東京の西荻窪には世界が感じる魅力的なまちづくりがある
岸本聡子 今日は、慶應大学理工学部のホルヘ・アルマザン(Jorge Almazán)教授との対談である。とても楽しみにしていた。ホルヘ先生と出会ったのは、2025年だが、朝日新聞に「東京をリデザインする」との記事を寄稿をされていて、大変に啓発を受けた。私は西荻窪に住んでいるのだが、その後『東京の創発的アーバニズム』の本が出ていて、そこでは、西荻窪と高円寺も登場するので是非お会いしたいと思っていた。今日は教授ではなく、ホルヘさんでいきたい。
ホルヘ・アルマザン 今日は皆さんと話せる機会を持ててうれしい。私は東京での生活が長くて20年以上になるが、色々と研究をして生活をしていると、すでにある本の中では東京の面白さがなかなか表現できていない。そこで、最初は2022年に英語の本「Emergent Tokyo: Designing the Spontaneous City」を出した。すると驚いたのは、これがアメリカでヒットして日本語の出版社もアプローチしてきて、日本語の読者向けに内容を調整したのだが、『東京の創発的アーバニズム』学芸出版社を出せた。世界で知られていない東京の素晴らしさが言語化されていない。そして、私は建築家なので良いところを書く。その背景として、私は2003年に来日したのだが、森ビルの六本木ヒルズにも行ったが、それよりも西荻窪の柳小路の方が国際的だと私は感じた。
岸本聡子 いまの先生の最後の言葉にエッセンスが出ている感じがする。それをさらに聴きたいと思う。先生の本を読んで面白いと思ったのは、暗渠ストリート、低層の密集地域は排除されやすかったりする。先生は建築家としてデジタルも使われているのだが、航空から解像度を上げていくと森ビルとか新宿の高層ビル街ではなく東京がこういう都市だということが新ためて浮き彫りになる。住宅地、低層密集地域が東京の中心で人が生活する街であることがわかる。本の中では様々な人の動きが紹介されているのだが、創発的、英語ではエマージェンスとは何なのか。西荻窪と六本木ヒルズの違いについて先生に聞いてみたい。
自然の秩序はトップダウンではなくボトムアップで創発されている
ホルヘ・アルマザン 本を書くときに優しい日本語を選ばなければならないと思ったのだが、新しい概念は必要なので、それを一般化したいので、あえてエマージェンス、創発を使った。エマージェンスとは、複雑性科学の概念で、ボトムアップでの小さい操作でシステムが自己組織化することである。よく秩序を考えるときにはトップダウンの命令で動く。体も脳でコントロールされていると直感的に私たちは思っているが、自然も動物もそうだが、実は意外にボトムアップで組織化されていること多い。鳥の群れが典型的である。空を飛行するときには矢印の形をとるので、鳥の先頭にいるのがボスだと思うのだが、そうではない。実は別の個体に代わっていたりする。そうしたことで見てみると都市も面白い都市はボトムアップなのではないか。トップダウンだと大体活気がなくなってコミュニティが衰退していく。20世紀のヨーロッパも創発的でないのでうまくいっていない。まちが人間によって、自然発生的にできているのが東京の面白いところではないか。そこには、世界の各都市が参考にするべきアプローチがあるのではないか。最後に他の都市もインスピレーションできる原理がそこにはまとめられているので、それでアメリカでの反響が良かったのではないかと思っている。アメリカの都市もヨーロッパの都市も問題を抱えているので、創発的に、段階的に漸進的に作っていくと魅了的な都市ができると。もちろん、中にはインフラのようにトップダウンのものも必要である。ただし、東京の面白さは創発的なものが強い。
黒か白かの二項対立で伐採された神田の並木通り
岸本聡子 創発的とは、色々な人たちがインターラクションする。相互にある種の化学反応を起こしながら自然な秩序を作っていくことである。それが杉並の面白さで魅力ではないかと。それが私にはとても心強いのだが、もっと先生にお聞きしたいのは、ホルヘさんはスタジオラボを作っている。建築設計事務所である。それは「共創の場である」としているのだが、大学の中でそんなことが可能なのだろうか。
ホルヘ・アルマザン それが日本の大学の良いところではないか。韓国もあるのだが、日本には他の国にはない研究室制度がある。そこが研究プロジェクトのための資金を集める。だから、日本では長期的な研究ができる。建築分野では丹下健三(1913~2005年)とか、長い伝統がある。自由度が高い。これは自分が作ったものではない。
岸本聡子 私はホルヘさんのことに注目してからYouTubeを見ていたのだが、例えば、千代田区の神田通りの樹木の問題がある。これに反対している住民がいて、ホルヘさんを呼んだ集会の和室で話されているのを見て、大学の中の学者や建築家が新しいことを創造していく姿をとても面白いと思った。
ホルヘ・アルマザン 千代田区の住民からはデザインを依頼された。実は神田警察通りの銀杏並木が千代田区によって
伐採されると。その理由として、バリアフリー法によると2m以上の歩道の幅が必要である。立派な銀杏並木があってもそれが20、30cm足りないから伐採すると。それはあり得ないではないかなと。それ以外の解決法があるのではないか。住民の方と一緒に議論して、私は二つの代替案を出した。千代田区が決めた設計はどこにでもある設計である。そこで、この設計か、それとも、現状のままかということで対立することが多いのだが、実際には複数の案が無限にある。街づくりでは完璧な正解の答えはないのでトレードオフが必要である。そして、メリットとデメリットを比べてメリットが多い方を選んでいくことを私は示したかった。千代田区の現在の条例とかルールを守りながら、可能な限り銀杏並木を保全する設計案を提案したのだが、結果として、裁判で負けてしまったので伐採されてしまった。今は、幹が細い桜を植える予定である。
岸本聡子 エマージェンシーとか、複数の選択があるとか、いま、色々なキーワードが出てきました。1か100か、黒か白かの二項で対立することが多いし、それを私は世界中で体感してきたのだが、そうではない道を探したい。最適解を探していく作業、都市のデザインが本当に大切だと思っている。20㎝、30㎝だけで樹木を伐採しなければならない。裁判が基づいたのは法律的にダメだと言うことだろうか。
ホルヘ・アルマザン 都市計画でちゃんとしたプロセスを踏んで決定された方法だからである。法律に指定されたプロセスを踏んだかどうかだと思う。デザインの良さよりもプロセスである。
岸本聡子 日本の行政は、物事が決まるまでは皆さんには言えない。そして、物事が決まったらあとは変えられないと[会場・拍手]。いわゆる行政的な都市計画法であったり、それがすべての開発のプロセスである。こうした中で区長をやっていて、この狭間の中で辛い思いもあるのだが、代替案についてスペインの事例などもあるかもしれないのだが、問題を課題を解決しようとした時に無数の解決策がある前に、「すでにこう決まりましたので」というのが行政側からくる。その根拠は技術的な観点からしても完璧なものがないのだが、もちろん、都市計画法でも縦覧期間とか手続きはあるのだが、住民が代替案を考える時間も空間もない中で物事が決まっていくことが多いのだが、なぜだろうか。なぜ、二項対立になるのだろうか。
社会実験で人間のための空間ができたバルセロナ
ホルヘ・アルマザン もちろん、デザインだけで決まらないこともある。街づくりでもいま、色々な実験がなされている。例えば、スペインのバルセロナではアダ・クラウ(Ada Colau、第113代市長、2015~2023年)と言う市長がいた。バルセロナは、中世の旧市街があり、それ以外の新市街は100mと100m区画の街区である。ここで、エコロジーやサスティナビリティの研究者がスーパーブロックを提案した。つまり、複数の街区をまとめて歩行者優先の道を通ろうとした。写真を見ていただきたいが、30年前はこう言う風景が多かった。道路が広くて歩行者は歩道橋を使わないといけなかった。今の日本の千代田区や港区のようにである。市役所計画では、この赤色は自動車の道だが、緑色は車の侵入は禁止されていないが、歩行者と自動車とが同じ速度で行く道であると。もちろん、保守的な人もいるので、反対される前に、まずは、実際に交通を止めて安い予算で植物を置いてみる。あるいは、ベンチを置いてみる。そこで、住民の行動を観察をして、実際の効果を見る。二酸化炭素がどれだけ減ったか。あるいは、蝶々がどれだけ増えかると実験をしてみる。蝶はエコロジー的に間にある。蝶がいれば、蝶が食べる虫もいるし、蝶を食べる鳥もいるので、蝶々が生物多様性の指標になる。こくしたことを証明した上で住民と話し合って実験する。反対する人もいるので、科学的に実験してエビデンスを見て実験をすると。これが、戦略的アーバニズムである。日本もできればいいのだが、社会実験が1日だけとか短い。バルセロナは1年から3年。1日だとちょっと。
岸本聡子 人中心のまちづくり。このバルセロナの事例を掘り下げたいが、新しいことには皆、賛成しないので、まず、社会実験をやってみる。私はヨーロッパに長くいたのだが、例えば、「カーフリーデー」があった。365日の1年のうちまず1日やってみようと。すると「車がないとこんなに都市は静かなのだ」ということに気づく。あるいは「こんなに道が広い、空が青い。子どもが安全だ」とか、「こんなに自転車で入れることが楽しい」と体験する。では、次に月に1度にしようと。実は、バルセロナの場合、車の侵入禁止はハードルが高いのが、車が入りにくいので「入らなくてもいいや」という設計になっている。アダ・コラウの地域政党が出現したことで、参加型の市政が始まったのだが、さらに、コロナがあったので、その時に、全然違う世界になった。スペインでは行動規制が強く自分たちのプロキシミリティがすごく可視化されて、「通りは人と出会う場所である」「話してサンドイッチを食べて座れる都市づくりをしていこう」という体験がすごく融合したと思っている。そこで、公共空間について、公共とはなんでしょうか。
公共とは何か―公開空地は市民のための空間ではない
ホルヘ・アルマザン 二つある。まず、公共だから国や自治体が持っている皆の土地、道路、広場。一方で、ほぼ公共空間のような場所もある。誰もが行けるショッピングモール、横丁はインフォーマルな公共空間ではないか。いま、東京で出現している高層ビルは容積率の緩和によってできているのだが、どの国でも高さとかボリュームをコントロールすることがあるのだが、アメリカでは、公開空地を作れればいい、それで公共への貢献をすればいいという考え方がある。土地の所有者は企業やディベロッパーで、これをプライベートリー・オウネッド・パブリック・スペース(Privately owned public space=POPS)、この実験はニューヨークで始まったが、矛盾で失敗だと思う。本当の公共空間はオーナーシップが国や自治体でないとうまくいかない。というのは、デザインをプライベートが所有していて決められないから。例えば、私は区民や市民として、区役所や市役所には「このように公園をしてほしい」と意見を言えるが、ショッピングモールや公開空地に対しては何も言えない。例えば、東京の公開空地はほとんどが飲食禁止である。サンドイッチを食べてもいいと思うし、それは、許すべき振る舞いだと思うのだが、プライベートな管理会社がゴミを掃除しなければならないので、あえて人が入りにくいように工夫している。「日本のランドスケープデザイナーは下手くそで人が入りにくいな」と思っていたのだが、そのデザインを依頼された人から聞いたので名前が言えないけれども、あえて、高級な材料、大理石のベンチとかを使っている。「ここには入ってはいけない」という心理的効果を醸し出すためにやっている。そのようにしてくれとオーナーから頼まれたからだと。つまり、皆が自由に意見を言える道を残さないと公共性が減る空間になるだけである。
岸本聡子 とても重要な問題提起でした。「公共空地」という訳そのものがおかしいですよね。いま、東京がどんどん綺麗になっていくのは、タワマンができて、人の住む場所が効率的に集約されてスペースを作って、余ったところを緑ということなのだが、ホルヘさんがいう杉並区の商店街は、道はパブリックだが色々な人が商売をしながら文化を作っている。それはみんなの場所であって、ある種の公共性を持っている。安全性もある。治安が守られている。年寄りも含めて歩いていける。公共の福祉として、幸せを作ることは絶対に行政だけではできない。そこで、公共とはなんだろう。人々の営みから生まれる豊かさ。これを継承していく豊かさ。私は、選択のスピードやバランスが町を作っていくと考えているのだが、ホルヘさんの側から私に聞きたいこともあるかなと。
欧州のように政権が変わらないことも日本の強み
ホルヘ・アルマザン 実を言うと岸本さんが区長に選ばれた時に国際ニュースになっていた。海外からの東京のニュースは見るようにしているのでびっくりした。そして、調べたら、スペインとのつながりもあり、ムニシパリズムと言うことで、つながりを感じた。そこで「是非、インタビューしたいな」と思っていたのだが、忙しそうだし、無理だなと。今日はお会いできて光栄です。さて、私はスペインでのアイデアには普遍性があって、創発的な概念もそうなのだが、ただ各地域にアダプテーションはしないといけない。そして、スペインでは、それは国政レベルでのポデモス(Podemos)ともつながっている。ヨーロッパはサイクルがあって、4年、8年毎に政権が変わる。スペインも社会労働党(PSOE)から中道右派の国民党(Partido Popular, PP)に代わった。その波に、ムニシパリズムも入ったことで、議席が減ってしまっている。そこで、アダ・クラウも再選されなかったし、マドリッドも別の女性市長、マヌエラ・カルメーナ・カストリージョ(Manuela Carmena Castrillo)がいたのだが、落選した。こうした政治のサイクルを超えて残るような対策をどう作れるのか。スペイン人からみると気になるので。何かお考えがあれば。
岸本聡子 こうした政治のサイクルが日本では特徴的にない。とりわけ、国政ではない。それがスペインとは大きく違う。国民が政党を選択することが難しい。スペインではポデモスという国政政党が2011年に生まれて、地方自治体の地域主権の哲学がでてきて2015年から7、8年続いた。ホルヘ先生はバレンシア出身なので、国との連動があるゆえに地域のムニシパリズムが衰退しているとの話をされたのだと思うのだが、私は、ムニシパリズムのことを「地域のことは地域で決める」と訳しているのだが、そして、それが、普遍的に成長していけるのだろうかという問いかけだとも思うのだが、それが日本の強みかもしれない。私は、対話の区政を進めているが、そうした民主的な考え方は、東京都とかと国とは折り合わない。そして、区長段階では決定権がないこと多い。それでも地域で決められることは数多くある。そして、市長や区長も選挙で変わるので、自分の思想や哲学、倫理を継承していくには、選挙民の支持を得ないといけない。そこで、私は選挙と選挙との間で区民を作っていくことで区民にそうしたことがいいかどうかを問いたい。やっていきたいという人がたくさんいること。そういう仕事をしていきたい。
質疑応答
質問 私は建築設計をやっている。ホルヘ先生が修士号を取られた東工大の塚本由晴の研究室出身でアトリエ1で働いている。高円寺や西荻窪のまちづくりだが、それが、なくなるとスキルも消えてしまう。それをどう次の世代につないでいくか。岸本さんにお聞きしたいのは、公園で花火が可能になったと。日本は一度禁止になったことが許されることが、どうして可能になったのかを聞きたい。
質問 高円寺で再開発問題に取り組んでいるが、住民で見え方が違うということで体験を調査をしながら道路の拡張を考える活動をしている。いま、屋敷林、大地主の家がディベロッパーでローコスト住宅に代わっている。樹木が減っている。産官学で誰が考えるべきか。
質問 西荻窪。私は最近頭に来ていることがあるので海外の事例をホルヘ先生に聞きたい。世界のニュースを書いて駅前に立つことがあるのだが、バスのロータリーでは一切禁止で、チラシが禁止されている。危ないと。人の邪魔をしているわけでもないのだが排除されるので。
ホルヘ・アルマザン 私は塚本研究室出身なので、スキルの継承について答えたい。商店街は単なる店が集まっているだけではない。ジェーン・ジェイコブス(Jane Jacobs, 1916~2006年)が1961年に「アメリカの大都市の生と死」で初めてソーシャルキャピタルに気づいた。商店街を壊すと建物だけでなく、キャピタルもなくなる。それは、定量的に計算できないのだが、小さいスキルかもしれないが、どうやって挨拶するか、日常的に気づかないスキルが失われる。それをキープすることが大事なことで。礼儀正しいとかマナーがいいとか。また、駅の話も気になる。
岸本聡子 西荻窪だけ路上のチラシが禁止されている。なぜ西荻窪だけが。
ホルヘ・アルマザン それはJRの土地だからで区としては何もできない。
岸本聡子 樹木の課題もあるのだが、いま、神社に7割の緑がある。屋敷林、それは相続で場合によっては樹木が切られる。実は東大の研究だと樹木の喪失率が23区で一番大きいのが杉並である。いわゆる大きな開発で容積率を上げることで偽物であっても緑を増やす。それしか緑化はできないという人もいるのだが、それを杉並区では区民は望んではいないと私は思っているのだが、みどり問題は、都市構造を変えないといけない。学校とかではできるのだが、緑の課題はホルヘさんの考えでは。
ホルヘ・アルマザン 世田谷区では、個人の庭で綺麗な庭がある。そうしたものが駐車場とかにある。一方で、過疎化している個人の庭があって、創発的に区が管理しているのだが、対策が必要だと思う。条例とか、道路工事があったら樹木を増やすとか。開発者に一定程度のみどりを求めるのもありだが、規制緩和はない方がいいと思う。デザインも大事だが。空き家も増えているし、人口減少もするので、空き家を若いクリエーターに貸したり。条件付きで庭をメンテナンスするとか。小さい緑、大きな公園でなく、分散したマイクロガーデンを分散されることができるかもしれない。
岸本聡子 ソーシャル・キャピタル。ジェーン・ジェイコブスについても言っていただいたのがありがたい。西荻に来た時に、それは、ジャーン・ジェイコブスの映画から始まった。そこで、私の杉並の人生が始まった。小さい緑が戦略として、ソーシャル・キャピタルを作っていくのが大事であると。
第二部 区長と議論する
阿佐ヶ谷文化村を生かすには
質問 杉並の高円寺から。善福寺川沿いに40年住んでいる。私は言葉を扱う仕事をしていたのだが、政策でいうと川沿いを阿佐ヶ谷文化村があるので、ポエム・ロードを作りたい。
岸本区長 文化の話ありがとうございます。文化は幸せの重要な軸だと思っている。福祉文化都市杉並であったので、それをもう一度、再発見したいと思っている。例えば、三鷹市が市全体が文学館であるという条例を作った。そういう考え方があるので、次の4年で挑戦したいと思っている。
質問 一言で質問したいのはタワマンへの区長の見解。賛否両論があるが神戸では規制がなされた。タワマンのメリットを含めて区長の見解は。
岸本聡子 タワマンについても神戸のタワマン規制はすごいなと思っているが、杉並区はタワマンの機運はないと思っている。場所もないし。そこで、杉並区でも考えられていない。
質問 このような会を持っていただける区長さんがいて区民として幸せである。自転車の法律が変わったので。杉並だけでも自転車が共生しやすいものができないかと。それと、杉並ネクストでは一切の広告をしませんと。それについて。
岸本聡子 5月15日にリニューアルされるウェブサイトは杉並ブロードリスニングで、これは、チームみらいに触発されているのだが、杉並ネクストについて区民の皆さんに意見を言うことができる。また、自転車についての意見もありがとうございます。過渡期であって、杉並区は4m以下の狭い道路が大半。狭い通りの良さ。歩行者も自動車もお互いの必然的な文化がある。とはいえ、例えば、自転車が車道を走ることに対して、そんなに厳密ではない。そんな厳密に捉えなくてもいいと思っている。実は、日本の自転車のルールは弱い。自転車の乗り方の教育がない。自転車が車と同じだという感覚がない。歩行者と同じなので危なさが増している。自転車に乗りやすい街にすると公約で掲げてまだまだ道半ば。京都市とか10年とか20年とかやって事故が激減した。基本的にはきちんとルール。ヘルメットを被りましょうである。そして、最後に選挙。どういう選挙かというと、私は、政策で選ぶ選挙、公正で開かれた選挙、攻撃をしない選挙。
実は、今の選挙では有権者は政策を皆見ない。イメージと広告だけだと。有権者が悪いのではなく政策が悪い。こういう対話で。デジタル民主主義の実験をしたい。公開討論会がない政治文化を危惧している。私は政治活動はそれだけでいいと思っている。聞かれたことに答えなければいけない。候補者が議論することで、現職が参加しないので成り立たないことが多い。現職がしないからしませんという言い訳をできないようにする。
それと資金力とアルゴリズムが左右するYoutubeの広告は使わない。広告でなく広報。UDに来ていただきたいと思う。私も誹謗で苦しんでいるが、抑止力を作らなければいけないと思っている。
質問 ホルヘ先生も区長さんも対話でまちを作ると。その鍵は住民参加だと思う。バルセロナとかも。それをお聞きできればと。区長さんにはどうやって住民参加を作るか。以前は私も行政の一人として、商店街も何回も来ましたが、コミュニティがあった。どうやって住民参加を作るか(会場拍手)。
岸本聡子 まず参加の仕組みではホルヘさんに聞くのが一番かなと。何かヒントがあれば。
ホルヘ・アルマザン 参加の仕方もいろんな実験があって、バルセロナとかはなんでも参加型で決めようとしていて、印象として、住民も忙しくてすべて参加できないので、会議に疲れてしまった。大きなプロジェクトは日本がないが、住民が投票できるデザインコンペ、マドリッドでスペイン広場は住民投票で決まった。展覧会もあって、メディアもあって。それがアイデアかなと思う。住民投票からワークショップまで色々と大変なので、最初にアンケートを取って。それで調整する改善していく。場合によっては改善がいいと思う。参加疲れがある。
岸本聡子 いま話を聞いて思ったのは、色々なことを書いてくれるだろうなと思った。ご自分の想いとか意見とか、いろんなレベルがある。区長さん見ていてくださいなと。そこに情報が蓄積されていくので。ウェブサイトを皆が見ることができるので。
吉田太郎 この和泉公民館の近くの下高井戸から来た。ずっと地方で仕事をしていて定年退職して東京に戻ってきたのだが、幼少期に育った下高井戸商店街が再開発でなくなってしまうことに空虚感を覚えた。まちづくりということで参加させていただいた。さて、先ほど樹木がなくなるという話があったが、私も家も江戸時代から住んでいて、庭には先祖から続いてきてかつては地元の信仰のあったお稲荷さんもあるのだが、おそらく相続でなくなってしまう。いま、足立区にも都市農業公園があり、世田谷区でも都市農業公園ができた。都市農業公園で都市農業を守れないか。農業についての区長のご見解は。
岸本聡子 都市農業についてのご提案ありがとうございます。緑を残すにはいろんな制度がある。相続のために売ってということであれば、解決策はないが、そうでなければ土地利用について緑地制度があるし、憩いの森の制度もあるので。管理は行政がやる、しかし、憩いの森として認定するのがある。自分の土地だが売る必要がなければ農園にすることもできる。緑地にしてもいい。また、都市農業公園を増やしていきたいと思う。週末に都市農業をやるだけでなく、循環の拠点にしたい。コンポストプロジェクトも始まりました。生ゴミで作ったものを入れたい。そして、農福連携、農園の公共性を生かして野菜を育てていきたい。
質問 阿佐ヶ谷の本屋は八重洲ブックセンターが引き継いだが、書店が続けていく上で薄利多売なので。住民として本屋さんが守れる仕組みがないかなと。
岸本聡子 図書館とまちの本屋が支え合う本のまち杉並へしたい。実は、杉並区の魅力が本屋である。永福町にあった本屋も昨年の夏に閉店した。一方で、個性的な本屋も増えている。これが面白くて、高円寺とかの個性的な本屋を含めて、空き店舗ができて、本の棚を皆で共有する取り組みはある。棚だけ管理するとか。小さな図書館を作ることもやっていて。この作家が好きな読書会が盛り上がっている。そうした本屋の文化を作ることができるのかなと。また、電子地域通貨もやりたい。街の本屋で本を買う。2,000円の地域商品券を支えていけると思っている。杉並区には図書館が13あるのだが、本を買うこと、本を楽しむことともつなげていきたい。学校の図書室も充実させたい。そこが、区民の居場所になり、支えになると。そして、司書が大切にされると。その背後にあるのは子どもたちをネット空間から守りたい。いま、子どもたちはネットの暴力性に晒されまくっているが、本と出会うことで、事実を確認すること。そういう構想を持っている。そうした子どもが今度は公園に行きたいという街を作りたい。だから、図書館に行きたいということまでイメージしてもらいたい。なぜそこまで書けないか。書いているとキリがないので。最後に参加について、ホルヘさんが言ってくれたことで。いろんな参加の仕方があったのだが、それは地域の課題なので。フィルタリングしたアイデアを行政が出す。もう一度検討して、本当にできないか、検討する。最後は全員がハッピーでないが、まとまっていく。デメリットとメリットで。それは施設マネジメントで本当に成果が出ている。やりながら走りながらやってきた。最初は怒りとかが爆発するのだが、きちんと返事を返すと信頼関係が作れていくことを職員が体感しながら教えてくれた。参加型予算もやっているのだが、防災とでアイデアで6,000万円。パリの参加型予算 (budget participatif)は、約80億€(8,000億円)だが。デジタルで投票。150くらいあるので、それを10個に絞って投票し、LED、ソーラーとか、雨をためる庭づくりとか。「防災と〇〇」で抱え合わせると。環境とか蓄電もできる。こういう解決策が縦割りボックスからは生まれてこないし、縦割りボックスの中だけで処理される。「やっているんですよ」ではなく、区民がデザインしたら、こういう言葉になったよと。皆で決めて考えて愛着とかが育っていく。また、デジタルを使うことでたくさんあるので、試行錯誤しながらデザインをしている。次の試行錯誤は合意形成のために適切な技術としてAIを使っていきたい。複雑なプロセスをもう少し可視化できないか。AI的な技術も含めてやっていきたい。AIは民主主義を深め進化させる。熟議をどう共有して可視化するかのツールとしてデジタルの技術も使っていきたい。
編集後記

本稿は、岸本聡子後援会(ソシアルサトコズ)の主催で5月9日10:00から杉並区の和泉地域区民センターでされたものを会場での聞き取りメモを再整理させていただいたものなので正確さに欠けることをご理解いただきたい。
なお、会場はうちから歩いて10分ほどで行ける場所で無料でもあったのだが、なかなかどうして感動的な内容であった。複雑系とまちづくりはなかなか一致しなかったのだが、ホルヘ教授の鳥のたとえで「
ボイド」を思い出して納得ができた。また、編集子からの都市農業の質問にもきちんとお答えいただいた。改めて、まちづくりでもホルヘ先生のお話を勉強してみたいと思う。