また、編集子からの都市農業の質問にもきちんとお答えいただいた。改めて、まちづくりでもホルヘ先生のお話を勉強してみたいと思う。

posted by 情報屋 at 10:00| Comment(0) | 講演会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする