2022年05月28日

日本の食料と地域・社会の明日を考える

開会挨拶
 農民連代表長谷川敏郎

Toshiro-Hasegawa.jpg コロナ禍とロシアのウクライナへの侵攻は食料危機を招いている。日本でも加工食品の価格が値上がりして食べられない人が増えている。いまこそ、食健連はその本領を発揮して食料増産を思い切って求めるべきである。

 日本の食料自給率は統計市場最低の37%となっている。頼っているのは輸入食料だけではなく、肥料等すべてが輸入という状況が明らかで、これも相当の値段を上げている。いま農家は103万戸。136万人だが、うち、50歳以下は15万人しかいない。昨日の閣議決定した白書では「65歳以上の農家も働け」となっているが、農地や農家が減少すれば、たとえ、イモを増産しても2030年には2,000Kcalの食料確保すら難しいと農水省も発表している。そして、生活クラブ生協も「生産する消費者運動が必要だ」と言っている。

 いま、政治的には、軍事費の倍増やナショナリズムによって支持を集めようとしているが、尿素の4割、リン酸の9割を中国に頼っている中で、今こそ平和外交が求められている。

 こうした中で、政府は牛乳の値段を引き下げ、国産小麦価格の引き下げもしようとしている。時代の流れと完全に逆行している。まずは公共調達からこの流れを変える必要がある。

基調講演 家族農業と地域を元気にし、持続可能な社会をつくる

 各国の事例紹介と日本の農政の問題点

 愛知学院大学の関根佳恵教授

 何をしていったらいいのか、基本は変わっていない。足元からしていくしかない。各国の事例、とりわけ、学校給食の事例でお話をしたい。さらに、日本農政の課題、1999年に作られた基本法を新しく見直そうとしているが、それも念頭に置きながらお話をしたい。

 私は神奈川県で生まれ高知県の中山間地域の里山で育った。夜は天の川が見えてカエルの声を聞いた。国連の小規模農業の報告書を執筆してプラットフォームジャパンの常務理事を2019年からやっている。

 これは、南仏のカマルグ湿地帯を調査していたときの写真である。南仏のアグロエコロジーなのだが麦と大豆を混植することで肥料を作らず実験している。フランスでは10年以上もアグロエコロジーの研究、普及をやっている。こうしたことを13歳の食と農等の本を書くことで伝えている。そして、公共調達については消費者リポートやブックレットでも記述している。

はじめに

 いま世界では79億人いるが、うち、8億人が栄養不足である。さらに食料の3分の1が廃棄されている。そして、10人に1人が飢餓状態である。そして、人間由来の温室効果ガスの3分の1、生物多様性喪失の7〜8割の原因が農林業である。

 そして、伝統的な農法、種子が失われることも問題である。工業的な食が流布している日本でこれらを問い直さなければならない。貿易自由化のあり方も問い直されている。この図は、国連の白書での飢餓人口とその割合を出したものだが、コロナ禍で一気に増えた。それが、今回のウクライナ危機でさらに悪化している。SDGsで飢餓をゼロにする目標から遠ざかっている。

 食料価格の推移も実質の黄色い実践でみると1975年のピークを超えて史上最高値になっている。これが身近な食料品価格の高騰にもつながっている。生活へのダメージが実感されるのではないか。そして、日本の農産物の輸入額と食料自給率の推移をみたものだが、37%と下がり続けている。

 こうした中で、なぜ公共調達なのか。世界中で危機が起きているのだが、それを打開する取り組みが始まっている。まさに、政策的なレバーと言われている。学校給食は自治の鏡で変革の主体形成の場となっているのである。

良い食とはなにか

 次によい食の定義を見てみたい。よい食の概念は時代とともに変化している。量、五感で感じられる味、そして、計測できる品質(安全性、栄養)がこれまでのものだが、それが、五感では知覚できない品質、労働環境や文化的な適切さ、持続可能性(環境、環境、経済)が重要になってきている。こうしたものを考慮すると、地元産で小規模加工、有機農産物やアグロエコロジーとなる。そして、公共調達の役割はまさに工業化されたシステムから脱却している道を開くことにある。地域経済の活性化や文化のあり方を変えられる。

 こうした良い食と結びついている概念に、フード・ジャスティスがあるが、これを求める声が高まっている。例えば、環境に負荷を与えない。農と食のシステムにまつわるパワーバランスが民主主義的でなければならないし、その運動の担い手として市民団体や消費者団体が国連すらも動かしている。市民、学者、議員、行政のネットワークが作られ、政府が正統性を失えば政権交代につながることになっている。

直面する4つの課題〜ブラジルの有機給食は公共財

 なぜ、現状のままの給食では駄目なのか。これが日本ではよく言われる。さらに、自由な市場取引に政府が介入していいのかも問われる。

 さて、有機給食をめぐっては「新自由主義的なモデル」と「福祉国家的なモデル」とがある。前者では給食費は受益者負担である。日本でも未納問題が社会問題化したが、「給食費を払わない家庭には給食を食べさせるな」という論調が多かった。しかし、これに対してプランBでは、給食はまさに共有財(コモン)となる。そこで、まず、ブラジルを見てみたい。

Lula.jpg ブラジルの給食は国際的には有名である。学校給食の「革命主」と認識されている。ブラジルでは1980年代からアグロエコロジーや土地なし農民の権利を守る等、様々な運動が展開されてきた。2003年には農業開発省が地元の小規模家族からのアグロエコロジー農産物を優先する制度を作り、2009年に教育省がピナエ(Programa Nacional de Alimentação Escolar=PNAE)、30%を小規模家族農業から導入するように決めた。そして、給食は完全無償である。これは、まさに食料への権利としてアグロエコロジーの転換となっている。先進的なためにEU諸国も視察に来た。

 2010年にはWTOから政府が訴えられるが、当時のルーラ・ダ・シルヴァ(Lula da Silva, 1945年〜)大統領が説明して、翌2011年にWTO側が逆に謝罪している。ブラジルでは政権が変わって政策は後退しているが、ピナエはかろうじてまだ踏みとどまっている。

米国も西海岸で有機給食が進む

 次に米国である。米国は、大規模農業、遺伝子組み換えのイメージがあるがそれだけに抵抗運動もあり、西海岸のカリフォルニア等で有機給食が始まり、2012年には「よい食の購入政策」が始まり、地元産、環境に配慮したことを点数化した。それによって、タイソン・フーズが入札から撤退して話題になった。

2014年には有機100%、家族農業を優先するプログラムができて広まっている。これと並行して農薬への規制、訴訟も展開されてきている。

 また、2019年にはその予算が確保され、2021年には農業イノベーション・アジェンダを発表し、農業からのフットプリントを半減するとしている。

韓国では小規模家族農家からの農産物を無償で提供

 韓国でも中小規模の農家から農産物を購入する運動が進んでいる。7月にはオンライン講座で有機学校給食の推進に携わった姜乃榮を講師と呼ぶ予定である。これもWTO違反であると提訴され、日本の最高裁にあたる「大本院」が違反と判断したが、これを国産を扱うのではなく無農薬で安全なものを扱うと修正して、公共調達として認められた。その後2010年に市民団体が発足し、2011年に条例が制定。2017年は農産物の7割を小農から購入するようになった。2021年は幼稚園から高校まですべてが無償で調達されている。

EU全体は自由競争だがグリーン公共調達に配慮

 EUでは2000年から環境に配慮しているが、さらに重要なことは、これまでの農業経営の規模拡大を見直して小規模農業を評価するようになってきたことである。そして、2019年のグリーン公共調達によって、義務ではないが、有機、フェアトレード、アニマルウェルフェアの農産物を給食に導入できることになった。同じ年に欧州グリーン計画の一貫として、その翌年にF2F戦略も出されている。ただし、EUは単一市場であって、イギリスが抜けたことからいま27カ国あるのだが、これは関税同盟であり、その中では自由競争が促されているため、例えば、フランス産だけを扱うと限ることはできないが、輸送に伴って排出される温室効果ガスを評価する方法が確立され、今後は、これが、考慮される可能性がある。

 さて、EU全体での有機農業面積の割合だが、平均では9%。オーストラリアが26%、リヒテンシュタイン41%が、国によってばらつきがある。

縦割り行政を超え、有機給食を軸に農業振興を図るフランス

 次にフランスを中心にさらに見てみたい。フランスでは1980年代から公的認証制度が始まっている。そして、フランスでのアグロエコロジー推進において重要なのが2010年に縦割りを超えた省庁、有機局(Agence Bio)が設置されたことである。2014年には日本の農業基本法に該当する農業未来法(Loi d'avenir pour l'agriculture)ができアグロエコロジーを推進することとなった。2016年には、事実上、地産地消ができるローカリムを発面。2018年には20%以上を有機で50%以上を高品質にするエガリム法(Egalim=États Généraux de l'alimentation=食料全体会議)ができた。現在の有機農地の割合は平均4.5%で、公共調達では2022年に全体の20%を達成することとなっているが、この2年で2倍以上の3倍以上になっている。

 なお、学校給食についてはすでに30%と目標を超え、政府関係の施設でも20%を超えて、病院や介護施設が5%となっている。病院が低いのは、病院は塩分を控えたり対応が難しいためである。なお、学校別に見てみると幼稚園と小学校が40%、高校が20%となっている。

 さらに、1食あたりの食材費を見てみると、有機の割合が高いほど高くなるわけではなく、とりわけ、高校のデータでは、有機率が低い学校ほどむしろ価格が高くなっていることがわかる。

 次にフランス全体の有機農業の変化の概況だが、有機農産物を買ったことがあるひとはほぼ100%で、毎日有機農産物を買う人が13%、一人当たりの支出額は17,000円。これに対して日本は1,400円である(情報屋注:農水省が出している最新数値で2017年と古い。米国が第している最新ドル値を円換算すると540円となる)。エガリム法が制定されたことによって以前から28%も増加している。エガリム法ができたことで、有機農産物を扱っている施設は、公共調達全体では60%、学校給食では79%が実施している。

 そして、各学校における有機農産物の割合もマンサルトゥとか100%がある一方で、アルジャック等は70%となっている。

 次に市民の意識調査の内容だが、有機給食について、学校では90%がイエス、病院では80%がイエス、介護施設でも77%、民間でも81%が「有機にしたい」と答えている。

 なお、フランスにおいては給食は任意で昼休みが2時間あるため、自宅に帰って家で食べてもいいし、日によって食べたり食べなかったりと選べたりもする。また、自校式とセンター式がある。

 そして、給食の生産コストは10€/食である。ちなみに、参考までに名古屋市では570円である。そして、食材費が2€。名古屋市は市の負担が定額制と所得配分があるが定額制だと430円。

 フランスだと自治体だと6€と高いところもある。91円から650円のルマン市もあれば、所得によって10段階の価格を設けているパリ市もある。そして、無償化も増えている。サン・ドゥーニ市は2021年9月から無償となった。ちなみに、スウェーデン、フィンランドも無償である。

 そして、エガリム法は、有機化だけでなく、農業生産者の所得向上、ネオニコチノイド系農薬の禁止、動物福祉の向上、プラスチック製品の削減、食品ロスの削減も義務化されている。地理的表示やエコラベルを2割としている。そして、農民的製品にはラベルがないが、半減されるがポイントもつく。

 国産を買うことができないため、仲介業者がない産直がエガリム法では入っていない。このあたりはフランスでも混乱している。ただ、何が提供されているかを消費者は確認できる。

 さて、有機を取り入れたことによって全体の数値を見てみると、7割の自治体が安くなったか使用する食材の量が減っている。安くできる理由は旬の食材を使うことである。フランスでは徹底していて、例えば、加温栽培したものは出さないと徹底されている。また、加工食品も使わない。そして、ベジタリアン給食として肉や魚の量をグラム単位で減らしている。食品ロスも削減するため、盛り付けの量を変えたり、肉を焼き方を工夫している。

 全体からみて、有機の率と公共調達の割合だが、2€前後に集中していることがわかる。この統計は、食材の有機の率が高まってもそれに比例して単価があがっていくわけではない。そして、食品ロス削減の取り組みも始まっている。

 この表では青軸が毎日がベジタリアンのものだが、有機化が進んでいるところほど進んでいることがわかる。そして、ベジタリアン給食がコスト削減で鍵となっている。私も小学校時代にはフランスにいたのだが、まさにこんな感じでの給食あった。白い帽子の人が調理師で、いま、「有機を食べるとどうなるか」を子どもたちに話している。そして、食育を実施しているところも半数以上もある。

 次の課題として、安定した調達をどうするかだが、フランスでは卸売業者も扱っているし、町のパン屋からも買えるし、有機食材購入のためのプラットフォームもある。そして、それを調整するコーディネーターもいる。そして、縦割りを超えるために、前にも申し上げたとおり、環境省と農業省が協力して有機局を設けている。ここが連携しながら公共調達を変えてきている。

 アンケートの調査結果からは、だいたいほとんどのところが2ヵ所以上のところから食材を調達しているが、それでも足りない場合には、この写真のように多品目の生鮮野菜を生産する農場を自治体自らが整備して、新規就農者に管理してもらっているところもある。この写真はその様子を地元の議員やジャーナリストが視察にも来ているものである。

日本への示唆〜4つの課題は克服できる

 つまり、必要なことは、まず、アグロエコロジーである。そして、センター方式でもできないわけではないが、世界的には自校式が進んでいる。そして、小規模家族農業、無償化か傾斜配分、地元産、食育、そして、これを統治するガバナンスのあり方があり、これを法制化する。こうしたことになっている。ここからみた日本への示唆なのだが、それを見てみたい。

 第一に、現状のままでは駄目なのかなのだが、フランスでは農薬やGMOの悪影響が社会の中で認識され、それが公共調達の推進力になっている。工業的な食と農を社会として拒否している。全体として日本はまだそこに至っていない。日本では何か事件があってもすぐに忘れられてしまいその報道もされなくなる。したがって、「気づき」をいかに共有するかが大事なのだが、報道の自由も日本は世界的に67位で決して情報の透明性は高くない。海外においては有機農業への転換を支援し、慣行農業者も排除されることはなくその転換が支援されている。そして、企業行動の変容も促している。

 第二は、追加費用は誰が負担するのかである。確かに、調理の手間が増えるかもしれないが、全体として考え、調理師の考え方を変えることが鍵となる。実際、米国においては調理の手間を嫌がる民間との契約を止め、安定的な公務員にしているところもある。フランスのルマン市は納税者負担でカバーしているところもあるので、納税者に対する理解を求めることも重要である。これは無償化を行ううえで欠かせない。ただし、ベジタリアンにすれば安くなる事は言える。

 第三は、安定的に食材が調達できるのかである。これは、地域の実情を調査し、段階のステップを踏んで増やしていく。そこでは、マッチングをしたり、対話の技術を磨く研修もなされていると、例えば、ブラジルでは聞いた。

Michael-FakhriS.jpg 第四は、政府がはたして自由な市場に介入していいのかである。これは、必ず問題になるのだが、脱出口はある。例えば、WTOやEUでの単一市場ルールが食料主権の阻害要因になっている。そこで、現行の市場経済のルールをみなおす必要がある。「食料への権利」を実現するために国連人権理事会が任命するララポートの米オレゴン大学のマイケル・ファクリ教授は、2020年の7月に段階的に廃止し、連帯に基づく新たな食料協定にいくべきだと言っている。この全訳も農林漁業プラットフォームジャパンに載っている。

 公共調達は社会を変革する親鍵、マスターキーとなる。転換も進んでいることから、どういう選択をするのかが、問われているような気がする。一人ひとりが当事者意識を持って行動することが重要ではないか。

日本農政の課題と争点

 次に日本の農政の課題と争点だが、現在、みどりの食料システム戦略の法制化を議論しており、5月31日までパブリックコメントを求めているのだが、これは、見せかけの環境保護主義、グリーンウォッシュではないか。農水省の食堂にも有機農産物が導入される一方で、生産性の向上や技術を重視している。

 この内容については昨年10月にプラットフォームでも学習会をしている。また、2020年の農業基本計画においても、半農半Xを支援したり、それを担い手として位置づける方向になっている。その一方で農地の集積も進め、さらなる省力化を目指す流れもある。

 さて、コロナ禍下で加工原料が国産に回帰したり、輸入元を多元化する動きもあるが、基本的には市場原理主義であって、まだそれを根本的に転換することには至っていない。米国にTPPを求めたりしている。新しい資本主義も言われているが、コモンとしてのアグロエコロジーの推進や食料主権がこれの対抗軸になっているのではないだろうか。

質疑応答

質問 学校給食に教師はどうかかわるのか。

関根佳恵教授 韓国では教職員組合と保護者の有志の集まりが幅広い運動体として取り組んでいる。地域農業をブレーキングする必要がある。教師も学校給食を生徒と一緒に食べることがある。エディブルスクールヤードも教育菜園をやっている。普通の科目と食育を結びつけている。

江原マスオ 生産現場では担い手が農業を止めたいと言っている。下関市でも法律的にできたりしたが、できそうもないことをいうのが行政の実態である。どういうところで運動が始まっていくのか。行政を動かすポイントはどこにあるのか。

関根佳恵教授 現場の危機感だが、私も中山間地域の出身なので現場の厳しさはよくわかるが、一方で、若い新規就農者で有機農業をやりたい人が8割を超えている。有機に転換する方針を自治体が掲げるには、議員や教職員とか保護者とかで、最初は数人でも声をあげて、そして、他の成功している地域を学ぶと。それによって若い新規就農者に対して有機をやると募集すると、おそらくかなり手が挙がる状況ができていると思う。自治体の机上の空論もあるが、みどりの食料システム戦略でその基本ができているのは追い風である。いきなりすべてではなく、まず、1品目から試食会をする。そして、できれば毎月この日は有機にする。こうやって少しずつ増やしていく。段階をふんでいくことが必要かなと思う。

江原マスオ 生産では駄目だが、楽天農業も有機でやるといっている。これから未利用地が使われるのではないか。本当に地域に根ざしてなりうるのか心配である。

司会 この後に長野県から実際にどうするのか報告もあるのでそれを参考にしてもらいたい。

田中 給食センターで運営しているのだが、有機にしてもコストアップにならないとの話があったが、実際にセンターを運営団体はどう有機農産物を取り入れようとしているのか。

関根佳恵教授 千葉県のいすみ市が米を100%にしたが、ここはセンター方式である。だから、センターだからといって有機ができないわけではない。ただし、都市部での大量の人数での工業的な給食生産だと、泥付きのニンジンがきたり大きさがバラバラで皮むき機に入らないと難しいと。だから、進まないという話はよく聞く。私はセンターよりも直営の方がいいと思っているが、効率性、とりわけ、労働生産性、作業性、人件費をかけないで大量生産しようということこそが問題だと思っている。業者が入札するときに安いところが入札できるのでそれを直して運営する意識改革を行っていかないといけないと思う。

協同組合運動と地域農業再生の取り組み
 いわて平泉農協専務理事 佐藤一則

 岩手は四国に匹敵し、岩泉も香川県に匹敵する面積がある。地震があって人口も減っている。農家が減っているから減っている。なぜかというと100%ではないが、昨年の米価の大幅値下げ。3割も2年で労働者でも賃下げされるが、米価が下落をしているからである。採算ベースが60kg、1俵で1万5000円なのだが、いまの価格では作れば作るほど赤字になっている。それにさらに過酷にしているのが生産に関わる肥料飼料、燃料がとんでもない値上げになっている。さらに、これに追い打ちをかける政府が突然に生産調整の直接支払い交付金、政府の言いなりになってきたのに、大幅な見直しになっている。農家はもう止めたという声が出ているのが実情ではないか。

 高齢化で若者がいない。80歳、70歳の人が田圃に出ている。80馬力とかの機械を高齢者が使うので農作業事故も出ている。やはり家族農業が中心の地域が大事かなと思っている。

 なお、うちの市は産出額では全国16位だが、それは、中央資本でブロイラーがあるからである。こうした構造は農協だけではどうにもならない。

地域農業をどうしたらいいのか

 何年も前から加速度的に待ったなしであると言ってきた。私も60代だが、70、80歳になるまでは待てない。自ら動かなければならない。短期的には農業者所得保障。若い人が農業をやりたいのだが、きめ細かい援助がなかなかそう入ってもおいつかない。ただ、最近は国民の意識が変わって潮の目が変わっているのではないか。子どもの飢餓もマスコミででてきている。先進諸国でお金であればものは買えるのは間違っているのではないか。それが、徐々に増えていると肌で感じている。自給率向上を国民的に運動にしていく。TPPのような大きな運動を期待している。

持続可能な漁業の取り組み

今井和子 主婦をしている。漁業のことをしらないが、6年前に組合長からキンメの資源管理の話をもらってからである。御宿、勝浦等CCSFCで4時間とか禁漁するという罰則をしている。キンメダイの生態を調べたりをする。

 ルールの決め方も多数決でなく反対の船団があたったら納得するまで話合って決めている。50年からやっている。漁師の勇気と努力を誇りに思う。SDGsを実行してきたと。いまの利益だけでなくもっと先のことを考えることがSDGsではないだろうか。私たちは銀行のようにキンメダイを貯金している。結果として、水揚げが日本一になった。獲らない努力が実った。外房が頑張っていることを伝えたい。絵を書くのが好きなのでイラストで書いた。そして、英語版も作った。海外にも輸出されている。米国、シンガポール、ドバイ、英語の教材にも使ってもらった。

 沿岸漁業の役割とは、次の時代も魚が住めるように資源管理をし、不審侵入を管理している。災害救助の役割もしている。沿岸で漁師がいなくなったら日本はどうなるのであろうか。イカ、カツオもいなくなった。企業船が獲りすぎているためではないか。日本漁業の94%は沿岸漁業。大きな企業船も資源管理をするべきである。こうした漁師のつぶやきを発信をしたい。

学校給食に地元産農産物、お米を取り入れた取り組み
松川村農民組合宮田兼任

 宮田兼任です。学校への有機給食の取り組みだが、まず、有機JASの農家を増やす。もう一つは学校給食に有機農産物を出せるようにということで、「いきいき田んぼの会」を作った。会員は同じような顔ぶれだが、進めるに当たり、池田町と松川村と1500食だが両町村が給食センターが共有なので、両町村で取り組んだ。普段からすでに特別栽培米が納入されていることから松川村長は「[現状のままでも]問題ないだろうと言っていたし、それを1法人が受け持っていてそれによって経営が成り立っていた。これを考慮しなければならない。こうした中で、有機米を導入することができた。

 次に、なぜ、有機米に至ったのか。その根本的な背景を申し上げたい。私と矢口一成さんは20年前から有機農業を手掛けてきたが、そこには、農薬の子どもたちへの影響が深刻化しており、残留農薬の高い濃度やGMOが日本人の健康に問題があり、農業が危機的であるとの問題意識があった。危険な輸入農産物を押し返し、日本農業再生の道を固い決意で挑戦を始めたわけである。そして、できることならば学校給食にそれが採用されることがかなうことを望んでいた。なぜならば、店頭で販売されている食べものには安全性に問題があり、成長期の子どもたちが安全な食事が取れる唯一の場所が給食だと思ってきたからである。そして、急展開し、今年から毎月1回の有機給食米という第一歩が開けた。メンバーは6人いるが、私は保護者と村長との懇談会をしたり、子育て中の人に対して学習会をしてきている。では、次に高橋君が話をする。

高橋克也 地域起こし協力隊3年。移住5年目。2年前から新規就農した。地域起こしの任期中であったので「いきいき田んぼの会」と行政との両方に携わった。そして、役人も人間なので、行政にも感情があり、自分たちの想いを汲んでもらえる行政であることがわかった。松川村・池田町はそのところを認識してまず情報共有から始めた。それが実現への第一歩ではないかと思った。

松野亮子 池田町の町議会議員をしている。有機農業が盛んな池田町にしたいと議員に立候補して今年4年目である。そして、有機農業を推進するにあたっては有機給食が良いのではないかと、議会の一般質問を行い議会で取り上げてきてもらった。池田町の甕聖章町長を実際に有機米が生産されている田圃に連れて行くことができ、よくできていることを町長も認識した。そして、給食センターが松川村と合同であることから、有機米の給食への提供を提案したところ、それが町としても認められて有機米導入に成功した。

矢口一成 宮田さんと一緒に有機農業をやってきた。20年前は有機農業は手間がかかるものだったが、いまは技術もでき、収量がとれるところまで来ている。安定した技術が必要だが、特に大事なのが苗であることから、ここに立派な苗を持ってきた。農業ではよく苗半作といわれるが、有機では苗9部作である。そして、長野県の有機農業のアドバイザーもしているが、有機稲作は誰でもできると指導している。民間稲作研究所の稲葉光国さんが言われたようにやればできる時代になってきている。そして、民間稲作研究も理事長に舘野廣幸さんがなったが、彼はまったく水田に入らないことがゴールであると。有機の方が経費もかからず収量も確保できているので、こうしたマニュアル本を参考にしていただければと思う。

臼井健二 35年前から持続可能な農的暮らしをやっている。ここには農業の学びの場もある。この中で矢口一成さんと15年前から、皆さんの集いで場を設けてきたが、そうした中でそれが伝わってきている。

 こうした農的暮らしが本来の[生き方の]ベースであって、皆がつながりあい、オーガニックタウン的になればいいなと思って、つながりあいながらやっている。

宮田兼任 これからだが、農業の学習会を重ねる中で農薬問題に関わっている女性議員の方も有機農業の推進について議会で質問もされた。これは、画期的であった。また、今年新たに有機農業に挑戦したいという人が2人、3人でてきている。

 コロナ禍で学習会ができなくなったのだが、有機農業の技術学習会をしたいとの要望があったので、こうしたこのメンバーとやっていきたい。ようやく有機農業も認識されてきている。また、今年3月に村議会の選挙があって2度も我々の会に参加された女性議員[矢口あかね]がトップで当選した。どうも、ありがとうございました。

司会 色んな人が集まっているので励まされた。では、関根先生、感想を。

関根佳恵教授 勇気づけられるお話がたくさんあった。大阪消団連からは講演についての感想もいただきありがとうございました。世界の事例では、実際に動き出してみると希望が見えてくる。連帯の輪が広がると言われているが、日本でも広がることを感じた。同時に集まっている人のネットワークが貴重でこうした情報が多くの市民に届いていないことを感じている。

 例えば、新聞で報道されている内容も不十分で、先日、民間ラジオで話したときに「危険なグリホサートが日本で使われているし、そういうことから日本の農産物が東南アジアにも輸出できない」と話をしたところ、「こうした内容を放送していいのだろうか」と言われた。つまり、本日のような食健連のネットワークをいかに広げていくか。その根底にある効率性至上主義を変えていくには、理解できる言葉に翻訳をしていくことが求められているのかなと思う。

編集後記

 これは、2022年5月28日(土) 13:30~16:30にかけて、全労連会館とオンラインにおいて、食健連が行った「日本の食料と地域・社会の明日を考える」の内容をメモしたものである。当日は100人を超す参加があったとのことである。

【画像】
長谷川敏郎さんの画像はこのサイトより
ルーラ・ダ・シルヴァ大統領の画像はこのサイトより
マイケル・ファクリ教授の画像はこのサイトより
posted by 情報屋 at 13:30| Comment(0) | 講演会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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